スーさん、負けて学ぶことについて考える

10月6日(月)

土曜日は、市新人ソフトテニス大会(団体戦)の決勝トーナメント。
本校は、予選リーグを1位で通過し、第7シードで大会に臨んだ。

シードなので、2回戦からの登場である。
相手は、運動能力の高そうなサウスポー後衛を大将に擁するM中。オーダーは互いに1-3-2のがっぷり四つ。
サウスポー選手と試合をするときには、それなりの攻略法がある。事前にそのことを徹底させて臨ませると、いきなり3ゲームを連取することができた。そこから雑になって2ゲームを落としたが、続くゲームを引き締めて勝ってくれた。
真ん中は1年生ペアである。さすがに、簡単には勝たせてはもらえない。ミスが目立っていきなりゲームカウントは0-3。そこから1ゲームは取り返したもののそのままゲームセット。勝負は3番に持ち込まれた。そうなることは十分承知の上で、殿には主将のペアを配してある。やや前衛選手にミスが目立ったが、特に苦戦することなく勝ってベスト8入り。

準々決勝の相手は、優勝候補の一角である第2シードのK中であった。先日の日記で、ほとんど毎日夜9時まで練習していると書いた学校だ。しかも、主力選手はそのほとんどが今年の夏の大会を経験している。普通に考えれば勝ち目はない。
それより何より、今回の対戦でどうしても勝たねばならないというわけでもなかった。本校の1,2年生は他校に比べて練習のスタートがほぼ1ヶ月は遅れている。3年生が全国大会に出場したため、全中が終わるまでは1,2年生主体の練習に切り替えることができなかったからだ。
だから、まだまだ練習で積み重ねなければならない技術的な要素も多く、それを消化不良のままに今回の大会を迎えている。
ただ、毎日夜9時まで練習している学校などには、逆に負けたくないという気持ちもあった。予選リーグの試合ぶりなども見ていたので、どこをどう攻めればポイントが取れるのかもほぼわかっていた。
そこで、「来年の夏のことも考えて、今回はとりあえず相手をビビらせればいいよ。」ということで試合に臨ませることにした。

試合が始まった。
何と、相手がオーダーを組み替えてきた。着実に勝ちに来ているのか、多少とも弱気になっているのか。ただ、こちらの大将ペアとの対戦を嫌っていることだけは確かだ。豊富な練習の裏付けがあるのだから、堂々と大将ペアをぶつけてくればいいのにと思った。
実は、こちらも直前になってオーダーを組み替えてみた。大将ペアはトップ、そうして、いつもは殿に置いている2番手ペアをそのまま2番に起用した。万が一3番まで回らなかったことも考え、とにかく2番手にはK中と対戦させておきたかったからだ。

トップの大将ペア。いいテンポでゲームを進めてゲームカウントは3-0。続くゲームを競り合いの末に落としたが、第5ゲームは失ポイントなしで完勝してくれた。
次の対戦、相手は大将ペア。だが、トップが負けての登場だ。自分たちが負ければ団体戦は負けなのだから、それなりのプレッシャーがかかるであろう。対するウチのペアは、ボール回しのうまい後衛と、動きがよくクレバーな前衛の組み合わせ。いいマッチングだと思った。
それで、監督に欲が出た。勝てると確信した。そうして、それが負ける原因になった。
さて、具体的な戦術を確認して選手を送り出した。
案の定、相手後衛はボールが入らないし、強打もできない。サービスも弱々しく打つだけだし、もちろんダブルフォルトもあった。ゲームカウントを2-1とリードする。
ここから相手が慎重になりだした。無理をしなくなったので、ミスが減ってきた。逆に、こちらは勝てると思ったためか、「居ながらボレー」とかもミスするような所謂「凡ミス」が目立ちだ始めた。
ゲームカウント2-2から、続く第5ゲームをポイント3-1とリードしつつも、そこから連続して3本ミスが出て追いつかれ、さらにそこから競り合いの末にそのゲームを落として流れが変わった。結局、続くゲームも単調な攻めに終始してゲームセット。勝てた試合だった。

3番は1年後衛と2年前衛のペアである。対する相手は、既に今年の夏も団体メンバーに入っていた後衛選手のペア。2番手が負けた時点で勝負には負けていたのだから、まあお気楽に試合をさせようと思っていた。
試合が始まった。1年生後衛が、いいコースにびしびしとボールを打ち込んでいる。おいおい、どうなってんの?と思っていると、最初のゲームを取ってしまった。
続く第2ゲームは落としたが、第3,4ゲームは競り合いになった。何度もポイントが行きつ戻りつしつつも、最後はこちらのミスでゲームをものにできない。特に第4ゲームは、後衛同士の打ち合いから完全に打ち勝ったボールをこちらの前衛が思いきりアウトミスしたりして、流れをものにすることができないままに敗戦。この試合も、勝てる要素が随所に見られた試合であった。

結局、K中はそのまま決勝まで勝ち進み、そのまま1組も負けることなく優勝した。唯一3番勝負となったのが本校との対戦であった。
試合は負けてしまったが、ともかく優勝候補の一角である学校とこれだけ渡り合えたのは、本校にとっては大きな収穫だった。

それより、他校の選手ことながら、K中のある選手がいかにもつまらなそうにゲームをしている(そういうキャラなのかもしれないけれど)のが気になった。
テニス(ソフトテニス)って楽しいのに。
いくら好きな食べ物でも、毎日そればかり食べていたら好きじゃなくなるだろう。それと同じことになっていなければいいのだが、と老婆心ながら心配になった。だって、まだ中学生なのにテニスが嫌いになってしまうとしたら、それは全面的に指導する側に責任があるからでしょ?

今大会では、第1シードが初戦で敗退した。実力のあるチームと前評判は高かった(1年生大会は優勝)。その学校の試合ぶりを予選リーグで拝見した。本校の試合スタイルとは随分違うという印象であった。
シード校は、初戦で負けても敗者戦がある。来る県西部地区大会には、市内から14校が出場できるからだ。でも、その順位戦も全て敗退したそうだ。
どうしてなのだろう。1年生大会で優勝して、満足してしまったのだろうか。
でも、もしもその敗退の理由が「テニスが楽しくない」ということだとするなら、これは考えなければならないことなのではなかろうか。

何度も何度も書いているが、スポーツを指導する人たちには「勝利至上主義」の弊害について、ぜひとも自覚的になってほしい。
もちろん、指導するからには試合で「勝つこと」を最優先していろいろな指導を展開するに決まっている。しかし、「試合で勝てるのなら」という条件文に、「何をしてもいい」とか、「マナーなんてどうでもいい」とか、「子どもの発達段階など考慮しなくていい」などというネガティブな字句が続くような指導(あるいは結果的にそうなっている指導)は、厳に慎まなければならないということである。

本校の選手たちを見てほしい。
今年の3年生たちのように、決して高いレベルの技術を持っているわけではないが、ほんとうにテニスの好きな選手たちばかりである。
現に、練習のない今日だって、昨日来の雨でコートに水がたまっていたところを、排水孔の枯葉を取り除いて排水し易くしたりしていたみたいだ。そんなこと、ひと言も指示してないのに。今年の2年生はつい最近までそんなことをしなかった。試合で負けたことが、有形無形の何かを彼らに与えてくれたのだろうか。
ってことは、負けて学ぶこともあるってことではないか。勝つことだけがすべてではないじゃないか。
手前味噌になることは十分承知の上で申し上げる。自然にそのスポーツが好きになるような指導こそ、私たちジュニア選手の指導者が目指すものではないか。

悪いけど、夏は本校の選手たちはすばらしいパフォーマンスを見せてくれるはずである。だって、彼らは本当にテニスが好きだから。