以前、小浜ルート吸血鬼論を書きましたが、どうやら来年度も生き残りそうで
す。毎年恒例の「調査費」が2026年度予算にも計上されそうだからです。一方、
新装開店の与党プロジェクトチームは、維新というトロイの木馬が加わり小浜以
外の7ルートの検討を始めるということです。
並べてみましょう。
1)京都小浜
2)亀岡
3)湖西(新設)
4)湖西(在来線利用)
5)舞鶴(京都経由)
6)舞鶴(亀岡経由)
7)米原(乗り入れ)
8)米原(乗り換え)
整理の仕方がメディアによって多少ちがうようですが、現時点(2025/12/13)
で一番アクセスしやすく消えにくいと思われる「読売オンライン」の記事に準拠
して整理していきます。著作権など面倒くさいので図を貼り付けませんが、ちゃ
んと見たい方は、下のリンクからダウンロードしておいてください。ただし、あ
まりおすすめしません。半年も待たずに、話題自体が全部まとめて消えると思わ
れるからです。
「北陸新幹線延伸ルート、維新が8案の再検討要求...与党PT」,読売オンラ
イン,
https://www.yomiuri.co.jp/pluralphoto/20251213-GYT1I00017/
粗製乱造
これらのうち、2)亀岡、3)湖西(新設)、5)6)舞鶴、7)米原乗り入れ、は
どの部分がトンネルなのかさえはっきりしていません。メディアによってコース
の位置が微妙に違うという代物です。これでは工法も用地買収費も見積もりよう
がないので、B/Cは予想の概要のだいたいのところの見込みの推定もできませ
ん。
こんなのを出してくるのは、既存の1)小浜やら8)の米原やらの工費計算のい
かがわしさを誤魔化す気なのかと勘ぐりたくなります。あるいは単に議論を混乱
させるつもりなのでしょうか。
国土交通省に各ルートについて選定のための数字を出させるとのことで、維新
は「8案全ての試算には2年程度を要する可能性がある」などとのんきなことを
言っています。けれども、ここまで漠然とした話では、1000年検討しても意味の
ある数字が出てくるはずありません。無理に進めてガラス張りで議論などすれば、
話が集約するどころか、あちこちから反論というよりツッコミが入り収拾がつか
なくなります。
なぜ維新は今になってこんな荒唐無稽な提案を出してきたのか、この1年の経
緯を振り返りながら考えてみましょう。
京都市民の堪忍袋
まず今年(2025年)2月、福井県境に近い南丹市議会が「住民から一定の理解を
得られるまで建設工事に着手せず、市内に掘削土を搬出する斜坑を設置しないよ
うに求める」要望書を鉄道建設・運輸施設整備支援機構に提出しました。「一定
の理解」というかなり低いハードルのようですが、機構側に自治体や住民を説得
できるカードがあるとは思えないので、事実上の拒否宣言です。
それに続いて6月、京都市議会が小浜ルートに対して事実上の反対決議をあげま
した。市長もこの決議を尊重する方針を示しました。「ちゃんと説明してくれな
い限り協力はできないよ」とういわけです。南丹市のケースと同様、推進側がま
ともに説明できるはずないと知りながら、あえて質問をしています。つまり、京
都府内では福井県境から京都駅までの2市が反対表明をしたわけです。いままで、
穏便に済まそうとあいまいな態度だった京都府民も、ついに我慢の限界に達した
のでしょう。
今にして思うと、これは二つの点で今年の重要な転換点でした。まず、京都府
では反対の声がかなり根強いということが、あからさまになったわけです。直後
の参議院選挙では、小浜強行論を主張する候補が現れず、争点化すら出来ません
でした。
もうひとつは、府北部での地質・環境調査や用地買収準備などが、さらに難し
くなったことです。こんな要望や決議を出しておいて、両市が公道や公有地での
調査を無条件で許可するとは思えません。官民挙げての反対が盛り上がっていま
すから、民有地の立ち入りは無理ですし、クマと猟友会の両方を敵に回して山に
入る勇敢な地質調査員がいるかどうか疑問です。
「市が潰れてしまう」 北陸新幹線"小浜・京都ルート"は八方塞がり? 鉄道
・運輸機構に南丹市が「待った」...日本の原風景の行方どうなる,高田泰,
https://merkmal-biz.jp/post/87444
住民理解なく着工しないで 北陸新幹線で京都・南丹市,KYODO,
https://news.yahoo.co.jp/articles/71b0c3fc7956eb89a5730378f8fd3a262ace8203
京都市議会の北陸新幹線市内ルート反対決議、福井県の反応は 県の担当者、
県議会議長は国に注文,福井新聞,
https://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/2328707
北陸新幹線の京都市内大深度トンネルルートへの反対決議(令和7年6月6日提
出),京都市,https://www2.city.kyoto.lg.jp/shikai/honkaigi/R07/ikenshoketsugi5.html
そうこうしているうちに、小浜ルート推進派の西田参議院議員(自民、参議院
京都)が、はるばる沖縄まで行って「ひめゆりの塔」を侮辱して、オール沖縄ど
ころかオールジャパンで顰蹙を買いました。歴史観の問題というより、単に無知
と軽率さをさらけ出したように見えます。
「西田議員のトンデモ発言 その1~5」,村山恭平,
http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2025/05/18_1658.html
http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2025/05/18_1701.html
http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2025/05/18_1705.html
http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2025/05/18_1710.html
http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2025/05/18_1711.html
当然、直後の参議院選挙では大苦戦をすることになり、新幹線に関しては小浜
原理主義者だったこの人が「他のルートも検討する」と言わざるを得なくなりま
した。つまり、「小浜推し」は京都の票を減らすことを、本人も認めざるを得な
かったのです。
薄氷の勝利で加速する見直し論
さて開票です。6年前の選挙では42万票獲得し、ゼロ打ち(開票率0で当選確実
が出ること)だった盤石候補が、今回は大苦戦のあげくわずか約19万票でなんとか
2位に滑り込みました。次点との差は3万票弱。「アンチ小浜」候補の乱立や公明
党の協力がなかったら、恐らく落選していたでしょう。
参議院京都府選挙区選出議員選挙 開票結果,
2025年選挙区,https://www.pref.kyoto.jp/senkyo/documents/r7san_senkyokukaiketsu.pdf
2025年比例代表https://www.pref.kyoto.jp/senkyo/documents/r7san_hireikaiketsu1.pdf
2019年選挙区,https://www.pref.kyoto.jp/senkyo/documents/r1senkyokukaihyoukekka.pdf
西田氏の苦し紛れの「ルート見直し宣言」が、選挙公約だったかのように一人
歩きをして、今の混乱につながってしまったのですから、小浜派にとっては、黙
って落ちてくれた方がまだしも良かったのかも知れません。
一方、ダントツで当選したのは米原派である維新の新人でした。ところが、別
の維新の大物議員が「米原は不可能だ」などと言いだしました。米原より前原と
いうわけでしょうか、何をしたいのかよくわかりません。結局この大物が与党新
PTの共同代表に西田氏とともに選出されました。仲良くしましょうね。
この時点で西田議員は、「維新の党内で意見を集約しないと(PTの)議論が
混乱する」と警告しましたが、維新は議論の集約どころか怪しげなルートをさら
に何本も追加して、むしろ混乱を楽しんでいるようです。
この騒ぎの中、小浜派の最後の砦だった元福井県知事のS氏が、別件のセクハ
ラが発覚して辞任に至りました。まさしく来年度(2026年度)予算議論の詰
めの段階でです。新知事が就任するのは来年の1月25日。もちろん、小浜派が
当選するとは限りません。副知事が、小浜を通らないなら県は予算を出さないと
いう、従来の見解を繰り返していますが、小浜派のリーダー不在は当分続きそう
です。