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南町気質な人々

8月3日(水)

南町の平成15年度若頭筆頭のWと本年度筆頭のS條くん、そしてウチの本年度筆頭のM人という顔ぶれで一席。
南町という町は、岸和田だんじりを知る人なら分かりすぎる分かっているが、町の大きさ始め度胸千両系稼業男およびそれをしのぐシロウトの祭気質ほか、いろんな意味でちょっと別格の存在感を有している。
だからその町の祭そのものを統御し、若い者を引率する若頭筆頭は、並大抵のことではない。
胆力や膂力はじめ絶大な人望が必要である。

WとM人とオレは同級生で、S條くんは2つ下の学年である。うちの五軒屋町は平成15年度、16年度、17年度の筆頭が珍しく3年続けて同い年がやることになって、おまけに今年は若頭責任者協議会の副会長つまり中央地区のいわば代表である。
その関係で今年のM人は、五軒屋町単町のみならずの重責を引き受けているが、何かと南町のS條くんは年上でもあるM人を立ててくれると聞いている。
五軒屋町若頭顧問としても、これはうれしい関係だ。
付け加えるとオレが筆頭をやった15年度は逆にWが若責協の副会長で、今年のM人とS條くんとのそのまま逆の関係性であった。
「だんじり本」を読んでいただいてもわかるはずだが、Wはなにかとよく登場している。

また南町だんじりは平成7年に新調、五軒屋町は10年であり、大工/植山良雄、彫物師/岸田恭司と同じで、言わせてもらえばどちらの棟梁も「脂ののりきった時の仕事」であり、平成だんじりの名作といえる。
大きさとその容姿はどちらもよく似ていてどっしり端麗。藤井町や春木南ほどのサイズはなく、あの難所である紀州街道のS字を走って回すのにちょうどフルサイズといった具合だ。
「だんじり本」の口絵カラーページの「岸和田だんじり図解」には、南町の正面屋根〜枡組と五軒屋町の側面全体を大きく取り上げさせてもらっているが、よく見ていただいて面白いのは、大屋根を支える構造が、南町が屋根の四隅に向けて放射線状に垂木が張り出している(扇垂木)所謂「入母屋」で、五軒屋町は側面だけに一列に垂木が屋根を支える構造の「切妻」である。
Wやオレはそれを、南町と五軒屋町は「雄/雌」の関係に例える。
「兄弟だんじり」も同様で、祭礼に使われる地車等にはどこの地域でもそういう製作時期や形状の経緯上による謂われが出現し、語られる。

新調当初、南町では入母屋と切妻どちらにするか議論が沸騰したが、大工棟梁の意志もあって入母屋に決定したとWは言う。
逆に五軒屋町の場合ははじめから切妻で、いう話に落ちついた。
これは岸城神社の本殿が切妻で、宮三町つまり宮本町、上町、五軒屋町のすべてのだんじりがそれに習って、昔から切妻を採用しているという話であるが、定かかどうか。
WとM人、S條くんとそういっただんじり本体のコアな話にはじまり、他町との関係性、特に我が五軒屋町の潮かけの際の浜の各町を通過する際の特別コースと、それを滞りなくお願いするための花交換や挨拶など、岸和田だんじり祭礼の各町特有の本質的な話に熱くなる。

こうなると酒と簡単なアテで十分だ。唄も芸もカラオケも要らない。もちろんホステスもママも不要だ。
M人は文字通り燗酒徳利に切り替えてバカスカ飲んでいるし、Wは焼酎がボトルで出ない店なので焼酎をそのままグラスで何杯も頼み、別で氷を持ってきてもらって飲み続ける。

そして今年は五軒屋町は通常の曳行コースをさらに南進し、紀州街道の南町の町深くまで曳行することを若頭の立場を代表しM人は決定している。
昔は我が町もよく南町まで曳いていって「みなんまち(南町)のおじい、おばあを喜ばせちゃった」そうだが、子どもの頃からのオレの記憶にはまったくない。
M人は「みなんまちの年寄りは、まだ新調した五軒屋のだんじり見てもろてない人いてるはずやよって、エエ機会や」と言い、Wによると南町は町会としてそれを歓迎してくれるとのことだ。

とうとうお店が「ラストオーダー」さらに「すいません、閉店です」となるまで飲み続け話続けになってしまう。
こんな際の会合は、勘定は「割る」ことが当然であるが、WもS條くんも「ここは南町やから、あかん」と頑としてこちらに払わそうとしない。
そういえば先週土曜もWと飲んでいてそんな感じだった。
帰り際にWが「M人。祭、終わってから、またおなじメンバーで飲もかい。のお」と言う。
南町という町の祭礼を少しわかり、南町気質というのはなるほどこういうふうだと思う。

コメント (1)

山手の後梃子:

はじめまして。
岸和田山手で後梃子やってます。
「だんじり本」拝読さしてもらいました。
一晩かからんうちに一気に読み上げて、
早速、同い年の屋根乗ってるツレにも教えたりました。
そいつも早速買うてきて読んだみたいで、
「よかったわ~」言うてました。

Meetsは学生時代から愛読さしてもろてます。
仕事は、ちっちゃい広告代理店です。仕事柄、イベントを多く手掛けてますが、「だんじり本」の文中に出てくる通り、祭(祭礼)とイベントの違い(比較対象にすること自体オカシイ)には、「そうや、ホンマその通りや」と妙に納得した次第です。
寄り合いやら行事やら、何かと融通つけるのに難儀ですけど、編集長にして筆頭の大役務め上げはったんを手本に、僕も祭(祭礼)での役割と責任をまっとうしたいと思います。
ほな、失礼します。

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2005年08月10日 19:29に投稿されたエントリーのページです。

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