2007年09月05日

ミネソタを遠く離れてもう二年・・・ひさしぶりに日記を更新してみました

9月4日

9月に入って、少しずつではありますが暑さも和らぎ、朝晩過ごしやすくなってまい
りました。

私の部屋にはクーラーがありません。代わりに、1990年代初頭に製造された扇風
機が1台。色は綺麗なパステルカラーのピンクなのですが、これが和室にそぐわない
こと然り。

ただ、部屋に合っていようが合ってなかろうが、夏の必需品である事には変わりあり
ません。なんといっても、私の部屋は我が家で一番熱気がこもるのです。床が畳の岩
盤浴。わざわざお金を払って岩盤浴など行かなくても、自室で十分に熱気浴が楽しめ
てしまうのです。

毎夏、この扇風機と一緒に二人二脚で難局を乗り切っているのですが、今年は記録的
な猛暑だったせいで、特に大活躍しました。愛しの扇風機が昼夜兼行であったからこ
そ、私も昼夜健康でいられたのです。

ただ、あまりにも長時間使用したせいで、モーター部分が高温になってしまった事も
何度かありました。本当は、そのモーター部分を冷却するクーラーでもあればいいの
ですが、それでは本末転倒になってしまうので、やはりそういう時は扇風機を休ませ
てやらなければなりません。

説明書はとうの昔になくなってしまっているので、可能連続使用時間が、一体何時間
なのかも、もはや分かりません。「そろそろヤバいかも・・」と管理者が直感で思っ
た時に、モーター部分の温度調査が実施されるという次第。どこかのバス会社に限ら
ず、人にも機械にも超過勤務を強いてはいけません。

しかし考えてみると、日進月歩で多機能・コンピューター制御化が進んでいる他の家
電製品に比べれば、扇風機というのは、あまり開発・進歩がみられないような気がし
ます。

今昔や値段を問わず、扇風機というものはみな、羽とカバー、モーターなどの本体部
分から成っており、多少の大きさや形は違えども、一般日本人が想像する扇風機の図
は、似たり寄ったりなものだと思います。またその性能についても、風量調節や首振
り、リズム風やタイマーといった基本的なイメージは、共通しているでしょう。

将来、便利かつ斬新奇抜な扇風機が、市場に出回ることはあり得るのでしょうか。
「極軽扇風機」「超大型扇風機」「音声反応扇風機」。ひょっとしたら、すでに店頭
に並んでいるかもしれませんが、商況はなかなか厳しいと思います。

少し話が横道にそれますが、私は、レストランに置いてあるアンケートがなぜか好き
なようで、特にその用紙に「お客様が思いつかれた、新メニュー」コーナーがある
と、お客様の分際も弁えずに、つい真剣に考えてしまいます。

これは、ある和食レストランでのアンケートの「新メニュー」コーナーに、実際に答
えたものです。
『親子丼』― 鶏肉と卵。あるいは、鮭とイクラ。
『他人丼』― 牛肉と卵。
続く新作は・・・『子供丼』!
出し汁で煮たイクラや数の子を卵でとじ、丼飯にのせた一品。
値段やコレステロールの問題はさておき、生命エネルギーあふれる逸品です。

残念ながら、この『子供丼』なるものに、その和食レストランでは今だにお目にか
かったことはありませんが、少なくともアンケートには答えたということで、200
円の御食事券をいただきました。ハレルヤ。

マイ丼を披露したついでに、ここでもうひとつ、私が長年、心密かに考えているアイ
ディア商品も披露してみたいと思います。それは。
『ラーメン風呂』入浴剤。
日本人の大好きなラーメン。
北は札幌ラーメンから、南は沖縄そばまで、全国津々浦々のラーメンを網羅。
ピンクがかった乳白色のトンコツ風呂や、鉄泉と紛う茶褐色の醤油風呂。
アロマ効果はもちろん、発汗作用を促すために、塩分濃度も高めです。

ラーメンと入浴剤のコラボレーション。「食べ物を入浴剤に使うのはルール違反だ」
と、周りからは反発されるのですが、みかん風呂やりんご風呂の例に倣って、ここは
ぜひどこかの会社に商品開発していただきたいものです。

と、この話の流れでいえば、扇風機も何かしらの家電製品とコラボレーションできそ
うな気がするのですが、発想力の乏しい私は、扇風機をどこから見ても「粉砕系」モ
ノしか連想できないのです。

たとえば、『シュレッダー扇風機』や『ミキサー扇風機』。子供が指を入れて危険な
のを逆手にとった製品で、恐怖の風で背筋が寒くなること間違いなし。あるいは、巻
き込みモードをお選びいただければ、無料でヘアーカットも可能な『ドライヤー扇風
機』。もはや熱くしたいのか、涼しくしたいのか不明ですが。

と。こんなつまらない事を考えながら、部屋でボーッとしている私に、今もこうやっ
て優しい風を送ってくれている扇風機。このピンクがかった乳白色のトンコツ扇風機
に感謝の意を表して、ポンコツになる最期の瞬間まで超過勤務願おうという次第であ
ります。

2006年07月05日

ハムスター無宿

7月6日

本格的な夏の到来に向けて、温度、湿度ともに日々上昇している、今日この頃。

店員さんの3ナンバー級の口車にのせられて、せっかく買った春物の服も、あまり登
場しないままに、タンスの中で、夏眠・秋眠・冬眠に入ってしまいました。このまま
永眠、という事だけは、御免蒙りたいものです。

店頭においても、衣替えはとうの昔に終わっており、あのパステルカラーの春服達は
どこへ行ってしまったのやら。今は、見た目にも爽やかで着心地のよさそうな夏物
が、王様顔で並んでいます。

そして、7月といえば、夏物バーゲン。街中で見られるSALEの四文字は、ビビッドな
サブリミナル効果を、遺憾なく発揮中です。

というわけで、他の女性と同じく、今は東ドイツの謀者のように締まっている私の財
布の口が、アンコウのそれのようになるのは、もはや時間の問題でしょう。ズボン2
着、既に購入済みです。

SALE。和名、特売。

思い出せば、まだSALEという英単語さえ習っていなかった、中学生の頃。この『特
売』という文字のサブリミナル効果のせいで、私は、あと少しで罪もない小動物を永
眠させてしまうところでした。

それは、期末テストの最終日、手は拍手・頭は白紙で、足取り軽やかに自宅に戻る途中の事。近所のペットショップの広告が、事件の始まりでした。

『ハムスター特売!! 2100円 → 1200円』

学食で売っている120円のソフトクリームでさえ、一ヶ月に一回と決めていた頃の
話です。そう、160円のソフトクリームサンデーを食べる友人に対して、頑なに心
の扉を閉ざしていた、若かりしあの頃。

900円の割引に、私の目は眩みました。

キュウヒャクエン・・・キュウヒャクエン・・・と、人魚の歌声のような甘い囁き声に誘われるままに、私はフラフラと頼りない足取りで店内に入り、一直線でレジへと直行。

店員さんとのやりとりを詳しくは覚えていないのですが、ハムスターの飼育に関して
給水器の有無をたずねられた際に、「水は、あります」と声高らかに断言して、中学
生ながらにお茶を濁した事は、はっきりと記憶しています。

数分後。ハムスターが入った紙箱を片手に呆然としていた私は、まさしく、初めて父
になってしまった男性の心境を味わっていました。嬉しい。けど、どうしよう?

たとえ安売りになっていたとしても、まさか哺乳類を買ったなどと両親に報告するわ
けにもいきません。そのような無責任な行動は、ムツゴロウ氏だって、お怒りになる
でしょう。

ましてや、畑家とは対極にある我が家。

「ともこさんは、ハムスターを飼おうと思っています。親が納得出来る言い訳を考え
て、答えて下さい。(句読点も含む。)」

字数制限がない自由答案にも関わらず、その日午前中に受けた期末試験よりもよほど難しい問題でした。

「友達の家で生まれた、ハムスターの子供をもらった」というのも一案ではありまし
たが、そのハムスターは、体は小さくても立派なアダルト。さらに、友達から頂戴す
るのであれば、事前に許可を取っていないのは、明らかに不自然です。

アダルトである事を逆手にとった、「友達の家族が、ペットが飼えないマンションに
引っ越す事になって、ハムスターを引き取る事になった」という案も、夜逃げでもな
い限り、やはり同様に事前に許可を取っていないのは不自然、という事で却下。

結局、他に名案も思いつかなかったので、古典的ではありましたが、野良動物道端拾得作戦を実行しました。ペットショップの店名が入った紙箱をエイヤっと公園のゴミ
箱に捨てて、いざ出陣。

中学生ながらに、「ハムスターが道端に捨てられていて・・・」というのは、あまり
にも信憑性に欠けているとは思いましたが、やはり思った通り作戦は失敗で、戦艦大和よりもあっけなく撃沈。作戦名が長ければいいというものではありません。

道端で拾ったなら拾ったで、それらしく泥でも塗っておけば良かったかもしれません
が、それこそ今度はネズミに間違われて、火あぶりの刑に処されていたかもしれません。あるいは都会的に、殺チュウ剤でしょうか。

そういった訳で、我が家で飼えない以上、哀れなハムスターを養子に出さねばならな
くなり、引き受け先を求めて、近所の家々を一軒ずつたずねて回る羽目になりまし
た。

「必ず幸せにするからね」と『小鹿物語』の主人公の少年に己を重ね合わせて、手中
のハムスターの不遇を嘆き、正義感に一人熱く燃えていましたが、種を蒔いたのは、他でもない自分なのですから、当たり前の話です。

が、そうなると今度は、そのハムスターが、いかに価値あるかを証明しなければなり
ません。野良動物道端拾得作戦は、むしろ逆効果となるわけですから、出身を示す
ペットショップの店名入りの箱を、先ほど考えなしに捨ててしまった事が、激しく悔
やまれました。

いくらハムスターが可愛いからといっても、そう簡単にもらい手が見つかるわけもな
し。それは、訪問販売のセールスマンが、百貨店等のカタログもなしに、ウン百万円
の高級着物を片手に、ゲリラ営業をするようなものなのです。

しかし、捨てる神あれば拾う神あり。

心優しい隣人、ミセスTの配慮により、幸運なハムスターはT家に引き取られました。
人身売買をした私の徳だとは到底思えませんから、おそらくは、あのハムスター自身の徳だったのでしょう。

これは後から聞いた話ですが、そのT家ではたいそう大事にされたらしく、一度は身
売りに出された初代が天寿を全うした後も、二代、三代と続いていったそうです。

・・・と、結論から言えばメデタシメデタシだったわけですが、今にして思えば、親
の許可を得られなかった時点で、お詫びしてペットショップに戻してあげるのが最善
策だったのではないかと思われます。

中学生が小さなハムスターを片手に握り締めながら泣いて謝れば、「バーゲン品、返品お断り」社会のニッポンでも、例外が認められたに違いありません。

少なくとも、30歳を目前にした成人女性が、9号サイズのズボンを2本ぶらさげな
がら、「すいません。これ、やっぱりなんだかキツクて・・・」と返品願を届け出る
よりかは、容易く聞き入れてもらえたはずです。

恐るべし、バーゲン。