アイロンかけ楽しいです

11月1日(火)

つい先月の中旬までは職場でも半袖シャツを着用していたのに、このところ朝夕はめっきり冷え込むようになり、さすがに半袖シャツというわけにもいかなくなったため、先日夏物の秋・冬物との一部入れ替えをした。

その際、よく職場に着ていく10枚ほどの長袖シャツがアイロンがけしてないことに気づいた。

突然、『健全な肉体に狂気は宿る』中の内田先生のコメントを思い出した。

「ぼくは自分一人で家事全般やってますけれど、つらいと思ったことはないですよ。アイロンかけなんて大好きだから。アイロンかけ、楽しいですよ。だって無秩序から秩序が立ち現れてくるんですよ。すごい達成感。村上春樹もアイロンかけ、好きですよね。(…)掃除とアイロンかけは、やっていてすごく楽しいですよ。」

まことにお恥ずかしい話なのだが、手前は生まれてこの方、「アイロンかけ」なる行為をいたしたこととてなかったのである。

「うーむ。ウチダ先生はアイロンかけが楽しいとおっしゃっていたが、ホントかどうか確認する意味でも、ここはいっちょうアイロンかけに挑戦してみっか!」と一念発起(するほどのことじゃないけど)して、アイロンに水を入れ、アイロン台を取り出して、「いざやかけん!」と「長袖シャツアイロンかけ」を始めたのである。

まずは襟から。これは簡単。すいすい。

次は背中。これは、肩から上の部分がかけにくい。袖との関係で、かける部分をうまく伸ばすことができないのだ。

とりあえず、かけやすい肩から下の部分をすーいすいとかける。「なーるほど、『無秩序から秩序へ』か」と独り言ちながら背中部分をかけ終わる。

次は前身ごろ。胸ポケットのあるこの部分をかけるのは気持ちがいい。「こんなにしわが寄っておるわい、ふふ待っておれよ、今伸ばしてやるからな」すすーいすすーい。

最後は袖。袖自体はそう難しくはないのだが、袖から肩口にかけての部分をかけようと思って、はたとアイロンがとまってしまった。どうかけたものやらよくわからないのである。

袖を中心にかけようとすると、肩口の部分をうまくかけることができない。逆に肩口を中心にかけようとすると、袖が邪魔になる。

うーむ。どうすればいいのだろう。とりあえず、袖中心にかけておいて、肩口部分は多少しわが残っていても目を瞑ることにする。

ハイ、1枚できあがり。

ハンガーに掛け、2枚目に取りかかる。そうして、3枚目、4枚目・・。

何枚かかけていくうちに、だんだんとコツがつかめてくる。かけるスピードも早くなってきた。

最後の10枚目のシャツに取りかかっているときに、妻が帰ってきた。

とんとんと2階へ上がってきて開口一番、「えー!何してんの?」
「え、アイロンかけ。これから長袖シャツ着るからと思ってさ」
「どうしちゃったの?いいわよ私がかけるから」
「いや、ウチダ先生がアイロンかけ楽しいって言ってたからやってみようと思ってさ」
「へえー、ウチダ先生さまさまだわね」

その後、妻に「肩口から袖の部分がうまくかけられないんだけど」と言ってみると、「アイロン台のちょっと先が細くなっている部分があるでしょ?そこをうまく使ってかけるのよ」というお答え。

実はアイロンをかけながら、どうしてアイロン台ってこんな舟みたいなカタチしてんだろ?」と疑問に思っていたのだ。

別に、全てのアイロン台が舟のようなカタチをしているのではないらしい。ウチで使用しているのは、袖の部分がかけやすいように舟形になっているということである。

そうか、舟の舳先部分をうまく利用すれば、袖から肩口部分をうまくかけることができるのだな、よしよし次回からはもっとうまくかけられるようにしようぞ、と心に固く決意したのである。

内田先生のおっしゃるように、アイロンかけは終わった後の確かな達成感がある。かけ終わったシャツをハンガーに掛けて並べてみるときの、えも言われぬ充実感は何ものにも代え難い。

手前と同様に、「今までアイロンかけなんてしたことない」という世の男性諸兄。ぜひアイロンかけに挑戦してみてはいかがでしょうか?なかなか楽しいですよ。