スーさん、「わいせつ」について考える

6月6日(火)

本日付の地元紙には、静岡市教委が臨時校長会を招集し、教員によるわいせつ事犯根絶のために、今月中に幼少中高の校長が全教員と面談するよう指示を出した、と報じられていた。

静岡県では、昨年度は教員によるわいせつ事犯はゼロであったが、先月の16日には県教委の出先機関である教育事務所の指導主事(教員を指導する立場の行政職)がお隣の愛知県豊橋市内で15歳の少女を買春した容疑で逮捕され、23日には本県Y市の中学教諭が教え子への児童福祉法違反容疑で逮捕されるなど、教員によるわいせつ事件が立て続けに発生した。それを受けての今回の静岡市教委の対応なのであろう。

ご存じのように、公立学校教員の服務は「地方公務員法」によって規定され、第33条には「信用失墜行為の禁止」として、「職員は、その職の信用を傷つけ、又は職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。」と謳われている。わいせつ行為は、この第33条に抵触するのである(尤も、そんな法令など持ち出さなくとも、わいせつ行為が教員として烏滸の沙汰であることは言うまでもないことなのだが)。

それにしても、「今月中に校長が全教員と面接」ですか。そうそう、その「面接」の前には、「わいせつ行為」や「セクハラ」など6分野、計100項目にわたるチェックリストで「自己診断」もしなければならないのだそうだ。

でも、静岡市の校長先生たちは、どのように面接をするのだろう?

「スズキくん、キミはよくテニス部員たちをつれて遠征に出るが、遠征先で夜はどのように過ごしているのかね」
「あ、はあ、遠征先の地元の先生たちに誘われて、懇親会なんぞに参加をしたりしておりますがあ…」
「なに?懇親会ですと?それは、ひょっとしてお酒を酌み交わしているということかね?」
「そ、そうですけど」
「ということは、宿舎に戻ってくるときには酔ってることもあるわけだね」
「ハ、ハイ、よ、酔ってますね、たぶん」
「それで、酔って生徒たちと話をしたりするのかね?」
「いちおう、生徒たちがちゃんと寝ているかどうか確認はします。昔はミーティングなども行ったりしていましたが、最近はしていません」
「だいたい、酒を飲んだりするのはどうかと思うのだがね」
「でも、いちおう泊を伴う遠征に出るときには、学校の教員としてではなく、テニスクラブ指導者として出ていますんで…」
「なーに言ってんのかね!われわれ公立学校の教員には、たとえ職務外・勤務時間外であっても、公務員の身分を保有している限りにおいては、地方公務員法の規定が適用されるということくらいキミも知ってるだろうが!クラブ指導者であろうがなかろうが、キミが公立学校の教員である限り、遠征先での振る舞いについても、常に地方公務員としての自覚を持って行動してもらわなければ困るのだよ」
「で、でも、お酒を飲むのは信用失墜行為ではありませんよね。」
「そりゃまあそうだ。問題は、酒に酔うと信用失墜行為をしでかすかもしれないってことなんだ」
「そ、そんなことしませんよ」
「キミだって人間だ。酒の力に負けて、つい調子に乗って、してはならないことをしてしまうことだってあるだろ?」
「た、確かに飲んで調子こいちゃうときもありますから、否定はできないんですけど、そんな信用を失墜するようなことは…」
「絶対にない!って断言できるのかね?」
「でもそんなこと言ったら、学校の忘年会とか飲み会のすべてが心配になっちゃいますよね」
「いいかあ、スズキくん、これはね、キミを守るためなんだ!キミのためを思って言ってるんだ!万が一キミが信用失墜行為をしでかして、それで退職金とかすべてがパーになってもいいのかね!キミだけでなく、キミの家族だって…(以下略)」

イヤだなあ。

こういう面接って、される方もやだけど、する方はもっとイヤなんだろうなあ。ましてや、職場の全教員とだなんて。報道によれば、面接は「管理職と教職員双方にコミュニケーション能力を再確認」し、「職場での孤立やストレスに心理的援助」するために行われるのだそうな。

でも、「信用失墜行為」の中でも、特に問題になっているのは、「わいせつ行為」や「セクハラ」についてである。人間の本能の一つである「性欲」が俎上に載せられるのだ。性欲に関することなど、だいたい白昼から人に話をするようなことではない。どころか、もっとも人には話をしたくないことの一つではなかろうか。そもそも、そんなことを聞くこと自体、「セクハラ」にはならないのだろうか。
「スズキくん、キミは最近自分の性欲をどのように処理しているのかね?」
「は?せ、せ、性欲ですかあ?」

相手が手前のようなおじさんだったらまだしも、独身の女性教員だったらどうするのだろう?訊き方によっては、十分にセクハラになりうるのではないか。校長先生が女性だった場合も、男性を相手にその「性欲」について質問するってことだろうか。まことに、管理職も難しい時代になったものである。

どうも、「ストレスに心理的援助」などと言われると、「ストレス」と「性欲」が直接的に結びつけられているように感じるのだが、それって違うんじゃないだろうか。そもそも、「性の嗜癖」などというものは人によって千差万別であろう。それを「面接」でどのように見極めようというのだろう。
「スズキくん、キミは子どもが好きかね?」
「ハイ、好きですけど」
「(やはり、こいつロリコンだったか)」
なんて、考えたくもない。

今回の静岡市のチェックリストがどんなものかは見ていないのでコメントはできないところもあるが、だいたい想像はできる。たぶん、法令遵守のより徹底を図るための内容になっていることだろう。でも、それは有効な手段ではないような気がする。むしろ、その逆の方向から指導の徹底を図った方がいいのではなかろうか。

たとえば、私の提案は以下の「三章」である。

一、チェックリストを作るのなら、基本は「ワタシはいかに邪悪か」ということを自覚できるような内容のものにする。
一、面接を全教員に実施する。ただし、校長が伝えるのは「私はあなたを全面的に信用しています。あなたはすばらしい先生です」ということだけである。
一、「ストレス解消」と「コミュニケーションの再確認」のために、全教員に「週末麻雀」を勧奨する。

それにしても、これからは「教職員の方、2割引!」などという風俗店などが出来してくるのであろうか。情けない話ではある。