スーさん、感動する

6月2日(火)

土日は、県高校総体ソフトテニス競技の観戦・応援のため、静岡市の県営草薙テニスコートまで。
一つは、スガイ先生率いる沼津K学園高女子ソフトテニス部の応援(前任校で教えた最後の選手がいる)のため、もう一つは地元浜松のH商高から個人戦に第4シードで出場しているM・Uペアの応援のためである。
ちなみに、H商高のM選手(後衛)はオノちゃんのK中時代の教え子。H中出身の前衛U選手ともに、本校選手とは何回か対戦したこともある。
彼らも早3年生である。この高校総体がインターハイに出場できる最後のチャンスである。K学園高でお世話になっているK選手は、中学時代は都道府県対抗戦に出場したこともあるので、一応全国大会は経験している。H商高のU選手も、中学時代には東海大会で個人優勝して、四国松山で開催された全国大会にも出場している。唯一、オノちゃんの教え子であるM選手だけが中学時代は県大会で敗退して、全国経験のない選手であった。

その中学時代、東海大会や全国大会の前に、本校選手と一緒に練習をやらないかとM選手を誘うと、喜んで本校のテニスコートまで来てくれ、同じく全国大会に出場するH中のY選手・U選手のペアとも一緒になって、練習をしたりゲームをしたりしてくれた。そんなM選手には、せめてものお礼にと全国大会の記念Tシャツを購入して本人に手渡ししたことを覚えている。
そうそう、オノちゃんからは、M選手は高校進学後もソフトテニスを続けたいという強い意向を持っているのだが勉強が苦手なので困っているとも聞いていた。そんなこともあって、本校での練習終了後の帰り、本人を自宅まで送って帰る車中で具体的な勉強のやり方も教えたりしたこともあった。
そんな経緯もあって、M選手は因縁浅からぬ選手であったのだ。だから、この高校生最後のインターハイには、何としても出場させてやりたかった。それは、もちろんオノちゃんとて同じ思いであったろう。

さて、土曜日は団体戦。K学園高は、途中苦戦する場面もあったが、順当に勝ち上がって迎えた決勝。相手は、昨年の覇者F高。2面同時進行で始まったが、どちらもF高がリードする展開であった。しかし、第3ゲームあたりからじわじわとK学園高の反撃が始まった。そうして、ついに両コートともタイブレークの接戦になった。勝敗はどちらに転ぶか、予断を許さない状況であった。こういうときは、ラッキーポイントが勝敗の行方に重大な影響を及ぼすこともある。F高の前衛選手のあわやチップミスになろうかというボレーが決まり、逆にこちらの前衛選手のボレーは相手にフォローされて決まらないというような展開で、そのまま両コートともF高に押し切られてしまった。残念ながら、K学園高3年ぶりのインターハイ団体出場はならなかった。
もちろん、身贔屓の印象論であるが、K学園高のテニススタイルは確実に変化していると感じた。具体的にどこがどうということももちろんあるのだが、ベタな書き方をすれば、全体的に選手が伸び伸びとプレーしているように感じた。団体戦という、個人戦に比べてよりプレッシャーがかかると思われる試合なのに、である。団体メンバーの半分が2年生ということもあるのかもしれないが、どうもそれだけではないような感じがした。よいことである。また来年度以降が楽しみになってきた。

翌日は個人戦。
何はさておいても、H商高のM・Uペアである。行きの車中では、オノちゃんから「どうもあんまり調子がよくないみたいで…」と聞いていた。前衛のU選手にミスが多く、迷っているようなところがあるとのことであった。
前日のH商高の団体戦は、K学園高の試合を中心に見ていたので、あまり見なかった。途中、準々決勝の試合をちょっとだけ見た。確かに、U選手の動きはあまりよくなかった。でも、ちょっと意識を変えるだけで何とかなるのではとも思っていた。
会場に到着した。すぐに、M・Uペアを見つけた。U選手に、「どんな感じよ?」と尋ねると、「いやあ、がんばりますけど、ちょっと調子悪いっす」と言う。「どこがよくないの?」と聞くと、「足が付いていかないんですよね」と言う。そこで、昨日の試合の印象から気がついたことを一つに絞って本人に言ってみた。とたんに、U選手の顔つきがぱっと明るく変わった。「わかりました。もう大丈夫です」と言ってくれた。すぐ隣でU選手の状態を心配していたM選手の表情も明るくなった。これならいけるかもしれないと思った。

そんな彼らの初戦。どんな試合になるのか心配していたのだが、何と言うことはなかった。確かにまだU選手にはちょっとしたミスも見られたが、試合前に指摘したことを意識していることが十分に感じられた。特に苦戦する場面もなく、初戦を突破した。
試合後、U選手に「いい感じじゃん」と水を向けると、「ハイ、もう大丈夫っす!」と返ってきた。確かに大丈夫だろうと確信した。

その後、彼らは難敵を次々と撃破した。そうして迎えた準々決勝。本県からインターハイに出場できるのは6ペア。勝てばベスト4でインターハイ出場が決まる。対戦相手が決まる試合を一緒に見ながら、どちらが相手になっても対応できるよう、具体的な戦術を意見交換しておいた。
試合が始まった。
M・Uペアは終始リードを奪ってゲームカウントは2-0。ここから、相手が反撃し出して1ゲームを落とす。続く第4ゲーム、M選手のボールが入らなくなってきた。「ここで追いつかれるとまずいよなあ」と思っていたところ、ポイント1-1から前衛のU選手が連続3ポイントを奪ってゲームカウント3-1。最後は、立ち直ったM選手がびしびしと厳しいボールを打ち込み、U選手がいいタイミングで飛び出してポイントしてゲームセット。M・Uペアのインターハイ出場が決まった。もちろん、オノちゃんも大喜びであった。

試合後、U選手が飛び上がらんばかりの勢いでやってきた。「よかったなあ!」と肩をたたいて健闘を称える。
続いてM選手がやってきた。がっちりと握手する。彼にとっては初めてとなる全国大会出場である。一生懸命に努力する者を、神は見そなわされているということであろう。ほんとうによかった。
K学園高のK選手も、ベスト4入りしてインターハイ出場を決めてくれた。
いいこと尽くめの個人戦であった(前日の麻雀がボロ負けだったから、こういう結果になったのかもしれない)。
来るインターハイは、8月上旬に奈良・明日香のコートにて開催される。日程が許せば、ぜひとも応援に駆けつけたい。これでまた一つ夏休みの楽しみが増えた。

一つだけ。例年、県内の高校生たちがこれだけのすばらしい試合を展開するのに、中学校のソフトテニス部顧問の先生たちはどうして観戦に来ないのだろう。顧問として、戦術面で勉強になることは多いし、中学生も連れてくれば、試合をするときの雰囲気など範とするべき事柄も多く得ることができるであろう。
練習というのは、ただ単にコートでボールを打つことだけではないと思うのだが。
ましてや、自分が中学校の時に教えた選手が出場しているとあらば、何をさておいても応援に駆けつけるべきではなかろうか。
片々たる練習など、この2日間の感動から得られるものに比べれば何ほどのことがあろう。
ぜひとも、多くの中学生、中学生を指導する顧問の先生方には、この高校生たちのすばらしい試合ぶりを見てほしいと思う。