スーさん、梅雨どきにテニスと読書する

6月28日(月)

土曜日は、県選抜チームのコーチを務めてくれたヤマガタ先生が、自チームを率いて来浜するとのことで、シンムラくんが中心になって練習マッチが計画されていた。
熱海在住のヤマガタ先生は、今春の異動で伊東市内の中学校から、かの城ヶ崎海岸近くにある中学校へと転勤された。以前から浜松へ練習マッチに来たいということで、シンムラくんとも連絡を取り合っていたらしいのだが、ようやくそれが実現の運びとなったのである。
が、この日は朝からあいにくの雨模様。これじゃあ中止だよなあと思っていたところ、7時過ぎにシンムラくんから、「決行したいと思います」とのメールが入った。「え?やんの?」と思いつつも、とりあえず支度をして練習マッチの会場であるS中へと向かう。

S中に着くと、雨中にもかかわらず、本校の選手たちも含めてコートでボールを打っている。コートの傍らにシンムラくんと会場校顧問のヤマモト先生がいた。車から降りて、「だからさあ、これじゃあ無理だってば。ヤマガタくん、こっちへ向かってんの?」と聞くと、「先ほど牧之原を通過したって連絡ありました」とシンムラくん。どうやら、小型バスを貸切って向かっているらしい。それじゃあ、そう簡単に帰ってもらうわけにはいかない。最悪の場合、本校体育館で練習することも頭の片隅に入れつつ、コート状態を確認してみた。4面のうち、何とか2面は使用に耐えそうだった。シンムラ、ヤマモト両先生と具体的な試合方法について確認しつつ、ヤマガタくんの到着を待った。

9時ちょっと過ぎ、件のバスが到着した。ヤマガタくんと会うのは、3月末の都道府県対抗戦以来。交通費の負担軽減のため、1年生まで連れてきたとのことだった。「ま、雨がひどくなったら、舘山寺温泉の遊園地にでも行けば」などと話していると、雨が小止みになってきた。「10時過ぎからは雨が止むって、ヤフーの天気で確認しました」とヤマガタくん。すぐに試合を始めることにした。
本校の最初の対戦相手は、そのヤマガタくんとこのチームである伊東T中。どうやら、硬式あがりの選手が多いような印象だった。2年生後衛で今後が楽しみな選手もいて、じっくり育てればいいチームになると思われた。
続いての対戦は、会場校であるS中。こことは、学校が隣同士ということもあり、今までも何度か練習マッチを行っている。今回は、次週が市内大会の団体戦予選リーグということもあって、実戦で大切になる心構えや具体的な戦術など、細かいところを意識してマッチに取り組むよう選手たちには指示しておいた。3年生はそれなりに意識していることが窺われたが、2年生の意識が低かった。下級生というのはそんなものなのかもしれない。「自分たちにはまだ来年があるから」というのが、どうしても無意識下で行動となってあらわれてしまうのであろう。そんな緩慢プレーに活を入れつつ、午前中が終了した。

昼食は、S中近くの中華料理店。このお店は餃子が美味しい。その餃子に舌鼓を打ちつつ、ヤマガタくんからは近況などを聞く。しかし、ちょうど昼食を食べ終わる頃になって雨脚が強くなってきた。コートに戻ったが、はたしてコートコンディションはとても使用できる状態ではなかった。最早これまでということで、練習マッチは中止となる。伊東へ帰るヤマガタくんからは、伊豆の干物と塩辛をいただいた。
こちらに来るときには、東名浜松ICで降りてきたということだったが、S中からなら圧倒的に浜松西ICの方が近いということで、バスを東名浜松西ICまで先導することになった。「では、次は8月に浜松で」ということで、ヤマガタくんは車上の人となった。今年から、例年浜松にて開催している新人研修大会に来てもらうことにしたのだ。

自宅に帰って雨に濡れたシャツを着替え、まもなく昼寝。夕方からは、久しぶりに支部定例会が予定されていた。
哺時、雨ということもあって、シンムラくんが自宅まで迎えに来てくれた。最近よく行くようになった全品280円居酒屋にての小宴である。シンムラくんの新婚生活ぶりなどをアテにしながら、あれやこれやと飲みかつ食べても一人2500円程度。安上がりな宴会である。
すぐに河岸をいつもの雀荘へと変えて、東回しを5回ほど。今回もトップはオノちゃん。沈んだのはヤイリくんと「怪獣」ヒロノくん、シンムラくんが可愛く凹み、支部長が可愛くプラった。

明けて日曜日は小雨の朝。前夜来の雨で、とてもコートは使えそうにあるまいと思っていたところ、コートの状況を見に行ってくれた副顧問のワタナベ先生から連絡があって、「やっぱコートは使えそうにありません」ということだったので、部長のところに電話を入れて練習はお休み。
こうやって、雨の日にのんびり過ごす休日も貴重な時間である。昼前、買い物に出たついでにいつもの書店に立ち寄ってみると、先週の木曜日からレンタルを開始した『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』が2本もあった。どのレンタルビデオ店でも「レンタル中」だったから、喜び勇んですかさずレジへ。コンビニで昼食を購入して家に帰り、午後はその『ヱヴァ』をじっくり見る。この巻からアスカが登場するのだ(苗字が変わってたけど)。でも、そのアスカがどうなったのか判明しないままに映画は終了してしまった。おい、アスカはどうなったんだようと思っていたら、「次回予告」で眼帯をして登場していたので少し安心。でも、映画自体は前評判ほどでもなかったという印象だった。

『ヱヴァ』を見終わってしばらく午睡。昼寝の後は読書がはかどる。今回は永井荷風の『墨東綺譚』(岩波文庫)。『断腸亭日乗』を読んでいたので、何やらその裏話を読んでいるような感じがした。小説の中身よりも、あとがきの「作後贅言」がよかった。
“現代人がいかなる処、いかなる場合にもいかに甚しく優越を争おうとしているかは、路地裏の鮓屋においても直にこれを見ることができる。彼らは店の内が込んでいると見るや、忽ち鋭い眼付になって、空席を見出すと共に人込みを押分けて驀進する。物をあつらえるにも人に先んじようとして大声を揚げ、卓子を叩き、杖で床を突いて、給仕人を呼ぶ。中にはそれさえ待ち切れず立って料理場を窺き、直接料理人に命令するものもある。(…)何事をなすにも訓練が必要である。彼らはわれわれの如く徒歩して通学した者とはちがって、小学校に通う時から雑沓する電車に飛乗り、雑沓する百貨店や活動小屋の階段を上下して先を争うことに能く馴らされている。自分の名を売るためには、自ら進んで全級の生徒を代表し、時の大臣や顕官に手紙を送る事を少しも恐れていない。自分から子供は無邪気だから何をしてもよい、何をしても咎められる理由はないものと解釈している。こういう子供が成長すれば人より先に学位を得んとし、人より先に職を求めんとし、人より先に富をつくろうとする。この努力が彼らの一生で、その外には何物もない。”(176〜177頁)

昔も今も、人のすることに変わりはない。
このところ、洋の東西を問わず、昔の人が書いた本を読むたびにそんな思いを強くしている。