恐るべき高校生

12月14日(水)

頼もしい高校生を見た(聴いた?)。

今週の月曜日、不肖の娘が通う高校主催のコンサートが開催された。

残念ながら、娘はピアノ連弾の候補に挙げられながらも、最終選考で演奏者に選ばれず、合唱のみの参加となってしまったが、昨年もこのコンサートを聴いてそのレベルの高さに一驚したということもあり、今年はどんな演奏が聴けるのだろうと何とも楽しみにしながら、駅前のホールへと出かけたのである。

コンサートは三部構成で、最初が音楽科、次が電子音楽科、最後が吹奏楽部の演奏となっていた。

はじめは、娘の所属する音楽科による演奏。オープニングは、娘が選ばれなかったピアノ連弾による「カルメン・ファンタジー」。ビゼーの「カルメン」から、聴き所を2台のピアノ用に編曲したものである。

連弾のうちの一人、娘が「ウチの学年でいちばんうまい!」と評していた高校生は、確かにすばらしいテクニックとリズム感を持っている。よくまあ指が動くこと!彼女と連弾するのであれば、相方は落ち着いてサポートできる演奏者の方がよい。どうやら、娘が選ばれなかったのはそんなところに理由があったのだろうと想像する。

次は、アルディーティによる「くちづけ」というソプラノ独唱による歌曲。何と、電子オルガンによる伴奏である。悪くはない。電子オルガンの多彩な音色によって、オーケストラ伴奏の雰囲気を醸し出そうというねらいであったのだろう。しかし、どうも人の声と電子音とはミスマッチのような気がした。ピアノ伴奏の方がよかったのではないか?

帰宅後、娘にそんな感想を言ったところ、「でしょう?あのさあ、ピアノ伴奏でやるときにはあなたがやりなさいって先生に言われて、いちおう練習してたんだよ」とのこと。残念だったねえ。

音楽科の最後は合唱。1曲目は、音楽科の定期演奏会の時にも歌われたが、三善晃の「女声合唱のための三つの抒情」より、立原道造の詩による「或る風に寄せて」。これはいい曲である!メロディーがいい。詩もいい。この曲が入っているCDとかないのだろうか。繰り返し聞きたくなる名曲であると思う。残りの2曲は、「涙をこえて」と「昴」。可もなく不可もなし。

さて、15分の休憩の後、次は電子音楽科による演奏。実は、この演奏をもっとも楽しみにしていたのである。

昨年は、5台の電子オルガンによるチャイコフスキーの「弦楽セレナード」の演奏に仰天させられた。さて今年は…。

最初の曲は、電子音楽科を指導している先生によるオリジナルのソロ曲。電子オルガンの特性を生かした抒情的な曲で、しんみりとさせられる。

2曲目は、NHKの大河ドラマ「義経」のメインテーマ。指導している先生だろうと思しき指揮者が出てきて、5台の電子オルガンとパーカッションによる演奏である。「おいおい、電子オルガンって、篠笛のような音が出せるんかよう」とこれまた驚き。

ダンスを入れての「世界地図」を挿んで、最後はかのエマーソン・レイク&パーマー(なつかしいねえ)の「PIRATES」。

すばらしい!

自らもキーボードを叩きながら演奏をリードしていたのは、先ほどの「義経」を指揮した男性。どうやら、先生ではなく高校生であるらしい。

何というほとばしるような才能であろう!

こういう高校生っているんだ。

もちろん、彼もかなり幼少のころから電子オルガンに親しんできたのであろう。それにしても、誰も彼もが彼のようになるわけではなかろう。凡庸な者がいくら努力しても、追及不可能な天賦の才というものはあるのだ。

これも娘に聞いた話だが、彼は現在高3で東京芸大の指揮科を受験するとのこと。

宜なるかな。

ぜひ、見事合格して、これからの日本の音楽界を背負って立つ一人になってほしいものだ。

吹奏楽部には悪いが、こんな演奏を聴いた後ではとても吹奏楽は聴く気にならず、休憩時間にホールを後にする。

今年もいい演奏を聴かせてもらった。感動の余韻がいつまでも醒めやらないままに、帰宅の途に着く。

さて、来年はウチの娘もそんな演奏を聴かせてくれるようになっているのだろうか。まあ、親が親なだけに多大な期待はすまい。でも、精進してね。