スーさん、勝利について考える

11月26日(月)

3連休の土日は、静岡県中学校対抗ソフトテニス大会(団体・個人)。9月の終わりから始まった新人大会の締めくくりとなる県大会である。大会前には、団体戦はベスト4、個人戦はベスト8を目標にして大会に臨むよう選手たちに話をしていた。

まず、土曜日は県の東部・中部・西部各地区予選を勝ち抜いた計24校による団体戦。昨年は浜松市の学校が優勝していたので、本校は第1シードで大会に臨むことになった。2回戦からの登場である。その2回戦は難なく突破してベスト8。続く準々決勝は、東部地区3位のF中。強力な大将ペアを擁する強豪校である。オーダーは互いの大将ペアが2番でぶつかり合う対戦となった。トップは本校が取ったが、大将戦は負け、3番勝負となった。さて、どうなることやらと思っていたが、この対戦はそんなに競り合う場面もなく、本校のペアに軍配が上がった。これでベスト4。

準決勝の相手は、ノーシードから勝ち上がってきた東部地区のS中であった。どんなチームなのか試合も見ていなかった。トップに出てきた相手大将ペア、特に後衛選手が強力なストロークを持っていた。そのストロークに打ち砕かれて本校のトップは敗戦。続く大将ペアは勝って、またもや3番勝負になった。この日は、3番が安定していた。幸い、あまり競り合う場面もなく勝ち、決勝進出が決まった。

その決勝戦、相手は中部地区1位のT中であった。学校の部活動と言うよりは、地元のジュニアのクラブチームに所属している選手を多く擁している学校である。このチームとは、夏に浜松で実施している研修大会で対戦し、そのときは本校が敗れていた。「いかにもジュニアでございます」というようなテニスを展開する。と言われても、どんなテニスなのか、ご存じない方には想像もできないだろう。ロビングを多用して相手のミスを待つ、ボールをコースに散らす、カットサーブ、相手前衛へのアタック、前衛はディフェンス主体、というような後衛主体の展開とでも言えようか。

手前は、そういうスタイルがあまり好みではない。選手の特性を考慮したときに、そういうスタイルしかポイントが取れそうにないという際には、そんなスタイルも指導することはあるが、基本的に前衛選手がポイントしていくスタイルが好みである。しかし、前衛選手を育てるのには時間がかかる。それまでは、こういうチームにはやられてしまうのを我慢しなければならない。

さて、決勝戦はこちらが2-1-3、相手が3-1-2のオーダーで、準々決勝と同じく互いの大将がぶつかり合う対戦となった。ウチの大将が勝てば本校の2-0、相手大将が勝てば相手の2-1の勝ち、という結果が予想された。2面同時展開の対戦、トップは本校ペアが相手を圧倒して4-0で勝利する。隣の大将戦は互いに譲らず、勝敗はタイブレークに持ち込まれた。隣のコートでは、3番の試合が始まった。とりあえず、2番の試合が終わらなければ3番の結果は有効にはならない。ベンチを移動して、大将ペアに付くことにした。

そのタイブレーク、一進一退の攻防から、本校ペアが連続してポイントを取るも、相手も追い上げて、1ポイントが決まるのに時間がかかる。こういうときは、カウントが判明しなくなる。両校の応援もあって、審判のカウントコールもよく聞き取れない。そのうちに、隣でやっていた3番の試合が終わった。本校ペアが負けたのだ。これで、本校の大将ペアが負ければ、敗戦が決定してしまうことになった。と、本校のポイントが決まって、審判がゲームセットを宣した。相手選手がカウントを確認してアピールしたが聞き入れられずゲームセット、本校の優勝が決まった。

釈然としない終わり方ではあったが、審判の決定は尊重しなければならない(当然のことである)。すると、相手校の保護者たちが騒ぎ出した。審判のジャッジに対するヤジである。すかさず、競技役員を務めていたシンムラくんが、相手監督のところに行き、イエローカードを提示した。当然の処置である。そういうことは絶対に許すべきではない。

ともかくも、県大会で優勝したのだ。選手たちの労をねぎらい、一人一人と握手してその健闘ぶりを讃える。同時に、「まだ明日は個人戦もあるから、今日はゆっくり休んで、明日に備えるように」と指示して解散する。

夜は、いつものメンバーに、宿泊していた富士宮の顧問・コーチたちも合流して、いつもの旗亭にて祝勝会。かつてはライバルとして競った富士宮のコーチや監督たちと、昔話に花が咲く。優勝の余韻に浸りながら飲む酒はまた格別である。宴後に麻雀というお決まりのコースであったが、この日は疲労困憊ということもあり、麻雀はパスして帰宅。

明けて、日曜日は個人戦。計64組によるトーナメントである。本校からは3組がエントリーしていた。初戦は3組ともクリアできるだろうと思っていたが、2番ペアが初戦で敗退してしまった。相手後衛の変則フォームから繰り出される前衛攻撃に対処できず、後衛選手も要所でミスを連発しての敗退であった。かように、個人戦は何が起こるのかわからない。

考えてみれば、この大会にエントリーされているペアは、どの組も地区の予選を勝ち抜いてきたペアばかりである。どのペアも、それなりの「武器」を持っていると用心してかからなければならない。しかし、そんなことはわかっていたはずだ。前日の団体優勝で、気持ちが受けに回ってしまったのかもしれない。そのことについては、試合前に厳に戒めたつもりであったが、選手たちの心のどこかには「組易し」と思っているところがあったのかもしれない。

3番ペアも、初戦はクリアしたのだが、2回戦で敗退してしまった。大将ペアの試合に付いていて、試合後に駆けつけたときには、既に敗退が決まった後であった。試合は見ていないのだが、前衛選手がミスを繰り返しての敗退であったようだ。このまま3組とも早々姿を消してしまうような嫌な予感がした。

残るは第8シードの大将ペアのみ。まあ、結果として1組にコーチを集中できるようになったというのは、よかったのかもしれない。2回戦までは苦戦することもなく勝ち上がったが、8本取りがタイブレークにまでもつれた。やるべきことを確認して送り出すと、タイブレークは本校ペアの流れで進行し、何とかベスト8。

準々決勝は、後衛がサウスポーで強力なストロークを繰り出す相手である。ポイントは、その強力なフォアハンドをいかに封じるかということであった。また、レシーブサイドで、その後衛選手がアドコートでレシーブするということにも対応しなければならない。具体的な戦術を確認してゲームに臨ませた。これがうまく奏功してベスト4。

準決勝の相手は、何と前日の決勝戦で対戦したT中の大将ペアであった。「親の敵だと思って向かってくるから、その相手の気をうまく外せよ」と言っておいたのだが、案の定、試合前のトスが終わってベンチに戻ってきた選手が、「先生、相手のペア、もうキレてます」と言っていた。試合は、ゲームカウント1-1から、競り合いになった第3ゲームを落として相手が調子に乗り、嵩にかかって攻撃を仕掛けてきた。こちらは防戦一方、そのまま1-4で敗退してしまった。まあ、こんなものだろう。

それで集中力が途切れたか、特に後衛選手にミスが目立つようになって、3位決定戦も敗退、個人戦は4位に終わった。でも、上出来である。団体の優勝も出来過ぎであったし、この上さらに個人戦も、などということになれば、県内から目の敵にされてしまう。この時期は、あまり勝たない方がよろしいのである。

それより、またまた気分の悪いことがあったので、そのことを書いておきたい(どうも最近は気分の悪くなることが多い。合気道仲間のマッちゃんに言わせると、「カルシウム不足なんじゃないの?」とのことである)。

試合は、あくまで選手がやるべきものである。もちろん、親も含めて、勝ってほしいという気持ちはあるに決まっている。だからと言って、T中の保護者や選手たちのように、試合中の審判のジャッジにクレームをつけてよいということにはならないはずだ。これはマナーの問題である。

個人戦でも、T中の選手は審判の判定にアピールし、その場を動こうとしなかった。見かねて、ベンチから、「選手は下がりなさい」と声をかけると、すごい形相でこちらを睨んできた。まるで喧嘩腰である。気持ちはわからないことはない。しかし、許される行為ではない。クラブチーム対抗の試合ならいざ知らず、「中学校対抗」と銘打っての大会であるならば、こういうことについては当然顧問の指導がしっかり入ってなければならない。技術指導はクラブチーム指導者に任せるにしても、マナー面については顧問がきちんと指導すべきなのだ。それができていないチームであるならば、大会には参加するべきではない。

ジュニアのクラブチーム指導者にもお願いしたい。「勝てばよい」という勝利至上主義の指導はやめてもらえないだろうか。そうして、できればマナー面もきちんと指導してほしい。コーチ代を徴収して指導している関係から、ひたすらに勝利に拘るのもわからないではない(何せ「費用対効果」が最もはっきりするのは大会結果だからね)が、長い目で「子どもたちのためになることは何か」ということを考えて指導してほしいのだ。総じて、子どもたちのやることに、当の子どもたち以上に、周囲の大人たちが熱くなってしまうことが問題なのだ。ここは一つ、大人としての分別をはたらかそうではないか。

団体戦後の小宴の時、長らく男子顧問を務めたオノちゃんがしみじみと言った。「ようやく、マナーのいい学校が優勝してくれました。ここ数年、マナーの悪い学校ばかりが優勝してたんですよ」と。でも、どうしてそんなことが看過されてきたのだろう。外部指導者の導入もいいだろう。だが、学校の部活動として活動させるのであるならば、やはり有形無形に顧問の指導は入るべきなのだ。尤も、こんなことは、あらためてアピールしなければならないことではない。敢えて、それをしなければならないところに、教師サイドの問題も大きいと言わざるを得ないのである。

気分が悪いままに擱筆するのもよくないので、うれしいお知らせを。関西学生アメリカンフットボールリーグ最終戦、いつもなら駆けつけて応援しているところなのだが、この県大会のために行けず仕舞いであったのだ。だから、試合結果の速報をゑびす屋さんに頼んでおいた。逐一、試合経過のメールが入った。最後のメールは、「31-28でウチの勝ち。最後までヒヤヒヤでした。ああ良かった。エエ試合でした。」というものであった。やったあ!甲子園ボウルだあ!