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会議の最中にバカと叫…びたい

家人が「セカチューが人気」というので「部屋を明る
くして見ないと失神するよ」と言ったのだが違ってい
た。
ひとくくりにしてよいものかどうか分からぬが、私に
は『冷静と情熱のあいだ』だの『セカチュー』だのと
いう「甘く切なく〈ハンパに〉現実離れしたラブスト
ーリー」を受け止める引き出しがない。
なのでそれらがパカパカ売れているのを見ると「え、
みんなそんなんでええの?」と???な気持ちになる

なんでしょう、通販の番組でアイデア掃除機とかトン
チ野菜切り器とか見ているときの気持ちに似ているで
しょうか。
「こういうの『きゃー便利』とかいって買う人がいる
んだろうな。実はすごいかさばったり使い勝手が悪か
ったりしてすぐ飽きるんだよな。なんで買うかね」み
たいな。
でも現にさかんな商いが行われているところを見ると
、世間にはこのテの商品に大量の需要と供給とが存在
しているわけだ。
すごいなあ。ぼくもなんかでがばーっとひと儲けでき
ないかなあ。うそうそ。
そういえば『イラクの中心で、バカとさけぶ』という
本があって、読んではいないがその書名がものすごく
気に入っていた。
やさぐれたおちょくり加減がツボにはまったのである
が、よく考えてみるとこれは大変含蓄の深いタイトル
である。
イラクの中心でバカとさけんでいる光景を想像してみ
てください。殺伐としてホコリっぽい(たぶん)ナジ
ャフの道路の真ん中で「バカー!」と声を限りに叫ぶ
男。
この男の半径20km以内には何十という兵士と民間人の
死体が転がっていて(知らないけど)、はるーか遠く
にはブッシュや国連やなんやかんやがゴジャゴジャと
蠢いている。
この男のノドからあふれ出る絶望に満ちた「バカー!
」は、現実に対しては全く無力であるが、「そうだよ
な、もうそれしかないよな!」と両手を挙げての共感
を捧げられるような気がして、ちょっとかっこいいと
思うのである。
バカが繰り広げられている場の中心にいながらにして
バカとさけぶのは難しいし、たいていの場合その声は
無力である。
しかしバカの渦中でバカ!と叫んで状況を的確に批判
する、その心意気には憧れを抱いてしまうのである。
組織の犬・サラリーマンにはしばしばナジャフ的状況
が出来する。
いくら不毛な会議やプロジェクトでも、いったん始ま
ってしまったら「こんなバカなことやめましょうよ」
と言うのは至難である。
うなだれて時の過ぎ行くのをひたすら待つか、巧妙な
合いの手によって少しでも早くコトが終わるように画
策するのが精一杯。
そこでは「いかに合理的に問題を収拾するか」ではな
く「いかにみんなで同じ空気を共有したか」が重要な
のである。
そうやって同じ空気を吸いあう(「吸いあう」ってイ
ヤ〜)ことに恍惚となっておられる方も多々お見受け
するが(というか大抵の会社組織はそれでもっている
のではないか)、おかげで「ベターな結論」は果てし
なく遠く手の届かぬところへ去り行くのである。ああ

「え、会議でそのぐらいのことは平気で言ってるよ」
という方は大変に幸せ者です。
世の中には超ナジャフ級の大バカ会議や大バカプロジ
ェクトが存在するんですってば。しくしく。

小学生の時にプロ野球、中学生の時にプロレスを熱心
に観て以来、スポーツ観戦にはあまり興味がなかった
のだが、このたびのオリンピックはなかなかおもしろ
かった。食べ物といっしょで、おっさんになって嗜好
が変わったのであろう。
ちなみにおっさんになっておいしいと感じるようにな
ったものは鮎と蕗と茗荷である。
特に柔道と体操をよく観た。
柔道の試合をしげしげと観るのは初めてだが、体のバ
ランスがほんのわずかに崩れる刹那、およそ倒れそう
にないゴツい体がくるりんとひっくり返る。その「間
」が大変気持ちよい。
「ン」とイキを詰めて「ハ」とリリースする間合いが
舞踊の「間」みたいである。
そういえば相撲も私が小さい頃(昭和五十年代)には
技がいかにも「技」という感じで、取り組み一番のテ
ンポが子供の感覚にも快かったような気がする。今の
はなんだか格闘技格闘技していてつまらない。
今までは正直「気持ち悪い」と思っていた体操を観て
「きれいだな」と思ったのも今度が初めてである。「
高い」とか「速い」とか「まっすぐでブレない」とか
の「みどころ」がなんとなく分かってきたようである

かつて森末慎二が10点満点を出した時の鉄棒の演技
を現在の基準で採点すると、8.1とか8.2とか箸
にも棒にもかからない点数だそうである。
確かに当時の映像を見ると、特に着地などがもんのす
ごく原始的に映る。
体操がパソコンのスペックなみのものすごいスピード
で進化している業界だというのも新鮮な驚きだった。
それがなんてったって生身の体だからすごいやね。
でもシンクロナイズド・スイミングの魅力はいまだに
よく分からない。いつか急にたまらなくスキスキにな
ったりするのだろうか。

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2004年09月07日 22:36に投稿されたエントリーのページです。

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