スーさんの恩返し

10月29日(月)

日曜日は、県西部地区中学校新人ソフトテニス大会の個人戦。計64組によるトーナメントで争われ、2回戦突破組(ベスト16)に県大会出場権が与えられる。

本校からは3組が出場した。それぞれ危なげなく初戦を通過し、県大会への出場がかかる2回戦も、多少は競り合いになる場面もあったが何とか突破して、3組とも県大会への出場を決めた。さらに、ペアによってはタイブレークになる試合もあったりしつつ、それぞれ3組ともベスト8に進出することができた。

その準々決勝、特に大将ペアは、前回の市民スポーツ祭で敗れたC中ペアとの再戦となったが、前回の敗戦をふまえ具体的な戦術の確認も周知し、気力充実させて試合に臨んだことから鎧袖一触、ストレート勝ちして前回の雪辱を果たすことができた。

他の2組は、前回市民スポーツ祭で準優勝したペアが敗退してしまったが、もう1ペアはタイブレークの接戦を制してベスト4に勝ち上がってきた。もしも2組が準決勝を勝ち上がれば、決勝戦同士討ちの1,2フィニッシュというところだった(が、果たしてそうはならなかった)。

準決勝が始まった。大将ペアの相手は、市民スポーツ祭の優勝ペア。第1ゲームは難なく取ったが、続く3ゲームを連続して落としてしまう。これで相手が勝ちを意識したか、ミスが出て2-3。ベンチに戻ってきた際に、前衛選手の微妙なポジションのずれを修正するよう指摘して送り出すと、簡単に次のゲームも取ってタイブレーク。しかし、そのタイブレークは、一進一退の攻防から最後は前衛のダウン・ザ・ラインにプレースメントされてチップミス、2ポイント差の敗戦であった。もう1ペアも、相手前衛の変則的なポジションに幻惑されたか、後衛選手の配球が甘くなって敗れ、結局2組とも準決勝で枕を並べての敗戦となってしまった。

優勝こそ逃したが、それでも出場した3組すべてが8強に入り、さらに4強に2組進出という結果は、上出来であったと思う。秋口にいくら勝っても、最後の夏に勝てなくては何にもならない。今は、課題を探すことの方が大切と思う。

それよりも、今回は大会を通じていろいろと感じたことがあったので、そのことを記しておきたい。

対戦をしたいろんなペアを見ると、身体的に明らかによいものを持っていると思われる選手もいる。しかし、その展開するゲームについては、「ん?」と思わせられることが多いのである。例えば、2人ともベースラインに位置してひたすらロビングを上げ続け、こちらが焦れて強打してミスするのを待ち続けるテニス。もちろん、試合ではどんなスタイルも「あり」だからそれはそれで責められるものではないのだろうけれど、「中学生がやってんだから、何も老人がするような、恰も昭和初期に行われていた(知らないけど)ようなテニスを展開させることないじゃない」と思うのだ。これは、偏に顧問の戦術指導の問題であろう。

また、年若い顧問というのは(これは何も部活動の顧問に限らないと思うが)、試合会場などで気さくに声をかけてくれて、「今度練習試合やるから来ない?」などと先輩顧問から優しく言われたりすると、「ハイ!ぜひよろしくお願いします!」とか言ってしまうことがあるだろう。当然のことだ。そうやって声をかけてくれる人に、「なんだこいつ、何か目論見あんのか?どうでもいいけどお節介なんだよ、けっ」とか思うのは、よほどその心根捩曲している者(手前のような人間)である。問題は、そうやって声をかける者が、ソフトテニスの指導に関しては誰もが一目置く見識ある人なのかどうかってことなのだ。

試合会場で、若い顧問たちに甘言をもって近づき、練習マッチに勧誘しているヤツに限って、いるのだ、以下のような類の顧問が。選手が試合をしていて、ミスをしようものなら、観客席や監督席から大喝叱咤罵詈雑言を浴びせるマナーの悪い輩。選手にしてみたらどうだろう。それで力が発揮できるであろうか?「だったら、オマエがやってみろよ」って言いたくなってしまうのではなかろうか。少なくとも、手前はそんな監督やコーチの下では試合もやりたくはないし、指導も受けたくはない。でも、年若い顧問はそんなことは知らないから、そういう指導の仕方が当たり前に思えてしまったり、練習はそっちのけでひたすら土日に練習マッチを繰り返すことが当然のことのように思えてしまったりはしないかということが危惧されるのだ。

もちろん、どのような指導を範とするかは、受け入れる者の価値判断に委ねられているから、そのことについてあれこれ言うつもりはない。だが、若い顧問たちにはそんな輩とは違う指導者(部活動の教育活動における位置づけ、生徒指導との関連、部としてのプライドとモラル育成、技術指導のノウハウ、具体的な戦術の理念等について、それなりに筋の通った考えを持って指導する指導者)も示してやる必要があると思うのだ。

今までは、そういう指導者たちが「指導者講習会」などの場を通して、若手にその一部始終を伝授していった。しかし、そんな講習会を受講した人たちも、現在は40歳以上の先生たちばかりになってしまった。開催しても人が集まらないことや、そもそも依頼する指導者がいないというような事情もあったと思われるが、現在の30代を含む若年顧問たちは、そんな会の受講経験がない。そこに大きなギャップができてしまっているように思われるのだ。

新規採用教員の減少により顧問の高齢化が進んだのは、何もソフトテニス競技に限ったことではなく、他の競技についてももちろん同様のことと思うが、ここへ来てまた少しずつ若手の顧問が増えて来つつある状況もあり、それは今後更に増え続けていくことが予想される。どの競技部も、若年指導者の育成に、再び力を入れて取り組む必要が出てきているのではないだろうか。

このことについては、実は手前にも十分に反省しなければならないことがある。今までは、その指導方法のノウハウについては、ソフトテニスの本に書いてあるようなありきたりなことは公開してきたけれども、肝心な「かんどころ」については、どちらかと言うと秘匿してきたところがある。公開することで、自分のチームが勝てなくなることが嫌だったのだ。

でも、最早そういう時代ではないのだろう。Web2.0と言われ、これからはオープンソースと著作権フリーが主潮になるらしい。そもそも、手前の「秘匿」してきた指導法のノウハウにしたって、諸先輩方から教授されてきたものであり、手前に「著作権」があるわけでもないのである。馬齢知命を過ぎ、浜松市の中学校のソフトテニス競技が全体的にレベルアップしていくのなら、手前の貧しいソースでよければ、それを公開することについては聊かも吝かではないということを言明しておきたい。

そんなことを、現在県西部地区中学校ソフトテニス競技部のまとめ役をしているヨッシーに話した。「オイラでよければ何でもするから、20代と30代の顧問を対象にした指導者講習会をやろうよ。誰も講師の引き受け手がなければオイラがやる。講話、実技、そして夜の懇親会のセットで考えよう」と。ヨッシーも快諾してくれた。手前のような老頭児でも、みなさまのお役に立てる場面があるのなら、喜んで挺身させていただくばかりである。それが、今までソフトテニスの指導を通して自分が感得してきたことへの、せめてもの恩返しとなるであろうから。