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世界の片隅でこそこそと

11月21日(日)


数週間前からときどき再生不良性貧血のことを考えている。

再生不良性貧血という病気は、血液を造っている骨髄の中が空っぽになって脂肪で置
き換わってしまう病気なのだが、今のところ原因がはっきりとは分かっていない。

『世界の中心で、愛をさけぶ』を読んでいたら、たまたまこの病気が出てきたので、
またちょっとだけ色々と考えてしまった。

個人的にも、再生不良性貧血の患者さんでは忘れられない思い出があるし、もし僕が
この病気を治すことに少しでも役に立てたらとても嬉しい。

さて、この病気が成立するメカニズムを考えるときに、「たねが悪いのかそれとも畑
が悪いのか?」という問題がある。

「たね」というのは、赤血球や白血球や血小板といった様々な血液細胞の元になる細
胞のことである。

「畑」というのはその細胞が育つ場所のことで、造血(文字通り血液細胞をつくるこ
と)の「微少環境」とか「ニッチ」などと呼ばれている。この畑もまた、「たね」とは
違った種類の細胞によって構成されていると考えられている。

再生不良性貧血は免疫抑制剤による治療がある程度有効なので、免疫学的な機序によっ
て「たね」の細胞が死んでしまうのだろうということが現在までに分かっていること
である。

僕はこの「たね」にまつわる研究に、世界の片隅でこそこそと、あまり愛もさけぶこ
となく関わってきたので、とっかかりとしては「たね」のことから考え出すことにな
る。

しかし、やはり物事はそう単純ではないらしく、畑のことや肥料のことや、専業農家
か兼業農家か、それも第一種兼業農家か第二種かとか、いろいろなことを考えないと
この疾患の謎は解けないようで、僕の頭の中はどんどん混迷の度合いを深めるばかり
である(すいません、最後のほうは根拠があるメタファーではなくて、かなり適当で
す)。



この疾患をテーマに研究をしようと思って何より困るのは、研究に用いたい当のもの
が手に入らないことである。

だって貧血だから、見たい細胞がないんだもん。

私たちの目の前に現れているのは、免疫学的な機序によって「たね」が死に追いやら
れた末にいきついた、「骨髄の脂肪化」と全ての血球の減少という現象だけなのであ
る。

間違いなくこの「研究対象が手に入らない」ということが、この疾患の病態解明を遅
らせている一番の理由になっている。

でもきっと、どこかに工夫の余地があるのではないか、疾患のメカニズムに近づく良
い方法が必ずあるはずだと僕は思っています。

目線をずらすことで視界が開ける場所が必ずあるような気がする。

えらそうなことは全く言えないけれど、僕は力業で進める研究よりも、ささやかでも
そのとっかかりのところに、真摯で慎ましやかなひらめき、頭の脇で可愛い豆電球に
ぱっと電気がともるようなひらめきが感じられるものにあこがれを感じてしまいます。

そんな小さなひらめきが、最初では考えられなかったような場所まで人間を連れて行っ
たところを目の当たりにすると、うれしくなってしまう。

面白い文章とか面白い小説というものも、きっとそういうものなんじゃないのかなあ
と時々思ったりします。



11月20日(土)


合気道のお稽古の後、研究室へ。

学位審査の研究発表が1月13日にきまった。

11月19日(金)


午前中は、枚方市内の病院で外来診療をする。ここの病院に来るのもあと2回のみとなっ
てしまった。

午後からは神戸女学院大学で開かれた甲野先生の講習会に参加させていただいた。

僕が甲野先生の講習会に参加するのは、一昨年に続いて2回目。

僕は体があまり大きくないので、合気道のときに、どうすれば僕の小さい体をできる
かぎり有効に使うことができるのかなあと考えることがけっこうある。

そういうわけで、体を有効に使うヒントが得られればいいなあと、今回の講習会を前
からとても楽しみにしていた。

講習会では、極短距離走や追い越し禁止の術、介護での体の使い方等々いろいろなこ
とを見せて頂く。


幸運にも、甲野先生の技を沢山体験させて頂くことができた。

貴重な体験をゆっくり生かせたらよいなあと思う。

11月16日(火)


お昼ご飯にサッポロ一番の博多とんこつラーメンという矛盾にみちた即席らーめんを
食べる。

仕事のため、うな正会の会合に参加できず。



11月15日(月)

生まれて2回目の痛風発作にみまわれる。

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2004年11月22日 07:27に投稿されたエントリーのページです。

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