小浜ルートのリスク番付(5)  【北陸新幹線 その23】

日本全体が抱える社会状況などに由来する問題が集まってきました。

● 西前頭二枚目   日本全体の経済状況の悪化
→ 引用文献不要
 何も言うことはありません。国にもお金はありません。大きなプロジェクトが失敗した場合に最後のババを掴む役割は国家というのがお約束でしたが、この規模のババは処理できるはずありません。ツケが誰にまわるのか、そろそろ関係者の腹の探り合いがはじまるころです。


● 西前頭三枚目   政権与党の弱体化
→ 引用文献なし
 安倍政権時代のように自公が余裕で衆参の過半数を押さえていれば、与党の有力議員のやろうとすることは、たいてい実現できました。個人的な賛否は別として、とりあえず協力する政治家や官僚が山ほどいたからです。ところが、政権が弱体化して押さえが効かなくなると、あっちこっちでレジスタンスやらサポタージュやらブーイングが出てきます。現職与党議員でも個性を出さないと次の選挙が戦えないからでしょう。
 「総工費は最悪の場合5.8兆円」とか「山岳トンネル残土の3割が環境基準以上のヒ素を含む」とかがそのクチです。将来のインフレ率とか地下深部にある岩体の元素含有率とか、本質的に予測不能なリスクに、わざわざ不利な推定を付けて出してくる。官僚による一種の世論誘導なのでしょう。
 昨年末のルート絞り込みをめぐるドタバタ騒ぎも、政権与党のグリップ力弱体化のなせるわざなのでしょう。そして、今年正月早々の最初のハイライトが、来年度本予算の国会通過です。
 厳しい財政状況の中、自公政権は、北陸新幹線延伸について、わずかですが調査予算を増額しました。少子化対策さえ財源を確保しなければ先にすすめません。こんな御時世ですから、地元でさえ賛否が分かれたままの小浜ルートに関する予算は、削るように守勢要求される恐れもあります。もっとも自公にしてみれば格好のガス抜きツールですから、簡単にゆずって減額修正となるでしょう。
 一旦減額の流れが出来ると、財政の状況がよほど良くなるかしない限り、大きな予算がつくことはなく、着工自体を国としては断念することになります。


● 西前頭四枚目   米原ルートなどの有力代案
→ 引用文献なし
 小浜ルートのボロが出始めた昨年後半から、数年前に死んだはずの小浜ルートの再評価が各方面で始まりました。こうなったのは当然のことなのですが、私が疑問に思うのは、なぜもっと早く、メディアがしっかりと『小浜ルートは不可能だ』と声を上げなかったのかとうことです。
 別に専門知識はいりません。高校程度の物理・地学・地理・政治経済......なにか一つでもしっかりと理解していて、かつ常識的な論理能力があれば、小浜ルートはダメそうだという疑問は湧いてくるはずです。「本当に建築可能なのか」を推進側(ここでは与党PT)にぶつける取材をしないのでしょうか。
 米原ルートの他にも、湖西ルートや舞鶴ルートなどを提唱する声が上がってきています。福井県知事が言い出した小浜部分開業というのも、一種の代案でしょう。あるいは最有力の代替案はサンダーバードの北陸乗り入れ復活で、金沢・敦賀間でさえ不要な延伸だったのかも知れません。
 こうなってくると、敢えて小浜ルート指示するには、具体的なメリットについての説明責任が出てきています。これは多分、不可能なことであると思います。