街的雑誌派宣言
3月5日(土)
『日帰り名人』というわたしが発行人をしている季刊ムックがある。
『遠足リバイバル。』『おいしく休日。』『日帰り名人 海・山に行く。』『京阪神わがココロの秋カントリー。』『買い出し隊!!』と昨年は5冊発行している。
この季刊はもともと『大阪本』や『うまい本』『会社帰り本』といった『ミーツ』別冊シリーズのひとつで、『日帰り名人』というタイトルを付けた特集ムックだったのだが、 03年春に出したこの「一発もの」の別冊は、4刷30万部突破。エルマガ社創業からの記録を塗り替えた。
「今からちょっと、でスグ行ける、1時間以内の遊び場250。」という表紙コピーがその内容そのものだが、感覚的には「ヤンキー的」な特集である。
といっても実際バリバリ現役のヤンキーやヤンママや元ヤン家族にターゲットをしぼ
って、彼らを徹底的にマーケティングしてつくる、なんてことはしなかったし、事実書店や取り次ぎのPOSデータを見ても、年齢層・性別問わず売れに売れた。
ターゲットをしぼるということは、雑誌をつくる際にはよくやる手段だが、たかだか京阪神中心のリージョナル誌、「25歳のOLがターゲット」といった電博代理店的ナマ
っちょろい考え方では、30万部という数字は獲得出来ない。
販売部長のN島によると「キャンペーンやってても、リュック背負ったキッズからヴィトンOL、ハイキング行くような格好をした50代のご夫婦、とほとんどバラバラですよ、この本の強さは」とのことだ。
ところで『ミーツ』はよく「タウン情報誌」という言い方で呼ばれたりする。
そんな時オレはじめ編集部員はムッとする。あまりいい気がしないのである。
ヒラカワさんのブログ2005.03.01の「逃れの街、逃れの場所。」http://tb.plaza.rakuten.co.jp/hirakawadesu/diary/200503010000/でも、コメントされている方が「東京ウォーカーのような内容の雑誌ですね。」と書き込みされていて、編集部員と半泣きになった。
うちのミーツはええカッコを言わせていただくなら『街的雑誌』であって、あらゆる事象を「主流化させない」し、どんなカテゴライズ化ジャンル化も拒絶したい。
なぜならオレたち街の雑誌や情報誌の編集者が80年代~90年代を通じてやってきたことは、ひとことでいえば「消費にアクセスする情報」ばかりを誌面に編集してき
たからだ。
そして今それを反省し、ブレイクスルーしようとしている。
「情報誌」というひとつの出版物のジャンルが分節されてもう4半世紀になるが、その「情報」の中には、テロや戦争、オリンピックの結果といった世界で起こっている出来事や、選挙速報や明日の天気や石原慎太郎の暴言などは含まれない。
そこではコンサート、映画、イベントなどのスケジュール情報。そして、お店で売られる商品やサービス。またライブハウスやディスコといった「新しい表現の場としての店舗」が80年代以降市民権を得て、そこでの表現のみならず風俗や流行までもが商
品としてどう買えるかというふうにデータ化した。
そして読者は、その情報を身に纏い、それに見合うだけ対価(お金)を充てることでだれもがそれらを消費できる。 つまり情報誌のその正体は「消費にアクセス」するための情報だった。
パルコや西武などが80年代後半に「街は情報の発信基地だ」という物言いでやって
きたことも同様だったと思う。
以前 NHKをたまたま見ていたら、元セゾングループの堤清二さんが出ていて「失敗の原因はどこにあるのですか?」なんてキャスターにかなりきっつい質問をされていた。
結局「あなたの欲しいものはこれです」ということで、人々の欲望を図式化してストレートに消費情報として商品をメディア露出させれば、大衆に消費需要を喚起させら
れる。それがどうもやればやるほど難しくなってきた。
端的に言うと「おいしい、生活。」的なある種の消費の欲望構造で「AでなくBだ」とか、卑近な例では「グッチではなくプラダですよ」というのは、すでに90年代後半からは「もうほかのもの持ってるし、いいよなあ、今のところ」となってしまっていて、そんな時代の気分を読めなかった。どんどん欲望を刺激して、新たな商品によって需要を喚起するやり方ではダメだったんだ、とおっしゃっていた。
今週号週刊文春によると、「清二氏は経営者としての責任を取って資財百億円を提供した。西麻布の迎賓館「米荘閣」も売り払い、その隣の狭い土地で作家・辻井喬に重心を移して活動している」そうだ。
ヤンキー的感覚雑誌編集論をしようと思っていたのだが、話はちょっとムチャクチャ
になって、また大家さんの内田先生から「要点を整理して話すようにぃ」と注意され
そうだし、ヒラカワさんにも「結局、何が言いたいわけ」と言われてしまいそうだ。
それに「そしたら、今、消費以外に何か楽しいことがあるんか」と問いつめられても
困るので(答えは、小っさい声で言うが、だんじり祭に決まってるやんけ)、ヤンキー感覚論はまた明日にすることにする。
ほんとにかなしい「日本一だんじりなエディター」であるオレだ。