納涼人間分類

 暑中お見舞い申し上げます。

 しばらく気の滅入るような話題が続きましたので、今回は息抜き系でいきましょう。
 よくある人間の性格分類、もちろん真面目に考えれば全てゴミです。古くは、クレッチマ-の三類型とか血液型性格論。占星術なんかもその類いですね。
 実に下らないので、私もやってみます。もちろんエビデンスなんかありません。


ぶちきれ・こじらせ・ぼけなす

 人間を欠点で3つに分けてみることにしました。すなわち「ぶちきれ型」、「こじらせ型」、「ぼけなす型」です。
 ぶちきれ型は単純明快、追い詰められると突然爆発するタイプです。こじらせ型は追い詰められると思考がどんどん複雑化して身動きとれなくなるタイプです。そしてぼけなす型は、追い詰められると止まってしまうタイプです。

 例を挙げて考えてみましょう。

l 座右の銘
 ぶちきれ人の座右の銘 ...... 先手必勝
 ぼけなす人の座右の銘 ...... たなからぼた餅
 こじらせ人の座右の銘 ...... 人の一生は重荷を負うて遠き道を行くがごとし。急ぐべからず。不自由を常と思えば不足なし。こころに望みおこらば..................

l 行動パターン
 ぶちきれ人の行動 ...... 考える前に行動が理想
ぼけなす人の行動 ...... よくよく考えてからの行動が理想
こじらせ人の行動 ...... 出来れば考えも行動もしないのが理想

l 壁にぶつかったら
 ぶちきれ人の対応策 ...... とにかく体当たり
 こじらせ人の対応策 ...... 状況把握と熟慮
 ぼけなす人の対応策 ...... まずは先送り

l 「今だけ金だけ自分だけ」から何か選ぶなら
 ぶちきれ人 ...... 今さえ良ければどうでもいい
 こじらせ人 ...... 金さえ有ればどうでもいい
 ぼけなす人 ...... 自分のことで精一杯

l 座右の銘
 ぶちきれ人 ...... 鳴かぬなら殺してしまえホトトギス
 こじらせ人 ...... 鳴かぬなら鳴かせてみようホトトギス
 ぼけなす人 ...... 鳴かぬなら鳴くまで待とうカタツムリ

l 理想の職業
 ぶちきれ人の理想 ...... 無敵の格闘家
 こじらせ人の理想 ...... 狂気の研究者
 ぼけなす人の理想 ...... 稼げる無職

l 医者になると
治療の基本方針
 ぶちきれ医者 ...... 根治(手術は成功したが患者は死んだ)
 こじらせ医者 ...... EBM(エビデンスに基づく治療)
 ぼかなす医者 ...... 病は気から

ガンの標準治療
 ぶちきれ医者 ...... 外科手術
 こじらせ医者 ...... 分子標的薬
 ぼかなす医者 ...... すこし様子を見ましょう

老人医療の本質
 こじらせ医者 ...... QOLの向上と医療費抑制の両立
 ぶちきれ医者 ...... 積極的安楽死
 ぼかなす医者 ...... 話し相手

l 弁護士になると
刑事裁判での方針
 ぶちきれ弁護士の刑事裁判 ...... 推定無罪に固執
 こじらせ弁護士の刑事裁判 ...... 司法取引に持ち込む
 ぼけなす弁護士の刑事裁判 ...... 情状酌量を待つ

民事裁判での方針
 ぶちきれ弁護士の民事裁判 ...... 最高裁まで争う
 こじらせ弁護士の民事裁判 ...... 詳細で大量の証拠集め
 ぼけなす弁護士の民事裁判 ...... 長引かせて和解

 飲食
酒席
 ぶちきれ人の酒...... 一気飲み
 こじらせ人の酒...... ブルゴーニュ産メルロー種1980年もの
 ぼけなす人の酒...... とりあえずビール

好きな肉料理
 こじらせ人の肉料理 ...... 仔牛のリードボー赤ワイン煮エンダイブのピュレを添えて
 ぶちきれ人の肉料理 ...... 河原でBBQ
 ぼけなす人の肉料理 ...... 牛丼並盛り

好きな海鮮
 こじらせ人の海鮮 ...... マリネした黒鯛の炙りエシャロットビネガー風味
 ぶちきれ人の海鮮 ...... マグロの解体ショー
 ぼけなす人の海鮮 ...... たこ焼き

好きな鍋
 こじらせ人の鍋 ...... マルセイユ風ブイヤベーズ大麦のパスタを添えて
 ぶちきれ人の鍋 ...... 劇辛鉄板プルコギ
 ぼけなす人の鍋 ...... おでん

好きなカレー
 こじらせ人のカレー ...... スパイスの栽培から自分でする
 ぶちきれ人のカレー ...... とにかく辛く辛く辛く辛く
 ぼけなす人のカレー ...... ボンカレー

好きなコーヒー
 こじらせ人のコーヒー ...... ガテマラ高地の希少豆を水から焙煎
 ぶちきれ人のコーヒー ...... 地獄のように熱く、絶望のように黒いブラックコーヒー
 ぼけなす人のコーヒー ...... 湯上がりのコーヒー牛乳

l スポーツ
格闘技
 ぶちきれ人の格闘技 ...... キックボクシング
 こじらせ人の格闘技 ...... グレコローマンスタイル・レスリング中軽量級
 ぼけなす人の格闘技 ...... しょっきり相撲

好きな球技
 ぶちきれ人 ...... アイスホッケー
 こじらせ人 ...... 野球
 ぼけなす人 ...... ゲートボール

好きなウインタースポーツ
 こじらせ人の競技 ...... カーリング
 ぶちきれ人の競技 ...... ジャンプ
 ぼけなす人の競技 ...... 雪合戦

野球
 ぶちきれ人の野球 ...... メジャーしか見ない
 こじらせ人の野球 ...... 汗と涙の高校野球 
 ぼけなす人の野球 ...... 5人制草野球

三振
 ぶちきれ人 ...... 空振り三振
 ぼけなす人 ...... 見逃し三振 
 こじらせ人 ...... スリーバント失敗

l 文化活動
アイドル活動
 こじらせ人 ...... グループ全員の名前・顔・誕生日・血液型を覚えている
 ぼけなす人 ...... 推しの名前と顔がときどき一致しなくなる
 ぶちきれ人 ...... 推し以外の子がセンターに立つと、野次を飛ばす

好きな画家
 こじらせ人の画家 ...... ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ
 ぶちきれ人の画家 ...... ポール・ゴーギャン
 ぼけなす人の画家 ...... クロード・モネ

好きな作曲家
 こじらせ人の作曲家 ...... ヨハン・セバスチャン・バッハ
ぶちきれ人の作曲家 ...... ルートビッヒ・フォン・ベートーベン
ぼけなす人の作曲家 ...... ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト

判定

 書いていてそろそろ飽きてきました。読んでいる方はもっと飽きているでしょう。というわけで、判定テストに行きましょう。
 以下の質問に、「よく当てはまる」は1を、「どちらかと言えば当てはまる」2を、「どちらとも言えない」3を、「どちらかといえば当てはまらない」4を、「全く当てはまらない」は5を付けて、最後に合計して下さい。

 ・ 学生時代、数学よりも暗記物がきらいだった。
 ・ スポーツ観戦で好きなチームが劣勢だと、早めに帰る。
 ・ 市役所などの受付で待たされると、理由もなく歩き回る。
 ・ WiFiが遅いと、何度も接続をやりなおす。
 ・ 本物の権力者はマスコミに名前が出ていないと思う。 
 ・ 科学が進むと宗教は無意味になると思う。
 ・ 都会に一月以上住んでいると、海を見たくなる。
 ・ 高速道路で幅寄せされると、目一杯加速して逃げる。
 ・ 日本はもっと文系の研究費を削って自然科学に回すべきであると思う。
 ・ 中学高校の部活動は即時廃止するべきであると思う。

 以上の10問。合計点数はいかがでしたでしょうか。判定と行きましょう。
 ぶちきれ人は、こんな面倒くさいテストをさっさと止めて、長屋を去って行きますからここにはいません。
 こじらせ人は、「暗記物」「遅い」「宗教」などの定義がよくわからず、判定不能で悩み続け、ここまで進ん来ません。長屋の大家さんに質問したりしないでくださいね。私だってよくわからないのですから。
 ぼけなす人は、最後まで計算をして、マイナスまたは3億以上の値、分数・少数・複素数、ベクトル、単位行列などの答えが出るか、判定をやり直す度に違う値になり、途方に暮れて泣いています。でも泣き止んだら全てを忘れて、どこかへ行っくでしょう。
 そうでないあなたは、全く正常で普通のバランス感覚のある人です。お疲れ様でした

 自分でも驚いているのですが、北陸新幹線関係の記事は番外編などを除いても、これで25本目です。興味のある方でも全部は読む気がしないでしょうし(オススメしません。実は私もです)、どこから読んで良いのかもわからないでしょう。
 そこで、備忘録を兼ねてこれまでの関連記事のインデックス(目次)風記事を作ってみました。

 はじめて読まれる方や、読まれた記事の内容の再整理をされたい方は以下の6本の記事から読まれることを推奨します。それぞれ、他の記事へのリンクもあります。

北陸新幹線の大阪延伸は不可能である。
http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2024/03/24_0827.html
小浜ルートのリスク番付(1)  【北陸新幹線 その19】
http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2025/01/24_0804.html
小浜ルートのリスク番付(2)  【北陸新幹線 その20】
http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2025/01/24_0806.html
小浜ルートのリスク番付(3)  【北陸新幹線 その21】
http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2025/01/24_0809.html
小浜ルートのリスク番付(4)  【北陸新幹線 その22】
http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2025/01/24_0811.html
小浜ルートのリスク番付(5)  【北陸新幹線 その23】
http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2025/01/24_0812.html

 もっと簡略に読まれたい方(大部分の方はそうでしょう)は、以下の3本を読んでみてください。

北陸新幹線の大阪延伸は不可能である。
http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2024/03/24_0827.html
小浜ルートのリスク番付(1)  【北陸新幹線 その19】
http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2025/01/24_0804.html
小浜ルートのリスク番付(4)  【北陸新幹線 その22】
http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2025/01/24_0811.html

 いろいろ言いましたが、どの記事でも、一人でも多くの方に読んで戴ければ幸いです。今後ともよろしくお願いします。


これまでの記事一覧

北陸新幹線の大阪延伸は不可能である。
http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2024/03/24_0827.html
延伸区間を4つに区分けして、それぞれの問題点の概略を列挙しています。


北陸新幹線の大阪延伸はもう「詰んで」いる 【北陸新幹線 その2】
http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2024/03/29_0822.html
滋賀県知事と北陸新幹線の関係。JR西日本出身で日本一新幹線を知る滋賀県知事は、老獪な方法で、県民の損失や迷惑を防ごうとしているという話。


迷宮駅に消えた最初の目的 【北陸新幹線 その3】
http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2024/03/29_0826.html
苦労して新大阪まで延伸しても、新大阪・京都間は松井山手を迂回するため時間がかかり、東海道新幹線やサンダーバードはもとより、特急料金不要の新快速との比較でも最大4分しか差がありません。
 その後、発表された「南北ルート」「東西ルート」では、それぞれ別の理由ですが、情勢はさらに悪化していますし、

大深度でのすれ違い【北陸新幹線 その4】
http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2024/06/07_1522.html
もうひとつの水問題。地下水枯渇と地盤沈下の関係性を解説。


古都の市街戦で不戦敗【北陸新幹線 その5】
http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2024/06/12_2141.html
当時最有力だった東山ルートの問題点を指摘。また、京都駅周辺での地下水の問題にも触れています。


「一見さんはお断りどす」......京都観光のビジネスモデル【北陸新幹線 その6】
http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2024/06/13_1137.html
京都市が北陸新幹線の延伸を嫌う理由。ほぼメリットがないのに、巨大な負担と迷惑があるため、着工間近になれば反対論が増えることを予想。


ゾンビ対吸血鬼......北陸新幹線延伸ルートの論点整理【北陸新幹線 番外編】
http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2024/06/26_0905.html
当時のデータでの小浜ルート対米原ルートの比較。今後、議論が活発化しそうな米原ルートに関する問題点も列挙しています。

山地を嫌う高速鉄道【北陸新幹線 その7】
一長十短四苦八苦【北陸新幹線 その8】
http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2024/07/10_0927.html
丹波山地の問題。直結・あかり・立坑の工事方式の比較。
 その後、結局どれともつかない、3方式の欠点を併せ持つような工法になりました。


残土は続くよどこまでも【北陸新幹線 その9】
http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2024/07/12_0736.html
残土問題。最終処分場は日本海しかないでしょう。160万の延べダンプが国立公園内を走り回ります。発表通りの工期なら、各地の生活道路で数分に1台のダンプが走ることになります。
 その後の再計算ではどうやらダンプ200万台になりそうです。

見えない刺客は火成岩【北陸新幹線 その10】
http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2024/07/12_0738.html
山岳トンネルの難しさ。特にコース上に散在するチャートの岩体と火成岩の貫入岩体が難物です。けれども、この程度の調査ではそれらの分布はわかりません。
 その後も調査は遅々として進んでいません。

悪魔の温泉へようこそ【北陸新幹線 その11】
http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2024/07/28_0742.html
山岳トンネルでの水問題。両端の入り口から上に掘るので、ほとんど排水ポンプはいりませんが、自動的にヒ素水が出ます。また、環境アセスメントの難しさを解説。

竹槍戦隊大本営【北陸新幹線 その12】
http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2024/07/28_0746.html
地質調査の遅れていて、不可欠なボウリング調査は毎年数本ペースは変わらず、さらに南丹市の反対が足を引っ張るということを予想。
 その後、南丹市に続いて京都市も公式に反対表明をしました。

子供だましの桂川 【北陸新幹線 緊急投稿】
http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2024/08/19_0558.html
「東西ルート」「南北ルート」「桂川ルート」を含むルート詳細な解説と、費用見積もりの見直し。主に浮力問題、時間短縮効果、B/C問題を解説。

本当は恐ろしい浮力の話
http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2024/08/29_0556.html
鹿児島北薩摩トンネルの崩壊やリニアの例から、地下水が多い京都盆地での工事の難しさを解説。

小浜の立場で考えてみる【北陸新幹線 その13】
http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2024/11/17_0943.html
唯一、大幅な時間短縮が 望める小浜・関西間でも、長い目で見るとメリットはありません。小浜ルートを辞退し、その埋め合わせに在来小浜線の充実を求めるのが得策であるという提案。

この年末におこること 【北陸新幹線 その14】
http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2024/12/20_0914.html
発表された市内での「東西ルート」「南北ルート」「桂川ルート」の比較。直後に脱落する「東西ルート」の問題点もまとめてあります。結論は3つとも全部ダメということです。

南北ルートが強いわけ   【北陸新幹線 その15】
http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2024/12/20_0921.html
延伸推進派の議論を整理します。一口に推進派と言っても、小浜ルート派と米原ルート派では、思惑が全く違います。特に、小浜派の中には、延伸自体の頓挫を狙っているとしか思えない勢力もいます。

藤井聡教授に反論する  【北陸新幹線 その16】
http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2024/12/28_0920.html
大御所による無責任な安全論への反論

よくある議論に反論する(前半)- まずは落ち武者狩り   【北陸新幹線 その17】 http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2025/01/12_0901.html
西田昌司参議院議員と八幡和郎氏への反論
 その後、西田先生とは「ひめゆりの塔」問題でも、おつきあいすることなりました。
   【問題は歴史観ではなく責任能力です】
    http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2025/06/06_0751.html

 よくある議論に反論する(後半)- 誠実な議論にあいた穴  【北陸新幹線 その18】 http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2025/01/12_0909.html
鉄道ジャーナリストの北村幸太郎氏と杉本福井県知事への反論

総集編 理工学系論点
小浜ルートのリスク番付(1)  【北陸新幹線 その19】
http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2025/01/24_0804.html
小浜ルートのリスク番付(2)  【北陸新幹線 その20】
http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2025/01/24_0806.html
小浜ルートのリスク番付(3)  【北陸新幹線 その21】
http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2025/01/24_0809.html

総集編 人文社会系論点
小浜ルートのリスク番付(4)  【北陸新幹線 その22】
http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2025/01/24_0811.html
小浜ルートのリスク番付(5)  【北陸新幹線 その23】
http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2025/01/24_0812.html
最初にふれたように、上の5本の記事は、これまで総集編です。

公平で残酷な科学的知見【北陸新幹線 その24】
http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2025/06/21_0745.html
 小浜ルート推進派は「科学的知見」に基づいて反対派を説得できると言っていますが、現状ではそんな便利な「知見」は誰も持っていません。この2年間、地盤調査があまり進んでいないことを、公募入札のデータなどから解析しました。
 けれども調査が進めば、小浜ルートにとって不利な「科学的知見」が、次々と出てくると思われます。

 久しぶりに北陸新幹線の新大阪延伸の話をします。東京から北陸三県を経由して福井県の敦賀まで繋がっている北陸新幹線を、京都市街地の地下を通って新大阪まで延伸させる計画があります。自公政権のプロジェクトチームと称する団体が勝手に作ったものなのですが、賛否以前に物理的に無理な計画ではないかと当初から思い、記事を書いてきました。 
 案の定、ここ半年ほどの間に、世論の風向きが変わってきました。いろいろな団体が反対の立場を明確にしつつありますが、それだけでは済みそうにありません。小浜ルートのとんでもなさが少しずつ露呈してきてきたのか、財政論・環境論から技術的不可能論に、反対論の軸足が変化しつつあります。
 推進側から、マトモな「心配無用」「解決可能」という話が一向に出てこないので、もう議論を打ち切ろうとする動きも出てきました。典型が米原ルートの復活です。金沢を中心とした超党派の関係者が動き始めました。
 一方、小浜への新幹線の乗り入れを諦めきれない地元と、逆に議論をコジレさせ確実に延伸を潰してしまいたい滋賀県勢などが、小浜ルート維持を叫んでいます。また、どういうわけか、ひめゆりの塔で一躍有名になった西田昌司参議院議員も賛成に回っています。夏の参議院選挙前に自分の選挙区で嫌われて......何を考えているのでしょうか。
 これら推進派は大きな危機感を抱いて、なんとか世論を説得しようとしています。キーワードは「科学的知見」です。「科学的知見をもって京都市民の不安を払拭する」というような話があちこちの推進決議に出てきます。
 けれども、なんだか市民を馬鹿にしたような話です。「我々は科学的知見に基づいて計画を推進しており、無知蒙昧な京都市民に丁寧に説明をし理解を得るつもりである」と言うのと同じことだからです。
 今後、仮に完成不可能を結論とする科学的知見が得られたら、現在の推進派はおとなしく理解するつもりなのでしょうか。もしその気がないのなら、「科学的知見」などと気軽に口にしてほしくありません。科学は中立で冷酷です。時には自分たちの利益や希望を容赦なく破壊することもあります。
 また、それ以前にとりあえず着工できる程度の科学的知見を、工事関係者は得られているのでしょうか......とてもそうは思えません。

 想定される想定外

 これまで記事にしてきましたように、今回の延伸で技術的にずばぬけて巨大な問題が2つあります。京都盆地内のシールドトンネルと京都盆地~小浜間の山岳トンネルです。
 前者では地下水、後者では残土の問題がよく報道されますが、それ以前にこの2カ所のトンネルは常識的な費用と工期で完成できるとは思えません。総工費合計10兆円工期100年などということになれば、事実上は完成不可能と言えます。個人的には、いくら楽観的に考えても解決策があるとは思えません。
古都の市街戦で不戦敗【北陸新幹線 その5】
http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2024/06/12_2141.html
見えない刺客は火成岩【北陸新幹線 その10】
http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2024/07/12_0738.html
悪魔の温泉へようこそ【北陸新幹線 その11】
http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2024/07/28_0742.html

 当然、こうした見解を覆して「可能である」と言うには綿密な地盤調査が必要です。地下深くの状況を知るのに一番必要なのは、地表から穴を掘って地盤を調べるボウリング調査です。けれども、公募入札募集の記録などから調べたところ、ボウリングの地点数は新大阪~敦賀の全区間合わせても、2022年度以前は2本、2023年度は23本、2024年度は18本で、合計わずか46本です。150kmの延伸ですから3kmあたり1本もありません。
【簡易公募型競争入札方式】 
https://www.jrtt.go.jp/procurement/system/koukoku.aspx?NO=:75:66:78:61:50:38:72:67:68:61:52:38:89:69:65:82:61:50:48:50:51
【令和5年度北陸新幹線事業推進調査について】
https://www.jrtt.go.jp/project/turuhannrennrakukaigi5.pdf

 このうち、難所のひとつである京都盆地の土質ボウリングが最大で10本。これには調査だけして没になった、「鴨川の東を通るルート(3カ所でボウリング)」や「東西ルート」を含めてのことですから、現在生き残っている「南北ルート」「桂川ルート」上では最大でも合計で5~6本程度でしょう。この区間は両ルートの合計で延べ50km程度ですから、せいぜい9~10kmに1本というところです。
 地盤や地下水による浮力にばらつきの大きいこの区間で、こんな粗いデータで安全なトンネルが掘れるのか、かなり疑問です。工事を始めれば何がおこっても想定外でしょう。だから「南北ルート」「桂川ルート」のどちらが現実的かという議論も、まともには出来そうもありません。
 もうひとつの難所、京都盆地~小浜間の山岳トンネルでは、岩盤ボウリングは最大でも11本しか掘られていません。他の方法での調査もやっていますが、約50kmの区間ですから、過去に詳細な地質調査が全く行われていない場所であることを考えると、4~5kmに1本というのは、いくらなんでも少なすぎます。
 さらに、南丹市が延伸反対で調査をさせなかったからなのでしょうか、一番山深い場所に全くボウリングデータのない区間が約10kmほど続きます。
 地質の常識では最少数10m単位で岩相が様変わりすることも想定しておくべきで、この程度の事前調査では、掘り始めてから想定外の巨岩やら断層にぶつかる可能性は大いにあります。実際、今回よりもはるかにデータが揃っていたはずの北海道新幹線でも、想定外の岩盤にぶち当たり数年単位で工期が遅れる、という事態がおこっています。

 10兆円でも足りない?

 いくらなんでも、今の状態で着工というわけにはいかないでしょう。あと数年、細々と調査を続けるよりなさそうですが、毎年20本前後のボウリングを追加しても、地盤に関する「科学的知見」が爆発的に増えるはずがありません。
 さらに悪いことに、南丹市に続いて京都市も現状の工事への反対を決議しましたから、これまでのようには調査が円滑に行かなくなるでしょう。技術的不信感を抱く側が調査協力をしないのは、本来なら筋が通らないことです。けれども、国会質問までされても既存のデータが公表されないことを考えれば、反対派自治体が今後の調査を拒否するのも仕方ないことでしょう。都合の悪いデータを隠蔽したまま、着工されてはかなわないからです。
【掘削調査の結果示せ 衆院委 北陸新幹線巡り堀川氏;赤旗】 
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik25/2025-04-08/2025040802_03_0.html

 結論を言えば、京都盆地のシールドトンネルと京都盆地~小浜間の山岳トンネルだけをとっても、技術的に完成可能であるというだけの「科学的知見」は得られていなません。ということは、現時点で算出されている工費やら工期には何の根拠もないということになります。
 現状の大本営発表的な見積もりでも、最大5兆円やら最長28年という数字が出ています。北海道新幹線やらリニアやらの苦戦ぶりを考えれば、10兆円や40年でもまだ甘いということすらありそうです。国も沿線自治体もJR西日本も、とても怖くて、goサインを出せる状況ではありません。

 データ不公表はオウンゴール

 さて、「科学的知見」と言えば、もう一つの考えられることがあります。これまでの調査データから、「とてもじゃないが完成は無理」という結論が出ている可能性です。50本弱のボウリングデータでは工事可能とはとても言えませんが、片っ端からとんでもないデータ出ている場合など、50本でも十分に工事不可能は言えそうです。
 そこまで行かなくても、工費や工期が大きく上振れする予想が出ているのかも知れません。無理に着工すれば、数年後にはやむを得ず費用負担を中止する自治体が出てきて、業者への支払いが滞るということも起こりかねません。我が国の公共事業などでは、これまでは考えられなかったことですが、大阪万博では実際におこったことです。
 即座に情報公開をしないことで、自治体や住民が大きな不信感を抱くのは仕方ないことです。ここまで来たら、都合の悪いデータでも公表してしまった方が、関係者からの信頼も得られ、うまく行けば国内外の技術者・研究者や企業から意外な新技術が提案されることで、一発逆転のチャンスもあります。小浜ルートの息の音を止めたくないのなら、この方がまだしも現実的だと思うのですが、いかがでしょうか。

雑誌「正論」7月号の西田昌司参議院議員による「ひめゆりの塔」に関する記事に反論します。正直言って気の重い話です。理由は......記事を読んでみれば分かりますが、話があちこち飛んで、戻ってきたときには違う趣旨になっていたりの混乱ぶりで、しかも大小さまざまなヘイトや無礼をちりばめた文章相手の、かなり苦痛を伴う作業だからです。
 実際、大部分の批判は、「謝罪も撤回もしていない」とあきれて終わっています。けれども、このまま何年かしてほとぼりが冷めたら「私の記事には、だれも正面からは批判できなかった」などと西田議員が言い出し、記事が一人歩きするといけないので、正面から批判して、記事全体に引導を渡すことにしました。この長屋の大家さんのおっしゃる「雪かき仕事」というやつです。

 本質的な2つの矛盾

 記事は、ほぼA5判サイズの誌面で8ページ。本分だけで6000字以上(私のこの記事を50%増量したぐらい)の堂々たる代物です。このうち、前置きが2ページ。それに続く直接の弁明が1ページと少し。残りが5ページ弱で、正直言ってどうでもよい本題と無関係なことが、やたらと書いてあります。
【「ひめゆりの塔」発言訂正の真意、私は事実を語った... 参院議員・西田昌司
「正論」7月号】雑誌「正論」;(以下「正論記事」と呼びます)https://www.sankei.com/article/20250531-MGVQNXP3T5H7JF7E7WFIOBLIIY/?outputType=theme_monthly-seiron

 まず、この正論記事には本質的な矛盾が2つあります。第一に、記事を執筆したこと自体が「反省している」と矛盾しています。謝罪の理由が、「沖縄において『ひめゆり』という言葉が伴う痛みや重さを十分に理解していなかったと思ったから」なのですから、これから沖縄の人に寄り添うつもりがあるのなら、講演内容の真偽は二の次で、謝罪以外の発言は控えて、静かにしておくべきでした。
 ところが、炎上が沈静化しかけたタイミングで、わざわざ全国誌に記事を投稿して騒ぎを蒸し返す。「痛みや重さを十分に理解」している人間のやることとは思えません。
 まるで、主治医が患者に「あなたがステージ4の胃がんだなんて、ウッカリ言ってしまってごめんなさい。本当は肺がんで余命1ヶ月です」と言い渡すとか、性加害者が被害者に「この前のことは心から謝罪しますが、ただいまよりセカンドレイプを行います」と宣言するようなものです。「反省」どころか、「この機会にもっと傷つけてやろう」というドス黒い潜在意識が垣間見えるようで、読んでいて気分が悪くなります。
 第二の矛盾。議員はこの記事でいったい何を訂正したいのでしょうか。冒頭には、講演で話した中の「ひめゆりの塔」に関する部分を「削除」すると言い、すぐ後に「訂正」すると言い、次に「私の認識を説明したい」と言ってみたりで、趣旨が次々と変わります。
 そのあげく、「私が講演した通り」「日本の『侵略』により戦争が始まり、米軍の『進攻』又は『反攻』により戦争が終わった」「という文脈で展示を行っていた」とまで主張しはじめ、最後には「事実は事実として、はっきり申し上げなければなりません」。つまり、「事実関係について訂正する気は無い」というのが結論です。
 ひとつの記事の中で主張が少しずつズレていき、最終的には180度ひっくり返るのですから、追いかけて読む方は大変です。

 コジツケとゴマカシを総動員

 細かい論点も見ていきましょう。まず、記事での講演内容の引用が、実際のものとは違っています。琉球放送のノーカット判と正論記事とを比較してみます。 

「あの説明のしぶり、あれを見ていてると、要するに日本軍がね、どんどん入ってきて、ひめゆりの隊がね、死ぬことになっちゃったと。そして、アメリカが入ってきてね、沖縄は解放されたと。そういう文脈で書いてるじゃないですか。」
(琉球放送;https://newsdig.tbs.co.jp/articles/rbc/1898522?display=1

「ひめゆり平和祈念資料館の説明ぶりは、『日本軍がどんどん入ってきてひめゆり隊が死に、アメリカが入ってきて沖縄は解放された』という文脈で書いているのではないか。」
(正論記事https://www.sankei.com/article/20250531-MGVQNXP3T5H7JF7E7WFIOBLIIY/?outputType=theme_monthly-seiron

 表現の不謹慎さについては今更もう何も言いません。講演と正論記事で一番違う点は 、講演では「死ぬことになっちゃった」とあったのが記事では「死に、」に書き直されていることです。これによって、講演で「日本軍が入ってき」たことが「死ぬことになっちゃた」ことの原因であると勝手に決めつけていたのが、正論記事では誤魔化されています。

 しかも、すり替えた内容は、約20年前に御自分の後援会の機関誌に書かれた議員自身のエッセイの丸写しです。御自分でも「ある記者の方から指摘いただ」くまで、その存在自体を忘れていたような代物を持ち出して、なんでそこまで自信があるのでしょう。
【知恵と勇気,2005.1.1,西田昌司】
https://www.showyou.jp/showyou/detail.html?id=232

 やはりというか、反論がありました。

>>>正論記事>>>
 共同通信が五月十日に配信した記事ではこの点について、「数少ない〝根拠〟は正確性が疑問視され『不十分な事実確認で、沖縄の歴史を否定している』と憤りの声が上がる」などと批判的に報じていました。同館(村山注;ひめゆりの塔平和祈念資料館)の普天間朝佳館長も「『米軍の反攻によって戦争が終わった』という記述はない。資料館では、西田氏が言うような説明は過去も現在も一切していない」とコメントしていました。
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 しかし、これにも西田議員はイチャモンを付けます。

>>>正論記事>>>
しかしこの記事には、重大な矛盾があります。
 記事では、私が発言で批判した「ひめゆり平和祈念資料館の説明ぶり」について、普天間氏が「2021年の改装前に展示していた、太平洋戦争の戦況図のことではないか」とも推測し、この「戦況図」は「実物は残っていないが、同じ図が載った当時の資料館ガイドブックには、日本軍の『侵攻』米軍の『反攻』と記されている」と書いています。「侵略」と「侵攻」はほぼ同義です。
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 20年前に自分が間違えておいて、強引に「侵略」と「侵攻」を「ほぼ同義」であると強弁するのはお愛嬌の範囲です。けれども、侵攻図には「米軍の『反攻』と記されて」いましたが、これは「『米軍の反攻によって戦争が終わった』という記述」とは意味が全く違います。
そもそも、地図の一種である戦況図を見て「そうした物語が年表のようにして壁に掲示してありました」などと言うのは無理です。しかも「私が講演した通り」などと、どうして言えるのでしょうか。
まとめて言えば、20年前の観光旅行で垣間見た戦況図にあった「日本軍の『侵攻』」とか「米軍の『反攻』」とかの文字だけから、コジツケやゴマカシを駆使して、「要するに日本軍がね、どんどん入ってきて、ひめゆりの隊がね、死ぬことになっちゃったと。そして、アメリカが入ってきてね、沖縄は解放された」と、はるばる京都から那覇まで行ってデカい声で言い切ってしまいました。記憶の捏造ないし妄想と言われても仕方ないでしょう。
 もっとも、正論記事の冒頭にあるように、「ひめゆりの塔」の話を「削除」したら、唯一の具体的根拠が無くなってしまい、いくら「ひどい」「歴史を書き換え」「東京裁判史観」「むちゃくちゃ」などと言ってみても、議論の対象にすらなりません。ひろゆき氏の表現を借りれば「それはあなたの感想ですね」で終わりです。
 講演の主題が改憲であることを考えたら、変に沖縄の話などせず最初から「感想」だけでもよかったのだと思いますが、不用意に本音を漏らした上に意地を張ってしまい収拾がつかなくなったというのが、どうやら真相のようですね。

 改憲派は闇の秘密結社なのですか

 ひめゆり関係以外でも、聞き捨てならない内容が二つあります。ひとつは、講演内容が公表されたことに対して不満に思っていることです。

>>>正論記事>>>
厳密に言えば、あの講演は、改憲の志を同じくする限られた人数の人々に向けたもので、沖縄県民全員に向け、県民感情を刺激しようなどと考えて行ったものではありませんでした。しかし、なぜかそれが広く報じられてしまった。とても残念なことでした。
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 今回、西田議員を擁護しようとした何人かの政治家や評論家も同様のことを言っていますが、沖縄の保守派というのは「暗闇の秘密結社」なのでしょうか。夜な夜な集まってわ、「県民感情を刺激」するようなことばかりを、仲間内で叫んで喜んでいる集団なのでしょうか。それならそれでもいいのですが、改憲論が沖縄で大きな支持を得ることはないでしょう。
 今から12年ほど前、憲法改正はナチスの「手口学んだらどうかね」と言った自民党の重鎮がいましたが、今の沖縄県の保守派も同じ発想で、自分たちの改憲論が広く支持を得るための努力など全くする気が無いのでしょうか。だったら、憲法記念日に無料公開のシンポジウムなど開かなければ良いでしょう......大事な秘密がばれちゃいますよ。
【質問本文情報;衆議院】
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a184006.htm

 自分たちの思想は支持者にだけ理解されれば良い。批判者と議論したり、批判者を説得したり、批判者から学んだりする必要は無い......我が国が国際的に信用され切らないのは、こういう発想が政権政党に強いせいもありそうです。日米地位協定がなかなか改訂されないのも、日本へのこうした不安が大きいと思います。米軍トップが、「ナチスと同じ発想の与党議員がいる国で、我が軍の将兵に刑事裁判をさせたくない」と思っていても、あながち「偏見だ。差別だ」とは言えないでしょう。保守派のひとはそれでも、いいのでしょうか。

 まだ懲りないのですか

 もう一つは、沖縄県平和祈念資料館へのイチャモンです。

>>>正論記事>>>
私はこれまで同館(沖縄県平和祈念資料館;村山注)を訪れたことはありません。
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 だったら何で、ネット情報だけを元に以下延々と因縁をつけたあげく、

>>>正論記事>>>
これはあまりにアメリカの立場に立った歴史認識ではないでしょうか。
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 などと無責任なことを言うのでしょうか。
 よく知らないものをよく知らないままに侮辱するとどうなるか......議員はまだ懲りていないみたいですね。

幹事長と総裁に奇襲攻撃

 西田昌司議員はユニークな政治家です。柔らかな物腰、知的で深みのある笑みから、支離滅裂な議論を延々と続ける。世界的にも......というような書き出しで記事を書いていましたら、またまた最新の発言が飛び込んできました。
 議員自身が公開しているサイトに、自民党京都府連大会(2025.6.2)のノーカット記録が登場しました。講演終了後の「ぶらさがり取材」での質疑応答。「ひめゆり関係の話は、自分の『正論』の記事を参照してくれ」というのが基本的な立ち位置だったのですが、朝日新聞の林記者の「森山幹事長や石破首相は西田さんの発言について、不正確な認識だというふうに謝っていらっしゃいますが、そちらについてどのような......」という質問に対して、次のように答えています。
 「だから、あの方々が私の発言についてどれほど御理解いただいているのかが、私はわかりません。というのは、私は時間があったら説明しますと言っているのですけれども、そういう話はないですからね。だから、私はそれについてコメントする状況にないということです」
 【本来の日本を取り戻す!」自民党府連大会で決意表明!マスコミによるぶら下がり取材もノーカットで公開します!(西田昌司ビデオレタ-)】,youtubeの動画で7:02-7:30
 https://www.youtube.com/watch?v=VKTsGra9u38
 幹事長と総理総裁を「あの方々」と呼び、勝手に謝罪したのだから私は知らないと突き放したのです。それにしても、朝日新聞はこれだけ恐ろしい発言を引き出しておきながら、大きく扱った様子がありません。お声を聞く限り記者方は若い女性のようですが、デスクは何をしていたのでしょう。
 おそらくそんなこととはつゆ知らず、翌6月3日に、その森山裕幹事長は記者会見で「本人が不正確な発言であったことを反省している」と述べたようで、完全に顔を潰されました。
【森山幹事長「西田氏本人が不正確発言を反省」 本人主張と相違 ひめゆりの塔展示巡る問題発言で】、沖縄タイムズ、6/4(水) 8:04配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/46c579d810786a2c53269afb218bf0ddb475d979

 まさに追い炊き機能付き自爆テロ犯です。これでまた夏の参議院選挙で自公の公認やら推薦やらが出るのか、分からなくなってきました。

 発言の不気味な変遷

 西田昌司議員の、これまでに確認できた「ひめゆり」関連の5回の発言を、以下にまとめます。原典(講演、会見、出稿)には無関係な部分が膨大にあるため、ひめゆりの塔に関する主要な内容だけを、項目別に抜出して比較できるように並べました。
 まずは情報の出所です。[1]はご本人の解説しているサイト。[2]~[4]は報道各社のサイトからの引用ですが、可能な限り複数のメディアで内容を確認するようにしています。[5]は雑誌『正論』の現物を入手しました。
 ちなみに、[1]のみが20年前、他は2025年5月中。特に[2][3][4]は一週間もしない間のもので、普通なら内容が大きく変遷するはずはありません。

[1]2005年1月1日 ひめゆりの塔訪問直後の講演会機関誌「showyou42号」
https://www.showyou.jp/showyou/detail.html?id=232
[2]2025年5月3日 那覇市の憲法講演会での講演(問題の発端)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/rbc/1898522?page=2
[3]2025年5月7日 国会内での記者会見(音声のみ文字おこしなし)
https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/fnn/politics/fnn-868237?fm=topics&fm_topics_id=b4b31308e3d3d5fb6e52f5d7a57711f6
[4]2025年5月8日 国会内での記者会見(ひまわり発言を撤回)
https://ryukyushimpo.jp/news/politics/entry-4218278.html
[5]雑誌「正論」2025年7月号(2025.5.30発売,p82-89)
【要約;琉球新報】https://ryukyushimpo.jp/news/politics/entry-4287586.html

 では、順に見ていくことにしましょう。

A ひめゆりの塔を訪れた状況
[1] 後援会の旅行会
[2] お参り
[3] 視察
[4] 後援会で沖縄に行ったとき
[5] 後援会の皆さんとの旅行会

B 問題視している展示の場所
[1] ひめゆりの塔の壁
[2] ひめゆりの塔(細かい場所は記載なし)
[3] ひめゆり平和祈念資料館近くの洞窟のような場所
[4] ひめゆりの塔の壁、(近くの沖縄県平和祈念資料館の可能性も示唆し混乱)
[5] ひめゆり平和祈念資料館、ひめゆりの塔の壁

C 問題視している展示の形式
[1] 掲示してある物語
[2] 文章(「展示の文章は覚えてない」と発言)
[3] 文章(「もとの言葉はひとつひとつ覚えていない」と発言)
[4] 年表のようにして壁に掲示してある物語
[5] 戦況図(地図)

D 問題視している展示の内容
[1] 日本の「侵略」により戦争が始まり、米軍の「進攻」又は「反攻」により戦争が終わった。
[2] 日本軍がね、どんどん入ってきて、ひめゆりの隊がね、死ぬことになっちゃった。そして、アメリカが入ってきてね、沖縄は解放された。
[3] はじめ日本軍がやってきてこうなっていった。それからアメリカの参戦があって、そして平和が訪れた。
[4] 日本の侵略により戦争を始め米軍の侵攻または反攻により戦争が終わった。
[5] 日本の『侵略』により戦争が始まり、米軍の『侵攻』又は『反攻』により戦争が終わった。

E 展示内容に対する評価
[1] まさに東京裁判史観そのもの
[2] 歴史の書き換え
[3] 違和感を持った
[4] まさに東京裁判史観そのもの
[5] 「日本軍は悪、米軍は善」という東京裁判史観そのもの

F 特記事項
[2] 「東京裁判史観」というキーワードが、この時だけ出てこない
[3] 「(今も)公の機関や報道は(東京裁判史観)のプレスコードでやっている」
[4] 「ある記者の方から指摘」されるまで、[1]を書いたこと自体を忘れていた
   「ひまわりの塔」と言い間違える
[5] 近くの「県平和祈念資料館」は訪れたことがないのに、その歴史認識を批判

 おそらく、西田議員本人がこれを見れば「切り抜き」だと反論するでしょう。けれども、最後の「備考」の項以外は、東京裁判史観を批判するための根拠の主要部分ですから、たとえ「切り抜き」あっても全てが一致していて当然のものです。
 ところが実際には、わずか1ヶ月足らずの間に発言は大きく変遷しており、さらに「洞窟」や「プレスコード」の件など、素人目には妄想としか見えないような内容が出てきます。
 [1][2][5]は最初から自分で原稿を準備したものですし、[3][4]の記者会見でも質問があるに決まっているような論点の話で、きっちり準備をしていて当然です。事務所には広報スタッフもいるはずです。だから咄嗟に言い間違えたというような弁明は通用しません。
 影響力の大きい政治家の方ですから、いつも本当のことが言える訳ではないかも知れませんが、たとえば単純な事実関係であるA~Cについて、言を左右にしても何の利益もないはずです。

 消えた洞窟の謎

 細かく見ていきましょう。Aの「ひめゆりの塔を訪れた状況」に関しては、[2]の「お参り」を[3]では「視察」と言い換えています。調すぐにバレるウソをついて、さらに翌8日の[4]では何の説明もなく「講演会の旅行」に言い換えています。
 一番問題なのはBの「展示の場所」です。まず、「塔の壁」という表現。ご存じの通り「ひめゆりの塔」そのものは建築物ではなく石碑です。展示物を貼る壁などありません。特に、初代の塔は小ぶりな墓石ぐらいの大きさで、よく見落とされます。そのため、修学旅行生などは、祈念資料館の建物を塔そのものだとしばしば誤解します。西田議員の場合もそうだったのではないでしょうか。
 あくまで憶測ですが、根拠は2つあります。まず[1]のみならず[4][5]と繰り返し「塔の壁」という表現を使っていること、もうひとつは[1]にある唯一の画像には、「ひめゆりの塔」と書かれた団体写真撮影用の看板と、敷地内に多数ある石像のひとつだけが写っていることです。普通ならひめゆりの塔そのものを出すはずです。
 違うとおっしゃるのなら、なぜ「塔の壁」という表現を使ったのか説明してほしいものです。まあ、この手のミスは私もよくするので、これ自体は笑って済ませられる話だと思いますが、議員が、このとき「ひめゆりの塔」をきちんとご覧になったのか疑問です。少なくとも、ガイドさんの話を聞くかパンフレットを読めばあり得ない誤解なのですから。
 それにしても、どれが塔なのか分からなかった人に歴史観を批判されて、学徒隊の方々の霊は......大笑いしているでしょう。
 不気味なのは、[3]にある「洞窟」です。会見中記者の方から確認されても訂正していません。確かに、敷地内には悲劇の場所である病院壕の入り口がありますが、中には入れませんし、ましてや資料が掲示してあったはずはありません。
 近隣の糸満市内には見学できる洞窟はいくつかあるのですが、洞内には資料を掲示する場所はなさそうです。また、もしこれらの場所だったのなら、まずは「ひめゆりの塔」関係者に、批判の対象を間違えたことを謝罪すべきです。
 この洞窟云々の話は、翌8日の会見では消え失せていて、「塔の壁」になっています。もし私が議員の親族なら、この一件だけでも適切な医療機関での検査を勧めると思います。
 Cの「展示の形式」についても、「年表」という言葉が突然[4]で出てきます。[3]にも少しあったかも知れませんが、それでも突然です。そして、[5]では、祈念資料館館長の推定にのっかるかたちで、「戦況図」だと言い直しています。いったい、議員は20年前に、どこで何を見て怒っていたのでしょうか。

 「侵攻」告白の混乱

 戦況図の「侵攻」や「反攻」が唯一の資料であるとすれば、Dの「展示の内容」で、[2]では「どんどん入ってきて」と[3]では「やってきてこうなって」と言っているのですから、西田議員は「大戦末期に日本軍は沖縄に侵攻した」と誤解していたことになります。統治している自国に侵攻することなど、ジンギスカンにもヒットラーにも出来ませんよ。
 ここまで酷い誤読をしていたのなら、西田議員は、もともと存在しない「東京裁判史観もどき」をひめゆりの塔で見て、攻撃していたことになります。今後は、議員を祇園街のドンキホーテとでもお呼びしましょうか。
 結局、根拠となったのは一枚の戦況図だけで、それをも誤読して、Eの「評価」では展示全体を、「日本は悪、アメリカは善」の「東京裁判史観」の産物であると見なし、結論は「ひどい」「歴史の書き換え」です。よくここまで混乱するものです。

 他にも、Fの「備考」にも、「してくださいよ」と言いたくなるような話が、ごろごろあります。[3]ではプレスコードとやらのせいで、今でも日本の公共機関やマスメディアは東京裁判史観以外で歴史を語ることができないそうですが、もしそうなら、国会議員たるもの放置していていいはずがありません。憲法記念日の講演でも、20年前に見たうろ覚えの展示のような小ネタに噛みつくのではなく、最新の材料を大量に収集して盛大に批判すべきでした。
 [4]にあるように、どうやら講演をした段階では、以前に記事[1]を書いたことすらお忘れだったようです。どうして、そんな印象の薄い記憶にすがってまで「ひめゆり」に拘るのかと言えば、他の沖縄の戦跡や資料館は一切行ったことがないからではないでしょうか。これだけの量の報道を見ても具体的な戦跡の話は一切出てきません。[5]にあるように、沖縄県平和祈念資料館すら行ったことが無いのに、沖縄県民の歴史観や教育についてまともに議論できるとでも思っておられるのでしょうか。
 また、政治生命にかかわりかねない批判を受けているのに、そのことに反論するわけでもなく、弁解するわけでもなく、それどころか批判されている内容を再確認するような記事[5]を、独断でわざわざ雑誌に投稿することも、理解に苦しむ行為です。

 もしかしたら隠れ護憲派?

 西田議員は、メディアなどから追い詰められると、すぐに歴史観の話に逃げてしまいます。思想と言論の自由がある限り、どんな歴史観でも頭ごなしには否定はできないからでしょう。せっかくですから、ことの発端となった講演[2]に語られた歴史観とやらを見てみましょう。
 例の「日本軍がね、どんどん入ってきて、ひめゆりの隊がね、死ぬことになっちゃった。そして、アメリカが入ってきてね、沖縄は解放された。」という存在すらしない「トーキョー裁判風史観」は間違いだよと、おっしゃりたいだけのようです。ご自分の歴史観は、「日本が悪、アメリカが善とは限らない」という穏当ですがありふれたものです[5]。
 ちなみに、「アメリカが善だったとは限らない」と言いたいのなら、変に資料を曲解しなくても、非戦闘員で医療者でもある無抵抗な未成年の女性が200人以上も虐殺された証である「ひめゆりの塔」に、そういう視点で言及すれば十分だと思うのですが。
 西田昌来て、当たり障りの無い陳腐な歴史観を、当たり障りだらけの方法で語ってしまったわけです。一番ダメージを受けたのは、夏に参議院選挙を控える自公政権です。また、安倍政権以来ずっと盛り上がっていた改憲論に冷や水をぶっかける効果は絶大でした。この長屋の大家さんのものをはじめ、数々の説得力ある護憲論をも完全に凌駕しています。
 これから、6月14日の自民党京都府連総決起大会、ひめゆり学徒隊最大の殉職があった6月19日、そして23日の慰霊の日と、夏の参議院選挙に向かって、問題が蒸し返しされそうな日々が続きます。そうでなくても追い炊き機能付き自爆テロに、おびえている関係者の不安は計り知れないものがあります。

 言わなければならないこと

 最後に名誉毀損と言われる事を覚悟して敢えて書きますが、西田昌司参議院議員に問うべきなのは歴史観ではなく、普通の社会人レベルの責任能力の有無です。言い換えれば、自分が多くの県民を侮辱し、所属政党にも大きな迷惑をかけたことを、自覚できる人物なのかということです。
 この記事の分析から、各メディアの報道を見る限り西田昌司参議院議員には、「自分の経験を理解し、整理し、記憶して発信する能力が、平均的な成人と比べて著しく欠けている可能性がある」ということが分かります。だだし、その原因は何か、ご本人に責任はあるのか、一時的なことのかなどの論点は、直接お会いしたことも無く医療者でもない私が、言及すべきことではありません。
 けれども、今後、いろいろな場所で西田昌司氏にかかわる方は、こうした事を考慮しながら行動をされるべきであると思われます。

悪いのは沖縄県民?

 そろそろまとめましょう。今回の西田議員の講演および関連する会見での事件は、知識でも理解力でも判断力も大きく劣る人が、沖縄県民の幸せや憲法「改正」よりも、北陸新幹線問題で危なくなったこの夏の再選のために、軽い気持ちで過激なことを言ってしまい、弁明会見でさらに墓穴を掘ったというものです。
 ここまで、二重三重の無茶をしたのですから、擁護する声はほとんど上がってきません。例外として参政党の神谷宗幣代表の発言がありますが、よく読んでみると西田議員の歴史観に賛意を示しているだけで、講演の内容を擁護しているわけではありません。「言い間違いとか表現の違いはあったにしても」などと、問題の存在を認めています。祇園のドンキホーテと一緒にされては堪らないからでしょう。けれども、そうでありながら、炎上の残り火に燃料を投下して一騒動起こそうという、せこい魂胆が見え隠れしています。
 失言を批判する野党の側にも控えめな印象があります。もとの講演は、つたない観察を元に過激な言葉で沖縄を攻撃している訳ですから、批判は「デタラメはやめろ」としか言えないのです。歴史観うんぬんまで議論が続きません。けれども、心配は御無用です。2回目の会見で、ご本人が炎上の燃料を追加したからです。

「私はあの自分のことを言ってることは事実という前提で今も喋ってますけど、問題は、事実だけじゃないんですよ。事実じゃなくて、県民の心県民の感情をね、そのとき私は感じて、わかってなかったということに気がついた」
「そのTPOが、私はわきまえて喋ったつもりだったんだけれども、沖縄県民の心の傷がね。要するに、ひめゆりの塔という言葉がね、もたらす彼らの心の何か傷つく、そういう言葉なんですよね」
「トラウマのようにいろんな沖縄の方々がね、いろんな思いや苦しみが思い出されてきてしまう」
【自民・西田参院議員「ひめゆり発言」訂正会見(下);琉球新報】
https://ryukyushimpo.jp/news/politics/entry-4218365.html
 「自分の言ったことは正しかったが、こころに傷を負った県民の前で話すべきではなかった」というのは、謝罪・撤回というより、正当化・侮辱の追加というのが正確でしょう。「要するに、ひめゆりの塔という言葉がね、もたらす彼らの心の何か傷つく」......ついに県民全体をノイローゼ扱いですが。今気がつきましたが、このひとの場合、「要するに」と言った直後に失言のホームランが良く飛び出すようですね。確信歩きというやつですか。
 ひめゆりの塔周辺には、「ひめゆりそば」とか「ひめゆりステーキ」などという、かなり不謹慎なネーミングの店が堂々と営業しているぐらいですから、別に「ひめゆり」という言葉がタブーだとか、トラウマの引き金を引くとかの話ではありません。ありもしない展示を妄想して沖縄を誹謗中傷したから、幅広い層の怒りを買ったのです。

 ハットトリックの夏

 皮肉なことに、2回目の会見を境に、西田批判は急速に沈静化しました。飽きられたということもありますが、批判を理解する能力のない人を批判してもしかたないからでしょう。これだけ説明されても自分の誤解に気がつかず、さらに「ひまわりの塔」などと「華」のある言い間違いをしているのですから、議論は「政治家としての資質」から「責任能力」のような話に移ってきているように思います。
【自民・西田昌司議員が"ひめゆりの塔"発言を撤回 謝罪の場で「ひまわりの塔は‥」と言い間違う 沖縄への歴史認識"誤っていない"】https://www.qab.co.jp/news/20250512250117.html


 夏の参議院選挙前に、ただでさえ旗色の悪い政権与党は頭の痛いところです。特に公明党は迂闊にこの人を推薦すると、京都ばかりか全国津々浦々の支持者を失うことになりかねません。比例代表など目も当てられないことになりそうです。できれば、西田先生には議員辞職していただき、出直し禊ぎ選挙として無所属ででも登場してほしいものですね。
 逆に野党は、これほど高性能の炎上発生装置を失うのは、もったいないと思うのでしょう。相手がバイデン氏からハリス氏に交代したことで、トランプ氏がかなり苦戦したのと同じ構図は避けたいところです。だから、議員辞職やら引退勧告と言った「正解」再編に向けた話はしたがりません。
 もともと親から引き継いだ強固な地盤があり、前回2019年には安倍内閣のもと圧勝したとは言え、今回は危機感を感じた本人が保守票固めを狙って、さらに別の過激発言をしてしまったら、北陸新幹線、ひめゆりの塔に続く、ハットトリックです。ただしオウンゴールのですが。
 個人的には、夏の参議院選挙直前の北陸新幹線の山岳トンネルをめぐるトンデモ発言は避けて欲しいところです。緊急取材に向かう丹波山地の真夏の暑さは、しばしば糸満市をも凌ぐからです。

広島長崎あるいは各都市空襲被害の資料の展示では、バランスを取るためにという発想で、被害と同時に日本軍による加害についても触れているところが良くあります。西田議員が「ひめゆりの塔」の近く?で20年前に見た年表も、このタイプだったのではないでしょうか。
 私は、この手の解説は極力控えるべきだと思います。たとえば、ひめゆりの場合、満州事変や日中戦争の話を持ち出すのは良くありません。理由は、盧溝橋が沖縄島にあるわけではないからです。また、柳条湖事件の首謀者にひめゆり学徒隊員はいないからです。つまり関係ないのです。第二次大戦という大きな構図の中で、関連の薄い2つの話を敢えて並べてしまうと、あたかも直接関連するように見えかねません。
 旧軍の大陸侵攻と沖縄戦。確かに、歴史の流れの中では因果関係があり、その解釈は歴史観というものでしょうが、「ひめゆりの塔」の横で論争的な問題提起をするよりは、単純に「80年前に沖縄本島南部でどんなことがあったのか」に展示を絞る方が、資料館の趣旨に合っているのではないでしょうか。
 本日、現地を見てきましたが実際そうなっておりました。個人的には印象に残ったのは、日本軍の無責任さと米軍の残虐性、これはとても東京裁判史観とは呼べないと思います。あきらかな非戦闘員を大量に殺したわけですから、むしろアメリカとしては触れられたくない過去です。
 西田議員のように内容を完全に誤解してしまう方がおられたことを考えると、「被害と加害のバランスを取る」のが展示として適切であるのかどうか疑問の残るところです。展示する側が、批判を恐れて安易にバランス感覚を強調することで、「ひめゆりも酷いけど、南京も酷いから、どっちもどっちだよな」というようなニュアンスだと誤解されるとしたら、極めて残念なことだと思います。西田議員風に言えば、「亡くなった方々、本当に救われませんよ」ということになります。
 もちろん、一方的な誤解に基づく評価で、「ひどい」「歴史を書き換え」などと言い切りながら、論破されても事実関係を訂正しないというのが許されるわけではありません。ここまで酷いのはもう許してあげよう、という少数意見もありますが......。

 投降・玉砕の浪花節

 一度、先入観できてしまうと、見るもの聞くもの全て東京裁判史観に見えてしまうのでしょう。
「確かにアメリカ兵は、はとても優しい人たちと表現したコメントや、15年に訪れた方にはで すね、2015年に訪れたという方は、沖縄平和祈念館を見れば日本軍が悪い鬼のように思える」
【自民・西田参院議員「ひめゆり発言」訂正会見(上);琉球新報】
https://ryukyushimpo.jp/news/politics/entry-4218278.html
 これは沖縄住民から見れば当然のことです。「アメリカ兵」と住民が接する写真は、戦いの終わったあとのものですから「優し」くて当然です。一方、「日本軍」の絵はというと、戦闘中しかも玉砕直前という状況です。「鬼のよう」であるのも仕方ないことです。
 ただし、こうした展示が行われているのは、沖縄戦の悲劇の原因となった「米兵は鬼のような連中で、捕まれば男は八つ裂きにされ女は辱めを受けるから、自決するのがましである」という風説(日本軍部自体が誤解していたのか住民の投降を防止するためにながしたウソなのかは別として)が、少なくとも結果的には間違っていたということを説明するためでしょう。日本軍は、必ずしも沖縄住民を守らなかったというのは本当のこと、沖縄戦の本質なのです。
 ちなみに、戦争の目的から考えると玉砕というのは、米軍に利することになります。たとえば、女性の場合など、どうせ手榴弾を爆発させるなら、辱めを受けかけてからの方が効果的でしょう。必ず隙が出来ますから。
 抗戦・降伏そして玉砕まで、旧日本軍には戦略が欠けていて、そのことが住民の犠牲をいたずらに増やしたのではないでしょうか。米軍など、捕虜になるときのマニュアルがあるそうです。
 先日、自衛隊の幹部候補生向けの教育資料が、大問題になっています。何だか旧日本軍の将兵やら沖縄住民の犠牲を美化した浪花節資料になっているようですが、本気で、次の戦争に勝って国民を守るためなら、こういう点は米軍に学んだ方が良いのでは無いでしょうか。

 鬼の日本軍が優しい米兵をもたらした

 ただし、旧日本軍が戦ったことが住民にとって全く無意味だったわけでは無いと思います。沖縄に限らず占領軍がかなり紳士的だったというのは、敗戦色が濃厚になっても日本人が軍民一体で、しつこい抵抗や壮絶な玉砕を繰り返したことも大きな影響があったと、私は思います。

 投降後の兵士や住民に、不用意に苦痛や侮辱を与えて玉砕する気に戻られては、占領する側は堪らないからです。この解釈の是非はともかく、米兵の優しい姿の写真を「切り取って」、「東京裁判史観に基づくむちゃくちゃな地上戦の解釈だ」などと単純に言われても、そこまでレベルの低い議論には反論のしようがありません。しかも、「いつどこで見た、何の写真で、それは現在はどう展示されているのか」というような具体的な話は一切なしで、いきなり「むちゃくちゃ」と言われても、無視するか笑うしかないじゃないですか。 

「要するに、日本軍がどんどん入ってきてひめゆり隊が死ぬことになっちゃった。そしてアメリカが入ってきて沖縄は解放された」......何度読んでも、すごい発言ですね。破壊力抜群です。それにしても西田議員は何を間違えたのでしょう。
 沖縄が日本の領土になったのは、旧日本軍が編成されるよりもはるか昔のことですから、「侵略」することなどできないはずです。
 また、ひめゆり学徒隊の戦死者の半分以上は、米軍に殺された事がはっきりしています。残りは原因不明・行方不明で、いわゆる集団自決者も少数ながらこれに含まれている感じです。なんでそれを「解放」と記念館が書くのでしょうか。

 大きな年表

 ここから先は、私の推測です。西田議員の2回目の会見で、「年表」という言葉が繰り返し出てきました。たとえば、

「完全に大きな年表でずっと書いてあって、そこにね、まず沖縄戦が始まった日本の侵略によってはじまった、そうですね、終わりがアメリカの犯行とか侵攻とかいう言葉になっていた」
【18年後に受けた啓示...沖縄戦「展示変更問題」とは何だったのか<沖縄発> 琉球新報】
https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1312546.html

 わかりました。どうやらこの「大きな年表」は、どこにあったのかは知りませんが、アジア・太平洋戦争全体を指すものだったのではないでしょうか。つまり、年表の範囲は沖縄戦だけではなかったのです。大戦の中での沖縄戦の位置づけを説明する年表だったのでしょう。
 「侵略」というネガティブな言葉が使われていることと、日本軍が戦闘を始めたことにどの程度の正当性を認めるかを別にすれば、アジア太平洋戦争は日本軍の侵攻で始まり米軍の反攻で終わったというのは、史観が問題になるような話ではなく常識論です。
 ただし、それを沖縄戦の年表だと勘違いした西田先生が、日本軍の沖縄侵攻と米軍による沖縄解放を妄想し、「歴史の書き換え」だと叫び、「亡くなった方々、本当に救われませんよ」と反発を感じたのではないでしょうか。もしそうなら、歴史修正主義者などと立派な肩書きよりは、歴史混乱主義者、京都のドンキホーテ、粗忽者のボンボン議員ぐらいが似合うと思います。「歴史の書き損じ」「亡くなった方々、本当に嘲笑しておられますよ」

軽々しい言動の裏には無知以上に無関心があるとしか思えません。だったら沖縄にかかわらなければ良さそうなものですが。

「終戦直前に沖縄がアメリカに占領されるという情報が入ってきて、これを何とかしなきゃいかんというので、日本軍が沖縄を守るために入ってきたけれども、結果的に戦争に島民の方々も巻き込まれて多くの犠牲を出した」
【5/7の1回目の記者会見:自民・西田昌司議員「切り取られ誤解を生み非常に遺憾だ」 ひめゆりの塔の関連発言について真意を説明;FNNプライム】https://ryukyushimpo.jp/newspaper/entry-4213429.html
 那覇での講演内容を批判された後の反論会見でさえ、このレベルでした。全く理論武装をしていない非武装年寄です。もし万一これが本当の戦況なら、旧日本軍はアホの集まりだったという事になります。終戦直前まで、米軍の沖縄侵攻を予測できず「何とかしなきゃいかん」と慌てて、「どんどん入ってき(た)」というのですから。
 もちろん実際は違います。旧日本軍の増強は沖縄戦の前年(1944年)に終わっています。サイパンや硫黄島を占領されれば、「本土」上陸のために米軍がここにやってくるのは両軍にとって当然のことで、直前に情報が入ってくるような話ではありません。
 ちなみに、ひめゆり学徒隊が活動をはじめたのは、1945年の3月末のことですから、「日本軍がどんどん入ってきて、ひめゆり(学徒)隊が死ぬことになっちゃった」なんて、時期的にもあり得ない話です。

 要衝の悲劇

 沖縄が大陸と太平洋の間にある要衝であることは、ペリーの時代から知られていました。今でも膨大な兵力の米軍が駐留しているのは、別に「沖縄が中国に占領されるという情報が入ってきて、これを何とかしなきゃいかんというので、米国軍が沖縄を守るためにどんどん入ってきた」からではありません。
 戦略の要にあるということは、今後も基地が残るということと、戦争になれば激戦地になるということを意味します。いつ何時、また住民の中から学徒隊にされてしまう若者が出るかわからない沖縄にとって、ひめゆりの塔は単なる歴史上の遺物ではないのです。
 沖縄本島で発行されている日刊二紙「沖縄タイムス」「琉球新報」が、いずれも極めて反戦色が強く、太平洋戦争で米軍に素通りされたため、地上戦どころか空襲の経験も少ない石垣島・宮古島が本拠の「八重山新報」が、かなりお気楽な「平和ぼけタカ派」であるのと対照的なのは当然のことなのです。況してや、空襲すらあまりなかった我々京都の人間が、沖縄の歴史教育について発言するときは、慎重であるべきでしょう。
【「防衛費GDP比2%」は"平和ぼけタカ派"の空公約;田岡俊次】
https://diamond.jp/articles/-/287137

 沖縄軽視が見え隠れ

「かつて私もなんかひめゆりの塔ですかね。なんか何十年か前ですね、まだ国会議員になる前でしたけれども、お参りに行ったことあるんですけれども。あそこ、今どうか知りませんけどひどいですね」 
【5/3の講演内容;"ひめゆり"は「歴史の書き換え」 自民党・西田昌司参院議員発言の全容と真意は 独自映像;琉球放送】 https://newsdig.tbs.co.jp/articles/rbc/1898522?page=2
 「なんかひめゆりの塔ですかね」......西田議員は塔そのものを、「なんか」最初から揶揄しているん「ですかね」。「あそこ、今どうか知りませんけどひどいですね」も二重三重の意味で侮辱です。まず「あそこ」は無いでしょう......ぼったくりの飲み屋じゃあるまいし。「今はどうか知りませんけど」......なら知ってから発言しましょう。
 案の定、展示内容の理解は完全に間違っていました。それを指摘されても撤回どころか補足もせず、メディアの「切り取り」だと開く直る。「切り取り」だと言うのなら、本来の自分の発言とメディアの切り取った部分とを並べてみせるべきでしょう。
そして、いよいよ身内からまで批判が出てくると、沖縄在住の「知人」とやらの曖昧な談話を並べて、責任をぼやかします。北陸新幹線の問題でも正体不明の「専門家」とやらを登場させ、「琵琶湖にトンネルを掘るようなものだから、京都の地下水にはほとんど影響がない」などという珍論を展開していました。

【北陸新幹線延伸"京都府民に寄り添う姿勢"からルート案を選定せず 「財源は国が責任をもって手当てを」 西田・与党整備委員長インタビュー全文<前編>;福井テレビ;「専門家」で検索すると当該カ所が出てきます】
https://www.fukui-tv.co.jp/?fukui_news=%E3%80%90%E5%8D%98%E7%8B%AC%E3%80%91%E5%8C%97%E9%99%B8%E6%96%B0%E5%B9%B9%E7%B7%9A%E5%BB%B6%E4%BC%B8%E4%BA%AC%E9%83%BD%E5%BA%9C%E6%B0%91%E3%81%AB%E5%AF%84%E3%82%8A%E6%B7%BB%E3%81%86%E5%A7%BF
「さっき言った沖縄の県の平和記念資料館も、実際にこれについては沖縄のその●●、子供だった方がですよ、修学旅行なんか見られたんですかね。そこで日本兵が島民に向かって、銃を持ってるというね、そういう表示があったとも明確にそれを聞いてますからね、それは間違いなくあったんでしょう。だからしかしそれは今ないと。それもだから展示が変わったんですね」......その展示は今でも変わっていません。写真入りの直近の記事が出ています。
【18年後に受けた啓示...沖縄戦「展示変更問題」とは何だったのか<沖縄発> 琉球新報】
https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1312546.html
 設置直後から論争になっている展示ですから、撤去や改変をされたら大問題になるはずです。そうした報道もありませんから、今もそのまま残っていると考えられます。西田議員は「ひどい」と批判する側の人です。ろくに調べもせずに、今でもしっかりあるのに、正体不明の知人に「今はない」と言われて納得できるのでしょうか。この知人は自民党の人ではないとのことですが、沖縄自民党は事実確認の手助けはしてくれなかったのでしょうか。私は、この知人の実在自体あやしいと思っています。
 それにそもそも、この展示内容は沖縄戦という事以外には「ひめゆり学徒隊」とは、全く関係がありません。どちらかと言うと、もう一つの炎上ネタである「地上戦の解釈」関連です。なんでこれが「ひめゆりの塔」の話と混同されるのでしょう。

 熱いですねぇ。実は私、いま那覇にいます。別件で沖縄にやってきたのですが、西田議員のトンデモ発言の記事をたまたま書いていたので、取材方々ひめゆりの塔を再訪することにしました。那覇からバスで往復3時間、かなりハードでした。
 西田昌司参議院議員。不思議なご縁です。京都選挙区の方ですから、ポスターは良くお見かけしました。典型的な二世議員ですが、お姿は「上品な上岡龍太郎」、藤本義一さんにも似ておられます。正直格好ええなと思っていました。北陸新幹線小浜ルートの最強推進者で、根拠不明の議論を延々としても、京都では誰もいぶかしがりません。「ぼんぼんはしゃあないなあ」という訳です。
 けれども、沖縄ではそうは行きませんでした。

 大事な議論を暴論にしてしまう

 実は西田議員の今回の講演には大切な論点が含まれていたと思います。「ひめゆりの塔に象徴される歴史観は完全に適切なのか」というものです。一言で言えば、この小さな塔が象徴する学徒隊の「理不尽」や「被害性」に注目するのか、「愛国心」や「貢献」に注目するのかで、沖縄戦の様相はがらっと変わってしまうのです。
 米軍による「解放」という西田議員の(むちゃくちゃな)指摘の裏にも、「戦場の住民にとって重要なのは、勝敗ではなく停戦なのか」というパラドックスがあります。言い換えれば、「国家の正義」か「国民の生命」かの話。これが厄介なのは、どちらかに片寄ると、両方を失うということです。
 正義など最初から興味なく、国民こぞって「命あっての物種」という国は、武力侵略に極端に弱くなります。そういう国だとプーチンに思われていたウクライナは、いきなり侵攻されました。実際は全く違いましたが。
 一方、80年前に我が国が最後まで「正義」に拘り、ポツダム宣言を拒否して本土決戦・一億玉砕となっていたら、その時点で正義も終わっていました。ですから、どう言い訳しても負けた以上は、いわゆる東京裁判史観とも折り合いを付けながら、国としての正義を再構築していくよりないでしょう。
 いきなり、東京裁判史観全面廃棄のチャブ台返しをすると、世界に向かってウソをついたことになり信用を失います。正義と現実、バランスを取っていくよりありません。
 「国家の正義」には困ったことがもうひとつあります。正義に守られて生き残る者と正義の犠牲になる者が多くの場合に一致しないことです。たとえば、「戦いの起こる地域」と「その戦いで守られる地域」が一致しないことです。地政学的に考えれば、ある戦争の激戦地は次の戦争でも激戦地になる可能性が高いわけですから、遠く離れた首都住民に、「共に戦おう」と言われても、かつての戦場の住人は簡単には「わかりました」とは言えません。戦略の要衝に住むことの理不尽さと悲しみ......それを象徴するのが「ひめゆり」なのです。

 炎上狙いの計算違い

 今回、西田議員はわざわざ那覇までやってきて沖縄戦の話をするのに、題材は「20年以上前」の記憶と「地上戦の解釈」だけです。それも、強烈な印象があったというのではなく、「要するに日本軍がどんどん入ってきて、ひめゆり(学徒)隊が死ぬことになっちゃったと」などとうろ覚えの代物です。茶髪の中学生の感想文でも、もう少しまともな内容を、もう少しましな日本語で書きそうなものです。
 「要するに」沖縄戦のことなど興味も熱意も、西田議員にはないのです。憲法改正を叫び、戦後教育を誹ることで、夏の選挙で票を集めたいだけでしょう。遠い沖縄で少し乱暴なことを言って、京都の保守派の注目を集めたかったとういうことです。
 だから、「今はどうか知りませんけど」 とか「そういう文脈で書いているじゃないですか」などと、言い逃れの布石を打ちながら、抽象的な論拠で罵詈雑言「ひどい」「歴史を書き換えられる」を並べて、適度に顰蹙を買うことを計算をしていたのでしょう。
 これはデジャブ感のある手法です。思い出しました。北陸新幹線で京都の地下を掘り返しても、「地下水には全く影響が出ない」というのと同じ論法です。根拠が無くても勢いのある話には支持者が喝采してくれるという訳です。
 けれども、今回はそうは行きませんでした。地質や地下水の話なら、思いつきでいい加減な事をおっしゃっても、その場でウソを見抜ける人はあまりいませんが、那覇で沖縄戦の話となると、当事者や当事者の話を聞いた人が山ほど残っておられて、粗雑な議論が見逃されなかったわけです。

 観光気分で「ひめゆり参り」

 「(ひめゆりの塔に)お参りに行った」とはすごい表現です墓地や神社仏閣じゃあるまいし......「お参り」ですか。おみくじは引きましたか。何か御利益がありましたか......嫌味を言いたくなるぐらいの不適切な表現です。「お参り」と「お祈り」は全く別のもので、どちらが相応しい場所か言うまでも無いでしょう。

【5/3の講演内容;"ひめゆり"は「歴史の書き換え」 自民党・西田昌司参院議員発言の全容と真意は 独自映像;琉球放送】 https://newsdig.tbs.co.jp/articles/rbc/1898522?page=2

 それが、四日後の会見では、「国会議員になる前の20年以上前に視察に行ったことがある」ですか。どうやら、お参りも視察もちゃんとはしなかったようですね。ただの物見遊山の観光客でしたか。
【5/7の1回目の記者会見;自民 西田参院議員"ひめゆりの塔 歴史書き換え発言"撤回せず;NHK】
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250507/k10014798941000.html
 仮に京都市内での講演なら、「ネタ」のひとつとしてこんな失言をしても、せいぜい、「即時に議員辞職して夏の選挙で禊ぎ」ぐらいで済みそうです。けれども、このとっておきの「大ネタ」をわざわざ那覇に持ち込んで炸裂させてしまいました。京都府および沖縄県の自民党政治家にとっては、突然爆発した大量破壊兵器みたいなものでしょう。