スーさん、映画を見る

5月23日(月)

週末は、久しぶりに土曜日が休みだった家内と映画へ。
「阪急電車」か「英国王のスピーチ」を見ようと思っていたのだが、後者は上映が1日1回夕方からの上映だったので諦め、「阪急電車」を見に行くことにした。
上映時間は午後3時ちょっと前。自宅で昼食を食べ、ゆっくり出かけるにはちょうどいい時間だ。
上映している映画館は、お隣りの磐田市にあるシネコン。東名のPAからスマートICでそのままシネコンのあるショッピングセンターへと入れるようになっている。
昼食時、例によってクリアアサヒを飲んだ夫に代わってプリウスを運転する妻。件のスマートICを出ると、そのまま地下駐車場に誘導されるようになっていたが、地下駐車場には入らず、ぐるっと回ってタワー駐車場へ入れることにした。何と、シネコンはその駐車場のすぐ隣だった。

例によって、「夫婦50歳以上割引」でチケットは一人千円ちょうど。いちばん後ろの席をお願いしてスクリーンへ。
観客は10名程度。公開されてしばらくになる(3週間)だろうから、こんなものなのだろう。自分たち同様の年齢層のカップルが目についた。
原作は読んでいたので、大凡のあらすじは知っていた。同じく最近この映画を見たというオノちゃんからは、「関学が出てきますよ」と教えられていた。
どんな感じなのだろうと期待をしているうちに映画が始まった。

阪急今津線。懐かしい路線だ。
自分の学生時代には、今津から宝塚までを結んでいた(例えば甲東園駅からは西宮北口で乗り換えなくても今津まで行けた)。現在のような西宮北口で折り返し運転になったのは、昭和59年のことだそうだ。

自分の場合は、大学の下宿を探すのが遅くて、それこそ3月の春休みに入ってから探したこともあって、大学近くの下宿は全く空きがなかった。ようやくのことで見つけたのが、宝塚駅から山を上った住宅地の離れにある下宿。
大学入学当初は、宝塚駅から今津線を利用して仁川駅まで、駅からは仁川沿いに歩いて大学の正門前へという毎日だった。
宝塚の下宿は、山の中ということもあり、夜寝る前にふと窓のところ見ると大きなムカデが出現していたりするようなところだった。駅から山を上らないといけないというのもしんどかった。

もっと大学の近くの下宿に替わりたいと思っていた矢先、所属していたクラブの先輩が、「ウチの下宿、一部屋空くで。よかったら来いや」と誘ってくださった。一も二もなかった。大学が夏休みに入ると同時に引っ越した。荷物などほとんどないに等しい状態だったから、引越しは簡単に済んだ。
その下宿は、ほんとうに大学のすぐ裏だった。学部の教室までは、走れば5分というくらいの近さだった。高等部のテニスコートがすぐ目の前にあった。よく知らなかったが、水上競技部の合宿所も兼ねているとのことだった。そのためか、いろんな怖い先輩がいるという話も聞いた(実際、怖い先輩もいた)し、体育会的な雰囲気で有名な下宿だとも聞いていた。
だが、そんなことは宝塚のムカデ下宿のことを思えば、何ということはなかった。

下宿が替わると、生活のほとんどのことは大学のあった上ヶ原で済んでしまうため、今津線を利用するのはどこかへ出掛けるときだけになった。乗降駅は甲東園駅。
この駅から大学の正門前まではバスが出ていたが、ほとんど利用したことはなかった。
駅から坂道や階段をふうふう言いながら上って、県立西宮高校のところへ出ると、春はそこから大学の正門前までが見事な桜並木だ。その桜並木のずっと奥に、背後の甲山を借景にした大学の時計台が見える。もちろん、ヴォーリズはそこまで考えて時計台を配置したに相違ない。
どこかへ出かけていても、県西高のところからこの時計台を見ると、いつもなんだかほっとした気持ち、まるで自分の家に帰ってきたような気持ちになるのが不思議だった。
甲東園駅と言えば思い出すのが、たまにクラブの先輩たちとよく立ち寄った「甲楽」という中華のお店。ここの餃子はほんとうにおいしかった。今でもあるのだろうか。

今津線と言われるほどに、終点の今津駅は、知る人ぞ知る今津中学校があったところだ。
かつて、得津武史先生率いる今津中学校吹奏楽部は、全日本吹奏楽コンクールにおいて、前人未到の金賞15回を成し遂げた名門中の名門吹奏楽部だったのである。
自分が現役の時も得津先生はもちろんご健在で、4年生の時の関西大会前には、今津中学校と一緒に会場である大阪森ノ宮青少年ホールを借りてリハーサルを行ったこともあった。
練習終了後、先生に恐る恐る「どうでしたか?」と尋ねると、「なんや、ようわからんけど、ええんちゃうか。ええ曲やんか」と言っていただいたことを思い出す。

かように、大学時代の思い出とともに今津線は忘れ難い路線なのだった。
いや、大学を卒業してからも今津線とはご縁があった。
学生時代には一度も下車したことがなかった門戸厄神駅で降りる機会ができたことだ。

そんなことを思い出しながら「阪急電車」を見ていた。
ほっこりした気分になった。