スーさん、新学期にちょっとブルー

4月7日(月)

慌ただしく新学期の準備を終え、今日は午前中が始業式で、午後が入学式。校内の節目の式の司会は教務主任の仕事である。いろいろと気を配りながら、式の準備をしたり進行したりするのは神経を使う。疲れるが、誰かがやらねばならない。かくして、平成20年度の学期がスタートした。

そんな忙しい中、たいへん気分の悪いことがあったのでその御報告を。

2日の午後、校長先生から、「今から18年前、自分は当時の担任から暴行を受けた。以来、顎の関節が不具合のままである。ついては、その件について法的な解決も検討している。教育委員会にも御協力願いたい」という内容の電話が、教育委員会にあったということを知らされた。「当時の担任」、というのが手前である。電話の相手の名前を聞いた。確かに、18年前の自分のクラスの生徒である。しかし、どう思い出しても、その生徒に暴行など加えた覚えがない。その旨、校長先生にはお伝えをし、事後の始末はお任せすることにした。

翌日、また校長先生に呼ばれた。どうやら、その相手が詳しい内容のメールを教育委員会に送付してきたらしい。校長宛に転送された件のメールを見せてもらった。信じられない文言が並んでいた。「私が校舎屋上に出ていたことを見咎め、彼(手前のこと)は激怒して、畳のある部屋に私を連れ込み、拳骨で私の顔面を何度も殴りました。私の顔面はパンパンに膨れあがりました」と。

悪いけど、私は教師になって以来、生徒の顔面を拳固でパンパンに膨れあがるほど殴ったことは、ただの一度もない。それに、当時勤めていた学校の屋上にどうやって出るのかも知らない。その学校のどこに畳の部屋があったのかも知らない。それらのことも含め、校長先生には、「事実無根です」ということをお伝えし、当時の事情やらを覚えている限りで話をして、それを教育委員会に伝えていただくようお願いをした。

3日目、教育委員会がその相手と電話で話をしてくださった内容を校長先生から伺った。相手のメールの内容と、手前の話との食い違いを明らかにしつつ、相手の話の矛盾点をいろいろと確認していくうちに、だんだんと相手はトーンダウンしてきたとのことで、「訴訟というのならば、こちらも名誉毀損で訴えますよ」と伝えてくれたらしい。校長先生も、「たぶん、これで終わりになるでしょう」と言ってくださった。

もしも、暴行という事実があったのなら、その当時既に問題とされていたはずだ。それに、そんな事実があって、それをずっと恨みに思っていたのなら、18年も待たずに何らかのアクションを起こしていたはずである。唐突にこんな話が出てきたというのは、たぶん振り込め詐欺と同様の類なのであろう。市教委に電話があったのは、午前9時半頃のことだったらしい。だから、市教委では電話の相手は職に就いていないと予想していた。ちょうど年度初めということも考えれば、年度末で仕事がなくなったことも考えられる。お金が欲しかったのだろう。

それにしても、突然、手前に直接の電話でこういうことを言われたら、「そういうこともあったかもしれない」と、つい相手の口車に乗せられてしまったかもしれない。世間では、どうして見え見えの振り込め詐欺に引っかかってしまう人がいるのだろうと思っていたが、何となくそれもわかるような気がした。

それより何より、相手が教員ならば、何だかんだと難癖を付ければ幾ばくかのお金を手に入れることができる、などと思われていることが腹立たしい。さらには、それが自分の担任した生徒であったということが、とても悲しい。もちろん、自分の教え子たちがどの子もいい子たちであったとは言えないであろう。でも、少なくとも担任した生徒だけには、そういうことはされたくはなかった。たとえそのときの生徒が、手前が転勤したばかりでいきなり3年生の担任を持った学年の生徒だったとしても、だ。

そんなことがあっての、今日の始業式であり、入学式であった。教師と生徒の出会いの日である。学校の一年の中で、最も重要な日でもある。担任の先生方には、これから一年、生涯忘れられないクラスをつくりあげていってほしい。ありもしないことを捏ち上げて、かつての自分の級友や担任をとの思い出を汚すようなことだけはしない生徒たちを育てたい。そんなことを、新学期の始まりにあたって、例年にも増して強く実感していた。