スーさん、国産品を愛用す

2月4日(日)

今日は立春。

ついこの前、年が明けたばかりだと思っていたのに、月日が経つのは早いものである。通勤の途中で梅の花をよく見かけるようになった。例年よりも些か開花が早いような気もするのだが、気のせいかしら。暖冬だからだろう。

其処此処で咲いている花を見かけると、心なしか日差しも明るくなってきているような気もする。外で活動する部活動の顧問をしていると、日に日に日暮れが遅くなってきていることが実感できる。「春立つと古き言葉の韻(ひびき)よし」(後藤夜半)寒さの中にも着実な春の歩みが感じられるこの時季が、手前は好きである。

ちょうど今くらいの季節になると、マーラーの「大地の歌」が聴きたくなる。
第5楽章「春に酔えるもの」
「一鳥 花の間に鳴く
借問す 此れ何れの時ぞと
春風 流鶯に語る
之に感じて嘆息せんと欲し
酒に対してまた自ら傾く
浩歌して明月を待ち
曲尽きて已に情を忘る」
第6楽章「別れ」
「いとしき大地に春来たりなば
至る所 花は開き 緑は新たに萌え出でて
見晴るかす彼方 とこしえに青き光」
別に春を迎えるからって、何かよいことが待っているわけではないのだろうけれど、何とはなしに心も温かくなっていくような気がするのである。

今日はテスト前で部活動も休みだったので、学校で学年末試験の問題を準備していた。もう進級・卒業の時期なのである。手前の不肖の娘も例外ではない。先週は、横浜まで第2希望の大学の音楽学部を受験しに行っていた。次週はいよいよ本命校の受験である。はてさて、どうなることやら。どちらの大学に合格しても、とにかく音楽学部はお金がかかる。まあ、手前も親には好きなように大学を選ばせてもらったので、娘にもあれこれ注文をつけるつもりはない。好きな道に進んでもらえばいいのである。

さて、今回は近況報告。

「毎月1日は映画の日」とは、知ってはいたがなかなか行く機会には恵まれなかった。その2月1日。朝、出勤前に新聞を見ると「本日ファーストデイ!どなたさまも1,000円!」という劇場案内が目に入った。「おお、そうか、今日は千円で映画が見れるんだな。よおし、まだ見てなかった『硫黄島からの手紙』を見に行くべ」と思い、さっそく支部の面々にもお知らせしたところ、すぐにオーツボくんが「行きましょう!」とレスしてくれた。

オーツボくんは、浜松にある件の映画館に行くのは初めてとのこと。あのなあ、映画くらいたまには見に行けよってば。もう封切られてしばらくになるからか、客は10人程度。ゆったりと鑑賞することができた。終了後、二人で駐車所へと向かいながら、「日本人って…」という話になる。それにしても、指揮官の命令を無視し、独断専行した士官の命令によって、次々と自決させられていく兵士たちの姿は見るに忍びなかった。どこにもいるのだ、威勢ばかりよくて、いかにも情実を述べているかのように錯覚して振る舞う手合いが。いずれにしても、自分は日本人である。日本人のよさと、どうしようもない愚かさとを常に自覚して生きていきたいと思う。そんなことを感じさせられた映画だった。

次は、『古武術for SPORTS』(高橋佳三さんのご著書、スキージャーナル刊)のこと。年末の「朝カル」で佳三さんとご懇意になったK学園高のスガイくんが、すっかり佳三さんに紹介された体の使い方にハマってしまって、部活動の練習に積極的に取り入れていることは先日ご紹介したとおりである。最近では一本歯の下駄まで購入して、部員たちに履かせているとのこと。「そんなにハマるのなら」と、手前も件の著書をアマゾンで注文して取り寄せてみたのである(高橋さ〜ん、印税収入に貢献しましたよお〜)。

いやあ、これはすごい本です!というか、これは「あんまりいろんな人には紹介したくない、できることならごくごく限られた人だけの秘密にしておきたい」という気持ちになってしまった。だって、この本を読んで、DVDを見て、体の使い方を変えてどんどん上達していくライバル校が増えると困るじゃあないですか!

DVDを見て、さっそく自分も同じようにやってみた。えっ??おいおい、なんだよ、オレって前屈こんなに曲がるじゃん!な〜んだ、体やわらかかったんだあ!と、とにかく驚くことばかり。翌日、さっそく部活動で「股関節を畳み、肩胛骨を使ったサーブ」をやらせてみた。子どもたちにはたいそう好評であった。ゲームでいとも簡単にファーストサーブが入るようになった部員など、「見たか、オイラの肩胛骨サーブ!」などと言い出す始末である。

「膝の抜き」も、説明だけではなかなかわからないところもあるのだが、DVDを見れば一目瞭然、しかも段階を追った動きづくりができるようになっているので、自然に「抜くコツ」みたいなものも体得できるようになると思われる。何より、「おもしろそうだ、やってみよう」という気になるというところがいい。

さっそく、支部定例会に顔を出したオーツボくん、ヤイリくん相手に、いつもの小料理店の奥の座敷をちょっと間借りて「即席紹介講習会」を開く。「姿勢の力」で紹介されていたことをちょっとだけやってみただけで、「おお!なになにどうして?!なんでそうなんの?!」と大受けである。「ねえねえ、DVD貸してくださいよお!」とすっかりハマってしまったのである。もちろん、オーツボくんもヤイリくんも、すぐさま本を注文するであろうことはまちがいない。さらには、「一本歯の下駄もみんなで買いましょう!」ということで話がまとまる。いやはや、こんなにもインパクトがあるのだ。

「スポーツ」ということで、そのトレーニング法から全てが外国からの輸入に頼ってきた歴史があるが、どうやらそれも頭打ちになってきたような気がする。「日本人には日本人に合った稽古法がある」ということに、少なからぬ人たちが気づき始めたということではないだろうか。そう言えば、映画の興行収入も邦画が洋画を上回ったとの報道もあった。いい意味で、日本のよいところが見直されていくのはよい傾向ではないかと思う。