1973年製のピンボールマシーンに、"ビン"と弾き出されたボールのような滑らかな加速。森の木々から指す木洩れ陽のような微量の風切り音。
「嗚呼、なんてイイクルマなんだ!」初めてドイツのM社の電気自動車のハンドルを握った時の正直な感想です。走り出した時のトルクのその分厚さは筆舌に尽くし難い。初速スピードに乗った新幹線をイメージしていただければ、なんとなく感じてもらえるかもしれません。とにかく素晴らしく速い。
...のですが、良いことばかりではありません。
まずは充電の問題。ヨーロッパ、特に最もEV化の進んでいるノルウェーでは、なんと2022年の新車販売の約8割がEVに。しかし、普及速度に対して充電設備が追いつかず、チャージのために長蛇の列ができているそうです。
そもそもEVの充電には、多くの時間がかかる。
私は自宅にてM社提供の200V家庭用蓄電器で充電していますが、やはり8時間ほどはかかってしまいます。ガソリン車は数分で燃料補給が完了しますが、EVの場合、インターチェンジなどで見かける高電圧充電器でも30〜40分。それもフル充電の約半分くらいがせいぜいです。
おまけに購入時には、8時間でフル充電出来ていたのですが、2年経過した現在ではフル充電に12時間はかかるようになりました。なおかつ、メーカー発表で420kmの航続走行距離であったのですが、現在では12時間フル充電でも360kmしか充電されない状態になってしまいました。同じような現象は、お持ちのスマートフォンの充電でも経験されていると思います。液体リチュウム電池の最大のウィークポイントと言えるでしょう。
そもそもカーボンニュートラルは、気候変動問題の解決に必須という理由でEVの急速な普及が始まりましたが、世界の電気の6割強は石炭やLNGなどの化石燃料を燃やして作られていることから、説得力に欠けると言わざるを得ません。
EV普及期の現在の日本では、それほど問題視されていませんが、先行しているヨーロッパ、アメリカ、中国では、昨今の電気代の高騰も相まってEVがバラ色では ないという認識が確実に定着しつつあります。このあたりは、テスラ社の株が、1年間で約65%も下落したことからも明らかかと。(これはイーロン・マスクの人間性が明らかになってきたことの影響もあるかと思いますが...)
ウクライナ侵攻で、ヨーロッパではさらに電気代が高騰。カーボンニュートラルの推進をゴリ押ししたヨーロッパの国々がさらに大変なことになっています。
スイスでは、節電対策のためEV自動車の販売を禁止する法案を提出。加えてヨーロッパ各国が石炭による電力発電所を再稼働することを決定。
加えて2020年にEUから新たに「ユーロ7」という規制法案が提出され、クルマが走行時にタイヤやブレーキパッドから排出する粉塵も規制の対象とする内容に。つまり、トルクが強くリチュウム電池による重量過多のEV車は、粉塵を排出しやすく、さらに厳しい制限を受けるわけです。違反した場合、高額のペナルティは免れません。
ヨーロッパだけでなくアメリカでも、先ごろ発火の恐れがあるとしてテスラのリコールが相次いで発表され、まさに化石燃料に逆戻りの状況を作り出しています。
私見ですが、これから先、トヨタが固形リチュウム電池を開発完成して電力補充がカセット化されるか、数分で補充可能な水素エンジン普及になるまで待つ方が賢明のように感じています。
「電気自動車購入は、まだまだ待て」というのが現在の結論のようです。