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「余人を以ては代え難い人」について

春の人事異動祭り、絶賛開催中。
騒がしいっちゃあありゃあしない。
それより問題は「ひきつぎ」である。
リーマンを長らくやっていると、自分が職務経験によって得た情報や技術を他人に伝えて共有してもらわなくてはならない、という局面がしばしば生じる。
担当者が変わる場合の「ひきつぎ」はその最たるものだ。
こういう目的でこういう作業が必要で、原則はこうなのだがこれに関してはこういう事情なので、具体的にはこういう手順で進めてくださいね。
というような説明をしなくてはならない。
これができない人がいる。
大量の仕事を深夜のサービス残業までしてばりばりやっつけておられるので「他に人がいないわけじゃなし、ちっとは分担すればどうかね」と思うのであるが、あいかわらずご自分でばりばりばりと大量の仕事を抱え続けておられる。
他人に仕事をふるのが不得手なのか、もしくは他人が信用できないから任せるのが嫌なのか、もしくは情報や技術を独占することでプチ権威を保持したいのか分からないが、とにかく人に仕事を分けてあげない人なのである。
結果として仕事は消化されるわけだから問題はないかというとさにあらず。
わが社のように頻繁に人事異動祭りが開催される所では、いつ「ひきつぎ」が必要になるか分からない。
いざその段になると、「ご自分でばりばり」型の人はたいてい「無能の人」になってしまうのだ。
そういう人は断片的で要領を得ない説明をちょこちょことした挙句「まあ実際にやってみないと分からないよね」「君も近い仕事してたから大体のことは分かるよね」「君なりのやり方でやるといいよ」「また分からないことがあったら聞いて」てなことをおっしゃり、そそくさと引き出しの整理を始めたりする。
私はこういう言動は甘ったれていると思うし、こういう言動がまかり通る組織に明るい未来はないと思う。
結果、新担当者は全く悪くないのにもかかわらず、膨大な資料のほじくり返しやせでもがなの問い合わせに無駄な時間を費やし、状況予測の困難さにストレスを溜め、十分な対応ができないので仕事相手からの信用は動揺する。
有能な人ならそれでもなんとか辻褄を合わせてしまうものだが、そこでは多大な人的コストが浪費されているわけである。
芸人さん・職人さんの世界なら話は分かる。
芸人さん・職人さんの仕事はとうてい言葉で説明しつくせるものではなく(できる部分も多いとは思うが)、スキル習得の基本は「見て盗め」「体で覚えろ」である。
しかるにリーマンともあろうものが、自分の仕事をうまく言語化できず、同じ組織内の人に必要な情報を伝えることができないというのは、これはダメダメの誹りを免れないのではなかろうか。
社内で「あの人がいないと困る」といわれているような人は、実は後進を育てるのが不得手な、もしくは嫌な、要注意人物なのではないかとひそかに疑っている。
なんだか最近仕事がらみの文句が多いなあ。ぶつぶつ。

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2005年03月16日 20:06に投稿されたエントリーのページです。

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