本質を見落とす劣化メディア【その1】 - 震災は劣化をあぶり出す
もよかったら、読んでみて下さい。
http://nagaya.tatsuru.com/murayama/2026/08/06_1820.html
超現実、天空に浮かぶ絵に描いた餅
メディアの劣化は、うちの定番ネタである北陸新幹線関連でも目立って来まし
た。先日、凄い発言がありました。例によって維新の議員からです。
「前原誠司衆院議員=日本維新の会=は21日、総工費の75%をJRの貸付料で賄
う場合、京都府と京都市の負担はそれぞれ1%未満に抑えられるとの見通しを示し
た」「総工費が5兆5000億円として、1%未満とすると500億円ほど。25年間で割る
と年間20億円」
JRの負担75%だと京都府市は各1%未満 北陸新幹線「桂川案」で前原衆院議
員が試算、産経新聞、
https://www.sankei.com/article/20260721-MI3S2MYWL5MTBPEVSZR7KMSGLA/%0A/
当然メディアは激怒ないし嘲笑......してませんね。こんな荒唐無稽な数字を見
せられて、暗算レベルのチェックもしないのでしょうか。
京都府市の負担が各「1%未満とすると500億円ほど。25年間で割ると年間20億
円」なら75%のJRは最低でも3兆7500億。これを貸付料の発生する30年で割ると、
年1250億円。一日あたり約4億円。敦賀・新大阪間の利益でまかなうのは、どう考
えても無理です。この程度の計算(かけ算・割り算のみ、電卓アプリ使用可)を
記者会見場でして、追求質問をする記者はいなかったのでしょうか。
ちなみに、日本中の整備新幹線の貸付料は合計年770億ほどです。その倍ほどの
額を北陸新幹線延伸のためだけに、JR西日本1社に負担させようというのは、
だれがどう考えても実現不可能。マルグリッドもビックリの絵に描いた餅です。
どうして、「ムリムリムリ」と、どのメディアもはっきりと指摘しないのでしょ
うか。
案外、一番頭を抱えているのは、当の前原議員かもしれません。「これだけボ
ケとるのに、なんで誰もツッコまんのや」などと、ぼやいているのではないでし
ょうか。この話は、近日出稿予定のの記事「小浜ルートの加速主義者」に続きま
す。
整備新幹線の貸付制度等について、国土交通省、p11
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001967864.pdf
ルネ・マグリット「ピレネーの城」、アートペディア、山田太郎、
https://www.artpedia.asia/the-castle-of-the-pyrenees/
希土も希望もない話
今年(2026)の2月。一億日本人の希望を乗せた船が、静岡県の清水を出港しま
した。大谷さんも長友さんも乗ってませんが、一部の国民と一人の総理は興奮し
ていました。南鳥島のレアース泥狙いの宝船の出発です。それにしても「レアアー
ス泥」という言い方なんとかなりませんか......レアアース泥棒の略に見えます。
その海賊船じゃなかった宝船からの第一報は「複数の希土発見」。日本海会戦
の「右舷ニ複数ノ敵艦見ユ」ぐらいに勇壮に聞こえますが、大した意味はありま
せん。希土類元素はたいして「希」なものではないからです。普通の岩石にも微
量ですが含まれていて、バルチック艦隊ほど珍しくはありません。
また、自然界では希土類元素は「16人全員」で集団行動しますから、どれか
ひとつだけが鉱石や泥から見つかることはあり得ません。複数あって当たり前。
大喜びする事ではありません。「右舷ニ複数ノかもめ見ユ」ぐらいの話です。
「レアアース」国産化へ第一歩!南鳥島近海からレアアース含む泥を採取 地
球深部探査船「ちきゅう」が世界初の試み、 FNNプライムオンライン、
https://www.fnn.jp/articles/-/995785?utm_source=headlines.yahoo.co.jp&utm_medium=referral&utm_campaign=relatedLink
大事なのは、わざわざ深海底から引き上げたくなるほどの、高品質の泥なのか
ということです。けれども、希土類含有量など具体的な数字は一切公開されませ
んでした。7月になって、希土類の中での内訳が発表になりましたが、希土類全体
の濃度は秘密のままです。
つまり、「どんな希土が多いか」は発表するけど、「全部でどれぐらいあるか」
は伏せているわけです。でも実は、この泥についてのデータはすでに大学の紀要
に概要が載っていて、誰でも無料で簡単にWebで閲覧できます。
南鳥島沖で試掘のレアアース、読売新聞、
https://www.yomiuri.co.jp/science/20260724-GYT1T00145/
レアアース泥の成因解明、千葉大学、
https://orceng-cit.jp/project/detail/15
何はなくともまずネオジウム
「ちきゅう」一派は、いったい何のために誰に対して、情報を隠しているので
しょうか。防衛上の理由や産業上の都合は考えられません。WEB公開レベルの情報
を見落とす専門家はいません。プロ相手ではなく素人衆がターゲットの話です。
いまのところ、この南鳥島プロジェクトは好感をもって迎え入れられています。
けれども、日本最大の客船「あすかⅢ(52000t)」よりもでかい「ちきゅう
(57000t)」を動かすのですから、当然巨費がかかります。世論や政権の支持が
なくなれば、たちまち予算を切られますから、ウソにならない範囲で広報では話
を盛るのでしょう。元研究者として気持ちはわかりますが、やり過ぎると信用な
くします。
この手の希土類がらみの問題は、根拠や詳細まできちんと理解するのは、一定
の専門知識が無いとしんどいので、近々ゆっくり記事で解説するつもりですが...
...難航しています。
かなり複雑な話の上に、普通の化学とは微妙に違う希土類独特の景色があった
りで、自分でもゲッソリするぐらい、解りにくい解説になるからです。実は5回ぐ
らい自主ボツで、最初から書き直しています。というわけで、今回はかなり説明
を省略して話をすすめます。
日本で使われる希土類元素のうち、おそらく一番不足しそうなのはネオジウム
です。最強の永久磁石をつくる原料で、乗り物などほとんどの電動機械に大量に
使われるからです。
同類のプラセオジウムとの合計で、2024年の我が国のネオジウムの使用量は
5500tほどとのことです。これだけの量のネオジウムを精製できるなら、そのほ
かの希土類元素は、そのときの副産物だけで全て賄えそうです。なにせ、希土類
元素は常に団体行動しているわけですから。
日 本 の レ ア ア ー ス 需 要 推 移、(財)新金属協会、
https://www.jsnm.or.jp/news/files/2025/04/JSNM_REE_Domestic_Demands_2024.pdf
タイタイニックを引き上げますか
それでは計算をしてみましょう。レアース泥中のネオジウムとプラセオジウム
の濃度。合計で160ppmほどです。ppmとは100万分の1ということですから、豪快に
計算できます。
5500 t / (160/1000000) = 3500 万t
タイタニック号(4700t)の7000隻分以上の泥で、これを毎年6000m?の海底か
ら吸い上げる必要があります。もちろん、このレアアース泥だけで全使用量を賄
う必要はないのですが、1%分でも月に5回の「タイタニック号引き上げ」になり
ます。
つまり、今回発見されたぐらいの品質のレアース泥では、とてもビジネスには
ならないということです。映画「タイタニックⅡ......もうひとつの悲劇。氷山の
白熊母子を救出せよ」でも制作して、興行収入20億ドルぐらいを狙うほうがマ
シというものです。衝撃のラストは、タイタニック号に扮した「ちきゅう」が、
衝突直前に自爆するシーンで行きましょう。CGには無い迫力がウリです。
タイタニック号、wikipedeia、
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%82%BF%E3%83%8B%E3%83%83%E3%82%AF_(%E5%AE%A2%E8%88%B9
)
全国紙の編集局には、たいてい「科学部」というのがあり、最低でも数人は化
学やら資源のやらの担当がいるはすですが、今からでも「あれ、見込みないよ」
と声を上げた方がいいのではないでしょうか。