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サイマキ島のよっちゃんて誰ですか

7月11日(日)


研究室から車で家に帰る途中、前が見えないほどの大雨に降られた。ワイパーをいち
ばん激しく動かしてもフロントガラスの先が全く見えない。

世の中にはイメージがつく数字とつかない数字というものがあって、例えば「バス
ト90センチ」といったら何となくわかるような気もするが、「1時間に100ミリ以上の
大雨」と言われても、どうも感覚がつかめない。

僕は、地面に置いたガラスのコップに雨が1時間で10センチ溜まるところを想像するの
だが、10センチ水が溜まったところで、「だからどうしたんだよ」と思ってしまう。
それが多いのか少ないのか実感としてよくわからないのである。

コップに高さ100ミリの水が溜まるのと、バケツに高さ100ミリの水が溜まるのでは、
降水量は全く違うはずであり、やはり「1時間に100ミリ以上の大雨」という表現は、
不親切と言うか、わかりにくい。

こういう点をふまえて、これからの気象情報では、「1時間にバケツの高さ100ミリの
大雨」とか(洪水になりそうだな)、「1時間にストローの高さ50ミリの小雨」などとい
う表現を用いてほしいものである。

ここまで考えたところで、「1時間に100ミリ以上の大雨」というのは、「1時間に100
ミリリットル以上の大雨」ということなのかなあ、ということに気がついたのである
が、もしそれが本当ならば、きちんと「100ミリリットル」と言ってもらいたい。

個人的には、月曜日はバケツ、火曜日はコップ、水曜日はストロー、木曜日はハイヒー
ルなどいうように、曜日によって降水量を換算する規格を変えたら面白いんじゃない
だろうかと思う。

「東京地方では、現在1時間に24センチのハイヒールのつま先に溜まるくらいの雨が降っ
ています」

というぐあいである。わかりにくいですね。



7月9日(金)


写真でしかみたことがなかったジェンキンスさんが動いているのをみてちょっと不思
議な気分だった。



7月5日


「あんまり冷えてないけれど、トマト召し上がりますか?」

と聞かれて、僕とおじいさん先生は「たべるたべる」と同時に答えた。

すみ子さんが台所でトマトを切ってくれている間に、僕がお煎茶を入れて、3人でお茶
を飲みながらトマトを食べた。

すみ子さんが持って来てくれるトマトは、ヘタの周辺に青みが残っている大きなトマ
トで水分が豊富である。酸味があってなぜか懐かしい味がする。

すみ子さんがそのトマトをどこで手に入れているのかわからないのだが、それはいか
にも自家製っぽいものであり、ぼくもおじいさん先生も、ときどき食べさせてもらえ
るこのトマトを楽しみにしている。

「ちょっと前に、名前を思い出せないって言っていたNBAの選手がいたでしょう。その
人、グラント・ヒルっていう人じゃありませんか」

丁度、八つ切りのトマトを口一杯に含んでいたおじいさん先生は、もぐもぐして声が
出せなかったが、その代わりに大きく何度も頷きながら、右手でオッケーマークを出
した。

そのオッケーマークは、トマトが美味しいという意味なのか、「グラント・ヒル」が
正解であるということを表しているのか一瞬わからなかったが、おそらくおじいさん
先生は、その所作で二つの意味を同時に表しているのであった。

「お母さんが、ヒラリー・クリントンと大学時代にルームメイトだったんだって」

「すみちゃんは何でも知っているねえ。じゃあ、サイマキ島のよっちゃんって、知っ
てる?」

年寄りというのは渋いところに金をかけるもので、おじいさん先生のお家の煎茶はと
ても美味しい。人の家のものだと思って茶葉を贅沢に使って濃いめにいれたお茶が、
水分たっぷりのトマトにぴったりだった。


サイマキ島のよっちゃんて誰ですかと尋ねると、

「忘れちゃった」

と言って、おじいさん先生はそのまま昼寝に行ってしまった。

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2004年7月15日 08:05に投稿されたエントリーのページです。

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