スーさん、勝負について考える

10月27日(月)

土日は県西部地区中学校対抗フトテニス大会。

先週、本校の2年生は月曜日から3日間、野外活動に行っていた。もちろん、その間は練習などできようはずはない。帰ってきた翌日(木曜日)は雨だった。さらに試合前日(金曜日)も朝から雨だったのだが、何とか夕方には上がったので、すかさず市営コートの空き状況を調べると、2面だけ使用可能なコートがあった。すぐに1面予約を入れ、コートへと移動することにした。
何とか練習は行えたが、そんな練習だけではたしてどの程度のプレーができるのだろうかと不安が残った。

明けて土曜日が団体戦。
本校は第6シードであった。シード下には、先日の市内大会でも対戦したM中が入っていた。一度対戦して勝っている相手というのは難しい相手になるといわれる。「今度こそ負けないぞ!」と闘志をむき出しにして向かってくることが予想されるからであろう。それを受けて立っては劣勢となってしまう。「もしも相手がM中に決まったら、逆にこちらがチャレンジャーのつもりで試合をするんだぞ」と選手たちには言い聞かせていた。
案の定、M中が対戦相手になった。M中の2番手ペアは、先日の市内大会の個人戦でもベスト8に入っていて、めきめき力をつけてきているとの評判であった。その2番手がトップに出てきた。ゲームを先行されるとイヤな展開になると思っていた。こちらは大将ペア。多少はミスも出たが、特に競り合う場面もなく勝ってくれた。
次の対戦は相手が大将ペア、こちらは1年生ペアである。随所にいいプレーも見られるのだが、そこはやはり1年生のペアである。ミスも多い。結果、何とか1ゲーム取っただけで敗戦、3番勝負となった。
新チームになってからは、3番勝負が踏めるようかなり早い時期から殿を務めるペアを決めていた。そのおかげか、3番は多少はもたつく場面も見られたが何とか勝ってベスト8、県大会出場が決まった。

準々決勝の相手は、第3シードのH中。本校にも何度か生徒を連れて来たこともあるオータ先生が監督を務める学校である。それなりのレベルで平均化されたペア3組を擁している。
この対戦では、初戦でミスの目立った1年生ペアの片方を入れ替え、2年生の前衛と組ませて2番目に出してみた。このペアが相手の大将ペアとほぼ互角に渡り合った。どころか、ゲームカウントを3-2とリードしてそのまま勝ちきるほどの勢いであった。ところが、タイブレークに追いつかれて失速した。同じパターンで攻められてミスを繰り返し、善戦したもののあえなく敗戦となった。それでも、実戦でこれだけのゲームができるというところを見せてくれたのは収穫であった。
試合は3番勝負。シーソーゲームになったが、終始リードし続けた本校ペアが勝ってベスト4。

準決勝の相手は、1年生大会でも対戦して負けているA中。相手はなぜか2-1-3のオーダーを組んできた。相手のトップに出てきた後衛選手、ひたすらラケットを振ってきた。いいボールがびしびしとコートに打ち込まれてくる。こちらの前衛目がけても厳しいアタックを仕掛けてくる。結果、2-4でこちらの大将ペアが負けてしまった。2番目はH中戦で善戦した1,2年生ペアだったが、相手の大将ペアはなかなかこちらのペースでゲームをさせてくれない。結果、ストレート負け。これで、準決勝での敗退が決まった。

3位決定戦が残っていた。相手は、ジュニア育ちの大将前衛を擁するKH中。互いに大将戦となったが、その大将戦を制した本校が、またしても3番勝負の末に勝って、3位となることができた。
望外の結果と言ってよいだろう。練習らしい練習もできないままに迎えた大会である。それでも、選手たちはそれなりのパフォーマンスを見せてくれた。練習の裏付けがあってのことと思う。

その日の夕方からは、いつもの旗亭まことにて小宴。「これ、ゼッタイ!」という女将さんに勧められるままに、赤芋焼酎「紅一刻」をキープして飲む。う、うまい!まるで水を飲むように飲んでしまった。
さらに、いつもの雀荘に移動して東回し。何と、オーツボくんがオーラスの海底で四暗刻を自摸ってしまった。よかった、2抜けで抜けてて。オチが着いたということで散会となる。

さて、翌日曜日は個人戦。本校からは2年生の2ペアがエントリーしていた。2試合勝てば、県大会出場が決まる。
ドローを見た。2番手ペアの組み合わせが厳しかった。2回戦で、新人戦の個人戦版とも言える市民スポーツ祭で対戦して負けているペア(その試合では3位に入賞)とまた対戦することになっていたからだ。もちろん、初戦を突破できるという保証はないのだが、そうなったらどういう戦術でゲームをさせるかということを考えていた。

2ペアとも、初戦は難なくクリアした。さて、問題の2番手ペアの2回戦である。選手たちを呼び、ゲームプランを話し、具体的な戦術を確認して送り出した。
試合が始まった。相手は、特に前衛選手が秀でている。どうやって彼に仕事をさせないかということが主な眼目である。その前衛選手、どうやらこちらの意図に感づいてくれたらしい。必要以上に警戒していることが見ていてわかった。こうなれば、あとはサインプレーを徹底させるだけである。
結果、2ゲームは落としたものの、どのゲームも先行してゲームの主導権を握り、勝利をものにすることができた。選手たちの喜びようも一入であった。

大将ペアの2回戦は苦戦であった。前後衛ともにミスが目立って、先に3-2とゲームをリードされてしまう。それでも、気を取り直して何とかタイブレークに持ち込むことができた。ところが、このタイブレークも一進一退。先にリードしつつも結局ポイント5-5と追いつかれてしまう。最後は、相手が力尽きて2本連続でミスしてゲームセット。どちらに勝敗が傾くかまったく予断ができない試合であった。これで、2ペアとも県大会に出場できることになった。

さすがに、前日の疲れやら接戦の疲れやらもあったのだろう、その後は両ペアともいいところなく負けてしまい、結局それぞれ9位と16位で県大会には出場することになった。
でも、これも上出来である。
なぜなら、選手たちはこの新人大会のシリーズは県大会に出場することを目標にしていたからだ。選手たちの健闘を讃えたい。

実は、この大会の前日、『<勝負脳>の鍛え方』(林成之/講談社現代新書)を読んだ。
2カ所を引用させていただく。

“すぐれた勝負脳の持ち主は、決して目的=勝負の結果に執着しません。勝つためにどのようなゲームプランを立て、何を目標に戦いを進めていくかというプロセスに常に気持ちを集中させることが、結果として目的達成につながることをたくさんの勝利の経験からイメージ記憶しているのです。”(80頁)

“「勝つ」という目的ではなく、「勝ち方、あるいは勝つために求められる技や作戦」という目標に向かって全力を傾けることです。”(132頁)

やっぱり、「勝つこと」を求めても、いいことはないってことなのだ。
今回の試合で、ウチの2番手ペアが第3シードに勝てた試合が、まさに「勝つためにどのようなゲームプランを立て、何を目標に戦いを進めていくかというプロセスに常に気持ちを集中させ」た結果であった。そうして、それが「目的」(本校の場合は県大会出場)達成につながったということである。

そろそろ「勝つ」ことを目的にするの、やめませんか?
いいこと、あんまないっすよ。