この記事は3本1組の記事の2本目です。
1本目は、小浜ルートの駆除が始まった 【北陸新幹線 その28】
http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2025/12/22_0935.html
です。
2本目は、ゴーゴーイチでゴーは無理 【北陸新幹線 その29】
http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2025/12/23_1435.html
です。
よろしかったらお読みでください。
ここまで書いていた段階で、新しい動きが出ました。前回ふれました「フライング調査」の予算が、例年同様14.5億円で計上されるようです。インフレを考えれば実質減額で、無いよりは良いレベルですが、これをどうやって8ルートで分けるのでしょう。
ではでは、維新が持ち出している8ルートを順に検討していきましょう。もしかしたら、提案者ですら、そんな面倒なことはしないかも知れませんが、いかに不真面目な議論なのかを記録しておくことことには価値がありそうです。
まずはもう一度、8つのルートを並べてみましょう。
1)京都小浜
2)亀岡
3)湖西(新設)
4)湖西(在来線利用)
5)舞鶴(京都経由)
6)舞鶴(亀岡経由)
7)米原(乗り入れ)
8)米原(乗り換え)
舞鶴回りや亀岡経由も論外
これまで延々と議論した小浜・米原系(1.7.8)ルートは簡単に結論だけにしておきます。小浜は技術的に無理無理無理無理です。米原系ルートは肝心のJR西や滋賀県に、メリットもやる気もないので無理無理無理無理でしたね。興味がおあり方は、これまでの記事をご覧ください。
INDEX-はじめて、記事を読まれる方のために【北陸新幹線 その25】,村
山恭平,http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2025/06/21_1637.html
まず、そもそも今回の延伸はなんのためかというと、大阪と北陸方面との移動時間の短縮です。小浜・京都ルートの場合、現行の「大阪からサンダーバードに乗って敦賀まで行く」のと比べて時短効果は30分程度。敦賀で乗り換えが発生している大阪・金沢間で比較しても、乗換駅の問題まで考慮すれば、大きな違いはなさそうです。
今回の8ルートのうち舞鶴を回る2つ (5.6.)は、今の敦賀乗り換えよりも乗車時間は短縮どころか長くなりそうで、なんのための延伸かということになります。
沿線のどこが高架なのか地下なのかは不明ですが、少なくとも日本海側から京都に抜けるには長大な山岳トンネルが必須です。青函トンネルなみの長さで、天文学的工事費・難工事・ヒ素入り残土と言った小浜ルートの致命傷はそのままです。
つまり、経費はかかるわ時間短縮は皆無だわで、各ルートの欠点を集めたような代物。議論を混乱させるために維新が持ち込んだとしか思えません。わかりやすく言えば嫌がらせです。
亀岡(2)は、(万一ですが)完成すれば小浜・京都ルートよりも早くなるかも知れません。けれども、敦賀から日本海に沿って西に向かうと丹波山地の北側にはいってしまうので、大阪方面に直線的な線路を引くと、毎度お馴染みの長大山岳トンネル問題をさけられません。おそらく、トンネルの距離は小浜・京都ルートよりも長くなるでしょう。
小浜市と大阪市との間には、百人一首の時代から難所としてしられた丹波山地が立ちはだかっています。小浜経由が事実上不可能であると思われる本質的な理由です。今回の維新八案には無かったものを含めて、敦賀から大阪方面に向かうルートを考えると、「小浜を外すか、長大トンネルを掘るか」との究極の選択をつきつけられます。
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ここで、あえて意地の悪い計算をしてみましょう。延伸が完成するとされる2050年ごろには、小浜市の人口は2万人程度でしょう。長大トンネルを掘って小浜を通すための費用は3兆円ぐらいはかかりそうです。少なくとも、小浜市民1人あたり1億円以上のお金が使われることになります。「新小浜駅のために1億円出しますか」とか「延伸やめる代わりに、全員に1億円あげます」とかの話になったら、市民こぞって「延伸してほしい」とはならないでしょう。まことに品のない話ですが、こう考えてみると小浜を経由することは巨大なバラマキだとわかります。技術面のみならず財政面を考えても無理だと言わざるをえません。
NOと言える滋賀県
最後に残った湖西系の2ルートはどうでしょうか。今回の維新提案で一番目新しい部分です。まず、湖西(新設ルート)。最大のメリットは直線性が良いことです。長大トンネルを避けるのなら完全な直線は難しいでしょうが、国道161号やJR湖西線沿いの比良山脈の麓を一気に山科まで向かえます。
沿線はほとんどが山林なので用地買収は進めやすく、地べたを走れますのでトンネルや高架橋も最小限ですみそうです。市街地に高架橋を並べる米原ルートより、もしかしたら安くつくかもしれません。京都駅付近での接続を工夫できれば、大深度地下工事をする必要もありません。だから工期も短かそうです。地下水問題も発生しにくいでしょう。
けれども、このルートには米原と同じ大問題があります。滋賀県の不同意です。米原ルート以上に県民のメリットが少なく、環境問題などの実害は米原よりマシとは言え、費用負担と並行在来線問題が解決できない限り、知事は相手にしないでしょう。国もJRも「それなら、うちが負担します」とは言うはずもないので、佐賀県内での西九州新幹線と同様に話の進めようがありません。
最後に残ったのは4)の湖西(在来線利用)というやつですが、あまりに漠然としていて、何を提案しているのかよくわかりません。極端に言えば、現在の「湖西線」の名称を「北陸新幹線」に変えればそれでいいのでしょうか。
馬鹿にされたような話ですが、案外それもありという気がします。現在、特急サンダーバードが走る湖西線は、ほぼ全線が高架で踏切が一か所もありません。車両・信号設備の改良やホームドアなどの細かい工夫と敦賀駅乗り換えの対面化で、「関西から北陸への移動時間を短くする」という最大の目的は、低予算でもかなり達成できそうです。
さらに、将来的には三線軌条やフリーゲージトレインといった方法で、サンダーバードを敦賀から新幹線高架に乗り入れて、金沢方面まで行くことも考えられます。維新としては、この湖西(在来線利用)がもともと本命で、あとの6プランは当て馬だったのかもしれません。財政状況を考えれば安さは正義です。
〈北陸新幹線延伸〉五里霧中の中央要望 再検証「発車」も長期化必至,北國
新聞,https://www.hokkoku.co.jp/articles/-/1964506
巻き込まれた子供たち
今年、北陸新幹線がらみで一番気分の悪いニュースは、小浜市が児童や幼児を巻き込んだことです。何回も書きましたが、小浜・京都ルートには、はじめから実現性がありません。にもかかわらず、何の責任もない子供たちを巻き込んでしまいました。
北陸新幹線が走る未来の小浜、アートに 福井県嶺南4市町の子どもたちが共同
制作,
福井県「若狭湾観光連盟」公式サイト,https://wakasabay.jp/articles/-/2555
数年もすれば、小浜・京都ルートの話など雲散霧消しているでしょう。そのころ多感な時期を迎える彼らはどう思うでしょうか。ある日突然、正式に小浜延伸が断念されるか、小浜を通らないルートが着工されるかしたら、彼らにどう説明するのでしょう。ある少年は無力な地元の大人たちを馬鹿にし、別のある少女は故郷を弄んだ国や社会に対して反感を抱くことになるかもしれません。
こうした経験をした子供たちは成人しても、自分たちが主権者であるという実感を、平均的な日本の若者よりもさらにに持ちにくいでしょう。この「長屋」の大家さんの文章には、「学校教育でも家庭教育でも「適切な負け方」については誰も教えない」とあります。だから彼らは恐らく、地元民に絶望しながらも地元に残ったり、都会人に不信感を持ちながらも都会に出たりすることになります。
〈北陸新幹線延伸〉五里霧中の中央要望 再検証「発車」も長期化必至,内田樹
の研究室,http://blog.tatsuru.com/2008/08/18_1017.html
北陸新幹線の大阪延伸問題。大きな視点で見れば、「大人」たちの利権と負担をめぐるありふれた争いなのでしょうが、こうした、たとえ些細でも無責任な「大人」の振る舞いが、地域の将来に大きな傷を残すのではないかと思います。