4月12日(月)
いつもながら慌ただしい一週間だった。
この間の教務の大事な仕事は、時間割を組むことである。
昔は、時間割プロジェクトチームが毎日夜遅くまで学校に残ってコマ組みをしていた。麻雀牌のようなコマを多数用意して、それを数人で時間割黒板に嵌め込んでいくのである。当然のこととして、学級数の多い学校ほど組むのに時間を要した。
それを今はパソコンで行う。本校で使用している時間割作成ためのソフトウエアは「時恵3」と言う。通称(って誰も言わないけど)「トキエサン」。これがなかなかどうしてスグレもののソフトである。使い慣れてくると、あれこれ細かく条件設定をしてもなんとかコマを収めてくれる(そうならない場合も多々あるけど)。
たぶん、どこの学校でもこうして時間割作成ソフトを使用して時間割を作成するようになっていると思われるが、そうなると困ったことが出来する。時間割を一人で作成しなければならなくなってしまうことから、そのソフトの使用法に習熟している人間がその学校に一人だけになってしまうということである。
一昨年に教務主任を拝命したときには、前年度の教務がほとんど時間割を作成してくれてあった。変更点が生じたときも、ほんのちょっと手直しすれば何とかなった。
昨年はそうはいかなかったから、必要に迫られて「トキエサン」のマニュアルを熟読しながら、初期設定から時間割を作成してみた。しかし、途中でうまくいかなくなることも多く、その度にうーむうーむと唸りつつ、あれやこれやと設定のし直しをしながら、何とか時間割を作成したという経緯があった。
おかげで、ソフトの扱いにはずいぶんと習熟することができた。コマ嵌めの自動作成と手動入れ替えとをうまく使い分けることや、限られた曜日にしか出勤しないALTなどは固定コマにすることでTTを組みやすくすることなど、マニュアルにはなかなか記載されていないようなテクニックも覚えることができた。
てなわけで、今春はある程度余裕を持って時間割に取り組めると思っていた。順調にコマの設定をして、だいたいこれでよかろうというところで「自動作成」ボタンをポチっとすると、「トキエサン」は「コマの設定に異常がありますが強行しますか?」という挑戦的なメッセージを返してきた。「ん?コマの異常だとお?なーに抜かしてやがんでい、どこが異常ってんだあ?」と、なぜか「トキエサン」には強気な態度に出たのだが、調べてみると2,3年生の総時間数が週のコマ数(29)よりも1時間ずつ多くなっていることが判明した。
理由がよくわからなかった。もう一度一人一人の持ち時間数等をチェックしながら確認してみた。おかしなところはなかった。2,3年生だけの時数だけが1コマ多いってことは、2,3年生はやっていて1年生がやっていないコマに原因がありそうだ。該当するのは選択教科と総合的な学習の時間である。さっそく確認してみた。
わかった。選択教科が1時間多く設定されていたのだ。
現在の学習指導要領は、平成24年度の完全実施に向けて移行期に入っている。今年は、中学2年生の理科と3年生の数学の時数がそれぞれ1時間ずつ増加されていた。それはわかっていた。でも、増時数する教科があるのならそれに見合う減時数教科がなければコマは埋まらない。指導要領では選択教科を減らすよう指示されていた。それを見落としていた。
本校は、完全実施時のコマ数を見越して週29コマで時間割を組んでいる。だから、「ちょっとくらい増えたってコマは埋まるさ」という楽観があった。それが災いした。2,3年生の選択教科の時数を減らし忘れていたのだ。
すぐにコマの変更をして確認すると、コマ数の異常はなくなっていた。すかさず自動作成ボタンをポチっとしてみた。もちろん、自動作成の際には「長時間試行する」にチェックを入れてある。程なく、「残り0コマ」の表示が出た。すぐにセーブする。
次は、新採教員用のコマ設定を追加してみた。本校には今年新規採用教員が1名配置された。時間割を組むのには新採はとても大きなネックになる。年間を通して行われる新規採用教員研修会のため、2週間に一度は木曜日が終日出張になるし、週に一度訪問してくる指導教官との「基本研修」の時間を2時間と、授業研究の時間を1時間、計3時間を時間割の中に位置づけなければならなかった。本校の新採の教科は家庭科である。家庭科は技術科とセットで2時間続きのコマを設定する。時間割を組む際には、まず2クラス抱合せで2時間続きの教科からコマが嵌っていく。その教科にさらに条件が付くのだ。コマが嵌るか心配だった。
そのコマ設定をしてチェックを入れ、コマの異常がないことを確認して「自動作成」をポチっとしてみた。前回と違って、残り3駒くらいからいつまでたっても減っていかない。画面を見ると、パソコンがあれこれあれこれ高速で駒を移動させているのがわかる。「残り2駒」となったところで終了した。諦めたのだ。こういうときは、何度か操作を繰り返すことでコマが嵌る時がある。そうなってほしいと念じつつ、何回かポチッを繰り返してみた。でも、ダメだ。どうしても残り2駒から動かない。
かくなる上は、設定を変えるしかない。
もう一度、校内での新採研修の時間設定を見直し、緩められそうなところを変更してみた。そうして「自動作成」ポチッ。あれこれあれこれあれこれあれこれ…。「残り1駒」で終了してしまった。これまた何度やっても結果は同じ。
三度、設定の変更を試みた。選択教科の持ち時数をなくしてみたのだ。それいけポチッ。
あれこれあれこれ、チ〜ン。「残り0駒」。やったやった!ついに嵌った。もちろんすぐにセーブ。
このままで「全体表」とか、個々の先生用の時間割とかも印刷できるのだけれど、本校では基本的に出張等による授業未実施を避けるため、できるだけ他教科と振り替えて授業を実施するようにしている。その変更が多いため、毎週末に次週の授業予定(時間割)を教務が先生方と学級に配布するようにしているのだ。
その時間割はエクセルで作成されている。「トキエサン」のデータをそのままエクセルに移せればいいのだけれど、それができない。仕方がないので、「トキエサン」の全体表を見ながら一つずつ手入力をしていくことになる。これが面倒で、時には入力ミスも出る。しかも、時間割のヴァージョンを変更するたびに打ち直さなければならない。今回はこの作業を4回ほどやった。
ともかくも、こうして何とか前期の時間割は「試行版」が完成した。これで実際に運用してみて、不具合等があればそれを是正していくことになる。
でも、学校というのは基本的に授業をする場所である。新年度のいろいろな準備もあるだろうが、何よりもまず授業を始めることこそ肝要である。
だから、授業をしない者は基本的に教員とは呼ばない。
明日、初めての授業がある。
今年は中2の国語を担当する。
いちばんはじめの授業、これこそ1年間のすべてを決定する。
ああ、早く授業をやりたい。今年の生徒たちとの出会いが楽しみである。