スーさん、全国大会へ

8月11日(月)

東海大会が終わった。
おかげさまで、全国大会(男子個人戦)への出場が決まった。
選手たちに感謝したい。

東海大会の個人戦は、東海ブロック4県(愛知、岐阜、三重、静岡)からそれぞれ8組ずつを、各県1組ずつ8ブロックに分けての予選リーグと、リーグ1位ペアによる決勝トーナメントで行われる。予選リーグを1位通過すればベスト8なわけだが、全国大会に出場できるのは7組。決勝トーナメントで、少なくとも1勝しなければ全国出場はない。
このトーナメントがいかに熾烈なものであるかはご想像いただけよう。どのペアも、厳しい予選リーグを勝ち抜いてきているわけだから、「組み易し」などと言えるペアなど1組もない。少しでも気を抜けば、たちまち一方的にやられてしまうような相手ばかりだ。もちろん、それは予選リーグにも言えることなのだが。

どんな相手がリーグに入っているか、蓋を開けてみるまではわからない。それを考えても、最悪の場合、全敗で大会を終えることだって考えられた。どうなるかは分からない結果のことをあれこれと考えても仕方がない。とりあえず、最悪の結果のことも覚悟して、大会会場である沼津市の愛鷹運動公園テニスコートへと向かった。

個人戦の前日は団体戦が行われていた。静岡県勢は2回戦ですべてのチームが敗退していた。県大会団体戦でウチのチームが負けたG中(静岡県大会優勝)も、何と初戦負けだった。「ウチが出ていれば…」とも思ったが、たとえ出場したとしても勝ち残れた保証はない。
そのG中を倒した愛知のK中と、優勝候補筆頭の三重Y中が決勝戦へと駒を進めた。団体戦は、2位までが全国大会出場である。

出場できない悔やしさもあるが、そんなことより個人戦の組み合わせである。大会役員として先乗りしていたヨッシーにドローを見せてもらう。
岐阜T中のペアが同じリーグだった。
このペアには、春の練習試合で完敗している。気が重くなった。
さらには、目の前で決勝戦を戦っている愛知K中のペアも同リーグだった。とりあえず、どんなテニスをするのか確認せねばならない。
そんな思いを抱きつつ、決勝戦を観戦した。試合は、三重Y中の圧勝であった。あまりに一方的な試合は参考にならない。でも、どんな試合をするのかは確認することができた。

明けて個人戦当日。
朝の練習は、自校のテニスコートが改修工事のために使用できない沼津K学園高のスガイ先生が、宿舎近くにある高校のテニスコートを手配してくれてあった。ありがたいことである。
そこでたっぷりと汗を流し、ホテルに戻って朝食後、会場へと向かった。

予選第1試合は、前日の団体決勝戦に進出した愛知K中のペア。サウスポーの後衛が、よく切れたカットサービスを打つ。
試合開始。K中のサービスである。ところが、その警戒していたカットサービスが入らない。いきなり2本連続してダブルフォルト。これで流れが来た。そのままの流れでストレート勝ちして初戦を突破した。

続く第2戦、相手はマークしていた岐阜のペアを破った三重U中のペア。前衛選手にポイントされるとややこしくなる相手だった。ミスしてくれそうなコースと注意するボールはわかっていた。本校の後衛選手がうまく配球して相手のミスを誘う。この試合も、1ゲームを落としただけでほぼ完勝。
この時点で、2敗した岐阜のペアが最下位、三重と愛知のペアには本校ペアが勝っていたので、リーグ最終戦を待たずに、本校ペアのリーグ1位が決まった。

リーグ最終戦までは、だいぶん間があいた。決勝トーナメント進出が決まったこともあって集中力が途切れたためか、最終戦は終始相手にリードされる展開となった。
特に、後衛選手にミスが目立つようになった。が、相手も要所でミスが出てタイブレーク。そのタイブレークも相手にリードされたが、途中から逆転、何とかリーグは全勝で抜けることができた。

この頃から空模様が怪しくなってきた。
背後の愛鷹山を取り囲むように、雷雲が立ち籠めてきた。気温も急激に下がってきた。
ベスト8が出揃って、決勝トーナメントの開始を待つばかりである。
おいおい、なんかヤバい感じだよと思っていたのだが、本部からは決勝トーナメントを始めるアナウンスが入った。

その決勝トーナメントが始まった。相手は、団体戦優勝校の三重Y中の2番手ペア。
1ゲームが終了する頃から、雨が落ち始めた。さらには、辺りは急激に暗くなり、強風が吹き始めた。
午後2時だというのに、照明が点された。
本校の後衛選手は、視力があまりよくない。その所為もあってか、ミスが目立ち始めた。
前衛選手も、やや力んでのミスが目立つ。結局、ストレートでの敗戦であった。

ここからが正念場だ。
荷物置き場に戻って、順位戦に備えさせる。ところが、もうこの頃には雷鳴が轟き始めていた。雨も本降りになっている。
さすがにこの状況で試合続行は不可能である。決勝トーナメント第2試合と、順位戦は翌日に持ち越された。

そうなる方がよいとは思っていたのだが、宿舎は取ってない。すぐに、前日宿泊したホテルに電話を入れ、宿泊できるか確認してみた。宿泊はできそうであった。
思いがけぬ沼津連泊となったので、すぐにK学園高のスガイ先生のところに、「今晩飲も」と電話を入れる。

そして日曜日。
順位戦の第1試合。相手は、同じく決勝トーナメント初戦で敗退した三重M中のペア。
ここで決めなければ後は苦しいと思っていた。
ところが、この試合も前・後衛ともにミスが目立ち、1ゲームは取ったもののそのまま敗戦、最後の7位決に回ることになってしまった。

この7位決ほど精神的にプレッシャーのかかる試合はない。勝てば全国大会だからだ。
相手は、同じ静岡県のT中ペア。新人戦県大会個人戦を制したペアである。
このペア、前衛選手が2年生である。悪いが、彼にミスしてもらう以外に勝ち目はなかった。
果たしてそのとおりの展開になった。
しかし、ゲームカウントをリードしてから本校の後衛選手にミスが出始めた。
勝敗の行方はタイブレークに。

そのタイブレークは、終始本校ペアの先行で進行した。
そしてマッチポイント。
本校前衛選手のスマッシュでゲームセット。全国大会出場が決まった。
それにしても、予想どおり簡単には勝たせてもらえない7位決であった。

2年ぶりの全国大会であるが、前回は転勤したばかりで、前任者のモリ先生が育てた選手たちのおかげだと思っていた。
今回は、1年生から手塩にかけて育ててきた選手たちである。喜びは一入であった。
その全国大会には、研修大会等で互いに磨き合ってきた京都N中や、兵庫H中も出場を決めている。
いつものメンバーで全国大会に出場できるのも何よりうれしい。

全国大会は、富山県高岡市での開催。18日が開会式、19日が個人戦である。
ブロック最下位での出場では、初戦がブロック優勝校との対戦となるであろう。
でも、精一杯の試合をさせたい。

どうやら、運というものはあったらしい。
選手たちに、あらためて感謝したい。