3月16日(月)
年度末は人事異動の時期だ。
今月に入って内々示もあり、ゆく人来る人、また、他校の管理職も含めて誰が如何、彼が斯うのと大きな声では言えない囁きや噂話に花が咲く。
自分も、以前は「ほほう、そうですかい」と興味津々で話の輪に加わっていた時期もあったのだけれど、最近はとんとそういう話には関心がなくなった。
よく、「人事は人ごとって言うでしょ?」なーんて嘯いている人間に限って、人一倍異動の新聞報道などを隅々まで熱心に見ていたりして、そんな姿にも嫌気がさして極力そういう話からは身を遠ざけていたいと思っていた。
でも、いくら関心がないとは言え、耳を塞いで生活するわけにはいかない。幾ばくかの噂話はどうしても耳には入ってくる。「ふーん、そうなんだ」などと聞き流してはいるものの、「なんでそうなっちゃうのかねえ」と多少は腹立たしい思い(「けっ、やってらんねーぜ」とか)をすることもないわけではない。
そんな思いをするってことは、人事が自分の全く関心外のことであることではないということの証左であるような気がして、よけいに嫌な気分が増進するという悪循環に陥ってしまう。
そんな鬱々とした気分の時には、不思議とお師匠様の本に手が伸びる。
お師匠様の本はたくさん出版されてはいるのだけれど、いったん読み始めると途中でやめることができず、結局すぐに読み終わってしまうことから読むのが惜しくて、次の新刊が出るまではどうしても読まずに寝かせておくというようになる。
『橋本治と内田樹』(筑摩書房)も、そんな本の1冊であった。その本に手が伸びた。
お師匠様は、前書きにこう書かれていた。
“橋本治さんの書き物は「祝福」である。
僕たちのいる世界をきびしく批評する人はたくさんいる。「社会はこんなふうにあるべきではない」と言う人はたくさんいる。けれども、僕たちの日々が「こんなふうにあることは、もしかすると奇跡的なことかもしれない」というかたちで「祝福」を贈ってくれる書き手はほんとうに少ない。”
ふむふむ、そうなんだ。いつもながら、お師匠様はいいこと言うようなあと感心しながら読んでいた。
さらに読み進んだとき、次の言葉にぐっと胸が詰まった。
“一日一日を「けっ、やってらんねーぜ」というふうに毒づきながら生きるよりは、できるだけ愉快に生きて、そこから引き出せる限りの「よいこと」を探し当てた方がいいんじゃないかな。僕はそう思っているし、橋本さんの考えもそれほど違わなかったと思う。”
お師匠様は、手前が「けっ、やってらんねーぜ」って思ってたことを見そなわされていたのだ。
まるで、すぐ近くにいるお師匠様から「ね、だからダメなの、そういう考えはさあ、自分をスポイルするだけだから」って言われているみたいだった。
遠く神戸の方角を遙拝して、深々と礼。
持つべきものは、やはりお師匠様である。
さて、日曜日は県選抜中学生男子ソフトテニスチームの練習会。本大会を2週間後に控え、県内で行うのはこれで最後になる練習会である。場所は伊豆長岡の体育館。
例によって、ヨッシーがいろいろと手配を済ませておいてくれていた。日曜日の早朝に出かけてもよいのだけれど、どうも朝が苦手というおじさんたちなので、いきおい片道2時間超の場所は前泊がマストとなる。
前回は伊豆長岡のホテルに宿泊できたのだが、今回は土曜日宿泊ということもあってか、高価な宿以外に宿泊可能な宿がなかった。それでも、浜松から出かけていくよりはよかろうということで、伊豆長岡まで30分ほどで行ける沼津に宿を取ってくれた。沼津駅すぐ近く、1泊朝食付きで5500円というたいへんリーズナブルな宿である。
浜松を出発したのは午後5時過ぎ。ちょっとしたトラブルで出発が遅れた。ま、ヨッシーの名誉のために記さないでおくことにする。シンムラくんの運転で、午後7時過ぎには沼津に到着、すぐに夕食をということになった。
前回沼津K学園高を訪れた際には、沼津港にある丸天食堂が満員で入店叶わなかったため、口にこそ出さなかったが、オノちゃんなどはさぞや口惜しい思いをしていたに違いない。
さらには、K学園高での練習時には参加できなかったシンムラくんが、「今回は丸天で鮪のテールシチューを食べたいっす」と力強く宣言していたために、「んじゃ行ってみっか」ということになった。
やはり、お店は混んでいた。が、何とか入れそうな案配であった。待つこと暫し。名前が呼ばれて、店内一番奥の座敷に案内された。
さて何をいただこうかと、各々虎視眈々とメニューを見ている。とりあえず、あら煮とホタテ浜焼き、海鮮シュウマイをアテに生ビール。
メインメニューは、シンムラくんが件の「鮪のテールシチュー」、オノちゃんは「近海にぎり寿司」、ヨッシーは「フライ盛り合わせ定食」、手前は「生鮪刺身定食」。
中でも、いちばんのヒットは「鮪のテールシチュー」であった。これは美味しかった。テールシチューと命名されているくらいだからもちろん洋風の味付けなのだが、これがまたご飯にぴったり合う。シンムラくんもヨッシーも、そのソースをご飯にかけて食べていたくらいだ。
今回も思い切り満足して丸天を後にする。
食後はホテル近くに戻って、ホテルすぐ横にあった雀荘にて半荘を2回。最近には珍しくトップで気をよくする。そのまま寝るのも惜しかったので、これまたホテル近くの居酒屋にて2次会。あれこれとシリアスな話題も肴にしながら焼酎やらをいただく。お店の人に、「何時までやってます?」と尋ねると、「朝までやってます」という返事だった。さすがに朝まで飲むわけにはいかない。そろそろ三更も過ぎようかというところでホテルに戻る。
明けて日曜日。午前中はペアでのコンビネーションを中心に練習を行う。午後はゲーム。どのペアも、だいぶんいいパフォーマンスが見られるようになってきた。スタッフの面々からも、その手応えを感じているコメントが聞かれるようになってきた。
来る大会本番は今月26日〜28日。場所は三重県の伊勢市。楽しみになってきた。
その前に、21日滋賀県長浜ドームにて行われる選抜チームばかりを集めた研修大会で仕上げをして、伊勢市に乗り込む予定だ。
関わった人たちみんなを「祝福」できる結果を残したい。