スーさん、過渡期について考える

2月27日(月)

2週続けて伊豆に行っていた。
観光?いーえ、違います。
18〜19日は熱海でソフトテニスの大会、26日は伊豆長岡で県選抜チームの練習会があったのである。

熱海の大会は、昨年まで県選抜チームのコーチを務めていたヤマガタ先生が、地元熱海のソフトテニス協会に働きかけて開催するようになった大会である。
もちろん、今回が栄えある第1回大会で、名付けて「熱海温泉カップ」。
県東部地区の学校を中心に、お隣り神奈川は小田原から、西部地区からは本校と、男子8チーム、女子6チームの計14チームが集まっての団体戦である。

浜松から熱海までは車で3時間ほどかかる。2日間の大会だから、当然土曜日は宿泊することになる。大会の名称のとおり、熱海の温泉に入らなければ参加する意味はない。
主催者が斡旋してくれたのは、試合会場までジョックで10分ほどの民宿。南熱海の長浜海岸のがすぐ目の前の宿である。中学生の宿泊ということで、それなりにリーズナブルな値段のところを紹介していただいた。

初日の開会式は午前10時。それに間に合うように東名浜松西インターに入ったのが7時。途中、富士川SAでトイレ休憩し、沼津ICから伊豆縦貫道、熱函道路を通って熱海へ。それにしても、熱海は神戸以上に「坂の町」だった。崖からすぐ海岸に下りるという感じだ。途中、有名な梅園の傍を通った。まだ梅は五分咲きとのことだった。観光ならば、すぐに途中下車して観梅としゃれ込みたいところだが、そこは我慢我慢。

試合会場には10時ちょっと前に到着。熱海マリーナのすぐ近くで、周りには大型のクルーザーがところ狭しと置かれている。椰子の木の向こうに海が見える、なんともトロピカルな雰囲気が感じられるテニスコートだ。
試合は、予選リーグと、その結果による決勝トーナメントである。勝っても負けても、2日間で少なくとも6試合はできるように組み合わせられていた。「研修大会」と銘打つ大会は、こうでなくてはならない。

試合が始まった。初戦は小田原のI中。同じような実力のペアが揃った攻撃的なチームだった。到着してすぐの試合ということもあってか、このチームには3ペアとも完敗。
続く第2、第3試合は、東部地区の実力校との対戦。それぞれ1ペアは勝つことができたが、他の2ペアが負けて、結果は予選リーグ全敗。ほぼ実力順にリーグが編成されていたこともあり、どのチームとの対戦もなかなか厳しい試合の連続だった。

初日は予選リーグまでということで、夕方まだ明るいうちにその日の宿へ向かう。
食事まで時間があったので、まずはお風呂へ。もちろん温泉である。海の近くということもあってか、塩辛い「塩泉」だった。
体が温まったので、保護者として車の運転をしてきてくれたハットリくんと、目の前の長浜海岸を散歩する。浜辺には鴎がたくさん群れていた。初島も望むことができた。
この日、伊豆長岡で行われていた県選抜チームの練習の面倒を見てくれていたオノちゃんが、夕方から合流することになっていた。せっかく伊豆まで行くので、ついでに熱海まで足を延ばして温泉に入って帰ろうという目論見らしい。
食事は中学生には贅沢なほどの料理だった。オノちゃんが合流すると聞いていたこともあってか、ヤマガタ先生からビールが差し入れられていた。感謝しつつ、盛り沢山な夕食をいただく。
国道135号を通る車の音が遅くまで聞こえていたが、夜も更けると車の音が波の音に変わった。その波の音を心地よく聞きつつ熟睡。

翌朝は、相模湾から昇る朝陽がきれいに見えた。
朝食をいただき、すぐに試合会場へ。2日目は決勝トーナメントであったが、前日の女子の予選リーグが一部残っていたということで、その試合を終えた後トーナメントに入るということであった。
それまで時間があったので、ハットリくん、オノちゃんと近くのファミレスでコーヒーでもということになった。昼までに浜松に戻らないといけないというオノちゃんが、一足先に熱海を後にしていった。
そのうちに決勝トーナメントが始まった。初戦の相手は県東部地区のN中。ジュニア上がりの選手を擁する実力のあるチームだ。結果は3ペアとも惨敗。順位戦に回ることになった。

それにしても、前日の試合から「なんかヘンだ」と思い続けていたことがあった。とにかく、対戦したどのチームもやたらと攻めが早いのである。後衛同士の打ち合いに前衛が絡むなどという展開はほとんどない。このところ、地区大会などでよく目にする試合が、ここでもさらに際立った形で展開されていた。
どうしてこんなふうになってしまったのだろう?
ラケットの質の向上はもちろん影響している。とにかく、ボールがよく飛ぶのである。そうなると、点を取るためには、前衛の近くに打ってミスをさせるのが手っ取り早い。前衛と後衛の駆け引きなど、ほとんどないのである。

ソフトテニスのおもしろさはいろいろあるだろうが、何と言っても「天下御免の雁行陣」で、前衛と後衛の駆け引きがその醍醐味と言ってよいだろう。
それが、いつのまにやら硬式テニスのダブルスのような「中衛並行陣」も出てくる展開になってしまった。
これは、ソフトテニスの「進歩」なのだろうか。
小学生のジュニアの大会では、とにかく勝つために後衛並行陣が大流行だと聞く。育てるのに時間がかかる前衛選手では、目の前の大会に勝てないということがそうさせるのだろうか。
でも、ジュニアの段階からでもきちんと前衛を育てているところもある。県選抜クラスの対戦では、そんなすばらしい動きをする前衛選手をたくさん見ることができる。ソフトテニスで得点を取るのは、あくまで前衛なのだという考えで育てているのだろうと思われる。
そういう前衛選手がネットに立ちはだかると、後衛はなかなか思うように打てないものなのだ。

ソフトテニスは、今はたぶん過渡期なのだろう。
今のようなスタイルが、今後の主流になっていくのかは誰にもわからない。10年後、20年後のソフトテニスのスタイルがどうなっているのかは、その時になってみなければわからないのだ。
でも、「天下御免の雁行陣」というプレースタイルは、必ず生き残っていくであろうし、生き残っていくようにしなければならないと思う。
そんなことをヤマガタ先生と話しながら、熱海を後にした。

さて。
先週末の金曜日は、夕方に神戸からヒラオさんが浜松入りされることになっていた。翌日の土曜日に、本校の校区健全育成会総会で講演をする予定になっていて、せっかく浜松に来られるのなら、前泊して支部のみんなと浜名湖の海の幸を堪能しましょうという計画が立てられていたのである。

その金曜日、定時で退庁して自宅に車を置きに行き、ヨッシーとともに浜松駅前に投宿したヒラオさんをお迎えに。
小宴の会場は、浜名湖畔の旗亭。夏に京都の先生方を招待していたく好評だった舞阪港近くの小料理店である。
午後7時過ぎには支部の面々も打ち揃って、その日上がったカツオや、浜名湖のサヨリの刺身に舌鼓を打つ。そのうちに、イワシの天ぷら、メヒカリの唐揚げ、タカアシガニのカニ味噌、アサリの天ぷらなどが次々と注文されていき、ヒラオさんのいろんなお話とともに、ビールが日本酒がどんどんと消費されていった。
知らぬ間に二更も過ぎて小宴もお開きとなったが、そのまま浜松駅方面にヒラオさんを送る面々は、「半荘一回だけどうですか?」と悪魔のささやきでヒラオさんを誘惑していた。

明けて土曜日、ヒラオさんをお迎えに行く。昨晩の首尾をお聞きすると、何とヒラオさんがトップだったとか。宜なるかな。
講演会場の小学校に到着して、校長室にて講演の時間を待つ。そのとき、ヒラオさんが「僕もこれ読んでるんですよ」とバッグから取り出したのが、『全ての装備を知恵に置き換えること』(石川直樹、集英社文庫)だった。何というシンクロニシティであろう!自分もつい最近購入したばかりで、読み始めたら止まらなくなって一気に3分の2ほど読んだばかりの本だったのである。
この本、ヒラオさんはアオヤマさんから紹介されたのだそうだ。自分は、確か管啓次郎さんのHPかなんかで著者のことを知ったと思う。この文庫本が出版されたのは今から3年前。決してつい最近出版されたものではない。その本をほぼ同じ時期に手にして読んでいたとは!ヒラオさんは、僕がこの本を読んだということをTwitterで知ったとのことだった。そんなツイートをつい23日にしたばかりだったのだ。
ひとしきりその本の話などをしているうちに、講演の時間となった。

体育館へ移動して講演を拝聴する。演題は、「スポーツが子供たちにもたらすもの」。
ご自身の競技経験を混じえながら、あまりに数値に管理される今日のスポーツ科学に疑問を投げかけ、子どもたちがスポーツを通して変容していく姿を紹介して、あっという間に1時間余りの講演は終わった。
お疲れさまの昼食は、もちろん鰻を食べようということで、その辺りでは評判のいい鰻屋さんへと出向いて、みんなでうな重をいただいた。関東風の蒸した蒲焼であったが、評判に違わない美味しい鰻であった。

そのままヒラオさんを駅まで送って、いったん自宅に帰り、稽古着を積み込んで浜名湖道場へ。
前日の夜から、北総合気会の山田師範が来浜されていたのである。とにかく、たとえ1時間でも師範の稽古は受けておきたかった。
実は、土曜日は夕方から髪を切る予定にもなっていた。いつものお店に連絡したところ、土曜日の夕方5時からなら何とかやってくれるとのことだったのだ。泣く泣く稽古を途中で切り上げ、急いで件のお店へ。
何とも慌ただしい一日だった。

そうして日曜日。
早朝から、オノちゃんのアルファードで伊豆長岡へ。県選抜チームの練習である。
この日は、沼津のスガイ先生のご配慮で、M高校の選手たちが参加してくれていた。高校生たちと一緒に、午前中は練習を、午後は試合をしてもらった。相変わらず課題も多いが、だんだんとレベルアップしてきていることも実感できた。

次の土曜日は、その選抜チームとともに岐阜県への遠征、さらにその次の土曜日は滋賀県の長浜への遠征が予定されている。
このまま3月の終わりまで、そんな週末が続く。