フジのヤマから昭和が見える ...... フジテレビ性上納事件で考える日本のメディア (その5)帰ってきた「ハゲタカ」たち

ここまで書き上げて、最後に「落ち」でも付けて出稿しようと思っていると、SBIをはじめ昔懐かしい投資ファンドの面々が雄叫びを上げて帰ってきました。以前、フジテレビに手を出して、臭い飯を食ったヤツまでいます。
 彼らの狙いの本当のところは分かりませんが、投資ファンドを回すような輩が牧歌的にテレビ放送の将来に期待しているとは思えません。もしそうなら、具体的なイメージがわくような戦略で動き出すはずですが、送り込もうとしている役員の顔ぶれを見れば、なんらかの目論見があるようには見えません。解体的出直しを狙うなら、かえって現経営陣からの引き継ぎが重要です。特に、視聴者とスポンサーの継続的支持が必須であることを考えれば、懲罰的に役員の総替えなどもってのほかです。
 だとすれば、彼らの狙いは2通りに分けられます。まずシンプルに、「無茶苦茶やるぞ」という揺さぶりを経営陣と一般株主にかけることで、持ち株を高く売り抜ける作戦です。もうひとつは、解体的出直しの名のもと、儲かる部門だけを残して会社を縮小させ、配当で儲けるか売り飛ばすかというやや手の込んだ作戦です。
 フジの場合、「ハゲタカ」たちの狙いは後者のように思えます。なぜなら、不動産部門の別会社化という提案が出ているからです。

https://news.yahoo.co.jp/articles/0c05006078061a3d5618c1371c661dd42ecfdffa
https://news.tv-asahi.co.jp/news_economy/articles/900022877.html

 一応、「不動産依存の甘えから脱却させて、コンテンツ制作能力を鍛える」という建前を示していますが、額面通りに信じている関係者はどいないでしょう。不動産部門を別会社化すれば、株主は、不動産会社と放送会社の株の両方を、それぞれ別々に持つ事になり、どちらかだけを売ることも可能になります。
 不動産会社は超優良企業になりそうですから、仮に放送会社の方が倒産しても株主としては引き合う、という計算が成り立ちそうです。フジテレビよりもさらに収益構造に問題がある産経新聞社も切り離せます。短期的に儲けてさっさと逃げ出す芸風の株主たちは大満足でしょう。
 さて、ここでいつもの問題が出てきます、すなわち公共性の話です。「新聞社や放送局は民主主義を支える無くてはならない公器であるから、経済情勢の変化で経営や雇用の安定姓が損なわれる事があったはならない」というあれです。
 ノコギリとジャーナリストは、切れ味の悪いやつほどコーキコーキとうるさいと思うのですが、それ以前に産経新聞はともかく、フジテレビを報道機関と考えられるのでしょうか。もともと、娯楽番組が放送時間の大半をしめ、独自の取材力では週刊誌にも遠く及ばない会社です。「たまに報道もやるコンテンツ製作会社」ぐらいが妥当な評価でしょう。そこでさらに今回の性上納事件です。風俗店まがいの会社が自ら公共性を主張するのは、悪い冗談にしか聞こえません。

 初夏のジャングル株主総会

 今春の株主総会直前には、一般株主を巻き込んだ委任状収集合戦が起こるでしょう。公職選挙法みたいなものはありませんから、現生が飛び交うこともありそうです。当然、株価も上がります。経営に対する一般株主の要求水準もあがります。だからと言って経営陣には株主配当を上げて、ご機嫌をとるということはできそうもありません。現状維持を訴えて株主に納得ないし同情してもらうしかないでしょう。
 一方、ハゲタカたちには余裕があります。仮に、今次の総会で株主提案が否決されても、慌てることはありません。さらに経営が悪化したり、新たなスキャンダルが発覚したりすれば、保守的だった一般株主の空気も激変します。満を持して、臨時総会を要求すればいいわけです。今後、危機が深まったりクラッシュがおこりそうな理由はあちこちにありますが、時間を稼いだところで状況が劇的によくなる可能性はほぼ無いでしょう。フジテレビには解体的出直しが必要とのことですが、株主一同が望む解体は必須でも、誰も期待していない出直しの方は不可能、というのは当然です。