スーさん、新学期を迎える

9月7日(月)

2学期が始まって1週間が過ぎた。
やはり、学校が始まると毎日慌ただしい。授業を行い、日常業務をこなし、部活動を指導をしていると、知らぬ間に週末を迎えている。それはそれで充実していていいのであるが、夏休み明け最初の土日ともなると、つい夏休み中の生活が束の間顔を出したりして、「ああ、やっぱ夏休みはよかったよなあ」と暫しの感慨に耽ってしまうのであった。

その夏休み最後の土日は、今年で3年目となった「妻の誕生日小旅行」に出かけていた。最初の年は伊勢志摩へ、昨年は伊豆の戸田へ、さて今年はと思案をしていたのが7月中旬。
『しずおか温泉自慢かけ流しの湯』(静岡新聞社)のパラパラとめくりつつ、「お、ココいいじゃん」と思ってすぐさまR天トラベルで検索をしてみると、「うげ、こんなに高いの?じゃパス」とばかりにボツになるところが多かったのだが、中でも伊豆東海岸北川温泉のHホテルは、件のRトラベルで確認したところ土曜日宿泊にもかかわらずかなり安価で宿泊できるということが判明し、一も二もなく「ココじゃあ!」と決定されたのであった。

その土曜日、昼食を伊豆高原で食べようという計画で浜松を出発した。ところが…。
まずは牧之原の手前で渋滞し始めた。どうやら、先日の地震で崩れた場所(TVで毎日のように報道された)の辺りで渋滞している模様であった。さらに、その先でも渋滞している情報が流されていた。それでも、そこを過ぎると順調に流れた。日本平PAで小憩、しかし本線に戻るとしばらくしてまたもや渋滞し始めた。清水IC手前7キロの辺りである。ほとんど止まってはのろのろ運転の繰り返し。と、業を煮やしたか路肩を走る車が続出。みな清水ICで降りる車であろう。情報では袖師トンネルの手前から渋滞しているとのことであった。
「オレらも降りよっか。このままじゃどんだけ時間かかるかわかんないし」ということで、清水ICで降りて沼津まで国1バイパスを走ることにした。バイパスは途中由比の辺りでやや渋滞したが、富士~沼津間は快走。でも、時間は沼津市内に入ってちょうどお昼だった。仕方がないので、「伊豆高原は諦めて、いつもの沼津港でお昼にしよ」ということにしたのだが、この沼津港の飲食店街、土日はどの店も順番待ちの大盛況。ようやく空いてるお鮨屋さんを見つけて一息つく。あったり前だが、回転寿司などとは比較するのもおこがましいほどに、美味な地魚のにぎりであった。

もちろん、昼食時にビールを飲んだ夫に代わってそこからプリウスを駆ったのは不肖の妻。伊豆長岡から修善寺、さらに国道12号~111号を通って大室山の麓に出、そこから伊豆高原を海岸へと下って国道135号を下田方面へ。途中、うつらうつらしているだらしのない夫を尻目に、狭い峠道、はたまた海岸沿いのワインディングロードをひたすら目的地へと急ぐ妻であった。

宿舎の北川温泉に到着したのは午後4時少し前。泊まるホテルもすぐに見つけることができた。「え?ここ上がるの?」と言いたくなるような急坂を登って駐車場へ。チェックイン時に、「混浴の露天風呂が海岸端にありますからぜひどうぞ」などと言われたのだが、さすがに混浴はちょっと…。ということで、さっそくホテル内の露天風呂へ。やや安普請の感はあったが、そのまま水平線が見える絶景の露天風呂であった。もちろん源泉掛け流し。たっぷり1時間ほどお湯に浸かる。

ここの夕食は豪快な料理であった。目の前の海で取れたアワビをはじめとする魚介類を、炭火焼きでいただくのである。最後は伊勢エビ。焼き上がりをいただき、殻はそのままうどんすきの出汁に使用される。焼きおにぎりを挟んで、そのうどんすきを最後にいただく。
ホテル全体がやや古めかしく、部屋もそれなりであったが、「食事とお風呂はいいわよねえ」と妻の弁。ま、それなりの値段だということなのである。
ちなみに、夕食前に海岸端を散歩したのだが、その海岸沿いのホテル群はいかにも高級そうな宿ばかりであった。すかさず部屋に戻ってケータイで確認してみたところ、一人の宿泊代がこちらの2人分の宿泊代よりも高価な宿ばかりであった。「だろうねえ」と納得する。

翌日は、「大室山に行ってみたい」という妻の要望を容れ、再び伊豆高原から大室山を目指す。この日は、台風11号の影響もあって空模様は途中から怪しくなり、大室山に到着した頃には今にも雨が降り出しそうな案配であった。「ま、とりあえず頂上まで行ってみようや」とリフトに乗ってしまったのが運の尽きだった。
ちょうど頂上に着くと同時に雨がポツポツと降り始めた。頂上をぐるりと廻るには20分ほどかかるらしかった。「どうする?」と尋ねる前に妻は先に歩き出していた。雨がひどくなってきた。もちろん、傘など持ってはいない。こうなったら、一刻も早くリフト乗り場へ戻るしかない。でも、そんな夫の焦燥感などどこ吹く風とばかりに、不肖の妻は頂上からの眺望を「へえ~」とか言いながら楽しんでいる様子だ。得な性格の人である。ようやくリフト乗り場まで戻ったものの、雨はいっかな止む気配はない。「でも、降りるしかないわよねえ。このまま待ってても雨止みそうにないし」という妻の一言でリフトへ。お座なりにも屋根付きのリフトだから多少は雨を凌げるかもなどと考えた自分を呪った。雨は下から吹き上げるように全身を濡らした。泣きそうであった。でも、隣で妻は「うひゃあ!」とか言いながら吹き付ける雨を楽しんでいるようでもあった。あらためて不思議な人だと思った。

ともかくもプリウスへと戻って濡れた衣服を拭き、エアコンの温度を高めに設定してともかくも大室山を後にする。帰りは雨天で視界不良ということもあり、安全運転のために伊豆スカイラインを通って帰ることにした。さすがに有料道路だけあって、快適に走れる。雨さえ降ってなければ、道みちの景色を楽しめたことであろうが、それはまた次の楽しみということで。降り口は韮山峠。下界へ降りてくると、伊豆高原での雨が嘘のように晴れ間が見えていた。

と、頃合いを見計らったように、沼津K学園高のスガイ先生から電話が入った。「お昼、どうすんの?こっちで食べようよ」とのお誘いであった。
この日は、浜松からオータくんが選手を引き連れてK学園高を訪問しているはずであった。その様子も見たかったので、ナビをK学園高へとセットし直す。程なくK学園高へ到着、いつものH食堂へ。
今回の北川温泉行をアテに、ビールがつい進んでしまう。運転の心配をしなくてよいというのは、ほんとうに気が楽である。

ビールをしこたま飲んでしまった夫に代わり、再び妻がプリウスのハンドルを握って帰路に就く。
自宅到着後は、すぐに選挙へ。
結果、民主党が政権を担うことになり、現場からは夙に悪評の「教員免許更新研修」が撤廃されることをまずもって喜ぶ。

そうして迎えた2学期最初の土日。
土曜日は、中・高体連ソフトテニス部の合同研修会&懇親会。例年、静岡市にて開催されていたが、今年は会場が確保できなかったということで、藤枝市にて開催された。研修会はパスして、懇親会から参加。
終了後は、K学園高のスガイ&ハラ先生らに、県中体連強化部のタカシ先生、沼津のイノウエ先生らと囲卓。スガイ先生が絶好調であった。沈んだのはオノちゃん。そういつもいつも勝てないということである。

浜松に戻ると、悲しい知らせが待っていた。われらが浜松支部の定例会会場であった旗亭「まこと」が閉店するという知らせだった。どうやら家庭の事情ということらしい。何とも残念である。ここ数年、ほぼ毎週のように訪れて、その美味しい料理に舌鼓を打ちつつ焼酎を傾け、四方山話に花を咲かせていた。
こういうお店がなくなっていくというのは、ほんとうに悲しい。
最近の市内中心部の店は、どの店も判で押したように、木戸の入口と掘り炬燵にやや暗めの間接照明、さして美味しくもない創作料理と相場が決まっている。「へえ〜しゃれてるじゃん」というだけだ。
「まこと」のように、それこそ毎週でも通いたくなってしまうお店は、ほんとうに少ないのだ。
仕方がない。またおんなじようなお店を見つけるしかない。客が店を育てるってこともあるかもしれないし。
「まこと」ご夫妻の今後に幸あれと祈りたい。