スーさん、コーチングについて考える

1月15日(火)

新年最初の3連休最終日は、浜名湖北端にある三ヶ日中で行われた「三ヶ日オレンジ杯中学校ソフトテニス大会」に参加。隣の愛知県から招いた選抜チームを含め、計16校による団体戦である。

この大会には、その第1回から参加させていただいている。奇しくも、この日記を書き始めたその年から参加しているのである(えー、そのときの日記はhttp://www.geocities.co.jp/CollegeLife/3949/でごらんください)。

その前日の夕方、いきなり「沼津の弱雀」こと、K学園高スガイ先生から電話が入った。予定外の浜松出張が生起したため、もしも「週末小宴&麻雀」をしているようならぜひとも合流したいとのことであった。実は、支部例会はその前日に行われていた。誰あろう、支部長が正月の好調を堅持して、その日も+160超の大勝を収めたばかりだったのだ。

それはともかく、スガイくんの来浜となれば捨て置けぬ。ソッコーで「んじゃ今から飲も」と返事し、同時に来られそうな支部会員にもメールを入れる。すぐにシンムラくんとヤイリくんから、「ちょっと遅れますが駆けつけます」との返信がきた。レスのいい若者たちである。こうでなくてはいけない。スガイくんとは、ソフトテニスのことについても、いろいろと話したいことがあった。そういう意味では、時宜を得た来浜だったのである。

実は、今年のチームのことについて、年明けからあれやこれや悩んでいたことがあった。夏の大会までの指導目標やら、そこに至るまでの経過目標も含め、どんなことをコンセプトにして、具体的にどのように育てていこうかということを考えていたのである。と言うのも、ウチのチームは県新人大会で何とか優勝し、東海ブロックでも3位に入賞したという経緯もあり、これから参加する予定の研修大会等でも、周囲からはそんな目で見られるであろうから、それをどのように受け止めていけばよいのか、あるいは、どのようにはね返していけばよいのかということを考えていたのである。

そんな時、正月2日にNHKから放送された「イチロースペシャル」中の、イチローの言葉は衝撃的であった。
「プレッシャーはかかる。どうしたってかかる。逃げられない。だからもう、かけよう、と、今年そこをテーマに僕はしたわけ。それがきたら、それから逃げない、と。俺は。」
これだ!と思った。
もちろん、イチローが感じている重圧とは似て非なるものであろうが、重圧から逃げようとすると、「好きな野球が楽しめなくなっていた」(@イチロー)状態になってしまうであろう。ならば、ウチのチームも、今年の目標を、「重圧から逃げない」ということをテーマにしようと思ったのである。じゃないと、「好きなソフトテニスが楽しめなくなって」しまう。

そんなことを考えつつ、さらに「迷ったときには教典を」(@マスダ先生)のお言葉を思い出して、その日の午後は、内田先生と平尾さんの対談である『合気道とラグビーを貫くもの』(朝日新書)を読んでいた。これで迷いは完全になくなった。以下の内田先生のお言葉である。
“「負ける」とか「技術的に他人に劣る」ということが精神的に耐え難いというようなメンタリティーだったら、身が持ちません。(…)その人間が持っている潜在的な心身の能力を最大化することが修行の目的なわけですから、その妨害をするようなことは絶対にやっちゃいけない。そして、いちばんやっちゃいけないのは、「強弱勝敗を論じること」なんです。”(87頁)
“身体運用のOSがバージョンアップするということがどれぐらい驚くべき経験か。そのブレークスルーの感覚を子どもに経験させること。それがスポーツをやることの意義のほとんどすべてだろうと僕は思うわけです。”(124頁)
“かつてのキレを取り戻そうとしてそこから目指すのは、過去における最高の自分のパフォーマンスなんですよ。でも、よくよく考えてみたらやっぱりおかしいですよね。過去を目指していたらいつまでたってもそこまでしか伸びないということですから。”(174頁)
“勝敗とか記録といったものは、パフォーマンスを上げるための「方便」に過ぎない。方便のために本当の目的を見失ってはいけない”(196頁)

そうか、勝ち負けは「方便」にすればいいんだ。それより大切なことは、いかに「身体運用のOSをバージョンアップ」させるかということなんだ。そういうことなんですよね先生!と、ちょうど興奮状態にあったときに、スガイくんから電話があったのだ。飲みながら、そんなことを話した。

麻雀はするつもりではなかったのだけれど、シンムラくんとヤイリくんが来て4人揃ったということで、いつもの雀荘へと移動して半荘を2回。1回目はトップだったのだが、2回目にスガイくんから国士をぶち当てられてしまった。どうやらスガイくんも、「浜松では勝てない」というジンクスを破りつつあるのかもしれない。これで、明日の大会は勝てるような気がした。

明けて、オレンジカップである。試合前に、選手たちを招集して、研修大会に参加する意義、目的とするところ等について話をした。もちろん、試合中のコーチングも、「身体運用のOSをバージョンアップさせる」ために必要なことや、戦術に絡めた技術的な課題を指摘することに終始した。結果は、予選リーグから決勝まで1組も負けることなく、失点なしで優勝することができた(前日に国士を振ったのだから当然であろう)。

優勝賞品は、もちろん三ヶ日特産の「青島みかん」10キロであった。みんなで山分けにした。中学生には、こういう賞品がいちばんよい。各々のラケットバッグに、みかんをいっぱい詰め込んで帰途に就く。それにしても、この日のように低温で風が強いというような劣悪なコンディションであっても、それを感じさせずにプレーできること、さらには、ゲームやポイントが追い込まれても、焦らずに粘り強くプレーできることを、選手たちは見せてくれた。確かな成長を実感させられた。頼もしい中学生たちである。