けいぞうさんとかんちきくんの浜松訪問記

如月立春(月)

土曜日は、午前中が1年生大会の準々決勝から。既に、先週ベスト8入りして大会に臨む目標は達成していたことに加えて、先週の試合終了後から大将前衛がインフルエンザのために出席停止となり、大会までに回復は望めそうにないということから急遽ペアを組み替えたりして、「ええい、もうどうでもいいわい」というやや捨鉢気分での大会参加となった。

その準々決勝、相手はいきなり前衛のサイドに打ってきたりして喧嘩腰である。1年生のうちからこういうゲームのやり方を指導することに違和感を覚えるが、それぞれの監督の指導法というものも尊重しなくてはならない。そういうテニスを展開してくれるチームがあるから、こちらもレベルアップできるとも言えるからだ。しかし、如何せん、まだウチの1年生たちでは対応ができない。結局、3組とも負けて順位決定戦に回ることになった。

その順位戦1回戦も、ポイントは行きつ戻りつするのだが、肝心なところでこちらにミスが出て敗戦、ついに7位決定戦に回ることになってしまった。どうも、試合前に組み替えたペアがうまく機能していないようだった。この日最後の試合ということもあり、1組は元通りのペアに戻し、他の2組を組み替えて試合に臨ませた。トップが勝ち、2番もタイブレークまでもつれたものの勝って、7位が決定した。げにカップリングというのは難しい。

その日の午後は、シンムラくんが試合会場のコートを取っておいてくれたので、応援に来ていた2年生に加え、シンムラくんの学校の選手、さらには近隣校の選手も交えて合同練習。大会も終わってほっとしたのか、1年生もいきいきと練習している。初めて本校の選手たちと一緒に練習するIN中の選手たちも楽しそうにやっている。こうやって、ソフトテニスをとおして選手たちの交流が深まることも大切なことだ。

昼食後コートに戻ると、カンキくんから連絡が入った。「予定より早めに浜松に着いたんで、今からどこかで昼食を食べようと思うんですけど、どこかいいとこありますう?」とのことだ。現在地を尋ねると、どうやらオノちゃんの自宅近くを走行しているらしい。すぐにオノちゃんに連絡を入れて、カンキくんに昼食場所を教えてあげるよう依頼する。

そのまま練習を続けて晡時。昏黒からは、けいぞうさん一行をお迎えしての宴会。場所は、いつもの旗亭「まこと」。カンキくんが「浜冦の巣窟を見てみたい」(失礼な!)との要望に添ってのことである。シンムラくんが、一行をホテルまでお迎えに行く手筈になっていた。ほどなく到着し、参加者が全員揃って乾杯!

地元で出迎えたメンバーは、ほとんどが甲南麻雀連盟浜松支部の面々である。もちろん、沼津で会員になっているスガイくんもわざわざ新幹線で駆けつけてくれた。こういうメンバーで飲む酒が、どれだけ美し酒であるかということが想像いただけようか。酒のつまみこそあればあれ、互いのいろんなお話が何よりの肴となって、一献また一献と杯が重ねられていく。

そのうちに、部屋の隅では「プチ講習会」が始まった。口ではなく、何より自分の身体で実感したいとばかりに、支部会員たちがけいぞうさんに次々と技をかけてもらいながら説明をお聞きする。こういう時間は過ぎるのが速い。知らぬ間に3時間ほどが経過していた。宴後に予定されていた、カンキくんを囲んでの「囲む会」、別名「甚振る会」へと移行する。

実は、手前はこの時点で既に記憶喪失泥水酩酊状態を呈していた。だいたい、どうやって雀荘まで移動したのかわからない。気が付いたら、席に座って麻雀を打っていた。同卓にカンキくんがいた。確か、シンムラくんもいた。あと一人は?オーツボくん?記憶にない。そのまま半荘を3回と、東回しを1回やったらしい(覚えてない)。そんな状態で麻雀をしたにもかかわらず、結果は+16だったらしい(覚えてない)。いやはや、これこそ「酔雀」と言うべきか。たとえ意識はなくとも、カンキくんからは「面断平三色」を即で和了ることができたみたいだからだ(覚えてない)。おお、恐ろしい!その後、自宅に辿り着くまでにも一騒動あったのだが、とてもここでは書けない。

明けて、日曜日の講習会当日。外は雨。とりあえず、宿舎のホテルまでけいぞうさんたちを迎えに行く。カンキくんに会うなり、「昨夜のこと、覚えてないでしょ?」とばかりに、酔態の一部始終を聞かされる。あのねえ、そういう無粋なことはしないのだよ。それより、「ホントにおいしそうに飲んでましたよね」とか、「いい雰囲気だったから、つい過ごしてしまったんですね」とさらりと言ってのけるのが大人なの。よほど、酔漢にハネ満を振り込んだのが悔しかったのだろう(べっかんこう!)。

程なく会場に到着すると、参加者の中高生たちが続々と会場に来ている。顧問の先生も含め、参加者は総勢130名を超えている。けいぞうさんを更衣室まで案内して着替えてもらってから、さっそく講習会を始める。

最初は、体の持つ潜在能力を実感してもらう稽古。初めは半信半疑で遠巻きにけいぞうさんの技を見ていた中高生たちも、実際に自分たちがやってみると、「え?なんで?」とか、「すごいすごい!」などと歓声を挙げながら、けいぞうさんの技を間近から食い入るように見つめるようになった。何より、目の輝きが明らかに変わってきた。あっという間に1時間ほどが過ぎて休憩。

後半は、走り方を中心に動きのある技や、股関節の畳みを応用した打法等を稽古する。先生方だけではなく、中高生からも質問が出たりして、講習会も佳境を迎えていた。手前はひどい頭痛のため、ほとんど体を動かさずに、参加者たちの様子をずっと見ていた。誰の顔にも笑顔があった。どの技も楽しそうにやっていた。みんな、自分の体が持つ不思議な力を実感していたのだ。

けいぞうさんは、「自分の中には、こんな力が眠っていたんだということを実感してください」ということを繰り返しおっしゃっていた。もちろん、それがすぐに実際のスポーツの場面で応用できていくというわけではないだろうが、そうした自らの身体が持つ潜在力、筋力を鍛えることではなくて発揮できる力というようなものを実感させられたことは、参加者全員にとって得難い経験となったことと思う。

スポーツの指導者もとしては、もちろん、今回の経験を実際にどう練習プログラムとして実践していくかということが課題となるであろう。そのためには、指導者自らがさらに古武術の稽古法を研究していくことも必要であろう。しかし、けいぞうさんのレベルほどに古武術の技を自家薬籠中のものとするには時間がかかる。技はできなくとも、その技が持つ体感を保存しつつ、それをどうやって実践させていくかというアイディアを案出していくことも、指導者として大切なことではなかろうか。そのためには、体感のニュアンスを伝えるための言葉やメタファーの使い方を工夫していくことも必須のこととなるであろう。いずれにしても、いろんなことを感じさせられたすばらしい講習会であった。

会後は、けいぞうさん一行へのお礼も兼ねて、うなぎの老舗「中川屋」にて、この日記の題名にもなっている「うなとろ茶漬け」をご賞味していただく。かつて、内田先生とウッキーを唸らしめた一品である。けいぞうさんには、「ひょっとして、今まで食べたうなぎの中でいちばん美味しいかもしれない」と言っていただいた。何よりである。

けいぞうさん、ありがとうございました。おかげで、いい会を催すことができました。ぜひまた、来年か隔年で「第2回」を開催したいと思っておりますので、その節はどうぞよろしくお願いいたします。カンキくんも、楽しい時間をありがとう。また振り込みに来てください。支部会員一同、いつでもてぐすね引いてお待ちしております。