スーさん、メンタルトレーニングについて考える

10月2日(月)

新人大会は惨憺たる結果に終わった。

まあ、ある程度は予想をしていた結果だったのでそんなにショックはないのだが、予選リーグ時の試合ぶりを考えれば、もう少しやれたのではないかという気もしている。

市内の新人大会は、先月の24日(日)から始まった。夏の大会と同様に、まずは1ブロック3~4校から成る計12ブロックの予選リーグである。予選リーグを1位、または2位で通過すれば、決勝トーナメントに出場できる。合併前の旧市内新人戦は、団体戦と1年個人戦が行われていた。ところが、とても1年生の個人戦を行うだけのコートと日程の余裕がないとのことで、1年個人戦は今年から中止となった。団体戦のみでの新人戦である。

本校は、第3シード校のブロックに入っていた。シードは、前年度の1年生大会等の結果を参考にして決められているのだが、残念ながら本校は昨年の1年生大会もベスト16止まりで、とてもシードに名を連ねることができるような実績もない。決勝トーナメントにシード校として出場したければ、リーグ1位になるしかないのである。

本校の新チームは、他校に比較すればスタートが出遅れている。今夏東海大会団体3位に入賞したレギュラーメンバーのうちの1人(ジュニア経験者の1年生)が残ってはいるが、彼は前衛選手だから、ある程度ボールが打てる後衛をつけなければ、その持てる力は発揮できない。2年生は、前任のモリ先生が「すみません、ほとんど何も教えてません」という生徒たちであったから、技術的なレベルははっきり言って低い。この4月以降も、練習は3年生を中心に行っていたから、その間1,2年生はひたすら基本的なストロークの練習しかさせてこなかった。全国大会が終わって、新チームとしての練習が始まったのは、夏休みがもう終わろうかという20日過ぎからである。その間、他校がほぼ1ヶ月の練習をこなしていることを考えれば、スタートの遅れはそれなりに影響があるだろうとは思っていた(それを負けた言い訳にするというわけじゃないんだけど)。

そんなチーム状況で臨んだ今回の新人戦であったが、何と予選リーグは全勝して1位通過することができた。正直言うと、これは予想外であった。同じリーグには、昨年度の1年生大会団体戦で旧市内優勝した学校が入っていた。そこには勝てないであろうという予想だったのである。残る1校に勝ち、2位通過できれば御の字だと思っていたのだ。

その予選リーグ、初戦はどうしても勝たねばならない相手であった。本校は第2試合だったため、残る2校の対戦をじっくり見ることができた。初戦の相手校は、サウスポーの後衛選手がよくボールを打っていた。だから、その選手のペアがトップで来るだろうという予想で、左対策では相性がいいと思われるペアをトップに据えた。しかし、オーダーは外れた。相手がオーダーを変えてきたのである。相手はそのサウスポー選手を3番に持ってきていた。これなら3番まで回らずに勝てるかもしれないと思った。

試合が始まった。トップの試合は本校の2年生ペアがストレート勝ち。2番は件の前衛をつけたペアである。ところが、いきなり2ゲームを先行されてしまう。後衛選手のボールが入らないのである。しかし、相手のミスにも助けられてタイブレーク。こうなると追いついた方が有利である。挽回の勢いをそのままにゲームセット。とりあえず、トーナメント出場が決まった。リーグ戦なので、勝敗が決まっても試合は3番まで行う。その3番、やはりサウスポーのペアには勝てず、結局2-1の勝利である。

次の相手は、第3シード校である。もうトーナメント出場が決まっていたから、策は弄せず、実力順のオーダーを組んだ。トップは相手の大将ペアにストレート勝ち、2番は1ゲームを取ったものの敗戦、3番勝負となったが、3番は本校の1,2年生ペアが最初のゲームこそ落としたものの、その後は流れをつかんで勝利、かくして1位でのリーグ通過となったのである。しかも、第3シード校にも勝ったということで、トーナメントも第3シードに座ることができることとなった。

ここまでは順調だった。と言うより、「出来過ぎだった」と言うべきか。30日(土)に行われた決勝トーナメントでは、2回戦からの出場であったが、シードしたから上がってきた学校にいきなり敗退してしまったのである。どころか、県予選を兼ねた地区大会への出場権をかけた敗者復活戦でも全敗し、ベスト16校中14位までが出場できるにもかかわらず、出場が叶わない2校のうちの1校になってしまったのである。

予選リーグから決勝トーナメントまでの間、選手たちの気持ちにどのような変化があったのかは想像もできないが、少なくとも何らかの変化があったと思わざるを得ないようなゲームであった。ふだんどおりに試合ができていたのは、この夏からの経験がある前衛が付いた1年生ペアだけ(このペアは、結局全勝であった)。2年生、特に前衛陣が全く機能しなかった。それも、「おいおい、普通にボール打って相手コートに入れとけばいいんだぞ」と思わず言いたくなるようなミスを繰り返しての敗戦だったのである。練習で打てていたボールが打てなかったなどというレベルの話ではない。とにかく、自分が何をしているのかということが全くわかないままにゲームが進行し、ふと我に返ったら試合が終わって負けていたというような感じのゲームだったのである。

まあ、これはことテニスに限らず、あらゆるスポーツに共通のことであろうが、よく言われる「緊張のあまりに、ふだんどおりの力が発揮できなかった」という、お決まりのフレーズで片づけられてしまうことが起こっただけのことであろう。でも、そう簡単に片づけられてしまっては困るのである。

試合に臨んで、緊張感を感じることなくプレーできる人間などいるはずがない。ましてや、その試合が何らかのプレッシャーを感じざるを得ないような種類の試合(勝てば、上位大会に進出できる、賞状がもらえる、カップやメダルがもらえる等)であれば、必要以上の緊張感を感じつつ試合に臨むということになろう。畢竟、「どのようにプレッシャーを克服するか」ということが、あらゆるスポーツをコーチする人たちの大きな関心事となる。

だから、「メンタルトレーニング」の必要性が高唱されるのであろう。かく言う手前も、以前はその「メンタルトレーニング」なるものの文献を渉猟したり、講演を聴いたりもしてみたが、どうもしっくりこないのである。そもそも、人間の心とは摩訶不思議なものである。科学的にどこまで解明されているのかは寡聞にして知らないが、そう簡単にコントロールできるような代物ではないということは、自分自身の心のことを考えてみれば容易に想像できるというものであろう。そう思うようになってからは、選手たちに所謂「メンタルトレーニング」なるものを課すことは一切やめた。

「緊張する」というのは、あるプレッシャーから自分を守ろうとする「自己防衛本能」の発現であろう。ということは、きわめて人間的な反応である。だから、「事に臨んで緊張しない」というのは、ある意味「自己防衛本能が機能していない」とも言えよう。それでは日常生活でも困ることになる。スポーツの場面において困るのは、その「自己防衛本能」が発現すると、自分を守るために身体感度をできるだけ低くしてしまうということである。これが「体が動かない、頭の中が真っ白」という状態を作り出してしまう。これでは試合には勝てない。では、どうするか。

その一、一時的に「自己防衛本能」を麻痺させる。
でも、どうやって?薬物を使用するとか?そんなことをすればドーピングである。とりあえず、直面していることが「自己防衛する必要がないことである」と思わせるようにすればいいのだろうか。でも、「別にこの試合負けたっていいじゃん」とは言えないしなあ。そんなこと言えば、逆に集中力がなくなって雑な試合をしてしまう可能性もあろう。うーん、難しい。
その二、技術面に集中させる。
「そんなことはわかってる。プレッシャーがあるから集中できないんだろ?そのためのメンタルトレーニングなんだよ」と言う声が聞こえてきそうである。とにかく、技術の一つ一つに心を砕かせるのである。「サービスのトスはちょっと高めに」とか「ストロークの踏み込み足は踵から」などと、逐一自分に言い聞かせながらプレーさせるのである。そうすれば、余分なことは考えないで済むのではなかろうか。でも、そうやってプレーしてもひたすら相手にポイントされるようなゲーム展開になったなら、自分に語りかける余裕もなくなってくるんだろうなあ。うーん、難しい。

やっぱり、緊張しないでプレーするためには、メンタルトレーニングしかないのであろうか。あるいは、試合経験を積ませるために、ひらすら練習マッチを繰り返すしかないのであろうか。どちらもあんまり気が進まないんだけどなあ。

どなたか、ヒントになるようなことがありましたら、ぜひともご教示をお願いいたします。