スーさん、コミュニケーション能力について考える

12月6日(月)

先週の木曜日、浜松市では中学1,2年生を対象に、国語・数学・英語の「学習内容定着度調査」が実施された。
自分は、中学2年生の国語を採点したのだが、そこでいくつか気がついたことがあったので書き留めておきたい。

最初の問題は、放送による問題。体育大会時の連絡放送を聞いて、質問に答えるという形式の問題である。
放送内容は、こんな感じ。
「保健委員は健康観察を、体育委員は欠席者がいた場合に代理選手を決めること、その際には担任の先生とよく相談すること。応援席へ持って行く物は、弁当・水筒・タオル。集合完了時刻は8時35分、入場行進は45分、開会式は50分から。」
続いて発問。
問1、体育委員の仕事は?、問2、その際に注意すべきことは?、問3、持っていくものは?、問4、集合完了時刻は?
ちゃんと聞いてメモを取っていれば、何ら間違えようのない問題である。
ところが、採点してみると、問1では「健康観察」という答えが少なからずあった。確かに、「保健委員」か「体育委員」かは間違えやすいところなのかもしれないが、それでもちゃんと聞いてメモしていれば間違えるような発問ではない。

続いて、問題番号三は、文章中の漢字の誤りを2箇所訂正する問題。「対称的」→「対照的」、「感心」→「関心」と訂正するのだけれど、これがあまりできなかった。

さらに、問題番号五、熟語の構成が同じものを語群から選ぶ問題である。以下、よろしければやってみていただきたい。
①往復、②読書、③未熟、が問題。語群は、ア骨折、イ投球、ウ温暖、エ勝負、オ新人、カ無限。さて、答えは?
最も正答率が低かったのは①往復。反対の意味の語による熟語構成あることが理解できなかったようだ。

問題番号六は、文法の問題。特に、文中から活用する単語を選ぶ問題の正答率が低かった。問題文は、「明日、わたしは早く起きる。」である。活用する単語は、「早く」(「早い」…形容詞、「起きる」…動詞)の二つである。どうやら、「活用する単語」というのが理解できていなかった模様だ。「わたし」や、助詞の「は」を書いた答えも目立った。「わたし」がどうやって活用するというのだろう。でも、これは教えた側も反省材料である。

最後は作文の問題。小・中・高生の「なりたい職業ベスト5」というアンケート表を見て、前半段落で「表を見て気づいたこと」を、後半段落で「それについて自分が考えたこと」を、140字以上180字以内で書く問題である。ここでは、文体の不統一(常体と敬体の交ぜ書き)による減点が目についた。

まとめてみる。
課題その1…「関係性を見つける」
熟語の構成を見つけ、それと同様の構成語を見つける問題というのは、なかなか難しい問題なのであろう。これは単に、反対語とか類語を書く問題とは違う。2語の関係性を見出し、その関係性にある熟語を見つけるという、知的レベルが一段高い操作を要求される問題だからである。
そういう能力を、授業でいかに身に付けさせるか。これは、今後の重要な課題の一つとしてとらえたい。

課題その2…「同音異義語」
そのことと関連があるのかどうかはわからないが、漢字の訂正問題では、同音異義語をあまり知らないということも気になった。
ワープロソフト全盛の時代だから、漢字を書いて覚えるということは必要ないとお考えの向きもあろう。が、同音異義語を正しく知らなければ、変換候補の中から正しい漢字を選択することはできない。正しい選択ができなければ、それは誤記となる。

課題その3…「聞く力」
聞いているようなフリをして、実際には聞くべきことを聞いていないということが問題である。
基本的に、相手の言う事を正しく聞き取ることができなければ、それに対して適切な反応を返すことはできないであろう。つまり、メッセージの受信装置の感度が悪ければ、もちろん発信もできないということである。
これは、コミュニケーションの基本に関わる重要な問題である。授業では、毎時間の始めにテーマを与えての簡単なスピーチをやらせているが、それだけでは聞く力は涵養されない。具体的にどうするか考えたい。

課題その4…「作文」
常体と敬体を交ぜ書きにするということも含め、問題は「誰に向けて書いている文章か」ということが自覚されていないということである。
例えば、「北朝鮮はいきなり砲撃をするとか、ヤメてほしいです」というようなことをスピーチした場合、それが誰に向けてのスピーチかということがはっきりしていないと、その言語は発せられた瞬間に雲散霧消してしまう。誰の胸にも届いていかないということだ。
作文についてもまったく同様で、常に読み手を想定し、その読み手ができるだけ読みやすいように書くことが基本となろう。つまり、想定される読者へのリスペクトがあれば、文体が不統一のままの文章は書かないということなのである。
これは、今後の作文指導の中でいちいち指摘しながら指導していくことが必要であろう。

もちろん、これは本校生徒の実態であって、全国の中学生の実態であるというわけではない。
ただ、気になったのは、「現在の中学生のコミュニケーション能力は低下しているのだろうか?」ということである。例えば、「キミ、足いくつ?」と聞かれて、「24.5だよ」と答えるのではなく、「2本」と答えるような生徒が増えてはいないだろうか、という懸念である。
こういう実態というのは、何によって調査可能であろうか。もしもそんな調査があるのなら、ぜひどこかで実施していただきたいと思う。
そうして、具体的なコミュニケーションの取り方に何らかの齟齬が見られるというのであれば、至急それへの対処法を考えていかなければならないであろう。
とりあえず、自分は本校生徒たちのためにやれることから始めるつもりだ。