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きばったらあかんよ(て、ぼくも言われました)

5月30日(月)

朝から外来診療。

活動的な週末を過ごしたため、さすがに疲れが残っている。

外来の途中で、循環器科のS先生から汎血球減少症の87歳のおばあさんについて紹介を受けた。急速に赤血球、白血球、血小板の減少が進んでおり、特に血小板数の低下が著しい。

血小板は5万/μlを切ると出血の危険が増し、2万/μlを切ると特に危険だと言われている。おばあさんの本日の血小板数は1万/μl。

急速な血小板減少は、緩やかに進行するものよりもさらに出血の危険が増す。ここでいう「出血」とは、手をすりむいて血が出るとか、そういうことではなくて、脳出血や消化管の大量出血など生命を左右する可能性のある出血のことである。

汎血球減少症の原因には様々なものがある。急激に進行する汎血球減少症の原因としてまず考えられるのは薬剤性である。

その可能性はすでにS先生によって考えられており、1週間ほど前にめぼしい薬は投与が中止されていた。

しかしその後も血球減少が進行している。薬剤性の場合は、起因薬剤の投与を中止することで速やかに血球数が回復するので、薬剤性は原因として考えにくいかもしれない。

汎血球減少症は、一部の急性白血病で認められることがある。骨髄検査の施行が必要だったが、どうしてもおばあさんの同意が得られなかった。それほど体に負担がかかる検査ではないのだが、どうしても嫌だという。

代替手段として、検査室で末梢血の塗抹標本を作製してもらい、白血病細胞の有無を顕微鏡で確認した。幸いなことに、末梢血に白血病細胞の出現は認められなかった。

末梢血の標本を見ただけでは骨髄で白血病細胞が増えている可能性を完全に否定できるわけではないが、急性白血病の発症時には末梢血に白血病細胞が出現する場合がほとんどなので、その可能性はかなり弱まったと言える。

まずは、当面の出血を回避するために、血液センターに血小板輸血を依頼する。内服を続けていた残り数種類の薬も中止してもらった。

5月29日(日)

下川正謡会大会で『橋弁慶』の独吟をする。

「ぜったいにきばったらあかんよ」

と、下川先生から出番前最後のアドバイスを頂戴した。

緊張はあまりしていないつもりだったのだが、謡い出しの声が低くなってしまい冷や汗をかく。できはともかくとして、終わってほっとしました。

いろいろな方が見に来てくださり、お見舞いの品をくださいました。皆様どうもありがとうございました。

来年はお仕舞もすることになると思うのだけど、それはさすがに緊張するだろうなあ。

5月28日(土)

全日本合気道演武大会へ。緊張気味に1分30秒の演武をした。演武会終了後は、多田塾の同門の皆様と楽しくお話をさせていただく。

合気道新聞には『呼吸投げ』と『赤手空拳』という二つのコラムが掲載されていました。

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2005年5月31日 08:49に投稿されたエントリーのページです。

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