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西川パン屋一代記(承前)

5月14日(金)

今週の西川さん。

西川さん、食パンと菓子パンというのはどちらが売れるものなんですか。季節によっ
て売れ方が変ったりするんですかね。

それは、どっちとも言えませんねえ。ただ、食パンは冬の方が売れます。暖かくなっ
てくると菓子パンが売れ出しますね。恐らく暖かくなってくると、食パンの、もそも
そした感じが好まれないんだと思います。

菓子パンの中では季節による売れ筋の違いはありますか。

どうですかねえ、まあチョコレートが入っているパンなんかは、暑い時期はあまり売
れませんね。中がどろどろになってしまって、見た目が悪いから、あまり食べたいと
思わないですよ。

それは分かるような気がします。

パンは本当に仕入れが難しいんです。20年30年やった人でも、仕事に失敗する人
もあるらしいんです。前も言いましたが、毎日、3日後に仕入れるパンを予約してい
くので、どのパンがどれだけ残るのか、見当を付けるのが大変なんですわ。最初は、
「どうせ並べて売るだけやろ」くらいに考えていたんですが、そんなことなかったで
す。ほんまに大変でしたわ。売れ残ると、半額くらいで売らないと在庫を処分できな
いです。半額だと完全に損ですからね。

西川さんは、仕入れは得意にしてらしたんですか。

いやあ、苦労しました。わたしは「あんたは、サラリーマンやな」と言われましたよ。
はい。

パン会社の人に言われたんですか。

いや、前に店をやっていた市場の中で言われました。見た目もサラリーマンみたいだっ
て。実際、わたしサラリーマンをしてたんです。通信関係の会社です。自衛隊とか、
企業を相手にインターホンを売っていました。船の中にインターホンがあるんです。
最初は大阪にいたんですが、そのうち横浜に転勤になりましてね。あそこには基地が
ありますでしょう。

当時は、出入りの業者さんには要求がきつくて大変だったんじゃないですか。

大変でした。接待で酒を飲みに行くんですが、自衛隊の人達はほんまによう飲むんで
す。わたしは全くやらないので、ずっとついて一緒に飲み屋を回るのが嫌でね。辛かっ
たです。大阪に戻ってきたかったんですが、なかなか戻してもらえなかったんです。
そこで、何か自分で商売をしようと思いましてね、まず女房の実家に相談したんです
よ。そこで履物屋をやっていましたので、どうせやるなら、勝手が分かっているもの
をやったほうがよいということで、会社を辞めて、近くの市場で履物屋をやることに
したんです。

おいくつくらいの時ですか。

32歳くらいの時でした。履物は本当に楽で良かったんですがね、15年くらいやり
ました。でも、結局うまく行かなくなって、ちょうど市場のパン屋が店を辞めるとい
うので、パン屋をすることにしたんです。市場で果物屋とパン屋が辞めることになり
ましてね、「もう、履物はあかん」と思っていたので、どっちをするかかなり迷った
のですが、パン屋をすることにしたんです。果物屋をしてたらもっと大変だったと思
います。パン屋にしておいて良かったと思います。

今までのお仕事の中で、どれが一番お好きですか。

やはり、履物屋が良かったですね。

西川さんは今週、抗癌剤の治療後のCT検査を受けたが、お腹の中の大きい腫瘍はほと
んど小さくなっていなかった。

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2004年5月18日 11:27に投稿されたエントリーのページです。

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