スーさん、若手を指導してから甲子園ボウルに燃える

12月17日(月)

平穏な土日が2週ほど続いたのだが、今回は忙しい土日であった。

まず土曜日は、午後から県西部地区の中学校でソフトテニス部の顧問をしている若手指導者(20~30代)を対象にした指導者講習会が行われた。不肖私めが講師を、沼津K学園高のスガイ先生が実技指導助手をそれぞれ務めることになっていた。

これからの中学校ソフトテニス部の指導を背負っていく、未来ある顧問の先生たちである。適当にお茶を濁して済ませるわけにはいかないと思い、今まで立ち上げたこともないPowerPointを使用して発表資料を作成してみた。これは案外簡単にできたのだが、画像を取り込んだり、PDFファイルを挿入したりしているうちにハマり、資料へのハイパーリンクも入れたりして、自分でもけっこう納得のできるものができた。

お手伝いをしてくれるスガイ先生は、前日の夕方に来浜。昼間は浜松まで校務出張ということで、夕方から合流していつもの「まこと」へ。講習会の打ち合わせも兼ねて小宴。途中からオノちゃん、ヨッシー、シンムラくんも参加して談論風発、宴後は前週行った雀荘へ。スガイくんはどうも浜松での麻雀が相性悪いみたいだ。と言うか、この日はオノちゃんが暴発した。東回し6回で何と+147。誰となく、「もう帰ろうぜ」ということになる。

発表のことが気になっていたのだろうか、土曜日は何と早朝5時過ぎに目が覚めてしまった。こんなことは初めてである。仕方がないので、フラッシュメモリに入れておいた発表資料を呼び出して、家のMacでもう一度確認してから二度寝。そのまま寝過ごし、部活動の練習開始時刻ぎりぎりに学校へ。前日、ヨッシー家に宿泊したスガイくんはもう来ていた。

午前中は、そのスガイ先生から本校の生徒たちに「特別講習」をしていただく。サーブやボレーの技術的なポイントを中心にたっぷり2時間ほど。いつもよりは早めに終了して、午後からの講習会に備える。ヨッシーら中体連ソフトテニス部の役員たちが正午には来校予定なので、昼前にはスガイくんと昼食を済ませておくことにした。

講習会場は、昼過ぎまで卓球部が使用していたから、それまでは準備をすることができない。終了後、生徒たちの力も借りながら、机やイス出しをしたりプロジェクターを準備したりする。何とか受付開始15分前には準備を整えることができた。この日は、地元書店の協力もあって、講習会で紹介した書籍を販売してもらえることになっていた。もちろん、内田先生の『私の身体は頭がいい』(文春文庫)や、高橋佳三さんの『古武術for SPORTS』(1,2とも。スキージャーナル社)はラインナップされている。

講習会が始まった。PPTが一部うまく動作しないトラブルもあったが、何とか予定の1時間で講義を終えることができた。休憩後は、テニスコートに移動して実技講習である。これも滞りなく進行して終了時刻を迎えた。どうやら、参加者には好評だった模様である。会後のアンケートには、「顧問としての姿勢を学べた」とか、「練習法の工夫がヒントになった」などと記されていた。何よりである。

その日の夜は、講習会参加者の中から有志が集まって懇親会。わざわざ掛川から参加してくださった先生もいて、酒を酌み交わしながらテニス談義に花が咲く。若い先生から質問を受けたり、練習見学の依頼を受けたりしてあっという間に時間が過ぎていく。よき時間であった。こういう機会をとらえて、若手指導者たちにはどんどんいろいろなことを吸収していってほしいものだ。

明けて日曜日は、午後1時のキックオフに間に合うよう、新幹線で大阪まで。第62回アメリカンフットボール東西大学王座決定戦「甲子園ボウル」(今年は甲子園球場改修工事のため大阪長居スタジアムにて開催)を観戦するためである。いつもは誰かしら同行者もいるのだが、今回は一人である。チケットは、事前にゑびす屋さんに連絡を入れて手配を頼んでおいた。

11時過ぎに新大阪に到着、簡単に昼食を済ませ、そのまま地下鉄にて長居まで。さすがに梅田からは相当の混みようである。スタジアム到着は昼前。ゑびす屋さんに連絡を入れると、ゲートまでチケットを持ってきてくださった。既にフィールドでは両校の練習が始まっている。それにしても、すんごい人である。試合まで時間があったので、ファイターズのグッズショップを覗くと、購入しようと思っていたDVDの「FIGHT ON KWANSEI」を売っていたので、すかさず購入。帰ってからの楽しみができた。

1時、キックオフ。フェニックスのレシーブである。前半は、互いのディフェンスの対応がよく、攻撃はパントで終わるシリーズが続いた。先制したのはフェニックス。#21がすばらしいスピードでエンドゾーンを駆け抜けた。思わず、「は、速い!」と隣のゑびす屋さんと顔を見合わせてしまう。やはり、ダテに関東を制しているのではないということが実感させられた。

ファイターズも反撃を開始する。パスとランを織り交ぜてTD、その後もFGを決めて10点。しかし、フェニックスもFGを決め、同点で前半が終了した。互いにディフェンスが頑張って、オフェンスが手詰まりという印象であった。疲れも出てくる後半、互いに点の取り合いになるか、ファイターズが一方的に得点するのではないかという予感であったが、まさか第4Qにとんでもない結末が控えていようとは、神ならぬ身に知る由とてなかったのである。

後半が始まった。試合が動くかと思われたが、オフェンスは互いにパントを蹴り合う展開。ファイターズがFGでリードするも、フェニックスはTDを返して逆転、試合はシーソーゲームの様相を呈してきた。今度はファイターズがテンポよくパスを決め、TDを奪って再逆転。さらに、第4Qに入ってもう1本取って、モメンタムは完全にファイターズに傾きかけたと思いきや、次のキックオフでまたもやフェニックス#21が、何と95ヤードのキックオフリターンTDを決めてしまうのであった。ここに来て、試合が急激に動き始めた。これで勢いづいたか、次のフェニックスの攻撃シリーズで、控えQBがロングパスを決めてTD、またもやフェニックスがリードを奪う。

それでも、今年のファイターズオフェンスには、点を取る力強さがあった。ファイターズQB#9が次々とパスをヒットさせ、最後は#1にロングパスを決める。そのまま#1が、追いすがるフェニックスのディフェンス選手を引きずりながらTD。ファイターズの、ゴールへの執念を感じさせられた見事なTDであった。これでスコアは34-31。まだ安心はできない。フェニックスも粘りを見せる。続く攻撃シリーズでは、ファイターズディフェンスを嘲笑うかのように、リバースプレーからTD、38-34でこの日4度目のリードを奪ったのである。

点差は4点。FGでは逆転はおろか同点にもならない。ファイターズはTDを取らなければ勝利はない状況に追い込まれていた。時間は刻々と過ぎてゆく。もちろん、ここで諦めるファイターズではない。#9からのパスで相手陣に攻め込み、第4ダウンギャンブルからもパスをヒットさせてダウンを更新、さらにランアタックでフェニックスエンドゾーンまで1ヤードに迫る。試合終了までの残り時間は11秒。TDをすればファイターズの勝ち、阻止すればフェニックスの勝利である。両チームの選手がスクリメージラインを隔てて対峙する。固唾の飲んで見守る3万余の観衆。

残り1ヤードの攻防は、ファイターズがタイムアウトを取りながら3度突破を試みるも、悉く阻まれて第4ダウンを迎える。残り時間6秒。まさか、こんな舞台が最後の最後に用意されていようとは!ここで、フェニックスもタイムアウトを消化する。最後に心理戦も仕掛けようという目論見か。隣のゑびす屋さんがしきりと、「うーん、フェニックスらしくないなあ」と唸っている。「このへんが昔の日大と違うところですかね」とも。タイムアウトが解けた。勝敗を分けるファイターズ最後のプレーである。観客は総立ち。神に祈るとは、こういう場面でのことを言うのだろうか。思わず瞑目して手を合わせてしまう。ファイターズはIフォーメーションに変え、#9のスニークと見せかけて#2にボールを持たせる。密集の左側を抜けてエンドゾーンに飛び込む#2。入った!誰彼となく抱き合って歓喜するバックスタンドのファイターズ応援席。

それでも、まだ3秒残っていた。ファイターズのキックを、またフェニックス#21に走られれてTDされれば、1プレーで逆転である。よもやのことはあるまいとは思うものの、これまでの展開を考えると、最後まで油断はできない。「もう、ゴロを蹴って#21に持たせないようにするしかないです」とゑびす屋さん。はたしてそのとおりになった。何とか#21に持たせたいフェニックスは、ボールを受けた選手がそのまま#21にピッチするも、そこへファイターズのキッキングチームが襲来して試合終了。ゑびす屋さんとがっちり握手!である。

それにしても、「王座決定戦」の名に相応しい、痺れるようなゲームであった。ファイターズの選手・コーチばかりでなく、フェニックスの選手・コーチにも、心から賛嘆の拍手を贈りたいと思う。ほんとうに学生らしい、最後まで諦めることなく、知と力、あらゆるものを総動員して戦う姿を堪能させてくれた。たぶんこの試合は、甲子園ボウル史上に残る名勝負の一つに数えられることであろう。そんな試合を目の当たりにできたこの身の幸せを思う。行って本当によかった。

自宅に戻って、件のDVD「FIGHT ON KWANSEI」を見る。懐かしい選手をたくさん見ることができた。その時その時の、試合を見に行った様子も思い出した。そうして、改めて今日の勝利の余韻にどっぷりと浸かることができた。何よりである。

さて、今日はこれからビールを片手に、昨夜深夜に放送された中継録画を見るのだ。観客席で見るのとはまたひと味違って試合を楽しむことできる。だって、勝敗に行方にハラハラドキドキしなくてもよいし。こういう楽しみは、何物にも代え難い。得も言われぬ幸福感を実感できる。ああ、何と果報であることかな!