スーさん、敗軍の将として語る

3月31日(火)

都道府県対抗全日本中学生ソフトテニス大会は終わった。
本県男子チームは、当初に目標として掲げた「団体戦初戦突破」を成し遂げることができずに終戦を迎えた。
敗軍の将は兵を語らないのが常道であるが、以下大会に参加しての感想をいくつか述べてみたい。

・以前、コーチとして参加したとき(平成6年)より、大会規模があらゆる面で大きくなっている。必然的に、この大会に選手として選ばれたいという動機付けも大きくなると思われる。

・開会式が長い。監督会議で、来年より開会の時間を1時間早めるとの提案がなされたが、当然のことと思う。それに付け、各都道府県選手団紹介時のパフォーマンスはカットすべきではないか。司会が紹介してスポットでも当てればそれで十分のような気がする。

・今回は、天候の関係もあってかなり気温が低かった。屋外コートで行われる個人戦は、ユニフォームの上にトレーナー等の着用を認めてもよかったのでないか。特に、男子は翌日に団体戦を控えていたから、選手のコンディションニングに配慮がほしかったと思う。

・個人戦の終了は午後7時を過ぎた。これも、選手のコンディションニングを考慮すると、はたしていかがなものかと思う。個人戦の参加組数を、現行の各都道府県4ペアから3ペアに減らしてもよいのではないか(144ペアのトーナメントならば、何とか午後5時までに終了すると思われる)。

・それにしても、学校の枠を超えて各都道府県を代表する選手が選考されているため、参加選手の技術的なレベルはとても高い。ある意味では、学校の枠に縛られる中体連夏季全国大会よりも、選手層は高いレベルで平均化していると思う。

・中でも、ジュニア(小学生)時からその名を馳せた選手たちのレベルは飛び抜けている。これらの選手たちが私学に集まったりすれば、もう公立の選手たちはまったく太刀打ちができなくなってしまうであろう。早晩、そうなるような気がする。

・団体戦の組み合わせは、まったく運である。実力があるとの評判の高い都道府県同士が早い対戦でつぶし合いをすることもあるし、逆にそういう都道府県がいないゾーンからは簡単に上位に勝ち残る可能性もあるということだ。

・日本全国に、中学生のソフトテニスを愛好している人がたくさんいるということを実感させられた。と言うか、ソフトテニスの競技人口はそのほとんどが中学生によって支えられている。ならば、この中学生による都道府県対抗戦は、日本ソフトテニス連盟の中心的行事と位置付けられてもいいような気がする。

・開会式と団体戦が行われたサンアリーナはすばらしい会場である。しかし、個人戦の会場である伊勢市営庭球場は、これだけの規模の大会を開催するには役不足の感は否めないと思うのだが。何より、駐車場がないのが致命的である。開催地は再検討されてもよいと思う。たとえば、浜松市の花川テニスコートとか(実際に開催するのはタイヘンだからヤだけど)。

・お伊勢さんのお膝元だからもっと賑わっているのかと思っていたのだが、思いの外町並みが寂れている印象であった。商店街のアーケードなども一世代前のような感じで、まるで昭和40年代あたりにタイムスリップしたような気がした。

・たまたま本県選手団が宿泊したホテルがそうだったということなのだろうけれど、今回の遠征の様子を毎日県選抜ブログにアップしていこうと思っていたのだが、私たちが宿泊したホテルにはネットにつながるPCが用意されていなかった。ホテル名には、「国際ホテル」と冠されているのに。で、フロントのおばはんに「何とかネットにつながるようノートPCとかご配慮願えませんでしょうか?」とお願いをしてみたのだが、「ウチはやってませんから」とにべもなかった。サービス業たる自覚のかけらもない応対は、きわめて不快だった。来年は絶対に本県の宿舎にしないよう進言した。

・地元の人は恐い人が多いかもしれない。開会式当日、練習会場近くのうどん屋さんで昼食を取ったのだが、入店の際に入口の戸を閉め忘れたシンムラくんに対して、既にワンカップを2本ほど空にしていたおっさんから、「おう、にいちゃん、ちゃんと閉めんかいコラ!」と「ご指導」されるということがあった。ご注意はそのおっさんのみならず、その隣で食事をしていた作業服上下を着用したおっさんたちからも、「開けたら閉めんの当然やろ?おう?」とも言われてしまった。戸を閉め忘れたシンムラくんが悪いのは当然であるが、も少し言い方というものがあろうかと思うのだが。ちなみに、すかさずお詫びをしたのは手前であった。シンムラくんには深く反省をしてもらいたい。

・団体戦の前日の朝、「もう明日でこのチームも解散になっちゃうから、保護者がよければ懇親会をやろうよ」とヨッシーに提案してみた。保護者のみなさんには快諾をいただいたとのことで、急遽ヨッシーがお店を手配してくれて小宴の運びとなった。ふだんはなかなか聞くことができない保護者サイドのお話をいろいろと伺うことができた。「こういう会をもっと早くやってくれればよかったのに」とも言われた。何より、拙「うなとろ日記」を読んでおられる保護者もいるのには驚いた。「シンムラ先生って、麻雀弱いみたいですよね」とか言われてしまった。いやはや。よい保護者たちであった。

・その保護者からの話で、ほとんどの選手が学校で練習ができていない現状を知った。つまり、顧問が指導できないから外部指導者に具体的な指導を丸投げしているとか、そのため学校での練習の機会はまったく不十分(練習量も練習相手も)であることなどである。これでは、いくら選抜の練習でレベルを上げても、それを裏打ちするものがない。今後、同様な状況にある選手を選抜した場合、そこをどうクリアしていくのかということも考えなければならない。

・実際に指導してみて、技術的な指導はそれでも何とかなるのだが、メンタル面でのタフネスをどうやって指導していくかということが難題として残っている。何より、選手を最終的に選考するだけでも時間がかかるし、その選手選考から本戦まではあまり時間的に余裕がない。練習マッチをこなすのも一つの方法ではあろうが、それもそう何度も組めるものではないし、移動も含め保護者への負担が過重になってしまう。

・ひと頃、「部活動を社会体育へ」などと言われた時代があった。当然、中学校の顧問の中には、「そっかあ、これからは外部指導者に指導をお任せすればいいんだ」と考える人も出てきた。でも、実際には部活動に代替できるリソースは社会になかった。同時に、少子化に伴って新規採用教員が激減した。勢い、部活動の指導者は高齢化した。若い教員の中には、そんな部活動指導のノウハウを全く知らずに顧問をさせられている場合も出てきた。さらには、小学校の部活動がなくなってスポーツ少年団活動が活発化した結果、ジュニアのレベルが急激に上がった。そんなレベルの指導に対応できる顧問は、それこそ数えるほどしかいなくなってしまった。それが現状だと思うのだが、はたしてこれからどうなっていくのだろう。そういうことを考えている人って、いるのだろうか?

・新学習指導要領では、部活動の意義が謳われている。でも、指導するのは顧問である。その顧問をどうやって育てるのか。学習指導要領にはそのことについての言及はない。ひょっとして、文科省は顧問を務めれば自然と部活動の指導ができるようになるとでも思っているのであろうか。だとするなら、それは大きな間違いである。指導者の育成には手間と時間がかかる。そこに手をつけず、いたずらに「部活動の充実」などとお題目を唱えても、活動に不満を持つ中学生たちが日本国中に溢れるばかりである。

大会から帰った翌日、県中体連ソフトテニス専門部長から電話があった。期待に添えなかったことを詫び、目標も達成できなった責任を取って監督を辞任する意向を申し出たが、「責任を取ってもう一年やってください」と申し渡されてしまった。ならば、今年の反省を踏まえつつ、来年こそ捲土重来を期すばかりである。

おっと、明日からは新年度、テニスことばかり言ってられない。本業に精を出さねば。ふう。