国旗毀損法が今国会で審議されています。別名、那須与一等規制法とは言わな
いでしょうが、まことに結構なもののようです。たとえば、公人が日の丸の前で、
外国元首に対してキャバ嬢じみた振る舞いをすることなどは禁止されるのでしょ
う。
それにしても政治的な立場を超えて、あの光景には国辱を感じたのではないで
しょうか。日の丸を焼いたり泥靴で踏みつけたりする動画より、よほど国旗を辱
めているように思います。
本気で日の丸のイメージをよくしたいのなら、まずは公人が(特に国外での)
振る舞いを戒めましょう。また、ヘイトデモや街宣車などが、周囲に嫌がられる
ことを承知で国旗を誇示したり、特定の宗教団体の儀式の場で使用することもや
めさせましょう。
もうひとつ、学校などが掲揚の場で起立や脱帽を、無理にやらせるのも禁止す
るべきです。「強制になりませんように」という、平成の時代に誰よりも国旗国
歌を大事にしておられる方の声を思い出してください。
官製歌姫の哀歌
国旗の次は国歌です。なんとも情けない事件がありました。こともあろうに特
定の政党(特に名を秘してJM党とする)の集会で、音楽隊の自衛官が君が代を
独唱しました。もちろん自衛隊法違反です。場合によっては公務員法違反にもな
りそうです。
歌ったのはプロのソプラノ歌手ですから、経済学的にはサービス財の提供です。
酔った政治家がカラオケのマイクを手にする(聞かされる方がサービス提供?)
のとは訳が違います。報酬を貰えば国家公務員の闇営業、無償なら特定政党への
支援で自衛隊法違反になります。
JM党側の公式見解では、「私的な行為だから政治的行為でも問題ない」との
ことですが、本当にそうでしょうか。自衛隊法を見てみましょう。
第六十一条 隊員は、政党又は政令で定める政治的目的のために、寄附金その他
の利益を求め、若しくは受領し、又は何らの方法をもつてするを問わず、これら
の行為に関与し、あるいは選挙権の行使を除くほか、政令で定める政治的行為を
してはならない。
まず、この条文の主語は隊員です。隊員の行為を規制する条文のはずです。
「国会議事堂に突撃せよ」なんて命令が出るはずはありませんから、禁じている
「政治的行為」は公務ではありません。
次に条文中にある政令を見ましょう。
自衛隊法施行令 第87条 (政治的行為の定義)
一 政治的目的のために官職、職権その他公私の影響力を利用すること。
二 政治的目的のために寄附金その他の利益を提供し、又は提供せず、その他政
治的目的を持つなんらかの行為をし、又はしないことに対する代償又は報酬とし
て、任用、職務、給与その他隊員の地位に関してなんらかの利益を得若しくは得
ようと企て、又は得させようとし、あるいは不利益を与え、与えようと企て、又
は与えようとおびやかすこと。
- 中略 -
十 政治的目的をもつて、多数の人の行進その他の示威運動を企画し、組織し、
若しくは指導し、又はこれらの行為を援助すること。
- 中略 -
2 前項各号に掲げる行為(第3号の場合においては、前項第16号に掲げるものを
除く。)は、次の各号に掲げる場合においても、法第61条第1項に規定する政治的
行為となるものとする。
- 中略 -
三 勤務時間外において行う場合
まず最初の「一」です。音楽隊員と紹介され、制服を着ているのですから「公
私の影響力を利用」しているとしか思えません。
「二」はややわかりにくいのですが、要は「政治的目的のために利益を提供し
て、見返りを求めてはいけない」というのです。何の利益もないのに、プロが本
気で歌うことはあり得ない話です。本人のみならず、上官たちに「利益を得させ
ようと」いうのもアウトです。
「十」がJM党の党大会が、党内外への「示威運動」でないはずがありません。
そして「2-三」です。勤務時間外でも、政治的活動ではない理由にはならない
のです。
こうした嫌疑を払拭したいのなら、なんのためにこの場で歌ったのかを説明し
なければ話になりません。
自衛隊法以外にも問題があります。制服は公共物です。「クリーニングは自腹」
などと言い訳をするのでしょうか。これが認められるなら、燃料代さえ払えば、
自衛官は休日に戦車や走行車両で出かけてもいいのでしょうか。公私混同の典型
です。
まして制服には隊の名誉がかかっています。正装して街宣車の上で熱唱しよう
が素人AVに出ようが、「個人としてなら」自衛隊は構わない......わけがありま
せんよね。
そもそも、万一「(自衛隊法違反が)疑わしい行為」を勝手に個人がやったの
なら、隊の名誉を傷つけたことになり、それなりの処分があって当然です。
自衛隊法,G-GOV,
https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000165/
自衛隊法施行令,LawZilla,
https://lawzilla.jp/law/329CO0000000179?n=ln87&mode=only
難曲が招く難局
さて、ここまでの話は曲目とは関係がありません。歌ったのが「六甲おろし」
でも「可愛いだけじゃダメですか」でも同じ議論になりますが、これらとは別に
「君が代」独自の問題があります。恐ろしく難しい歌だからです。
よく、体育会系のパワハラ教員などが「最近の選手は大きな声で国歌を歌わな
い」などとおっしゃりますが、そんなとき私は「そうですね。ぜひこの機会に先
生の『君が代』をお手本に聴かせてください」といって拍手することにしていま
す。これまでに数回、よせばいいのに本当に歌い始めた猛者がいました。でも、
完唱することはまれで、たいていは途中で赤面してリタイア。今後は国歌毀損罪
で通報することにいたしましょう。だから、私は決して人前で歌ったりしません。
見かけより音域が広く「千代に八千代に」などの難所があり、音程のアラが目
立ちます。そして、独特の和洋折衷の終わらせ方の難しさ。とても、われわれ素
人の手には負えない難曲なのです。
よく、サッカーの国際試合の前などで、斉唱中の選手にマイクを回す演出があ
りますが、キックオフ前に恥をかかせてどうするのでしょうか。特に、相手国が
行進曲風のノリノリ国歌だったりしたら、最初から気合い負けしてしまいそうで
す。君が代は器楽か大御所のアカペラを、一般人は心静かに拝聴するのが無難な
演奏法だと思います。ちなみに、世界には歌詞のない国歌?も多く、儀式では黙
って聴くスタイルが一般的です。
君が代独唱(たいていは無伴奏)では、ベテラン歌手でも緊張のあまりトチる
ことがよくあります。問題の制服歌手さんはどんな準備をしたのでしょうか。ど
うやら得意のレパートリーだったみたいですが、まさかぶっつけ本番ではありま
すまい。おそらく公務時間中にも、みっちり練習していたはずです。でなかった
ら、所属の音楽隊長はあまりにも無責任です。
万一、音程をはずしたり声がかすれたりして失笑が漏れようものなら、その場
で自決、あるいは帰営後直ちに銃殺......とはならないまでも、自衛官としても音
楽家としてもキャリアに汚点を残すことになります。「ああ、あの音痴の隊員さ
んね」......多くの国民が自分のことなど棚にあげて笑うでしょう。
そこまで失敗しなくても、「巧いけど、なんか心がこもってないな」などと、
党幹部たちから評価されでもしたら、音楽隊自体が困ったことになります。もと
より、「なんで銃の代わりにラッパを持つやつが、俺たちと同じ給料をもらうん
だ」という議論が世界中の軍隊にあります。予算のうち少なからざる部分を日米
両方の防衛産業に吸い上げられている自衛隊ですから、本隊から「君が代も満足
に歌えない連中に払う金はない」などと言われても不思議ありません。
だからおそらく、JM党大会に向けて隊をあげて歌姫を鍛え上げていたのでは
ないでしょうか。少なくとも、直前のコンディションチェックさえせずに本番に
送り出したとしたら、そんな度胸の良すぎる連中が国防を担うことに私は強く反
対します。
仮に個人であっても、重要な場での演奏に所属音楽隊が関与していないことな
ど、常識ではあり得ない話です。そして、そんなことをしているとすれば、音楽
隊ぐるみでJM党に肩入れをしたか、あるいはゴマをすったかということが疑わ
れます。だとしたら丸ごとの自衛隊法違反です。
法律的な追求はまぬがれたとしても、今回の代償は大きかったと思いますJM
党はもちろん、自衛隊にも音楽隊にも歌手自身にも、そして君が代にも泥をぬっ
てしまいました。ある意味で気の毒なことですが、この歌姫さんが晴れの舞台で
歌うことは当分なさそうです。
「独断で参加を決められるわけがないのに...」 小泉防衛相にハシゴを外され
た「自衛隊の歌姫」の素顔,デイリー新潮,
https://news.yahoo.co.jp/articles/03659249230c648f2526372ae48bf81036d620d7?page=2
自衛官が自民党大会で「君が代」歌唱して "自衛隊法に抵触" と物議も...関
係各所は "政治的行為" を全否定,Smartflash,
https://smart-flash.jp/sociopolitics/403703/
セルフセクハラ
というような原稿をまとめていて、チェックのために例のワシントンでの動画
を見ていて、見落としていた重要な事に気がつきました。早苗さんは明らかに身
体が逃げているのです。考えてみれば、ヤンキーガールでもプロのホステスでも
ない日本人女性が、さして親しくない男の腰に手を回したりする事には、大きな
抵抗があったはずです。生身の女として、ものすごくイヤだったのではないでし
ょうか。
トランプ氏の名誉のために触れておきますが。大統領も、あまり面識のない外
国人女性(ハグが絵にならない)にひっつかれて、困惑しておられたようでした。
けれども、嫌そうに振り払ったりして恥をかかせては、東洋一の支持者を失脚さ
せることになりますから、とりあえず付き合っておかれたのでしょう。
ただし、心から喜んでいると思われるのは国内的には具合が悪そうなので、わ
ざわざ、会談後に早苗さんが放心している醜態動画を別途流したのでしょう。言
いたい事は「変な女ですが、決して私たちには逆らいません」......やはり国辱も
のです。
「どうしてこんなことになったか」と言えば、この長屋の大家さんがよくおっ
しゃるように「戦争に負けたから」です。クリントン夫人やハリスさんが、安倍
氏や石破氏にしな垂れかかることなど想像もできません。敗戦後80年たっても
まだこんな状態なのです。一方、同じ敗戦国の女性トップでも、ドイツのメルケ
ル元首相やイタリアのメローニ首相は毅然と、かつての戦勝国に対峙しています。
日本だけは敗戦が永続しているのです。戦争に負け続けているのです。
私自身も含めて、ほとんど全ての日本人は、先の開戦にもその結果の敗戦にも、
個人としては何の落ち度もありません。けれども、せっかくアメリカ大統領に先
駆けて誕生した初の女性総理に、あんなことをさせる国にしてしまった責任の一
端は、全国民にあるはずです。これまでずっと「敗戦国の心地よさ」にしがみつ
いていたのではないでしょうか。
そのことを悲しく恥ずかしく思い、女性としての高市早苗さんに私は謝罪しま
す。同時に、日米関係がそんな現状についての最大の責任は、国民の代表たる現
総理大臣にあると考えます。