スーさん、イギリスの音楽について語る

10月18日(木)

ソロ・クラリネットのCDを初めて購入した。
「ジョンソン・アンコールズ」と題された、イギリス出身のクラリネット奏者エンマ・ジョンソンのソロ・アルバムである。

彼女のことを知ったのは、NHKのBSプレミアムで録画したBSプレミアムシアターを見ていたときだった。
クラウディオ・アバドによる今年のルツェルン音楽祭と、アーノンクールによるベートーヴェンの「荘厳ミサ曲」が終わったところで、「これから2分間休憩します」のテロップとともに、ハープの伴奏に乗ってとてもきれいな曲が流れたのである。
曲目は、「組曲ヴィクトリアン・キッチン・ガーデンから夏」(リード)と表示されていた。演奏者は、クラリネット:エンマ・ジョンソン、ハープ:スカイラ・カンガ」とあった。
なんとも可憐な曲だった。
映像は、山と湖の景色を映し出していた。スイスとかオーストリアあたりであろうか。とにかく、音楽が映像にいかにもマッチしていた。

それもそのはずだった。
曲名で検索したところ、youtubeの動画のいくつかの他に、都響のティータイムコンサートを紹介したブログがヒットした。
その中に「ポール・リードはイギリスの作曲家。この作品は、イギリスBBC放送の自然や伝統料理文化を伝える為の番組のテーマ音楽として作曲された。特にクラリネット演奏で人気がある。」という解説を見つけた。
この組曲は、映像に付けた音楽だったのである。

作曲者のリードについても調べてみた。吹奏楽の作曲者なら知っていたから、ひょっとしてと思っていたが、どうやらそれらしき人物はヒットしなかった。
でも、イギリスでは著名な作曲家で、劇音楽など数多くの音楽を手がけているとのことだった。

「組曲ヴィクトリアン・キッチン・ガーデン」ということは、「夏」以外にも何曲かあるはずである。
youtubeの動画では、「夏」以外の4曲(「1.Prelude」、「2.Spring」、「3.Mists」、「4.Exotica」)も聴くことができる。
でも、せっかくなら初めて聴いたエンマ・ジョンソンの演奏で全曲が聴きたい。

さっそく、アマゾンでエンマ・ジョンソンを検索してみた。
いくつか手に入るCDはあったのだが、肝心の「ヴィクトリアン・キッチン・ガーデン」が入ったアルバム(「くまん蜂の飛行」)は、「再入荷見込みが立っていないため、現在ご注文を承っておりません」とのことだった。
何とも諦めきれない気持ちで、引き続きアマゾンをあれこれ検索していたところ、マーケットプレイスに中古品として出されているCDに、「ヴィクトリアン・キッチン・ガーデン」の入っているものを見つけた。
中古品ではあったが、どれも3千円以上の値段が付けられていた。でも、その半額以下の中古品があった。
「おお!」とさっそく注文しようとしたが、よく見ると「イギリスからの発送のため、商品発送から18日ほどお待ちくださいませ。また、全ての商品は厳重な検品作業のうえ発送しておりますので、安心してお買い求めくださいませ。」とあった。

え?イギリスから?
でも、ついその値段の安さのあまりに、「ええい!」と思い切って注文してみることにしたのであった。
それから2週間以上が経過した。だんだんと不安になってきた。ほんとうに送ってくるのだろうかとか、「別途航空運賃を請求いたします」とか通知が来たらどうしようとか。

確かに18日くらいが過ぎたある日、ポストに海外からの荷物が届いていた。
ひょっとして、と思いつつ開けてみると、はたして件のCDであった。中古品との触れ込みであったが、新品そのものであった。

さっそく聴いてみた。
「ヴィクトリアン・キッチン・ガーデン」は、いちばん最初に入っていた。全て聴いても10分とかからない組曲である。
1.Prelude
夜明けを思わせる始まりである。どんな一日になるのだろうという期待と、少しの不安が交錯する。
2.Spring
咲き乱れる花と小鳥の鳴き声。春になったうれしさが満ち溢れる。
3.Mists
立ち込める霧。緑の葉に浮かぶ雫。
4.Exotica
異国の踊りを思わせる旋律が、遠い異国への憧れを醸し出す。
5.Summer
夏が過ぎ、ひと夏の思い出を回想しているかのような懐かしい旋律。クラリネットという楽器が持つ音色の美しさが余すところなく表現されている。

このCD、「ヴィクトリアン・キッチン・ガーデン」以外にも、マリア・テレジア・フォン・パラディスの「シチリアーナ」や、モーツァルトの「ツァイーデ」より「Ruhe Sanft」など、いい曲がたくさん入っている。

それにしても、イギリスの、それもフランスに近いケルト海に浮かぶチャンネル諸島のジャージー島から送られてくるCDを手に入れられる時代になった。
どんな仕組みでそういうことができるのかはよくわからないのだけれど、まさに「有難い」ことである。