北陸新幹線の新大阪延伸に関する私の記事も19本目です。昨年末時点で状況は一段落して、小浜ルートはほぼ無くなったと言えるでしょう。今後は米原ルートがどこまで頑張るか、リニアとの関係、サンダーバードの石川方面への乗り入れの復活、小浜市への補償などといった方面に話題が移っていきそうです。ステージが代わったと言えます。
そこで、「なんで小浜ルートはダメなのか」という観点から、これまでの自分の記事を整理としみることにしました。途中から読んでくださる方や、特定の論点だけ(たとえば人口減少時代の公共事業、大深度地下トンネルの技術的課題など)に必要やら関心やらのある方にも便利な記事だと思います。
ただ、それだけだと退屈な索引記事になりそうなので、北陸新幹線沿線に関するリスクを分類して番付を作ってみました。三役(小結・関脇・大関)以上は、単独でも致命的といえるリスクだと思ってください。
これまでのに扱ったものはリンクを辿っていただくとして、これまで書かなかったこと、書き足したいことをコメントとして入れました。もちろん、コメントだけでも楽しんでもらえるように、頑張って書きますね。
まずは、番付。土俵入りです。
○ 東 (技術的問題)
横綱 京都盆地内での大深度地下トンネルの施工
張出横綱 トンネル全体の掘り出し残土
大関 京都丹波山地での山岳トンネルの施工
関脇 京都盆地内の井戸枯れ・水質悪化
小結 地下トンネルでの徐行や乗り換えによるタイムロス
前頭筆頭 新大阪・松井山手間のシールドトンネルと車両基地の施工
同二枚目 京都丹波山地での環境問題
同三枚目 新大阪駅の施工
同四枚目 敦賀・小浜間の山岳トンネルの施工
● 西 (社会的問題)
横綱 沿線自治体の財源問題
大関 費用対効果(B/C)
関脇 JR西日本の収支見込み
小結 並行在来線に関する滋賀県の同意
前頭筆頭 沿線および日本全体の人口減少・高齢化
同二枚目 日本全体の経済状況の悪化
同三枚目 政権与党の弱体化
同四枚目 米原ルートなどの有力代案
ではでは取り組み開始です。解説の都合上、深刻な大問題(番付上位)からはじめます。
¡ 東正横綱 京都盆地内での大深度地下シールドトンネルの施工
京都の水問題と言えば、水質悪化や枯渇による伝統産業などへの悪影響がよく指摘されますが、それ以前に地下水をたっぷり含む軟弱地盤の中に、重力と浮力のバランスがとれて安定したシールドトンネルを本当に作れるのかか心配です。また、沿線での地表の地盤沈下もありえます。あまり指摘されることのなマイナーな問題のようですが、これだけはいくらお金をかけても解決不能なので、別格のリスクのように思います。よって異例の抜擢で東の正横綱に推挙いたします。
→ 大深度でのすれ違い【北陸新幹線 その4】
http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2024/06/07_1522.html
トンネル内への漏水対策の難しさを指摘しています。
→ 本当は恐ろしい浮力の話
http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2024/08/29_0556.html
一連の新幹線関係の記事の中で一番オリジナリティのある回だと思います。岐阜のリニアや鹿児島の道路トンネルの工事で実際におこった例をあげて、地下水が発生させる浮力に抵抗できる構造物を作る難しさを解説しました。
→ 古都の市街戦で不戦敗【北陸新幹線 その5】
http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2024/06/12_2141.html
今は亡き東山ルートのことが出てきます。断念されたのがこの時期ということは、現行の3ルート(桂川・東西・南北)をまとめる時間は3ヶ月しかなかったことになります。「面倒だえいヤ」っと線をひいたようなルート案を、取材して議論しているメディア関係者などは良い面の皮です。
京都盆地の地下の水盆について概略がわかる記事です。
→ 5.京都盆地の地下に潜む水盆・巨大スリバチダムを妄想する。
https://note.com/jusojin/n/n8968c621f58b
¡ 東張出横綱 トンネル全体の掘り出し残土
→ 残土は続くよどこまでも【北陸新幹線 その9】
http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2024/07/12_0736.html
仮に山岳トンネルなどの技術的問題が解決できても、掘り出された残土の処分や運搬は解決不能であるとの計算です。記事中では山岳トンネルの残土が800万立方mも出そうだと予想したが、京都新聞は1000万立方mと見積もっています。重量に換算すると最低でも2000万t。処理費用を1tあたり1万円としても、2000億円。これには処分場までの輸送や、ヒ素汚染の対策の費用は含まれていません。仮に予算が捻出できたとしても、そもそも受け入れてくれる自治体があるのでしょうか。
残土に関しては、京都府議(共産党)の島田けい子さんのホームページの資料が充実しています。ここでも残土の総量は880万立法m、誰が計算しても似たような値が出ます。
→ 敦賀―新大阪 京都で環境アセス難航 残土など課題も山積[日刊県民福井 2021年2月18日]
https://shimadakeiko.net/banshinkansen_underkyoto/kenminfukui20210218_kyotominpo20201101/