12月18日(月)
先週金曜日は、弟の1回目の形成外科手術があった。午後から約4時間の予定ということで、夕方に病院へ顔を出したのだが、控え室にいた両親から、予定よりも手術開始時間が遅れまだ終わっていないと聞き、一度自宅に戻ってから再び病院へと出向いた。終わったのは午後8時半過ぎ。それから、執刀医による説明があった。大手術だったが無事済んだということ、重傷ではあるが思っていたよりも熱傷部分は悪くはなかったということ、年内にはもう一度残りの部分の手術を行う予定であること等を聞かされる。お礼を言い、病院を出たのが10時過ぎ。とりあえず、無事手術が終わったことに安堵する。
翌、土曜日は沼津K学園高のスガイ先生と共に新幹線で芦屋へ。午後から予定されていた甲南合気会の稽古に参加するためである(スガイ先生は見学)。内田先生の稽古を受けるのは今年の4月以来である。呼吸法から始まり、主に「後ろ両手取り」からの技をたっぷりと稽古する(2時間ほどで息が上がりました)。終了後は、自宅へ戻るドクターと一緒にJR芦屋駅まで歩き、その日の宿舎へと向かう。
宿舎にて、その日の「後発隊」であったオーツボくん、ヤイリくん、シンムラくんら甲南麻雀連盟浜松支部の面々と合流し、5時半から予定されていた朝日カルチャーセンターでの平尾さん(神戸製鋼ラグビー部)と内田先生との対談を拝聴するため、大阪肥後橋の朝日新聞社ビルへ。
1時間半の対談であったが、あっという間であった。いろいろと興味深いお話が聞けた。終了後は、北新地にて打ち上げ宴会。何と、その場で支部の面々以外に浜松から来られている方がいるということを知った。神戸女学院合気道部出身のエビサワさん(通称エビちゃん)である。まさか、大阪の北新地で「ボクんちは追分のアピタの近くなんですよお」などという超ローカルな話をするとは思わなかった。「お近くなので、また飲みましょう!」ということになる。
甲野先生門下の高橋さんは、実はスガイ先生の大学の後輩であるということもわかった。スガイくんは、その高橋さんの著書である『古武術forSports』も購入していた。宴の途中からは、二人で身振り手振りを交えながら、何やら長いこと話し込んでいた。いやはや、世の中というのはほんとうに狭いのである。
シンムラくんは今回初登場である。彼は今年の新採教員(そう言えばヤイリくんもそうだった)なのであるが、何の因果かその配属先の学校にオノちゃんとヨッシーがおり、あまつさえ自分が中学時代に所属していたソフトテニス部の副顧問にもなったということから、必然的に甲南麻雀連盟浜松支部の「準会員(お茶くみ係)」に認定されたのである。今回、内田先生にお会いすると聞いた「指導教員」オノちゃんは、「内田先生とお会いするのに先生の著書を『先生はえらい』しか読んでいないとは何たること、すぐに10冊は注文せよ!」と厳命され、すぐさまオノちゃんから渡された著作リストの本全て(19冊)をアマゾンに注文したという剛の?者なのである。
そんな事情を先生にお話しし、先生からいたくお褒めの言葉をいただいたことに気をよくしたのか、シンムラくんは「あのお、今日の対談でお伺いしたことの中でちょっとお聞きしたいことがあるのですが…」と先生に質問し始めた。いいことである。若いときというのは、そうでなくっちゃあいけない。そうやって、どん欲に何でも吸収していこうという姿勢こそ、彼のような若い教員には何より大切なことなのである。
そうこうしているうちに、時間はあっという間に過ぎて11時近く。宴今や盛りではあったが、そこでお開き。参加者の面々が、三々五々帰途に就く。内田先生にお礼のご挨拶をして、支部の面々と心斎橋へ。実は、今回は手前の日記を読んだグルメのスガイくんが、どうしても「まつりや」の「ちりとり鍋」が食べたいとのことで、さんざん飲み食いした後ではあったのだが、「まだまだ別腹」と地下鉄御堂筋線肥後橋の駅へと向かったのである。
つい先月の終わりに、大迫力くんたちと行ったばかりだったので、場所はわかっていたつもりだったのだが、どうも記憶の場所に行ってもそれらしき店がない。仕方がないのでカンキくんのところに電話を入れて場所を聞く。ところが、さんざん探し回ってようやく店を見つけると、ちょうど閉店したばかりの様子。外にいた店員さんと思しき人に「もう終わりですよね」と尋ねると、「ハイ、今日はもう終わりました」とのこと。諦めきれない様子のスガイくんを慰撫しつつ(してないけど)、宿舎へと戻る。
さて、日曜日は待ち待った(5年ぶりの)「甲子園ボウル」である。部活動の指導のため一足早く浜松に戻ったオーツボくんを除いた4人で、シンムラくん提供のカローラフィールダーに同乗して一路甲子園へ。前日までは天気が危ぶまれたが、昼に近づくにつれ青空が広がり、キックオフ1時間前には雲一つない快晴の空となった。球場近くのショッピングセンター駐車場に車を入れ、まずは腹ごしらえ。ショッピングセンター内のお好み焼き屋さんでビールを飲みつつ(誤解のないように申し添えておきますが、ドライバーであるシンムラくんは一滴も飲んでません、念のため)雰囲気を盛り上げ(誰とは申さぬが昼間から酎ハイを飲んでた人が若干1名いました)、球場へ。レフト側18番ゲートのところで、ゑびす屋さんからチケットを受け取り、観客席へと向かう。
既に、両校の選手たちがフィールドに出て練習を始めていた。外野の芝生をフィールドに仕立ててあるのだが、芝生の緑が鮮やかである。「人工芝なの?」とゑびす屋さんにお伺いすると、「いえ、天然芝ですよ」とのお答え。ユニバー球技場などとは違って、トラックがない分、選手たちが近くに感じられる。アメリカンフットボールの試合を見るのは初めてというシンムラくん、ヤイリくんも興奮した面持ちである。
いよいよキックオフ!前半のチョイスは、関東代表トマホークスのレシーブである。ファイターズのキックはタッチバック、自陣20ヤードからのトマホークス第1ダウンである。ショットガン隊形からのリバースのラン。「な~んだ、こんなのすぐ止まるよ」と思っていたとおり、ファイターズディフェンス陣が襲いかかって難なくタックル、と思いきや、そのタックルをかわした#29のRBがあれよあれよという間にファイターズエンドゾーンへ向かって猛スピードで駆けているではないか!「おい、おい、おい!止めろよおおお!」と叫んでも止まらない。そのままTD。試合開始後、わずか数十秒の出来事であった。先が思いやられた。
戦前の予想では、トマホークス優位が報じられていた。圧倒的強さで関東リーグを勝ち上がったこと、ファイターズとの比較でもパス・ラン共にファイターズを上回っていること、特にその攻撃力は恐るべき破壊力を持っていること、特に春のヨコハマボウルでの対戦では、45-3とトマホークスが鎧袖一触でファイターズを退けていることなどがその根拠として挙げられていた。まさに、そのとおりの強さを見せつけられた思いであった。
さらにトマホークスは2回目のオフェンスシリーズでTDを決め、14-0とリードを広げる。対するわがファイターズ、たぶんこの日のために用意したと思われるスペシャルプレー(QBからWRへ横パス、それをWRがさらに前パス)でTD、1本を返す。「よしよし、これで一方的な展開になることはないだろう」などと思っていた直後、まともやファイターズのキックをリターンしたトマホークス#29に独走され、そのままTDされてしまう。沈黙のファイターズ応援席。また2本差である。長い第1Qであった。
しかし、この日のファイターズは負けてはいなかった。第1Qの終了近くから始まったドライブでは相手エンドゾーン近くまでじりじりと攻め込み、ついにエンドゾーンまでインチを残す。パワープレーの隊形から誰もが力で押し込むと思いきや、突入すると見せたQBがふいに起きあがってほとんどスクリメージラインに集まった相手DLをあざわらうかのようにふんわりとしたパスを投げたのである。ボールはきれいにファイターズWRの胸に納まってTD、また1本差となる。それにしても、見事なプレーであった。
ところが、やはりトマホークスは強い。第2Qにはランとパスでさらに2本のTDを決め、一時は35-14と引き離されてしまう。ファイターズも諦めない。前半終了まで残り2分を切ったところで、QBが自ら持ち込んでTDを奪う。結局、2本差のまま前半が終了。このころから、それまできれいに晴れていた甲子園上空に、怪しい黒雲が立ち込めてきた。
後半はファイターズのレシーブである。ぽつりぽつりと雨が降り出してきた。合羽は用意してきたのだが、午前中の天気を思えばよもや雨は降るまいと車の中に置いてきてしまった。用意万端とは、あらゆることを視野に入れておかなければならないのである。しかし、試合の方は雨で流れが変わるかもしれないと思っていた。神戸ユニバーでのパンサーズ戦も雨だったではないか!
その最初のドライブ、おもしろいように1stダウンが更新されていく。パスとランで相手エンドゾーンまで攻め込み、最後はRBがTD、これでまた1本差。前半は相手にいいようにやられていたディフェンス陣も踏ん張り出し、トマホークスの追加点を許さない。
降雨とともに攻撃が手詰まりとなったトマホークスに対し、ファイターズは攻撃の手を緩めない。テンポよく相手陣まで攻め込み、「おーし、これでもう1本取って同点だあ!」と意気込んでいたちょうどその時、甲子園上空に閃光が走り、直後大きな雷鳴が轟いた。ファイターズオフェンスは、既にFGレンジまで入っている。審判団から試合中断のアナウンスが入った。「おいおい、どうせ第4ダウンなんだから、そこまでやってから中断にしろよ」とは、ファイターズ応援席の誰しもが思ったであろう。そのまま選手たちはベンチまで引き揚げることになってしまった。
雨は止まなかったが、約30分の中断ののち、試合が再開。第4ダウンだから当然FGである。しかし、このキックが外れてしまう。後から思えば、これが大きく勝敗を分けたと思う。これで息を吹き返したか、第4Qに入った直後、トマホークスはパスで6本目のTDを奪って、またもや2本差。しかし、ファイターズもTDを奪い返して1本差、試合は雨中の激戦の様相を呈してきた。
試合終了まであと5分少々、パスでファイターズ陣まで攻め込んだトマホークスは、第4ダウンでFGを決め、スコアは45-35。TD1本では勝てない。時間は刻々と過ぎていく。それでも諦めないファイターズは#35のRBが執念とも思えるTDを上げる。さらには、PATでは見事な2ポイントコンバージョンも決め45-43、ついに2点差にまで詰め寄ったのである。
残り時間は3分を切っている。ファイターズが勝つためには、次のキックオフでボールを確保し、時間を止めながら相手陣まで攻め込んで、FGを決めるしかない。オンサイドキックでボールを奪えるかどうかにこの試合の勝敗がかかっていた。そのオンサイドキック、ボールは相手DLの手前でイレギュラーバウンドした。両チームの選手たちがボールに群がる。ボールは!ボールはどっちが取った?!トマホークスであった。これでファイターズの勝利はなくなった。最後はトマホークスQBがニーダウン。トマホークス応援席からカウントダウンが始まって試合終了、無情の2点差が残った。
もちろん身贔屓であるが、ファイターズの選手たちはほんとうによく戦ったと思う。心からその健闘ぶりを讃えたい。トマホークスも、戦前の予想に違わず、すばらしいチームであった。その実力は決してフロックなどではなかった。「東西大学王座決定戦」の名に相応しい、好ゲームであったと思う。
前日の「朝カル」で内田先生がお話になっていた「ノーサイド」のことを思い出した。まさに、この試合も「ノーサイド」で終わらせてもいいような試合であったと思う。試合後、初めてアメリカンフットボールを見たシンムラくんが、「また来年も甲子園ボウルを見に来たいです!」と言っていた。何かしらの感動を覚えたのであろうと思う。そんな試合を展開してくれた両校の選手たち、監督、コーチたちに心からエールを贈りたい。トマホークスのみなさん、おめでとうございました。ライスボウルでのご健闘をお祈りします。そして、ファイターズのみなさん、すばらしい試合をありがとう!
ゑびす屋さんには、チケットの手配を含め、いろいろとお世話になりました。残念ながら試合には勝てませんでしたが、ファイターズOBとしては満足できる試合だったのではないでしょうか。また来年も甲子園にご一緒できることを楽しみにしています!