スーさんの雨の日曜日

6月11日(月)

土曜日は県中学生ソフトテニス選手権。富士宮で開催ということで、前日の金曜日から泊まりがけで行こうと思い宿舎も予約していた。シンムラくんのとこも2組出場することになっていたので、「じゃ一緒に行こ。ネットで安く予約できるホテルあるよ。そこなら、ホテルのレストランで生ビールが半額になるし」と同行する予定でいた。

例年、この試合があるときには、沼津のK学園高合宿所に宿泊させてもらって、試合が終わったら高校生と一緒に練習もさせてもらうという予定で行くのだけれど、今回は合宿所で野球部が合宿をしていて宿泊できないということと、翌日に高校生は試合が入っているとのことで、K学園高には残念ながら行けなくなったという事情もあった。

浜松から富士宮までは車でおよそ2時間。選手のコンディションを考えれば、早朝から2時間も車に揺られて会場入りするよりは、前日に宿泊した方がいいに決まっている。というわけで富士宮で宿舎を予約していたのだが、週末が近づくにつれ、どうも天候が怪しくなってきた(当日の降水確率70%)。シンムラくんからも連絡が入る。
「どうします?」
「しょうがないから、ぎりぎりまで待ってキャンセルするかどうか決めようっか」
ということで、木曜日の夜の天気予報を待つことにしていた。

その木曜日、やはり富士宮の降水確率は70%のままである。シンムラくんにも連絡して、宿舎はキャンセルすることにした。試合の順延が十分に予想されるのに、わざわざ宿泊をすることもない。試合開催の確認をして、当日の朝早く出かけることにした。

その土曜日、起きると外は雨である。雷も鳴っている。そのうちに、地区代表役員として早めに現地入りしていたヨッシーからメールが入る。「開催です」とのことである。選手たちと保護者には、雨であろうがなかろうが6時過ぎに東名浜松西インター入口に集合と連絡してある。すぐに選手たちと合流して出発する。

東名は、時折前方が見えなくなるほどひどく雨が降っている。静岡市を過ぎても、状況はいっこうに変わらない。「これでホントに試合できるんかよう」と思いつつ、視界不良の東名をひたすら東へ。しかし、富士インターで降り、西富士道路に入った頃から雨が止んできた。会場入りして、アップを始めるよう選手たちに指示する。

受付を済ませ、そろそろ地区割り当ての練習時間かという頃から、雨がひどくなってきた。「おいおい、これじゃあ試合できそうにないらあ」などと思っていたら、会場にアナウンスが入り、試合の中止順延が決定された。ふう。何のために早起きして来たのだろうと、どっと疲れが出てしまう。選手たちはそのまま保護者に任せ、そのまま一人で帰途に就く。

時間はあるので、「ええい、かくなる上は高速代節約のために国1で帰るのじゃ!」と決意し、富士市内に降りてそのまま国1へ。県内の国1バイパスは、確か3年前から全ての区間が無料になった。富士市内からは富士・由比バイパス、清水に入ると静岡まで静清バイパス、焼津からは掛川まで藤枝バイパス、掛川からは磐田まで掛川バイパス、そして磐田からは浜松まで磐田バイパスが利用できる。途中、一般道に降りることもあるが、ほとんどは自動車専用道で、無料化されるまでは通行料を徴収していた道路である。渋滞箇所もあるのだが、かなり快適に走れる。

富士市内では土砂降りの雨であったが、静岡市を越えたあたりから雨は小止みになってきた。国1は旧東海道である。由比の辺りでは海岸近くを、藤枝からは山の中を走ることになる。「夜泣き石」で有名な「小夜の中山」のすぐ近くも通るのだ。雨で洗われ滴るような木々の緑の中を走るのは気持ちがいい。降って湧いたような予定外のことが出来したときには、それを楽しむようにしないとつまらないのだ。

そんなふうにして、浜松に戻ったのはちょうど昼過ぎ。約2時間半のドライブであった。東名を使ってもそんなに時間は変わらないと思う。何より、高速料金はかかっていない。しかも、プリウスだとリッター23キロくらいは平気で走る。試合は中止になったが、少しは得した気分になる。

夕方からは、いつもの店で飲んで定例会。今回は、何と数え役満を和った。親でダブ東と白を晒し、萬子一色手のトイトイで、ドラの南と四萬で聴牌。で、九萬をカンしたら何とそれがカンドラに。ツモ牌は南で、ドラ7。まさに、「ウルドラセブン!」だったのだ。「これって、数え役満ですよね」とオーツボくんが力なく言い、皆様から1万6千点ずつをいただく。もちろん、その日はトップ(それでも+33)であった。試合もなく、早朝から富士宮まで出かけていったのだから、これくらいのことは「あらまほしき」ことなのである(それはシンムラくんも同様であったが、彼はいつものように最下位に沈んだのは何故?)。

明けて日曜日は、朝から雷雨混じりの大雨。もちろん、部活動はできない。こういう日は終日蟄居しているに限る。しかし、前日のドライブの余韻が残っていたためだろうか、このところ近所の書店巡りをしてもなかなか見つけることのできなかった雑誌『大航海』を探すため、雷雨の中を隣の豊橋市にあるS文館書店まで出かけることにした。

自宅からは、奥浜名湖の三ヶ日を通って行くのがいちばん近い。雨は相変わらず強く降っている。奥浜名湖は風光明媚なリゾート地。特に、三ヶ日の町内を迂回して湖畔を走る浜名湖レークサイドウェイは、最近無料化されたすばらしい道路である。何しろ景色がいい。だから、走っていてもたいへん気持ちがいい。

静岡県と愛知県の境には、湖西連峰という山々が連なっている。いくつか山越えの峠道があるが、レークサイドウェイからいちばん近い峠は多米峠である。峠を登り切るとトンネルである。トンネルの手前までは雨が止んでいない。ところが、トンネルを抜けると雨が止んでいるではないか。どころか、青空まで見えている。「トンネルを抜けると…」とは小説の中の話だけではなかったのである。

さて、件の書店に到着。すぐに『大航海』を探す。ほどなく見つかった。他に、『ちくま評論選』も見つけた。「やれやれ、わざわざ来た甲斐があったわい」と帰るときには、来るときの大雨がウソのようにきれいな青空が広がっている。雨上がりの緑は、青空に映える。午後は、昼寝と洗車を挟んで、ずっと『消費社会の神話と構造』(ボードリヤール/紀伊国屋書店)を読む。夜は半袖シャツをまとめて9枚アイロンがけ。部活動がなくても、休日って過ぎるのが早い。