映画館から足が遠のき、すっかりネットフリックス・フリークと化した私が、滅多に観なくなったAmazonプライム・ビデオを開いてびっくり!

『国宝』の2文字が目に飛び込んできた。

 昨年、映画館で鑑賞したのですが、これほど早く配信されるとは。囁かれたセリフの真意や舞を含めた演技の細部を見なおしたくて、すぐさま再生ボタンをクリック。175分の作品ですが、巻き戻し再生を何度も繰り返して4時間ちかくテレビの前にいたようです。

 映画『国宝』が異例の大ヒットを記録した理由は、単に美しい伝統芸能を描いたからではありません。観客をスクリーンに釘付けにし、「もう一度、あの世界に没入したい」と思わせた独自の仕掛けが、カメラの裏側や役者の血のにじむような努力に隠されていると感じました。

 何故、この邦画作品が異例のロングランで観客を集めたのか。その理由を私なりに考えてみました。

 まず李相日監督の狙いとして、伝統の「壁」を取り払い、泥臭い人間ドラマを描いた点が大きいと。

 歌舞伎と聞くと「敷居が高そう」「難しそう」と感じる人が多いはずです。しかし、監督はそこをゴールにしていない。伝統芸能というきらびやかな世界を舞台にしながらも、描いたのは「才能への嫉妬」「狂気的な愛憎」「血のつながらない家族の絆」という、誰もが共感できるドロドロとした泥臭い人間ドラマです。

 歌舞伎のしきたりや細かなルールを知らなくても、登場人物たちの心の葛藤や痛みがダイレクトに伝わるよう、普遍的な物語として骨太に仕立て上げたことが、幅広い世代の心を掴んだ大きな要因と感じます。

 そして中村鴈治郎による猛特訓に耐えた2人の役者の演技力が「本物」の説得力を生み出したこと。

 もっとも観客を驚かせたのは、主演俳優陣(吉沢亮、横浜流星)の圧倒的なリアリティでしょう。彼らはこの映画のために、なんと1年半もの間、歌舞伎の所作の猛稽古を積み重ねました。付け焼き刃ではない、指先の細かな震えや腰の据わり方、視線の配り方に至るまで、本物の歌舞伎役者が乗り移ったかのような凄みがあります。

 この役者たちの凄絶な覚悟と演技力が、劇中の舞台シーンに「実際の公演さながらの迫力」を与え、観客を圧倒しました。

 卓越した見事なカメラワーク。観客を「最高の特等席」へと誘う圧倒的な映像美です。

 映画のカメラワークは、私たちが劇場で歌舞伎を観るのとは全く違う「映画ならではの体験」を作り出しました。舞台全体の美しさを絵画のように美しく捉える一方で、ここぞという瞬間には、役者の妖艶、愉悦、そして苦悩の表情や、煌びやかな衣装の擦れる音、飛び散る汗が分かるほどの距離まで大胆に迫ります。

 印象に残っているシーンがたくさんあります。

 ガラス越しに映る極道の父の死様に苦悩する主人公の喜久雄の瞳。家名を継ぐはずの息子を差し置いて、師匠の代役を務める舞台の楽屋で、喜久雄の小刻みに震える手指。舞台の上から役者が見上げた観客席の遥か上の闇からハラハラと舞う白く光る紙吹雪。血の底を這うようなドサまわりの屈辱に震え嗚咽する顔。長く放置して縁が切れていた娘と、想いもかけない場で再会し、彼女から発せられた言葉に微笑む顔。

 映画館の立体的な音響効果も手伝い、観客は「劇場の最前列、いや、それどころか特等席で総合芸術を浴びている」ような没入感を味わうことになります。これが「劇場のスクリーンで観るべき映画」として口コミを広げ、何回も足を運ぶリピーターを生んだと言えるでしょう。

 忘れてはならないのが「光と影」の強烈なコントラストです。

 この映画の大きな魅力は、華やかな「舞台(光)」と、泥臭い「楽屋(影)」の対比が徹底的に描かれている点にあります。

きらびやかな舞台(光)は、完璧にコントロールされた美の世界。役者たちがすべてを捧げて輝く場所として...対して息苦しいほどの楽屋(影)は、張り詰めた異空間。一歩舞台を降りると、そこには嫉妬や焦燥感、人間関係の軋みが渦巻いている。白塗りの化粧を落とす鏡の前で、役者たちは「芸の怪物」から「一人の弱い人間」に戻り、苦悩します。

 この舞台上の圧倒的な美しさと、楽屋裏の生々しい人間模様のギャップがあるからこそ、キャラクターたちの生き様がより一層リアルに、そしてドラマチックに観客の心に突き刺さりました。

 映画『国宝』は、徹底的なリアリティにこだわった役者とスタッフの技術(映像美)が、誰もが共感できる熱いストーリーと見事に融合したことで、単なる映画を超えた「一生モノの体験」として邦画史上、未曾有の大ヒットを記録したと感じました。

「日本の自動車産業はEVシフトに乗り遅れた。もうガラパゴス化は免れない」・・・少し前まで、メディアやSNSにはそんな悲観論が溢れていました。欧州や中国の「一斉EV化」の猛威を前に、ハラハラしていた方も少なくないのではないでしょうか。

 しかし、日本のものづくりはそう簡単に白旗を上げてはいません。今、トヨタを中心に「日本勢の逆襲」とも言える、きわめて合理的でワクワクするような大逆転劇が幕を開けようとしています。

 以前、「電気自動車はまだ買うな!」というブログでも書かせていただきましたが、その主軸となるのが、「水素エンジン」「全固体電池」。単なる環境対策を超えた、ゲームチェンジャーたちの現在地を調べてみました。

 まず、モータースポーツの現場で着実に実績を積み上げている「水素エンジン」。 これは「燃料電池車(FCV)」のようなEVの親戚ではなく、れっきとした「内燃機関」です。これまでのガソリン車と同じように、ピストンの中で燃料を「爆発」させて走ります。ガソリンの代わりに水素を燃やす、ただそれだけです。

 これの何が素晴らしいかと言えば、あの「ブォォォン!」という心地よいエキゾーストノートや特有の振動がそのまま残ること。「エコなクルマは静かすぎて、どうも五感に響かない」という、私のようなクルマ好きのロマンを置き去りにしません。

 さらにビジネス視点で見れば、日本が世界に誇る「エンジンサプライチェーン」や熟練の職人芸をそのままスライドして活かせるという巨大なメリットがあります。雇用を守り、既存の強みをレバレッジしながら、マフラーから出すのは「水だけ」という究極のクリーンカー。これは極めて賢い生存戦略だと思います。

「そうは言っても、世界の主流はEVでしょ?」という現実的な視点に対しても、日本は本命のキラーカードを隠し持っています。それが「全固体電池(オールソリッドステートバッテリー)」です。

 現在のEVが抱える「冬場の航続距離低下」「充電時間の長さ」「熱暴走による火災リスク」。これらはすべて、バッテリー内部の電解質が「液体」であることに起因しています。 これを「固体」に変えることで、エネルギー密度を劇的に高め、構造的な弱点をブレイクスルーするのがこの技術です。ガソリンと大差ない時間での急速充電。一回の充電で1000Km以上(東京から福岡)の巡航を可能にします。私が以前所有していた電気自動車の航続距離は400kmほどでしたから、その2倍以上。これなら「次の一台はEVでもいいか」とマジョリティ層に思わせる説得力があります。2027〜2028年の実用化に向けて、今まさにカウントダウンの段階に入っています。

 この2つの技術が噛み合うと、カーボンニュートラルの世界が一気に現実味を帯びてきます。そもそも現在のEVは「走行時はクリーンだが、製造(特に巨大なバッテリー生産)段階で大量のCO2を排出する」という、ライフサイクルの観点での矛盾を抱えています。全固体電池による製造効率の向上は、この歪みを正す一手になりえます。

 さらに水素エンジンは、EVのようにリチウムやコバルト、ニッケルといったコモディティ(レアメタル)への依存度が極めて低いそうなのです。昨今、問題視されているレアアースへの依存度も極めて低いわけです。「資源の囲い込み」という地政学的なパワーゲームから一歩距離を置けるという意味でも、非常にタフな選択肢になり得るのです。

 と、ここまで景気の良い話ばかりを並べましたが、大人のビジネスパーソンなら「そんなに上手い話ばかりではない」ことは百も承知でしょう。特に「水素社会」の実現には、まだいくつかの重い課題が横たわっています。

 一般的なガソリンスタンドの建設費に比べ、超高圧・超低温を扱う「水素ステーション」の建設には1箇所あたり数億円規模の投資が必要です。現状、エンドユーザーが手にする水素の価格自体も、ガソリン比でまだ割高感を拭えません。ただ、既存するガソリンスタンドを改造しての水素充填スタンドのインフラ確保の研究がかなりの速度で進んでいるようです。

 インフラがないから普及しない、普及しないからインフラ投資回収ができない。この典型的なループをどう断ち切るか。まずは長距離トラックや路線バスなど、ルートが固定された「商用車」から社会実装を始め、段階的にコストを下げていく長い地道なアプローチが求められています。

 トヨタは、既に水素エンジン車「Mirai」を販売していますし、水素エンジンの技術をさらに鍛え上げるため、スーパー耐久シリーズの「富士24時間レース」に参戦しています。宇宙で最も軽く、漏洩しやすく、燃焼時の炎が目視しにくい水素。いくら技術者が「車載タンクはマシンガンの掃射にも耐える超強度」と太鼓判を押したところで、「700気圧の爆弾を積んで走るようなものだ」という一般ユーザーの心理的バイアスを払拭するには、まだ少し「実績の積み重ね」という時間が必要です。

 これまでの世界は、あたかも「ガソリン車は悪、明日から全員EVに乗り換えよう」と言わんばかりの極端なパラダイムシフトを煽ってきました。 しかし現実は、地域によって発電事情(火力発電依存度など)も違えば、インフラの整備状況も、クルマに求められる役割も千差万別です。

だからこそ日本勢(トヨタ)が掲げる、「全固体電池で最高峰のEVを仕込みつつ、水素や内燃機関の可能性も絶対に捨てない」という全方位的作戦は、今や世界中から「実は一番現実的な正攻法だったのでは?」と見直され始めています。

 一見、トレンドに乗り遅れた愚直な遠回りに見えて、実は全方位に網を張っていた日本の技術力。インフラの壁をブレイクスルーした先に待つ「日本勢の逆襲」、ビジネスの観点から見ても、なかなかしびれる展開だと思いませんか?

先日、NHKの特集番組をみて驚愕し取り急ぎまとめてみました。

2024年にニューメキシコ大学のマシュー・キャンペン教授らが発表した研究論文は、世界に衝撃を与えました。これまで「血液脳関門(BBB)」という強固なバリアに守られているはずだった私たちの脳が、実はマイクロプラスチック・ナノプラスチックの「貯蔵庫」と化している実態が明らかになったのです。

研究チームが2024年に解剖された遺体の脳組織(前頭皮質)を分析したところ、以下の事実が判明しました。

• 肝臓や腎臓の10〜20倍: 脳に含まれるプラスチック濃度は、他の主要臓器よりも圧倒的に高く、脳組織の重量の約0.5%を占めるケースも確認されました。

• 認知症との相関として認知症で亡くなった方の脳には、健康な方に比べて最大10倍近い量のプラスチックが含まれていたそうです。

• 24年で50%の増加: 2008年のサンプルと比較して、2024年のサンプルでは脳内のプラスチック含有量が約50%も増加しており、環境汚染の加速が人体に直結していることが示唆されています。

何故「鉄壁のガード」を突破できるのでしょう?

本来、脳は有害物質を通さない「検問所(BBB)」を持っています。しかし、プラスチックは「トロイの木馬」戦略で侵入します。

• ナノレベルの極小化: 紫外線や摩擦で粉々になったプラスチックは、髪の毛の太さ(10万ナノメートル)の数万分の一、5〜10ナノメートルというウイルスより小さなサイズになります。

• 栄養分への偽装: 血液中に入った微細チップは、体内のコレステロールやタンパク質を表面に付着させます。脳はこれを「必要な栄養素」と誤認し、自ら細胞内に取り込んでしまうのです。

• 排出不能な蓄積: 脳は栄養を再利用しますが、プラスチックは分解酵素を受け付けないため、細胞内に半永久的に蓄積され続けます。

私たちの身の回りにある「発生源」として、

ペットボトル...1リットルあたり24万個のプラスチックチップが含まれるというデータがあります。

合成繊維の衣服...洗濯や乾燥の際に、微細なマイクロプラスチックが空気中に飛散します。

食品包装の容器...電子レンジやプラスチックまな板から出る微細な破片が食品に混入します。

タイヤの摩耗...走行によって削れたタイヤの粉塵は、呼吸を通じて肺から血液へと侵入します。

私たちが今日からできる対策としてどんなものがあるのでしょう。

プラスチックを社会から完全に排除することは不可能ですが、「体内への流入を減らす」工夫は可能です。

• 脱・ペットボトル: 可能な限り水筒(ステンレスやガラス製)を使用し、プラスチック容器入りの飲料を控える。

• 加熱容器の選択: 食品を電子レンジで温める際は、プラスチック容器ではなく耐熱ガラスや陶器に移し替える。

• 天然素材の選択: 衣類や寝具に綿やシルクなどの天然素材を取り入れ、合成繊維の粉塵吸入を減らす。

• こまめな掃除と換気: 室内のホコリには多くのプラスチック繊維が含まれるため、HEPAフィルター付きの掃除機や換気が有効です。

人類の進歩と「負の遺産」

石油からプラスチックが誕生して約160年。私たちは便利さと引き換えに、自らの細胞を異物で満たすという未踏の領域に踏み込んでしまいました。現在、科学界ではこれらを「無毒化」する研究が急ピッチで進められていますが、完全な解決策は見つかっていません。

あと数十年後、私たちの次世代の脳はどうなっているのか。この「小さく静かな侵入者」に対し、今こそ社会全体での意識改革が求められています。

スマートフォンによる脳の退化もそうですが、知らず知らずのうちに、我々人類は自らの首を絞め続けているように感じます。

 以前、電気自動車について書かせていただきましたが、その続きを書いてみました。ネットやCNNのニュースからピックアップしてまとめてみました。新たな情報が日々、発信されるため期間限定の短命な内容であることをご海容の上お読みください。
 ありがちなんですが、「失って初めて、そのありがたみを知る」と感じています。
 その理由は最後に...。
 過去の事例を紐解くと、「モビリティ・イノヴェーションを制するものは経済を制する」という事実はよくご存知の通りですが、古くは帆船から汽船のギリシャの海運王アリストテレス・オナシス、荷車から鉄道のコーネリアス・ヴァンダービルト、馬から自動車のヘンリー・フォードと、時代時代でパイオニアが現れ、大富豪として君臨し世界経済を牽引してきました。
 そして今、ガソリンから電気へのシフトの真っ只中。その過程において、電気自動車の最大の欠点である充電システムに大変革がもたらされつつあります。すなわちカートリッジ式のバッテリー交換システムの実用化と普及です。
 以下のURLは、YouTubeに挙げられたNIOのカートリッジ型のバッテリー交換の解説動画です。
 https://youtu.be/kBY6nkkyD7M
 わずか5分間ほどでバッテリーの交換が完了してしまいます。
 中国の自動車メーカーのNIOは18年にステーションの整備を開始し、22年末までに中国で1300カ所に設置しましたが、今年中に2500箇所に増設すると発表。インフラの整備も着々と進みつつあります。
 世界経済を回していくためのモータリゼーションが、電気自動車へのシフトしていくことに異論を唱えるひとはいないでしょう。ステーションの性能も段階的に改良されており、現行のシステムでは約5分で充電済みの電池に交換できるのです。
 大容量電池を搭載した通常のEVの場合、高出力の充電器でも充電に1時間以上(家庭用200vだと8時間)の充電時間かかりますが、交換式ならガソリンスタンドでの給油と変わらない時間で充電できる。まさに画期的です。
 さらに、車両コストの3割程度を占めるといわれる電池をサブスクリプション形式で提供することで、EV本体の初期費用を低減できる利点も大きい。NIOは23年に中国で1000カ所のステーションを新設するとともに、昨年から始めた欧州でのインフラ整備も加速すると伝えられています。
 交換式ステーションの展開に取り組む企業はNIOだけではありません。
 中国でNIOに続く規模のステーションを展開する奥動新能源(Autlon)は、自社製品のオーナー向けにステーションを展開するNIOと異なり、自動車メーカー各社と連携し、幅広いブランドのEVが利用できるステーションを展開しています。
https://blog.evsmart.net/electric-vehicles/nio-aulton-geely-a-look-into-chinas-ev-battery-swapping-big-3-ja/?amp
 米国ではENEOS(エネオス)も出資するスタートアップ企業のアンプルが、ウーバーのライドシェア車両向けのステーションをサンフランシコで運営中。
 一方、日本では、いすゞが伊藤忠商事、ファミリーマートなどと交換式電池を搭載したトラックの実証実験を22年11月に開始。ホンダは23年3月、「N-VAN」に交換式電池を搭載したコンバージョンEVを公開。日本では二輪が中心となって普及が進み始めている交換式(企業向け二輪では実用済み)ですが、四輪への適用も一部で検討されています。
 そして、ここでしっかりと把握しておくべきファクターが自動運転システムの動向です。
 AIが、頻繁にネット上の話題になる昨今ですが、Chat GPTなどの生成AI市場の10倍の規模の可能性のあるといわれるのが自動運転の市場。自動運転の市場規模は2030年に約150兆円に達するとも予測されており、生成AIの約10倍の市場規模が予測されているそうです。現在、自動車メーカーも各社、必死で自動運転実用化の取り組みに励んでいる現状が見て取れます。
 ゼネラルモーターズは2023年3月7日、次世代の先進運転支援システム(ADAS)「Ultra Cruise」を開発中であると明らかに。
 フォード・モーターは3月2日、自動運転支援システムの開発を手がける新会社を設立したと発表。
 テスラも、年内に完全自動運転技術をローンチする可能性があると発表。
 このように自動運転の話題には事欠きません。
 また自動運転時代の到来を目指す企業、米インテル傘下で自動運転の技術開発を行っているMobileye(モービルアイ)の上場は2022年の米国上場案件で最大規模となりました。
 日本企業の株式会社ヴィッツは自動運転関連の取り組み発表後、株価が急騰し1日で8.1%高になるなど、今世界中で注目されているのです。(注2
 エヌビディア(注1)が出した予測ではEVよりも自動運転の市場規模の方が2倍以上大きくなるだろうと予測されています。
https://www.youtube.com/watch?v=cJHi0wbyUBw
その理由として、
・今後世界中で高齢化が進み、高齢者の運転のハードルが高くなること。
・世界の人口増加に伴い、車の需要も増すこと
・事故の減少、渋滞の緩和
 この3点を考えるだけでも、自動運転は、さらにどんどん利用・普及していくことに異論を唱えるひとはいないでしょう。現在、自動車の自動運転システムに関しては、中国が先陣を切っていると言って間違いありません。以前は日本のお家芸であったはずの自動化の分野での復活を期待したいと願ってやみません。
 最近、カフェでひとり、スマートフォンや雑誌を見る時間が増えました。というのも、諸事情あり自宅を売却。取り付けていた200V充電器が無くなり、高速充電器のあるディーラーで充電する間、近くのカフェに行かざるを得ないからです。
 個人的なことになりますが、実は日頃の足として15年落ちの古いガソリン車を購入しました。逆行じゃないとの声が聞こえてきそうですが、日々のニーズと時間とのバランスを考えた上での答えがこれです。
 この2年ほど自動車で走っていて、ガソリンスタンドの価格掲示に目がいかなくなっていたのですが、スタンドの数字を追いかけています。さらに高騰するガソリン価格に驚くばかり。
 エネルギー転換の過渡期がいつまで続くのか。ドローンによる空飛ぶクルマの実用化も時間の問題となっている現在、これより先、モビィリティ(mobility)の動向から目が離せません。

注1:
NVIDIA RTX™ と NVIDIA Omniverse™ は、世界中のプロフェッショナル、クリエイター、開発者、学生がクリエイティブ ワークフローを強化し、メタバース アプリケーションを構築、運用、接続するための性能を提供
注2:
日本の自動運転関連銘柄の株価が急騰した。その企業とは株式会社ヴィッツで、5月24日の株価は前日比8.18%高の1,150円となった。
 同社などが取り組む仮想空間ソリューション「WARXSS」が、経済産業省と国土交通省が主導する「自動運転レベル4等先進モビリティサービス研究開発・社会実装プロジェクト」(RoAD to the L4)における取り組みで活用されたことが好感された。

先週、ある作品を観るために、最終レイトショーのシネコンにいた。
「BLUE GIANT」
 東北の田舎から、テナーサックスを抱いて世界一のjazzのサックスプレイヤーを目指し、上京する青年。ひとりの若者が、音楽と己の力を信じて道を切り拓き、夢に向かっていく姿は見ている者を感動させずにはおきません。
 決められた楽曲・楽譜の制約の中で自己表現を行うクラッシックに対して、瞬間の自由な感覚による演奏で自己表現(インプロビゼーション)を行うジャズ。このふたつは、同じ音楽でも対局の関係にありますが、どちらもその素晴らしさを映像で表現することは至難の業と言わざるを得ません。
 漫画で実際の楽曲や演奏の素晴らしさを表現出来るのか?それがアニメーション映画になり、どんな作画とサウンドで観客の目と耳を魅了するのか?
 BLUE GIANTが、コミック雑誌に連載した頃から愛読。当時から「絵の中から音が聴こえる」との評判でした。漫画が動画としてスクリーン上のアニメーション映画となり、ジャズの演奏がどのように表現され劇中に流れるのかを、公開前からとても楽しみにしていたのです。
 音楽監修は、日本を代表するジャズピアニストの上原ひろみ。ピアニスト雪祈(ゆきのり)の演奏を上原、主人公・大のサックスを馬場智章、ドラムの玉田の演奏を石若駿が担当し、予想を遥かに上回る楽曲と演奏、そして作画の見事さに圧倒されました。ジャズのイメージは、その来歴から退廃的で暗いイメージで扱われる傾向がありますが、キラキラと煌めく管楽器の放つ光のようなサウンドとともに、弾ける希望を感じさせる作品に仕上がっておりとても嬉しくなりました。
ジャズといえば、アメリカで奇跡のような経験をさせていただいたことを懐かしく思い出します。
 マディソン43丁目「寿司田」という鮨屋に夕食に行った時のこと。カウンターに二人の先客。同行のH川さんがそのひとりに話しかける。
 会話の後、戻ってきて開口一番、
「ジャズが好きだったよね。明日、ジュリアード音楽院に行きましょう」と。
 話しかけたその人物こそ、juzz界の至宝、現代有数のトランペッター、ウィントン・マルサリス、その人でした。
 ウィントン・マルサリス。
 ウィントン・マルサリスは、アメリカのトランペット奏者であり作曲家。現代において最も著名なジャズ・ミュージシャンの一人であるだけでなく、クラシック奏者としてもよく知られています。また同時にジャズ・アット・リンカーン・センターの芸術監督でもあります。そのテクニックは凄まじく、アンサンブルは端正、フレーズは流麗、歌心満載、繊細かつ大胆なアドリブと完璧すぎるトランペッターです。
 私が音楽愛好家であり、ジャズも好きなことを知っていたH川さん(リンカーンセンターのオペラハウス建設の際に、多額の寄付をされた)が、言葉を交わし、授業を見学させてもらえるようお願いしてくださったという経緯です。
 リンカーンセンター入り口でチェックを受けて学内へ。指定された教室は、三角形で天井が8mほどもあるガラス張りの教室で開放感に溢れていました。
 すでにピアノ、ベース アルトサックス、テナーサックス、トロンボーン専攻の5名の学生がスタンバイし、楽器のチューニングの真っ最中。少し遅れてスティックとスネアドラムを抱えた学生が入ってきて、慌ててセッティングを開始。授業の担当教授に続いて、コーヒーを片手に、スーツ姿で颯爽と現れた長身の男性。褐色の肌がベージュのスーツにとてもよく似合う。我々と軽くアイコンタクトをした後、すぐに授業に入る。
 マルサリス氏が、最初に課題曲の注意点を述べた後、カウントと共に生徒の演奏が始まりました。が、すぐに中断。ウッドベースとドラムのふたりに、リズムのアドバイス。やはりリズムセクションがバンドの要であることは、クラッシックであろうがジャスであろうが変わりがありません。学生たちは、おそらく全体から選ばれし生え抜きの学生と思われましたが、各メンバーの顔には緊張とマルサリス氏に対しての尊敬の表情がみて取れました。途中、何度かマルサリス自身がピアノを弾き、声を上げてリズムをとるシーンが。個人的にトランペットを吹いての指導シーンを期待してしまいましたが、さすがにそれは叶えられず。
 映画「セッション」のようなパワハラの片鱗もなく、愛情に満ち、とても洗練された授業に感じました。授業後、教室の外で会話を交わし記念撮影。その際に彼に伝えたひと言。
 I did not understand the difficult music theory in the class, but I did understand one thing clearly. I 'm a very lucky Japanese man.
 両親も兄弟も有名ミュージシャンの音楽一家で育ったマルサリス。マイルスやコルトレーンとは対極の恵まれた環境で育った彼のジャズやクラッシックのCDがグラミー賞を総なめにしてしまう。そんな彼に苦悩があるとしたら、そのありがたみと同時に、まわりから期待され、常に新しい何かを求められ、さらに表現することが困難になっていくスパイラル...エリート故の難しさを考えずにはおれません。
 音楽配信が全世界に普及し、CDが売れない時代。音楽ファンにとって、コンサート会場で生音を聴くことが何よりも貴重な経験になってしまったこの時代に「棚からぼた餅」、「瓢箪から駒」、「千載一遇」、そんな言葉がぴったりな体験。その後フワフワとした足取りで、どのようにしてスカースデイルまで帰宅したのか...今もよく思い出せません。
 この春、マルサリス氏が来日。東京と大阪でコンサートが実現。フェスティバルホールにて、屈指のトランペッターと再会できるのを楽しみにしています。

 1973年製のピンボールマシーンに、"ビン"と弾き出されたボールのような滑らかな加速。森の木々から指す木洩れ陽のような微量の風切り音。
「嗚呼、なんてイイクルマなんだ!」初めてドイツのM社の電気自動車のハンドルを握った時の正直な感想です。走り出した時のトルクのその分厚さは筆舌に尽くし難い。初速スピードに乗った新幹線をイメージしていただければ、なんとなく感じてもらえるかもしれません。とにかく素晴らしく速い。
...のですが、良いことばかりではありません。
 まずは充電の問題。ヨーロッパ、特に最もEV化の進んでいるノルウェーでは、なんと2022年の新車販売の約8割がEVに。しかし、普及速度に対して充電設備が追いつかず、チャージのために長蛇の列ができているそうです。
 そもそもEVの充電には、多くの時間がかかる。
 私は自宅にてM社提供の200V家庭用蓄電器で充電していますが、やはり8時間ほどはかかってしまいます。ガソリン車は数分で燃料補給が完了しますが、EVの場合、インターチェンジなどで見かける高電圧充電器でも30〜40分。それもフル充電の約半分くらいがせいぜいです。
 おまけに購入時には、8時間でフル充電出来ていたのですが、2年経過した現在ではフル充電に12時間はかかるようになりました。なおかつ、メーカー発表で420kmの航続走行距離であったのですが、現在では12時間フル充電でも360kmしか充電されない状態になってしまいました。同じような現象は、お持ちのスマートフォンの充電でも経験されていると思います。液体リチュウム電池の最大のウィークポイントと言えるでしょう。
 そもそもカーボンニュートラルは、気候変動問題の解決に必須という理由でEVの急速な普及が始まりましたが、世界の電気の6割強は石炭やLNGなどの化石燃料を燃やして作られていることから、説得力に欠けると言わざるを得ません。
 EV普及期の現在の日本では、それほど問題視されていませんが、先行しているヨーロッパ、アメリカ、中国では、昨今の電気代の高騰も相まってEVがバラ色では ないという認識が確実に定着しつつあります。このあたりは、テスラ社の株が、1年間で約65%も下落したことからも明らかかと。(これはイーロン・マスクの人間性が明らかになってきたことの影響もあるかと思いますが...)
ウクライナ侵攻で、ヨーロッパではさらに電気代が高騰。カーボンニュートラルの推進をゴリ押ししたヨーロッパの国々がさらに大変なことになっています。
 スイスでは、節電対策のためEV自動車の販売を禁止する法案を提出。加えてヨーロッパ各国が石炭による電力発電所を再稼働することを決定。
 加えて2020年にEUから新たに「ユーロ7」という規制法案が提出され、クルマが走行時にタイヤやブレーキパッドから排出する粉塵も規制の対象とする内容に。つまり、トルクが強くリチュウム電池による重量過多のEV車は、粉塵を排出しやすく、さらに厳しい制限を受けるわけです。違反した場合、高額のペナルティは免れません。
 ヨーロッパだけでなくアメリカでも、先ごろ発火の恐れがあるとしてテスラのリコールが相次いで発表され、まさに化石燃料に逆戻りの状況を作り出しています。
 私見ですが、これから先、トヨタが固形リチュウム電池を開発完成して電力補充がカセット化されるか、数分で補充可能な水素エンジン普及になるまで待つ方が賢明のように感じています。
「電気自動車購入は、まだまだ待て」というのが現在の結論のようです。

令和の維新

「撤退のために」の寄稿文依頼を読ませていただいて、私なりに感じることがございましたので、以下の文章を取り急ぎまとめてみました。長屋のブログとしてアップをお願いいたします。根拠となる数字文献などの記載がございませんが、ご海容ください。

 長引く不況。
 日本国民全体の不安材料の最たるものは、先行きの老後への不安。安心安全な将来が保証されるならば、増税さえも納得する国民は確実に多数存在するだろう。
 日本撤退策として、まず最初に「現状維持を条件に、年金制度を諦める」ということを提案したい。
 そのために第一段階として、途上国からの移民の受け入れ増加を行うこと。
 これにより、労働力の確保をして年金減少問題の悪化をくいとめる。少しでも将来的な不安材料を減らし、子育てのリスクを軽減することで、人口増加を期待できると思うのです。
 これには前提として、低所得者への保護救済が必須となります。受け入れる移民に対して、ビザ発給のフィルターをしっかり作り、現在、ガソリン供給がままならないイギリスのように、職業限定で一定期間のビザ発給を行っていく。
 平行して移民者並びに低所得者の保護と教育に注力していく。ODAのようにお金で渡すのではなく、魚の捕り方漁業法、農業法指導などのごとく、生活を維持していくための職業訓練、ライセンス獲得などの援助や補助をさらに強化して行なっていくのです。
 この3〜4年、日本とNYを行き来させていただき、気づいたことがあります。アメリカの社会は、低所得者に対して優しいシステムを社会が残す努力をしている。
 まずひとつの例としてチップの習慣が挙げられます。お客は、お店で使った費用の5%〜20%をチップとして個人やお店に支払います。この習慣は、サービスの向上に加え、低所得者の所得に多大な貢献をしています。ほとんどチップを頼りに生活している労働者層が存在しますし、確実に個人に利益を享受出来るシステムとして秀逸であると思われます。
 他の例として、NYの北や東を結ぶメトロノースレイルロードやロングアイランドレアルロードの料金システムが挙げられます。乗車中、未だに紙の切符を車掌が切りに来ます。識別のため、切り終わったチケットを座席の上に挟んでいくのです。日本のようなSuicaやICOCAのような便利なシステムは存在しません。定期券にあたるものとして、乗客がスマートフォンの画面の定期券サイトを、車掌に提示します。いちいち車掌が、それを確認しにやってくるのです。車両が長いので、何人かの車掌が乗り込んでいます。機械化せずに、彼らの仕事を残しているのです。
 もうひとつ、これからの若い次世代に向けては、教育カリキュラムの改善を行いたい。
 まず、お金の勉強を学校教育に取り入れる。株式の仕組み、為替の仕組み、起業(昨今、IT関連の起業の低年齢化は著しい)、海外株への投資あるいは、イデコ、積み立てニーサのような貯蓄の具体的知識の教育を行う。これにより、将来的な失業者、生活保護者の減少と社会貢献の実現を狙うわけです。
 同時に日本古来の文化、伝統工芸や技術技法などの学習カリキュラムも取り入れる。日本古来の優れた文化に誇りを持ち、引き継いでいく人材の育成と確保を行う。
 これには、ドイツが小学生高学年時に、学業か実業かを選択されるように、中学・高校から大学と同様に単位制とし、本人による教科選択の導入→学術、研究、専門分野におけるスペシャリストの育成→国力増強を目指すことが必須と考えます。
 このように、将来への不安の解消を行いつつ、国力の増大を目指すことが、これからの日本の再興には必要であると思います。明治維新のような意識改革を行うことにより、日本が世界に先駆けて少子高齢化対策を指し示していければと願うばかりです。
 以上、よろしくお願いいたします。

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口座と小切手

 Citibankで口座と小切手帳を作成する
 マンハッタンのど真ん中、5thアーベニューとマジソンアーベニューの角、43丁目にある45年続いている美容院を、引き継ぐプロジェクトには、いくつもの問題がありました。
 公正な資金計画に基づく契約の完了が出来るのか、長期滞在のためのビザの申請、すでに出来上がっているルールの基に経営されているサロンのスタッフとの人間関係を、うまく構築していけるのかどうか。
 朝、目覚めて、すぐにベットメイキング。そして、シャワー室に向かうというルーティン。
 H川さん(81)とSammyさん(72)という大先輩2人と、NY郊外のハーツデイルのマンションに同居し、先輩のルーティンに学び、とにかくNY生活に慣れることから。
 シーツの端と端ををビシッと張ってのベットメイキングの後、まずはシャワー室へ直行。頭から熱いお湯を浴びて、ようやく頭が冴えてくる。
 朝食は、トーストとコーヒーとサラダです。たまにクルマで10分ほど走り、一駅向こうのスカースデイルにあるベーグル屋さんに行くのが楽しみでした。
 焼き立てのベーグルを求めて、緑深い森の中、アップダウンヒルの道をクルマで疾走する。親子で経営されているベーグル専門のお店で、プレーン、チーズ、セサミ、粟、サーモンとサワークリームなどから選んでオーダー。歯応えがしっかり、中はもっちりのベーグルは、柔らかめのベーグルが主流の日本とは異なり、ここでしか味わえない食感です。
 この日、お気に入りのシャツにネクタイを締めてジャケット姿。H川さんとグランドセントラル駅を目指す。たぶん、アメリカの口座を作るということで、緊張していたのでしょう。
 時計台のある中央広場の右側のエレベーターに乗る。上がってすぐ右側、駅構内のCitibankに突撃。たくさんの書類や面談が始まるぞ。大袈裟ではなく、私的にはそれくらいの気持ちで望んだわけです。
 入り口に扉はなく、すぐにキャッシュディスペンサーが並んでいる横をすり抜け、シンプルで機能的なカウンターの前で、言われるがまま名前やNYのハーツデイルの住所を書類に記入。自動車の国際免許を提示。
 かなり厳しい審査があるのではと、予想していたのですが、2〜3分ほどてあっさりと終了。
 同行のH川さんの口座に紐付けされたからなのか?現在では不可能と思いますが、その当時は、そんな簡単にことが進んだのです。これで口座を作成、カードを申請し、小切手帳が1週間ほどで届くと知らされてやや拍子抜け。
 でしたが、小切手の書き方を習って驚いた。日本の銀行口座から、引き出すときに記入する用紙の内容と大差はないのですが、印鑑の代わりにサインを書き込むと、そのサインをキャッシュディスペンサーの機械が読み取ること。手書きで記入した数字とサインが書かれた7×15cmの薄い紙を差し込み、金種を指定すると、あら不思議。現金が出てくる。
 どういう読み取りの仕組みなのか、未だに理解は出来ませんが、筆跡などを機械が判断するあたりは、サインによって承認するというアメリカの伝統的文化に、改めて敬意を感じたわけです。
 昨今、日本では印鑑での書類作成の煩雑さが、仕事の速度の妨げになっているとの問題提起がされていますが、指紋認証や顔認証や瞳孔認証が主流になる時代にはまだまだ時間を要するのでしょう。
 この数年で、キャッシュレス化がかなりのスピードで進んでいますから、世界共通の通貨として仮想通貨のように、新札発行を機に日本独自の仮想通貨を作成し、タンス預金をすべて巻き上げようとする喜ばしくない政府の企みも噂されているようです。
 いまだに小切手が、現金の代わりとして一般人の間でやり取りされていることは、日本のキャッシュレス化の波とは対局にあるアメリカの風習文化。
 帰宅前に、グランドセントラル駅の中にあるマーケットで、夕飯の材料を購入することに。
 グランドセントラルターミナルは、NYの象徴的な存在。映画やTVドラマにもよく登場する場所。とても美しい建築物で、ニューヨークを代表するグルメやショッピングスポットが集まっています。地下に独特のフードコートやオイスターバーなど歴史のある老舗のレストランの存在も魅力のひとつ。
 この日、チーズやバケットなどを求めてマーケットを見て回りました。その模様は次回に。

日系弁護士 in New York

 いかつい黒人の男に名前と目的の会社を書き込む用紙を渡される。
 グランドセントラル駅を抜けてパークアベニューの交差点を渡り、ドアマンが高層ビルの入り口のドアを開けると、天井高が10mはある広い空間のエントランスに圧倒された。
 黒人女性の係員から、身分証明書の提示を求められ、氏名や訪問先の弁護士事務所の名前を記入。名札をもらってセキュリティを通過。エレベーターホールから八階へ。扉が開くと、また花がいっぱいの受付カウンターがあり、笑顔の白人女性係員がドアを指定し、中に通される。
 木製の大きなテーブルのまわりに、豪華な背もたれの椅子が並ぶ。鋭利に削られた鉛筆とメモ用のノートはご自由にとのこと。窓の外にパークアベニューの通りが見えて、目の前にメットライフビルの窓が光を受けて輝いていた。
 同行のH川さんと待っていると、ドアを開けて爽やかな笑顔の小柄な日本人の弁護士が女性秘書を携えてやって来た。握手を求められ、名刺交換の後、経緯と依頼内容を話し始めるH川さん。
 丸紅の駐在員から始まり、その後独立。ニューヨークの石油輸入の重鎮として長く活躍され、現在は隠居の身。日本とニューヨークを行き来して悠々自適、80歳を超えたお爺さんですが、その英語力と押し出しの強さに、歴戦の強者の片鱗が見え隠れするのです。
「ニューヨークで45年続いている美容サロンの株を買収して、経営権の譲渡までの契約書の作成をお願いしたいのです」と同行のH川さんが話を切り出す。
「意図は事前にお伺いして理解しています。細かな条件などは、元のオーナーのS氏と交渉中だということですね」とN藤弁護士。物腰が柔らかく、分かりやすい言葉を選んで発せられるひとこと一言のなかに、聡明さと人柄の良さを感じて気持ちが楽になる。これまでの経緯や諸条件のすり合わせ、スケジュールなど、会見は50分ほどで終了。
 このN藤弁護士、元々は競走馬のジョッキーから弁護士に転身されたそうで、高いトーンと歯切れの良い声から独特のオーラを感じた。日本語が通じることで、細かなニュアンスをやり取りできる。まさに暗い雲の隙間から、パリの街の光を見出したリンドバーグの心境。
 このN藤弁護士を始めとして、いくつかの案件に合わせて何人かの弁護士と会見していきます。ロビーストとして前述のH川さんにセッティングや交渉も、まさに俎板の上の鯉状態。
 私個人のビザ取得の専門のユダヤ系白人弁護士(奥さまが、建築の大好きな日本人)。同じく5カ国語を操る、ビザ取得のスペシャリスト、インド人の女性弁護士(日本語が恐ろしく堪能でビックリ)。そして、まさに輝かしいキャリアを積み重ねてきたであろう、パワーと自信に満ち溢れたアメリカ女性。典型的なセレブ弁護士(Netflixのドラマに出てくるような素敵な方でした)と接見させていただいた。
 帰り道、グランドセントラルステーションからメトロノース鉄道で、ホワイトプレイン行きに飛び乗る。横に座ったH川さんが、低い声で話し出す。
「これからたくさん勉強してもらわないといけませんね。日々の生活もですが、まずはお金の使い方から。これから小切手帳が必要になる。来週、銀行口座を作りにいきましょう」
 NYは、旧態然としたアナログな仕組みと最先端のシステムが共存している街だ。
 小切手が、普通に商取引や個人間でも頻繁に取り引きで使われる。銀行に並んでいるCD(キャッシュディスペンサー)が小切手を読み取るのだ!複雑なサインや多種多様な筆跡の数字など、どのようにして認識しているのか。
 
 次の週、グランドセントラル駅構内にあるCiti bankにて口座を開いた。
 この模様は次回。

NYの水先案内人

 ニューヨークのサロン買収の話しをご依頼いただいた美容学校の理事長・T添氏から、
「紹介したいひとがいるんや。日本の石油輸入の要として、長くニューヨークで活躍した人で、H川さんという80歳を超えたお爺さんやけど...」と食事会の設定を頼まれる。
 かなりの美食家だという情報を得ていたので、西宮で最も新鮮なネタが揃う苦楽園の鮨屋にお連れした。内田先生と何度かご一緒させていただいた切り札の一軒である。
 市場の仲買から、お金に糸目をつけず、その時期に揚がる旬の魚が、ネタ箱から溢れているお店なので、細い目をさらにほころばせながら、T添理事長共々、終始ご満悦のH川氏の横顔を眺めつつホッと一安心。
「あなたが、ニューヨークで望むことを全力でバックアップしますよ」と目を細め、静かに笑うH川氏の一言に、私がシンパシーを感じたのは仕方のないことだろう。
「チャンスは、常に人からもたらせる」
 長年、会社を営んできて学んだ教訓が、脳の中でリフレインする。
 少し腰が曲がってはいるが、矍鑠と歩く姿。ほとんど残っていない髪にカラーリングをして身だしなみを忘れず、眼光鋭く自信に満ち溢れた言動。ジャケットの下に、リンゴのマークの入ったブルーのTシャツ。そのいでたちに、初めは違和感を感じたが、息子さんがAppleで Siriの開発に携わった研究者だと知らされ納得した。 
 これはまさにスターウォーズでスカイウォーカーを指導するジェダイ「ヨーダ」そのままだなと独りごちたのを覚えている。
 H川氏の最大の関心事は、クラッシック音楽。それも、ベルリンフィルやウィーンフィルの超一流ソリストとの深い交流。
 ベルリンフィルのフルート主席奏者のエマニュエル・パユー、ベルリンフィルオーボエの主席奏者ハンスイェル・シュレンベルガーなどなど、たくさんのクラッシックの一流ミュージシャンのコンサートに同行させていただいた。楽屋に入れていただき、コンサート後の食事会をアテンドさせていただきました。
 さらりと書いているが、クラッシックファンにとっては夢のような出来事。ニューヨークであのカーネギーホールの楽屋に潜入し、指揮者のグスターボ・ドゥダメル氏とお会い出来たことは一生の思い出となった。
 この詳細は、別の機会に詳しく書かせていただくとして、この水先案人に導かれ、NY郊外のスカースデイルのアパルトマントで、生活をともにしながら、4人の弁護士とお会いし、揉まれ学び、感じたことを順を追って振り返っていきたい。