スーさん、テレビを観る

12月7日(月)

自分は、どちらかと言えばテレビをあまり見ない人である。ふだんは、夕食時に飲みながらニュース番組を見る程度だ。そんなテレビを見ない人間が、日曜日の夜だけは例外のようにテレビに齧り付くようになってしまった。NHKの「坂の上の雲」、TBSの「JIN-仁-」、NHK教育の「N響アワー」、時に「NHKスペシャル」と、見たい番組がほぼ同じ時間帯に放送されるからである。
かように、見たい番組がダブった場合にはどれかの番組を録画して後で見るようにすればいい。しかし、ほぼ同じ時間帯に放送される番組を、二つながらに録画したい場合はたいへんに困る。どちらかの録画を断念しなければならないからだ。「松たか子か檀れいのどちらか一人を結婚相手として選べ」というような状況とでも言えばよいだろうか(あり得ないけど)。

前週の日曜日など、それに加えてTBS系でボクシングWBC世界フライ級タイトルマッチ、「内藤-亀田」の試合放送が入っていた。かようなイレギュラーの番組が闖入するのはたいそう困るのである。一方の録画を諦めても、さらに見たい番組がダブってしまうという状況が出来してしまうのだ。
とりえあえずボクシングを見て、「坂の上の雲」はビデオ録画しといて後で見ればいいやと思っていたのだが、ボクシング終了後の9:25からは「JIN-仁-」が始まることが判明した。この番組も、初回からずっと録画しながら見ていて、原作も読んでるから、見逃すわけにはいかない。
8時からの「坂の上の雲」は9時半終了だから、終わりを5分間だけ端折って「JIN-仁-」を録画するということも考えたが、「坂の上の雲」の最後に流れるサラ・ブライトマン×久石譲のエンディング曲は聴き逃すわけにはいかないのだ。
実は、「坂の上の雲」は同日午後10時からBSでも放送されるので、そちらを録画すればいいと思ったのだけれど、そうすると今度は「JIN-仁-」が録画できなくなってしまう。
NHKオンラインで「坂の上の雲」の再放送日時を検索したところ、従来の大河ドラマと同様に、土曜日の午後から再放送するということがわかったので、「坂の上の雲」はそれで録画することにして、とりあえずボクシングと「JIN-仁-」を見ることにした。
この日は、午後10時からの「N響アワー」の時間に、「オーケストラの森」と題して、読売日本交響楽団の演奏会も放送される予定だった。そちらの方は泣く泣く録画を諦めた。
「ったくよう、ふだんは見たくもないバカ番組しかやってないのに、なんで同じ時間帯に見たい番組が重なっちまうんだよう」と、思わず泣きが入ってしまうのであった。

そうしてまた日曜日がやってきた。
この日は「地域防災の日」ということで、部活動は自粛することが事前に申し合わされていた。のんびりと起きて朝食を済ませ、「ではでは、昨日録画した『坂の上の雲』ね」と、DVDデッキのスイッチをオンにした。朝日の差し込む居間で、炬燵に入って煎れたてのコーヒーを飲みながら「坂の上の雲」を見るというのはなかなか乙なものである。
見る前までは、あの原作をドラマ化するなんて、とてもじゃないけどムリだろうと思っていたが、初回を見るかぎり、なかなかどうして見応えのある番組に仕上がっていた。それなりのドラマにしようとする番組制作スタッフの意気込みが伝わってくるような気がした。モノクロームの場面を効果的に挿入してあるのも印象的だった。もちろん、久石譲のエンディングも期待どおりだった。
つい、読みかけだった『「坂の上の雲」と日本人』(関川夏央/文春文庫)を一気に最後まで読んでしまった。もちろん、解説はわれらが内田先生である。

午後、久しぶりにプリウスを洗車して一息つくと、「JIN-仁-」のスペシャル番組を放送していた。今までの8話をオムニバスに仕立てた番組だった。見るつもりはなかったのだが、つい見てしまった。原作とはだいぶん異なっているが、それはそれで毎回見応えのあるドラマに仕上がっていると思う。夜の第9回が楽しみになった。

入浴を済ませ、湯上りのビールを飲みながら、お待ちかねの「坂の上の雲」第2回を途中から見る。もちろん、終了は9時半なので、録画は10時からのBS版を録画するように設定しておいた。その前に、9時からの「JIN-仁-」を録画しておくのである。で、その「JIN-仁-」は後日のお楽しみということにして、とりあえず「坂の上の雲」を最後まで見る。正岡子規の妹「律」役の菅野美穂、いい感じだなあ。つい、真之との再会場面にほろりとさせられてしまう。

ほっこりした気分になって、すぐさまチャンネルは「N響アワー」に。ネルロ・サンティの指揮で、ストラヴィンスキーの「火の鳥」がちょうど始まるところだった。この演奏は、裏で「JIN-仁-」を録画しているために取れない。居間のオーディオは、DVDのデッキと繋いであるので、そのデッキを通さないとスピーカーに出力することはできない。仕方がないので、テレビの音量をかなり上げて聴くことにした。
ネルロ・サンティは、最近の指揮者には珍しく、長い指揮棒を使って無骨に指揮をする。お世辞にも見栄えのする指揮ぶりではない。だが、演奏はすばらしい。指揮者は外見ではないということなのである。
彼の指揮ぶりを見ていて、トスカニーニを思い出した。かつて、映像で見たトスカニーニも、長い指揮棒を使って無骨に指揮をしていた(ただし、ネルロ・サンティとは違って、エネルギッシュな指揮ぶりではあったが)。指揮は、ひたすら曲の演奏に向けられているということがよくわかる指揮ぶりであった。
詳しいことはわからないが、彼らは共にイタリア出身の指揮者である。レパートリーも似通っている。おそらく、ネルロ・サンティ自身も、若いときにはトスカニーニの実際の指揮ぶりに接したことがあるのではなかろうか。そんな気がした。

「N響アワー」を見終わって、録画中のBSで再び「坂の上の雲」。入浴中で見逃した初めの方をじっくりと見る。漱石がちょっと違うイメージだった。またじっくり見ればいいや、とも思ったのだが、つい見てしまった。秋山好古役の阿部寛もイケメンだが、実際の好古もかなりのイケメンだったらしい。「長身で色白、大きな目であり、陸軍大学校時代には教官のメッケルからヨーロッパ人と間違えられたというエピソードがある。 また青年期の頃から眉目秀麗と称賛され、故郷の松山や留学先のフランスでは女性にかなり人気があったという。」(@Wikipedia)
そっかあ、それで松たか子演ずる佐久間多美と結婚するんだな、とよくわからぬ納得をしてしまうのであった(おかげで、「NHKスペシャル 真珠湾の謎〜悲劇の特殊潜航艇〜」を見逃してしまった)。
かように、NHKの「坂の上の雲」には、既に第2回にして見事にハマってしまったのであった。いやはや、日曜日が楽しみである。

でも、録画したい番組が重なったときでも、二つでも三つでも同時に録画できるような装置ってないのだろうか?誰か教えてくれません?