スーさん、うなとろの洗礼

1月28日(月)

土曜日は、市内中学校ソフトテニス部の1年生大会(団体戦)。この日は、12ブロックの予選リーグと、決勝トーナメントの2回戦(ベスト8)までが行われた。

もともと、この大会は、手前が市中体連ソフトテニス部長を拝命していたときに創設した大会である。それまで、1年生の試合は新人大会時の個人戦しかなかった。冬季、特に下級生である1年生のモチベーションのとかく下がりがちなこの時期に、団体戦を実施することで目標を持たせようという目論見で大会を開催した。レベルアップを図る目的もあったので、試合はリーグ戦で行われた。かれこれ、15年以上も前の話である。

昨年のこの大会は、浜松市と周辺市町村との合併ということで、参加校数が一気に増えた事情があり、従来とは違って全てトーナメントで試合を行った。組み合わせは、シードの根拠となるような1年生の試合がなかった(合併により、その年から新人大会の1年生個人戦は中止した)ため、その年の夏季市内大会の結果をそのままシードに適用した。本校は、夏の市内大会団体戦に優勝していたため、その1年生大会には第1シードで臨むことになった。

ところが、初戦でいきなり実力校のS中と対戦することになってしまった。S中は夏の大会で上位入賞していなかったため、くじ引きで本校のシード下に入ってきたというわけだ。結果、3番勝負タイブレークの末にS中に敗れてしまった。大会は、そのS中が優勝した。大会後、競技本部では有力校同士が早いうちにつぶし合いをしてしまうような試合の持ち方について検討がなされたらしく、1日で試合が消化できなくとも、やはり従来どおりにリーグ戦方式で開催しようということになって、本年を迎えたという経緯がある。

さて、本校の1年生部員は9名。例年に比べるとかなり少ない(ほぼ5割減)。練習がきついということはたぶんないだろうから、原因として考えられることとしては、従来「地域総合型スポーツクラブ」として活動していた野球と卓球を、本年度より学校の正式な部活動して認可したということが挙げられよう。この2つの部活ができたことで、今までソフトテニス部に入部していた生徒が、野球や卓球に流れていったのだろう。部員が少なくて困るということではない。団体戦が組める人数(8人)がいれば十分である。今回の試合には、何とか試合ができる7名を選手としてエントリーした。実際に試合をするのは3組6人だから、7名のエントリーでももちろん問題はない。

その1年生の実力であるが、さすがに2年生に勝るとも劣らないというわけにはいかない。でも、いつもその2年生たちと一緒に練習しているのだから、多少は技術的にもレベルアップはしているはずである。学校によっては、この1年生大会のためにわざわざ練習マッチをこなして臨むところもあったと仄聞するが、ウチはとてもそんなことをしている余裕はなかった。現状の実力で、はたしてどれだけのパフォーマンスができるのか、ということを確認する場になればよいというとらえであった。選手たちにはそうも言えないので、「予選リーグを抜け決勝トーナメントも2回勝ちベスト8に入ること」を目標に、大会に臨ませることにした。

もちろん、本校はノーシードで、男子組み合わせの中で唯一の4チームリーグに入っていた。試合がたくさんできる、という意味ではラッキーな組み合わせと言えよう。オーダーをどうしようかと迷ったが、どうも技術的に未熟なペアが1組あることから、3番勝負を踏まざるを得ない状況になるだろうという予想で、その3番にはコース変更のロビングが上手で粘れる後衛と、元気がよく動きがいい前衛とのペアを配すことにした。殿が決まれば、あとは対戦相手によって残り2組の配置を考えればよい。

予選リーグの第1試合が始まった。トップは1年生の大将ペアである。立ち上がりは悪くなかったが、前衛選手がイージーボレーをミスして流れが変わり、いきなり2ゲームダウンとなった。何とか次のゲームを取り返して勢いを盛り返しタイブレーク。そのまま流れを途切らせることなく、ようよう勝つことができた。2試合目もミスが多く、もたついた展開になった。この試合もタイブレーク。互いにミスをしながらも、そのミスが多少とも少なかった本校ペアに軍配が上がった。それにしても、よほど緊張していたのか、つまらないミスばかりが目についた試合であった。

続く第2試合は、サウスポーで力強いボールを打つ選手を擁するM中であった。これは大将戦を避けた方がいい。最初の試合でミスの多かったペアをトップに、大将ペアを真ん中に挟むことにした。案の定、そのサウスポー後衛のペアには歯が立たない。真ん中の大将は勝って3番勝負。この日の本校の3番は安定していた。元気よく試合に臨んで勝ちを収めた。

リーグ最終戦は、「もうウチは市内最弱ですよ」と顧問が嘆いていたC中。ミスの多かった前衛選手を替え、後衛並行陣にして真ん中に挟んだ。しかし、その並行陣が敗れてまたもや3番勝負。3番に回れば勝つと思っていたが、そのとおりでリーグを1位で通過することになった。

決勝トーナメントでは、第5シード下に入っていた。その1回戦、相手はディフェンディング・チャンピオンのS中であった。相手にとって不足なし。リーグ戦で機能しなかった並行陣をやめて元に戻し、相手の大将ペアを避けようとしたところ、相手も大将ペアを真ん中に置くオーダーで来た。トップの試合は、互いにミスを山のように積み上げた泥仕合の様相を呈した。どちらに勝敗が転ぶのかわからないままにタイブレークに及んで、最後は相手のミスがこちらを上回ってゲームセット。危うい勝負であった。続く大将戦は、ジュニア上がりの相手ペアに圧倒された。トップが負けていれば、3番に回らないまま敗戦というところであった。3番勝負は、途中で1ゲームを落とすも、流れは変わることなく勝って初戦を突破する。

2回戦は、第5シードとの対戦であった。相手についての情報がないので、とりあえず大将ペアをトップに起用してまずは1勝。しかし、真ん中はまたも敗れて、この日4回目の3番勝負となった。さすがに4回目ともなれば慣れたものである。前・後衛ともに落ち着いたプレーに終始し、難なく勝ってベスト8を決めた。大会前の目標を達成することができた。

この日の試合はここまで。残る準々決勝から決勝までは、次週に持ち越されることになった。応援に来ていた保護者たちも、「先生、どうしてここまで勝っちゃったんでしょう?」と、怪訝な顔をしつつも、たいそう喜んでいた。何よりである。

勝負のかかった試合は、着実に技術をアップさせる。F1のテクノロジーが、市販車にフィードバックされるようなものだ。だから、やたらと試合ばかりをさせる学校がある。だけど、そうやって試合ばかりしているチーム(の監督)は、試合では培うことができないものがあるということについて、慮ることができない。だから、普段の学校での練習が疎かになったり、勝てば官軍とばかりにマナーが悪くなったりするという悪弊を産む。

かつてF1では、強烈なグランド・イフェクトを得るために、車体にフラットボトムが採用されたことがあった。しかし、そのフラットボトムから生み出される強力なダウンフォースは、何らかの作用で車体がひと度地面から離れると、一気にその力を失ってひどいコントロール不可能状態を呈した。もちろん、そのフラットボトムが市販車にフィードバックなどされようはずはなかった。かように、ただ勝つためだけの技術は、そのためだけの隘路に落ち込み、何の益も齎さないどころか、逆にその技術全体に深刻な悪影響を及ぼすことだってある。

悲しいのは、その技術に関わっている当人たちが、自分たちのしていることを歴史的に眺望俯瞰できる視点を持っていないということだ。だから、よかれと思って必死に取り組む。ところが、それが後日他山の石として語られてしまうことだってある。もちろん、人間は未来のことはわからない。でも、「これって、ちょっと違うんじゃないの?」という感覚を持ち続けることは大切なことではないか。

とりあえずの目標は達成したのだから、もう次週の試合はおまけのようなものである。それより、今度の土日は、滋賀から、『古武術forSPORTS』 (スキージャーナル社)の著書で知られる高橋佳三さんが来浜されるのをお迎えすることになっている。浜松で講習会を開いてくださるのだ。もちろん、前日の土曜日は、夕刻からその高橋先生を囲んで小宴である。さらには、佳三先生に伴い、先日の本部「打ち初め」会にて親の四暗刻を自摸った勢いをそのままに、「ええい、浜冦退治ぢゃ!」と、カンキくんも乗り込んでくるとのことだ。「飛んで火に入る」、「火中の栗を拾う」等の格言は、彼のためにこそあるのであろう。

というわけで、以下は業務連絡。
2月3日土曜日、夕方6時頃から、高橋佳三先生を囲む会を開催いたします。「ぜひ参加を」と思われる方は、ご一報ください。なお、その後に本部連盟よりお越しの「カンキくんと囲む会」も計画されております。
講習会は、翌日曜日(4日)です。時間は9時から。場所についてはお問い合わせください。講習会終了後の昼食は、佳三先生、カンキくんと一緒に、うなぎの老舗「中川屋」にて、「うなとろ茶漬け」をいただくことになっております。こちらも、時間の許す方はお付き合いください。