少し長くなったので、回を分けました。
¡ 東大関 京都丹波山地での山岳トンネルの施工
→ 山地を嫌う高速鉄道【北陸新幹線 その7】
(同じページに続けて) 一長十短四苦八苦【北陸新幹線 その8】
http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2024/07/10_0927.html
→ 見えない刺客は火成岩【北陸新幹線 その10】
http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2024/07/12_0738.html
→ 悪魔の温泉へようこそ【北陸新幹線 その11】
http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2024/07/28_0742.html
→ 竹槍戦隊大本営【北陸新幹線 その12】
http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2024/07/28_0746.html
→ シームレス地質図
https://gbank.gsj.jp/seamless/v2/viewer/?center=35.3101%2C135.7134&z=11&target=cursor
内容云々よりも、京都府北部の山岳地帯は大雑把なデータ(灰色(混成岩)、オレンジ(チャート)だけからなる)しか得られていないことが心配です。
もし完成すれば、小浜駅から由良川付近の明かり区間までのトンネルの長さは、40kmとなり、青函トンネルに継いで日本で2番目の長さになります。まともな地質図さえない状態で、こんな大工事に着工すれば、堅い岩盤、軟弱地盤、高熱の温泉水、大量の地下水などが次々に襲いかかってきて、工事が泥沼のインパール作戦化するのは目に見えています(タンバール作戦)。もちろん 費用はプライスレス、工期はエンドレスとなるでしょう。
¡ 東関脇 京都盆地内の井戸枯れ・水質悪化
→ 古都の市街戦で不戦敗【北陸新幹線 その5】
http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2024/06/12_2141.html
今は亡き東山ルートの話が出てきます。2024年夏に、南北・桂川・東西(2024年12月没)の3ルートが公表されるまでは最有力だったのですが、どうやらボ没になりました。理由はわかりません。それで慌てたのか、十分な現場調査もしないまま出てきたのが上の3ルートという構図です。こういう手法を日本語でヤケクソと言います。
この記事を書いていた頃は、「いくらなんでも本気で京都盆地の地下に大深度トンネルを作ろうとは言い出さないだろう」と、プロジェクトチームとやらの無謀さを甘くみていました。でも、期待は裏切られ、慌てて追加で水質の問題をまとめたのが以下です。
→ よくある議論に反論する(前半)- まずは落ち武者狩り 【北陸新幹線 その17】
http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2025/01/12_0901.html
やり玉に挙げた八幡先生の「日本酒不要論?」もヤケクソと言えばヤケクソです。
もうひとつ、今気がついたことですが、西田昌司参議院議員は「(水量や水質など)ほとんど環境には影響がない、というのが専門家の科学的知見に基づく意見。」などと豪語しておられますが、だったらなんで東西ルートを脱落させたのでしょうか。豪語や暴言は内容がないことを本人が一番よく分かっている、ということの好例のように思われます。
¡ 東小結 地下トンネルでの徐行や乗り換えによるタイムロス
→ 迷宮駅に消えた最初の目的 【北陸新幹線 その3】
http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2024/03/29_0826.html
新大阪・京都間の乗車時間の話ですが、この時点のでの見積もり(はくたか19分、つるぎ21分)は、松井山手から直線的に京都駅に向かうという、原始的南北ルートとでも言うべきものでの話です。それでも、東海道新幹線(のぞみ・ひかり・こだま)とは勝負にならず、在来線の新快速(23分)に迫られています。
もし、昨夏発表の曲がり角の多い南北ルートはこれより確実に1~2分遅くかかり、ほぼ新快速に並ばれます。こうなるとよほど特殊な状況以外は、関西方面から北陸方面に向かうなら、新大阪駅からではなく京都駅から北陸新幹線に乗ることになります。
また、京都・小浜間も同様に以前の計算より最低でも1~2分遅くなりそうですから、新大阪・敦賀間なら現行のサンダーバードとの差は20分もなさそうです。新大阪以西の駅、大阪・尼崎・三宮方面から敦賀に向かう場合、新大阪での乗り換えが発生する分、現行のサンダーバードと同じぐらいになってしまいます。
一方、桂川ルートの場合、新大阪・京都(桂川)間は最初の予想(はくたか19分、つるぎ21分)と同じぐらいでしょうが、困ったことに桂川駅は新大阪駅に近い分、新快速の方も1~2分早くなってしまいそうです。大阪・尼崎・三宮方面から北陸新幹線に乗る場合、やはり新大阪ではなく桂川で乗り換えることになりそうです。
JR西日本にとっては、もっと悪いことがあります。桂川駅の西側約600mの地点には阪急電車の洛西口駅があります。関西の方ならご存じでしょうが、阪急電車は京阪神の住宅地をJR線と平行に走っているような私鉄で、料金もJRよりやや安いため、通勤定期保持者を中心に、沿線の乗り換え需要をごっそり取られる可能性があるということです。悪いこと?に、阪急電車は、嵐山をはじめ祇園四条などの観光地や四条烏丸・四条河原町などの京都のビジネス街にも直通ですから、JR西日本にしてみれば、膨大な投資をしてライバル私鉄に乗客を斡旋しているみたいなものです。北陸新幹線だけではなく、新快速との接続ができるとなると阪急電車は大喜びです。
JR西日本が桂川ルートを忌み嫌っているのはこんな背景があるからかも知れません。
¡ 東前頭筆頭 新大阪・松井山手間のシールドトンネルと車両基地の施工
→ 巨椋池の位置 https://search.yahoo.co.jp/image/search?rkf=2&ei=UTF-8&fr=wsr_is&p=%E5%B7%A8%E6%A4%8B%E6%B1%A0%20%E5%9C%B0%E5%9B%B3%20%E9%87%8D%E3%81%AD%E5%90%88%E3%82%8F%E3%81%9B#d9161dd3b55d2e46823f347b7734d614
これまでの記事では触れていませんが、水問題は京都・小浜間(私の言う第Ⅱ区)のみでなく、新大阪・京都間(第Ⅰ区)でも発生します。桂川ルートにしろ南北ルートにしろ、淀川水系の大河の下を、最低3回シールドトンネルで潜ります。なんでこんなことになるかと言えば、無理矢理に松井山手駅を通ろうとしながら、大阪駅ではなく新大阪駅に乗り入れているからです。
大阪でJR東西線が淀川の下を潜っている例があるぐらいですから、技術的にはなんとかなる話でしょう。ただ、工費の増加は避けられず、好んで線路を通したい場所ではありません。
けれども、さらにタチの悪い難所があります。巨椋池干拓地です。古典文学がお好きな方ならばご存じでしょうが、万葉集やら源氏物語にも登場する巨椋池の跡地です。干拓に着手したのは太閤秀吉さん。完成して池が完全に姿を消したのは1941年。まだ、100年も経っていません。埋め立てではなく干拓ですから、土地の高度はあまり上がっておらず、1953年の台風時には、宇治川の堤防が結果して忽然と池の姿が復活したりしました。
干拓地の大部分は現在も田んぼです。田んぼとは何か、水深の浅い池です。大阪北部の交通の要衝で第二名神高速や京滋バイパスのインターチェンジも近くあります。住宅団地や工場などが出来そうなものですが、南東の一部を除いて田んぼしかありません。地盤が悪すぎるのでしょう。こんなところにシールドトンネルを掘るのは京都市街地より無茶かもしれません。
ところが、JR西日本はこんな場所に、北陸新幹線の車両基地を作ろうというのです。まさか大深度地下基地というわけはないと思います(だったら私、小浜ルート賛成派に回ります。面白すぎますから)。けれども、地上に作るとしても場所が場所ですから、2019年に長野でおこったような水没事故のリスクは常につきまといます。
そして用地買収。地権者が何人いるか知れませんが、難航は必至です。国も京都府もあまりガンガン行きたい工事ではないのですから、環境面の話などが拗れたらいくらでも交渉は長引きそうです。
この問題は車両基地の詳細などが発表になっていないので、不確定要素が大きいのですが、今後は前頭筆頭から三役(単独で小浜ルートを潰せる規模の大問題)昇進が狙えると思われます。