スーさん、敗戦を語る

3月29日(月)

3日間にわたった都道府県対抗戦が終わった。
今年も、目標としていた団体戦の1勝を挙げることができなかった。
どころか、個人戦で1ペアが1勝しただけという惨敗に終わった。
もちろん、結果の責任はすべて監督にあるわけで、既に県中体連のソフトテニス専門部長には監督更迭の進退伺を申し出てある。
プロの選手というわけではないので結果がすべてというわけではないが、昨年末から3ヶ月の余、それぞれの中学校から大切な選手を借り受けて指導してきたわけで、それについてはそれなりの結果を以て応えるということも必要であろう。
ほんとうに申し訳なく思う。

確かに、チーム発足時に比べれば、どの選手もずいぶんと上達した。他府県チームと対戦しても、だんだんと勝つことができるようになってきていた。
特に、2月の岐阜遠征や、つい10日ほど前の長浜遠征では、Uー14の選手を相手にしてもそれなりのゲームができるようになっていたのだ。
自然と期待も膨らみ、「あとは組み合わせ次第で…」と思っていた。
しかし、いざ蓋を開けてみると、選手たちは10日前とは別人のように恐る恐る試合をしていた。

特に、配球してゲームをつくる役の後衛選手が、要所でイージーミスを繰り返した。
後衛選手の動揺は、もちろんネット付近でプレーする前衛選手にも影響する。ある程度の期間ペアを組んで試合もやっていると、そのくらいのことは察知できてしまうのである。そうすると、前衛選手もイージーなスマッシュをネットに掛けたりするようなミスをするようになってくるのだ。
もちろん、試合はこちらが一方的にミスをするということはない。相手も同じようにイージーなミスを犯すこともある。そこから流れが変わって、モメンタムを引き寄せることもある。
だが今回は、せっかくの相手もミスも、こちらがさらに上乗せのミスを繰り返すことで、モメンタムを掴むことはできなかった。

どうしてこうなってしまったのだろう。
選手の性格的な問題もあろう。でも、それをいい方向に導くのは指導者の役割である。
今年の選手たちは、どちらかと言えばおとなしい選手が多かった。練習は真面目にこなすが、大きな声で盛り上げたり、笑わせてくれたりする選手がほとんどいなかった。
何とかそんなところを改善させようと、コーチ陣も手を尽くしてはみたが、捗々しい改善は得られなかった。そんなチームの雰囲気も、今回の試合結果に現れていたと思う。
でも、これはとても難しい問題だ。
学校の部活動のように、ほとんど毎日選手に接していればメンタル面でのタフネスを鍛えるように指導していくことはできるが、選抜チームではそうはいかない。
そういうところは、各学校の顧問なりコーチなりの指導にお任せするしかない。ところが、そんな指導がほとんど期待できないところも、学校によってはあるという実情を保護者から聞かされた。
実際のところはどうか確認したわけではないが、例えば「選抜の練習に行くんなら、残った部員が何をすればいいかメニューを考えておけ」などと顧問から言われるのだそうだ。それって、まったく役割が逆ではないか。あるいは、月に1回来るか来ないかのコーチに、試合当日のベンチ入りをお願いする顧問とか。

昨年もそうだったが、都道府県対抗戦が終わって、6月の県選手権や夏の中体連県大会で選抜の選手たちと顔を合わせると、選手たちは必ず自分のところへやって来ては、あれやこれやと現状を報告してくれた。
でも、当然その会場に来ていたはずの顧問の先生からは、「選抜チームでお世話になりました」などという挨拶やお礼はまったくと言っていいほど耳にすることはなかった。
そうやって愚痴ると、コーチのオノダくんから「またまた〜、いいじゃん、何も見返りなんてなくたって」と諭されてしまうのだが、やはり該当選手をふだんから指導している顧問やコーチと、十分な情報交換の機会を持つことは必要なことだったと思う。

もう一つは、ジュニア選手育成の問題であろうか。都道府県対抗戦で勝つためには、ジュニアでの試合経験豊富な選手を起用するのが最も近道である。それなくしては、これだけジュニアのレベルが高く、どの県にもジュニア出身の選手がどんどん出てきている実情を考えれば、勝利を得ようというのは至難の業であろう。
そんなことはわかっている。
でも、それを何とかしていくためには、県連盟も中体連競技部も巻き込んで、組織的な選手育成を展開していかなければならない。時間がかかるのだ。
今後10年間監督をやれというのであれば、そのためのお膳立てを含めて、何とか手を打っていくかもしれないが、そこまでして勝利を目指そうとは思わない。だって、小学校時代はいろんなスポーツを経験した方がいいではないか。
とりあえずは、手持ちの駒ででき得る精一杯のことをするまでだ。

大会会場で、旧知の某県の監督と話をする機会があった。その県は、本県などとは比較にならないほどの強化費が県連盟から支給されていて、練習会場の確保やら遠征やらに潤沢に利用できるとのことだ。その分、当然のように勝つことを求められるわけで、保護者も巻き込んでかなりヒートアップしているらしい。例えば、その監督の勤務する学校にわが子のいる親が、県内の有力選手の保護者に声をかけて、住所変更をしてまで越境入学させようと画策しているとか。
「なんでそこまでせなあきませんの?公立の中学校でしょ?そんなん、おかしいと思いません?」とその監督は言っていた。もちろん、おかしいと思う。
近年、私立の中高一貫校が増え、学校によっては部活動の強化のためにジュニアの選手をごっそり入学させているところもある。
「そんなこと、いつまでも続くと思ってますのやろか?自分で自分の首締めてるんとちがいます?」とも。いちいち、尤もなことと思う。

ソフトテニスは、マイナーなスポーツだ。
でも、その競技人口の大半を支えているのは中学生だ。そうして、全国の中学校のソフトテニス部員のほとんどは、中学生になってから初めてラケットを握る子たちだ。
そんな中学生たちが夢見る全国大会の舞台。
たまたま、同じ小学校にソフトテニスをしている子がいて、その子がテニス部に入部してくれたおかげで、他の部員たちも見よう見まねで上達していき、熱心な顧問の先生の指導も相俟って、夢にまで見た全国大会に出場することだってあるかもしれない。
でも、私立校がジュニア育ちの選手たちを根こそぎ自分のところに集めると、そんなこともなくなってしまう。いい選手が全県のあちこちに分散しているからこそ、それぞれの地域のレベルが上がって、互いに切磋琢磨するようになる。つまり、多様性が担保されているということだ。
今、そんな機会がどんどん失われようとしている。あっていい話ではない。日本連盟も、競技力向上のためにアンダー制を敷くのはいいが、中学生の全部員に会員登録を勧めて確保した資金が、ごく一部の選手たちのためだけに使われてるとするならば、そのうちに会員登録もされなくなっていくような気がする。

どうも結果が思わしくなかったためか、愚痴っぽい話になってしまった。
「敗軍の将、兵を語らず」
これ以上、とりとめのないことを書くのも見苦しかろう。
もちろん、自分から言い出すことはないが、今年の敗戦はほんとうに悔しい思いにさせられた。
もしも機会をいただけるのであれば、もう一度、捲土重来を期したいと思う。