スーさん、ちょっと怒る

5月18日(月)

新型インフルエンザの感染が拡大している。
大阪府と兵庫県は、全ての中学・高校を今週いっぱい休校にするとの措置を講じた。
さっそく、大阪・兵庫のソフトテニス部顧問の先生数名に陣中見舞いのメールを送信したところ、「症状があるかないかの人数報告(生徒来てないのに!)や、電話、家庭訪問とか、ややこしそうです」との返信があった。

自分の立場(教務)から言わせてもらうと、今回休校にした分の授業時数を、いつ・どこで・どのように回復するかということを心配してしまう。たぶん、どこの学校でも授業実施日数にそんなに大きな違いはないだろうから、まさか1週間分の備蓄がある授業日数を決定しているところはないであろう。
ってことは、休業日を授業日に変更して時数の確保をしなければならなくなる。具体的には、長期休業中とか、土日のどちらかで授業を行うとかするようになるであろう。

まるまる1週間分となると、凡そ28~29コマ分(単位時間)である。長期休業中とは言え、冬休みと春休みは期間が短いから、実施するなら夏休みということになろうか。その場合は、中体連の夏季大会のことも考慮しなければならないから、たぶん8月の終わりに1週間続けて授業を行うようになるであろう。これは、教える方も教わる方もたいへんにモチベーションの低い授業となることは想像に難くない(だって、暑いし)。

土日に実施をする場合は、たぶん土曜日になるであろうが、まるっと1日授業か、昔のように半日授業にするかで議論が分かれるところであろう。半日の場合には、毎週土曜日の授業を約2ヶ月間続けることになる。昨今のように、学校週5日制に慣れてしまっている生徒たちにとっては、かなりの苦痛を伴う2ヶ月間になりはしないだろうか。もちろん、先生方とて同様である。

学校が休校になったからって、先生方までお休みというわけではない。手分けをして生徒の現状把握にこれ努め励まねばならない。上記先生からのメールのように、生徒が登校してない状態で、電話や家庭訪問によって現状を把握して教育委員会に報告を上げなければならない。「こんなことなら、授業やってる方がよっぽどラクだよ」という先生方の悲鳴が聞こえてきそうだ。
まるで他人事のように受け取っていると思われる向きもあるかもしれないが、いつ自分たちが同様の事態を迎えてもいいよう、今から心の準備だけはしておこうと思ってはいる。

さて、ふだんはあまり怒りの回路にスイッチが入ることとてないのであるが、先日は久々にカチンときたことがあったのでそのご報告を(ってか、『グラン・トリノ』を見たばかりなので、「おお、まるで自分の老年の姿を見ているみたいだ」と思ってしまったのだが)。

インターネットのプロバイダーから、ADSL接続モデムの不具合について報告するメールが入った。どうやら、ある期間を経過するとインターネット電話が使用できなくなる不具合のようだった。インターネット電話など使用してないので、別にそのまま放っておいてもよかったのだが、具体的なメンテナンスの方法もリンクされていたので、「ま、とりあえずアップデートしとこうか」ということで件のHPにアクセスしてみた。
と、すぐにログイン名とパスワードを尋ねてきた。ログイン名はそのHPに載っていたのだが、パスワードは「インターネット接続時のパスワードを入力してください」とある。大体、ネットへの接続は自分でやってないのだから、パスワードなど覚えているはずがない。いくつか思い当たるパスワードを試してみたが、全てはねつけられてしまった。
仕方がないので、プロバイダーのサービスセンターに電話してみた。事情を説明し、「パスワードがわかんないんで、教えてほしいんですけど」とお願いした。若いお兄ちゃんの声が応対した。
「では、契約時のパスワード等を記載したものをご自宅にお送りすればよろしいですね」と言われたので、「ハイ、それでいいです」と答えると、こちらの住所やら電話番号、メールアドレス等を確認してきた。言われるままに答えると、「すみません、もう一度ご住所をお願いできますか?」と言う。「ハイ、浜松市△区○×町…」と言うと、「申し訳ありませんが、こちらに登録されている住所と異なっておりますのでお送りできません」と宣う。
「え?何て登録されてます?」と聞くと、「浜松市○×町…」と言うではないか。「ああ、それって、ネットに接続したときが市町村合併の前だったので、その後区割りができて、今までの住所に区が入ることになったんです」と言うと、「とにかく、登録した住所と異なっておりますので、こちらといたしましては、もう一度住所変更のご登録をしていただかないと、契約情報等はお送りできないのですが」と宣うではないか。
この時点で、既に怒りの回路には微弱な電流が通じ始めていた。「あのねえ、区が入ってなくても、ちゃんと届くから送ってもらえないかな」と言うと、「もしもきちんと届かなかったりすると困りますので、住所変更をしていただかないとやはりお送りできないのですが」の一点張りである。ここでスイッチが入った。
「あのなあ、住所に区が入ってなくても、その登録してある住所でちゃんと届くことはまちがいないんや。つべこべ言わんと、とにかく送れや」とやや語気を荒げて(でも、なんで怒ると関西弁になるのだろう?)言ってしまった。大人げない。

お兄ちゃんの応対は、わからんでもない。たぶんマニュアルに書かれているとおりの応対をしたのであろう。でも、「区が入ってないから住所が違います」という応対は、あまりに機械的な応対のような気がするのだが。
「わかりました。では、今回は送らせていただきますが、近いうちに住所変更のお手続きをお願いいたします」とでも言えば、こちらも事を荒立てることはなかったであろう。素直に「ハイ、わかりました」と応じたはずである。
これは多分に印象論であるが、こういうメンテナンスを一手に引き受けている技術系の人たちって、とにかくプログラムされたとおりのレスポンスしかできないようになってしまっているのだろうか。まさかね。たまたまそのお兄ちゃんが融通のきかない人だった、ってことなのであろう。
こちらの荒げた語気に気圧されたのかもしれないが、とにかく契約時の情報は郵送してもらえることになった。

世の中、押し並べて「マニュアル化の時代」である。小さなお店は次々と姿を消し、全国チェーンの大規模店舗ばかりが幅を利かせるようになっている。そんな大規模店舗では、客との応接についてもすべてマニュアル化されているであろう。そうして、従業員はくれぐれもマニュアルから外れた応対はしないよう教えられているであろう。
なぜなら、そうした応対をしたがために、訴訟問題にまで発展してしまったというようなことが出来することを避けんがためである(と想像される)。
それはそれで仕方がないこととは思うが、だからと言って、小学生にでもわかる住所の違いに対しても同様に応接することは、自分の所属している利益追求団体にとって、はたして有利に作用するようには思えないのであるが。

電話口の向こうで応対していたのは、確かに人間であって、機械ではなかった。でも、まるで機械と話しているような錯覚に陥った。
これから、こういうことがあらゆる場面で繰り広げられていくのであろうか。
そういう世界というものは、あんまり想像したくない世界ではある。