スーさん、梅雨空に思う

6月21日(火)

土曜日は、前週に雨で延期になった県中学生ソフトテニス選手権大会。会場は富士山の麓、富士宮市民テニスコートである。

この日、浜松は朝から曇っていた。富士宮への道中は、小雨が降っているところもあった。富士宮市に到着すると、道端のいたる所に水たまりができている。つい今しがた雨がやんだばかりという感じだった。会場のテニスコートは、グリーンクレーのサーフェスである。水はけは、さすがに人工芝のコートには敵わない。試合ができるのか心配だった。
会場に到着して試合前の練習が終わり、さて開会式というときに小雨が降ってきた。コートは10面あったが、そのうちの2面はコートコンディションが悪く使用できないとのことで、とりあえずは8面で、ゲームは全て5ゲームマッチで試合進行するとのことであった。

本校から参加したのは2ペア。うち、大将ペアは初戦を難なく突破したが、もう1ペアは初戦で敗退してしまった。互いに1ゲームずつを取り合った3ゲーム目を、競った末に落としたのが敗因であろう。5ゲームマッチのような短いゲームでは、相手のマッチゲームを先にリードされると、なかなか挽回することが難しい。それなりに技術は持っているペアなのだが、残念ながらその持てる力を十分発揮できずじまいの敗退だった。

雨は降ったり止んだりを繰り返していた。でも、コートに水が溜まるほどではなかったので、試合は中断することなく進行した。
大将ペアは2回戦がタイブレークになったものの、そのタイブレークは終始リードを保って勝ち、3回戦も苦戦することなく突破してベスト16。
ベスト8をかけた4回戦の相手は、サウスポーの後衛選手が県選抜チームに入っていたペアであった。相手の特徴はほぼわかっていたのだが、対応が後手に回った。ようやくこちらの打つ手が奏効し始めて1ゲームは奪ったものの、続くゲームはこちらがイージーミスを繰り返し、そのままゲームセット。やりようによっては勝てるチャンスも十分にあったと思われる敗戦だった。

準々決勝を横目で見ながら引き上げる準備をしていたのだが、勝ち残っている県選抜チームのペアの動向も気になっていた。コートでは、都道府県対抗戦に出場予定だった2ペアが試合をしていた。このころから雨がひどくなり始めた。その2ペアは、どちらも強打の後衛ペアである。しかし、この雨の中ではその強打が鳴りを潜めてしまうのではないかと心配していた。案の定、そんな展開になっていた。
その2ペアのうち、まず1ペアが敗退した。破ったのはシンムラくんとこのペアである。シンムラくんとこのペアは、このペアに勝つためにはこれしかないという戦術を徹底していた。失うものは何もないとばかりに向かっていった結果であろう。
もう1ペアも、先にゲームカウントをリードされて苦しい展開が見て取れた。ようやくタイブレークに持ち込んだところまでを見て試合会場を後にした。
後で結果を聞くと、そのペアも準決勝で敗退してしまったとのことだった。優勝は、県選抜チームに後衛選手だけが入っていたペア。シンムラくんとこが準優勝だったそうだ。

結果については、いろいろと考えられることがある。
まずは天候。
ソフトテニス場合、使用するのがゴムボールであるため、ボールに水滴や土、砂が付着すると、回転のかけ方によってはボールがホップしてしまうような現象が出来する。つまり、雨の日の試合は強打を誇る選手たちにとっては鬼門なのだ。もちろん、県選抜チームに選ばれるほどの選手だから、力を抑え気味にボールをコントロールする術も心得てはいるであろう。しかし、そんな試合ぶりはどうしても普段どおりの力が発揮されにくいであろうし、全力で向かってくる相手にはなかなか太刀打ちできないであろう。
県選抜チームの中心になっていたペアたちが優勝できなかったのは、そんなことが理由として考えられるのかもしれない。

二つ目は準備。
県選手権は、例年6月第1週の土曜日に開催されてきた。ほとんどの学校がそうであろうと思われるのだが、6月第3週はテストの週である。現に、県選抜チームのある選手に聞いたところ、「先週の日曜日からテスト休みだったんで、テスト勉強は思いっきりやりましたけど、練習はほとんどやってません」とのことだった。
本校もそうだった。先週の試合が雨で延期されたので、練習ができたのはテストが終わった試合前日の金曜日だけだった。
もちろん、試合前に練習などしなくとも、実力があるならばそれなりの試合はできるであろうが、でき得ればちゃんと練習を行った状態で試合には臨みたいものだ。そんな準備不足が、結果に結びついたということも考えられはしないか。

三つ目は前衛選手の問題。
今週月曜日、試合結果について沼津K学園高のスガイ先生と、ウェブ上のツールで簡単なディスカッションをした。高校生の試合でも、「打球力のある選手が前衛選手にボールをぶつけてくる」試合が多いのだそうだ。そうした方が勝てるからだ。
でも、いい前衛選手ならば、たとえそうやってぶつけられてもきちんとディフェンスするであろう。それができないから、相手に点を取られることになる。そんな前衛にぶつけるテニスが展開されるのは、「よい前衛選手がいない」からなのだ。
これは、県選抜選手を選考していく段階でも痛切に感じていることである。おそらくジュニア(小学生)で勝つためには、やはり育成に時間がかかる前衛選手を育てるより、とりあえず打球力のある後衛選手を育てた方が手っ取り早く勝ちやすいということで、いきおいジュニア育ちの選手でも、アスリートは後衛選手ばかりになるという事情も手伝っていると思われる。
ソフトテニスの競技としての面白さの一つは、何と言っても前衛選手のプレーの華やかさにある。前衛選手に「花」があってこそ、試合は盛り上がるのである。
前衛選手が育ってこないのは、もちろんジュニアの指導だけの問題だけでなく、わたしたち中学校部活動の顧問の指導にも問題があるということであろう。いい前衛選手を育てるような指導をしていないということなのである。

さて、夏の県大会まであと1ヶ月あまりとなった。
浜松市では、来月早々から夏季大会の予選が始まる。毎週のように試合が予定されている。そうして選ばれた選手たちが県大会に集う。
もちろん、来る県大会では、今回悔しい思いをした有力な選手たちが捲土重来を期してくるであろう。むしろ、今回の結果が、県選抜選手を含む県内有力選手たちの闘争心に火をつけたことになるのかもしれない。
もちろん、本校の選手たちも手を拱いているわけではない。それなりに準備はして大会に臨ませるつもりである。

まだ梅雨は明けないが、梅雨前線の上の空は晴れ渡った夏空が広がっているはずである。
そんな夏空のようなすっきりとした試合ができるよう、これからの日々の練習を積み重ねていきたい。